さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

意地の張りどころが違う 久保隼、快勝ペースを手放し辛勝

2018-04-29 07:35:22 | 関西ボクシング



昨夜は、神戸中央体育館で観戦してきました。
久保隼と大沢宏晋のWBAフェザー級ランカー同士の対戦でした。


好カードと言えば言えるのでしょうが、共に状況自体はあまり良くない者同士、という風に見ていました。
久保はダニエル・ローマン戦からの再起戦ですし、
大沢は昨年末の試合ぶりをTVで見る限り、非常に不調に見えました。
大柄な体躯とリーチを生かせず、序盤から上体が折れてしまっていて、バランスが悪い。
歴戦の疲弊が試合ぶりに出てしまっている、というのが正直な印象でした。

しかし、同じ関西の枠組みで、同じ階級になったら、すぐにこういうカードが組まれた、
そのこと自体は良いことですし、内容どうあれ見に行こう、とは思いました。
そりゃ、共に世界で黒星をつけられる前に対戦があれば、なおいいですけど。
大沢宏晋がかつて闘った、坂晃典戦のように。


会場にはフジ系列の関西ローカル、関西テレビのカメラが来ていましたが、
見た限りでは固定が一台、ハンディが一台だけ。
実況席らしきものはなかったので、試合の録画放送ではなく、
夕方のニュース番組かなにかで取り上げられるのでしょう。
ネット配信の話も聞きませんので、経過も一応、簡単に。


初回は久保の右、大沢の左、ジャブやパーリングの応酬。さらに大沢は右から、久保は左ヒット。微妙ながら久保か。
2回、久保が右ジャブから左ストレート。大沢も右当てる。
しかし、頑張って当てている大沢、無理なく当てられる久保、という対比が見えてくる。久保。

3回、大沢鼻血か、出血で顔が赤い。久保左、ショートもロングも。
大沢クリンチ増える。離れ際の左フックのみ。久保。
4回、クリンチ増加。大沢はミスしてクリンチするばかり。久保離れて左。少しショートでも応じる。久保。

久保、快勝ペースに見えたが、5回、大沢が劣勢を意識したか、さらに前進を強める。
というと聞こえは良いが、実際は無理に突っ込み出した、というところ。
早速バッティングが起こり、久保右まぶたを切る。ドクターチェック入る。
大沢出ては揉み合い、久保も応じる。大沢からホールドで減点1。やや大沢か。

これ以降、クリンチ、ホールドの合間にボクシング、という展開が続く。
「どちらに振るか」悩むのではなく「どっちにもつけたくない」回もありました。

6回、久保が左ストレートで突き放せず、大沢が出てはクリンチ、ホールドの応酬。大沢。
7回、大沢が押して、右ロング単発。久保からホールドで減点1。大沢。
8回、久保が逆にロープ際に押し込んで、ショートを打つ。意地になっている風。
久保が手数でやや上か、大沢クリンチからの左フックが2発あり、それを取るか。微妙。

9回、久保、少し離れた距離から左当てる。大沢左右ヒットも単発。久保。
10回、大沢、ミスしてはクリンチ。久保少ないが左ヒット。右フックも。久保か。

採点は97-95(久保)、95-94(大沢)、96-93(久保)。
2-1で久保の判定勝ち。さうぽん採点は最後のと同じでした。



前半は久保がまずまず快調でした。
フェザー級に上げてなお、痩身の印象は変わりませんが、左ストレートを当てる距離、
右ジャブが出ているときの優位性は、従来通りか、それ以上のものを出せていたと思います。
問題は、試合後のコメントにもあったように、離れた距離を維持しようと努めず、
敢えて自ら、ショートの距離で、押されたら押し返し、踏ん張ったことでしょう。

本人はショートの距離でもやれる、という形で意地を張り、それを通したのでしょうが、
接近してヒット・アンド・カバーをやるバランスなど持たず、
押し込んで手を出して、クリンチしてまた、という繰り返し。
序盤が快調だった分、余計に残念でした。

きついようですが、あのレベルの揉み合い、押し合いを「インファイト」と言われても困ります。
意地になるポイントが違う、ストレートパンチャーとしての良さを出すことにこだわってほしいし、
そこにこそ「意地」を張るべきだろう。率直にそう思います。

しかし、今後、格上の相手と闘い、苦しい局面になったときに、見た目は悪いが粘れる力もある、
という部分では、階級を上げた効果も含め、今までにはない部分も見えた、とは思います。

本人は「まだ名前を出すのはおこがましいですが、闘いたい相手もいます」と語っていました。
清水聡のことを言っているのかな、と思いましたが、その辺はまだ不明にせよ、
次もまた、上位とのカードを組む、という陣営の言もあったそうです。今後に注目ですね。



大沢宏晋については、新人王トーナメントの頃から、けっこう数多く試合を見てきた選手ですが、
正直、今まで見た中で、一番不調でした。悪かったなー、というのが率直な印象です。

序盤、前の手で激しく牽制し合ったのち、右ストレートから入ってヒットを取ったあたりは良かったですが、
久保の左を当てられては、少しずつ体勢を崩されていき、中盤以降はラフに出たものの、
ミスが多く、クリンチ、ホールドに逃れて、そこから単発のヒットを取るのが精一杯。
もし久保が、しっかり距離を取ることに専念出来ていたら、クリアな敗戦を喫していたことでしょう。

リーチは久保も負けずにありますが、体格自体は大沢の方が大きいと思っていたら、
リングに上がった時点で、上体がいつになく「薄く」見えたことも含め
(ベガスでの世界戦のときも同様でした)、色々厳しくなってきているな、という印象でしたが、
試合の内容は、残念ながらそれを裏付けていたように思います。


これはもう、ファンの勝手、というものの極みですが、
大沢にもこういうときが来たのかな、と、若干寂しい気持ちでもあります。
そして、それにきっちりとした勝ち方で「引導」を渡せない久保にもまた。

全体的に、少々残念な感想を持ってしまった観戦でした。



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ところで前記事にて少し触れた、DAZNのライブ配信の件ですが、
本日配信予定が出ていたジェイコブスvsフレッキ戦は、配信予定がいつの間にか、
HPから忽然と消えていました。

DAZNは時々、こういうことを平然とやります。
以前、英国からヤファイvs石田戦のライブ配信予定が、直前でなくなり、
後日の視聴に変わったことがありました。

このとき、DAZNに「予定が変わったなら、HP上のどこかでその旨、記載するべき」だとメールしたのですが
「編成上の都合です」でおしまいでした。文言は非常に丁寧でしたが、事実上のゼロ回答でした。

今回は代わりに、来週日曜午前2時から、英国でのベリューvsヘイ再戦が配信予定となっています。
この日はお昼前くらいから、WOWOWでゴロフキンvsマーティロスヤン戦もありまして...。

正直、全部まともに見てたら、途中で気を失ってしまうかもしれませんね。
困ったものですわ、本当に。



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取り合わない?/ダメ親分/出どころ不明/本日、シンガポールより生中継

2018-04-20 07:55:53 | 話題あれこれ



先の横浜アリーナ興行以降、あれこれと話題を。
どうも今年に入って、悪い話の方が目につきがちですが。


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高山勝成、日本スポーツ仲裁機構に、調停申し立て
日連と、上部団体JOCに、選手登録を認めてもらいたいということですね。

記事を読む限り、高山は何もおかしなことはしていない、至極当然な要求に見えます。
しかるにそれを受ける側の「取り合うつもりはない」というコメントは、傍目には理解不能です。
この人、どんだけ偉いんや(=アホちゃうか、という意味)という皮肉しか、頭に浮かびません。

それにしても、細かいことなど何も知らんですが、JOCって、日連の上部組織なんですね。
いったい、何がどうなってこんな御仁が、会長の座に座り、専横というに留まらず、
独裁というには幼稚な「好き勝手」をやっていられるものか、改めて不思議ですが、
JOCはこの現状を、どう認識しているんでしょう。
高山の選手登録が認められるか否か、と同じくらい、関心がありますね。


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具志堅会長、ラジオ出演で「陳謝」とあります

謝罪している部分は、まあ当然ですが、なぜ余計なことを言うんですかね。
選手の管理に不足があった、で終わる話でしょうに「お菓子食べちゃう」って。

会長としてどう、マネージャー、プロモーターとしてどう、と言う以前に、
この人には「親分」としての素養が無いようですね。あまりに軽すぎる。
結局、自分が悪く思われたくない、というのが本音なんでしょう。
古いヤクザ映画によく出てくるダメ親分やあるまいし。どうしようもないですね。


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尾川堅一への、ネバダのコミッションによる処分が、ようやく発表されました
IBF王座獲得は無効、出場停止は6ヶ月とのことです。

正直、割と軽いな、というのが第一印象です。
しかも出場停止の期限は、ファーマー戦の日から数えるので、6月8日で切れる、と。

まあ、じゃあ7月くらいに試合を、とやるほど、帝拳も厚かましくはないでしょうが、
懲罰としての重みは、さほど感じません。

それより何より気になるのは、使用していたアトピーの薬と、検出された違反薬物との間に、
因果関係が認められなかった、ということですね。出どころ不明、であると。

「何が原因かわからない」まま、処分が決まり、本人が謝罪して、許されるなら再起を、
というお話でまとめにかかられても、ファンとしては困ります。
薬の知識がなかった、注意不足だった、という話の根拠が、そもそも成り立っていない、
全然辻褄合ってないやん、としか、思うことがないんですが。


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さて、DAZN情報ですが、先の村田ーブランダムラ戦を見逃し配信で視聴出来るようになっています。
TV中継を見られなかった方々には、良いことですね。

で、本日20日、よる9時、シンガポールより生中継の配信があります。
シンガポールのモハメド・リドワン出場、IBOインターコンチネンタル、フェザー級王座決定戦、だそうで。
リドワンさん、戦績は9勝7KO無敗の30歳、OPBFではSフェザー級4位。末吉大の下ですね。


またえらいところから引っ張ってきたものです。
そりゃ、間違ってもWOWOWエキサイトマッチのカードと、かぶることはないでしょうが(笑)
この辺、ご自分たちのご都合優先、視聴者の立場は後回し、という、揺るぎないものがあります。
関わっている業者さんもなかなか、やることがえぐいというか、何というか...と
もはや笑うしかないところです。


と思っていたら、月末、29日の日曜日は、ジェイコブスvsスレッキのミドル級ノンタイトル戦配信。
これはだいぶマシというか、ぐっとグレードが上がりましたね。

まあ、世界の大試合が、あれこれ不都合あって難しいなら、国内のカードにも
遠慮無く手出ししてほしいものなんですけどね、DAZNさん。
しかし結局は、業者のご都合優先、という枷がはめられつつある模様ですので、
こちらの期待も、色々な意味で、しぼみ加減ではありますね。


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勝って無意味、負けて傷を負う試合 比嘉大吾、奈落の底で初黒星

2018-04-17 04:21:17 | 関東ボクシング



もう、あれこれと語り尽くされているであろう、比嘉大吾の計量失格ですが、
前日にこれを知ったときは、またか、とがっくり来ました。
またも、見に行く予定の試合がこんなことに、という。

しかし、落胆しても、驚きだったかというと、それは違いました。
こういうことにならなければいいが、拳四朗の試合と、日程逆にすべきではないか、と
それは試合決定と、拳四朗の日程変更があったときから、思ってはいました。

まず、前の試合から二ヶ月ちょっとの短期間で試合を組んだ陣営、
というより具志堅用高会長の「采配」が大間違いでした。
しかも、沖縄で初回KO勝ちしたあと、ロスに渡航し試合観戦、
そのほかにもTV出演などもいくつか散見され、
実質的な調整期間は、さらに少なかったと思われました。

それでもこの日程を決めた背景には、具志堅会長の考えとして披瀝された、
短期間でも減量できる、むしろその方が...という考え方がありました。
しかしそれは、実際に比嘉の練習や調整に、詳細に関与した上での発言ではなく、
自身の経験に基づいた押しつけでしかなかったようです。
今回、露呈したその事実は、マネージメントとプロモートの権益を独占する立場の「会長」として、
さまざまな(というか、全てにおいて)不足を言われて仕方ないものでした。

その他の周辺事情、そしてもちろん、比嘉本人の責任も重大ではあるでしょう。
しかし、平成も30年になろうかという今になっても、
このように適当な、選手の状況を無視したかと覚しき意志決定がなされてしまう
ボクシング界の後進性と、その末の事態、失態は、どれだけ批判しても足りません。


そして今回、試合は当日午前8時の再計量で、122ポンド以下なら、という条件で挙行されました。
この条件、非常にアンフェアなものでした。犯罪的と言って良いでしょう。

先のルイス・ネリーの件で、当日正午、128ポンドという再計量の条件を知ったとき、
試合開始までの回復の時間が、8時間もあることを「こんな緩い条件が許されるのか」と
怒りを感じましたが、今回は実質、12時間です。
122という設定については、さまざまな意見もありましょうが、
回復の時間については、よくもまあ、こんな手前勝手な...と呆れ果てました。


心中、僅かに残っていた、比嘉への同情のようなものは、これでほぼ消し飛んだ、
というのが正直なところでした。

元々、計量失格の時点で、試合が挙行され、比嘉が勝ったとて、彼を称えることなど出来ないし、
負ければさらに経歴が...という以前に、彼の心身に傷がつく。
それでも、何のためにやる試合かといえば、唯一、挑戦者クリストファー・ロサレスの
王座獲得機会を、試合挙行によって保証する、という点のみですが、
そのロサレスを、このような緩い条件を立てることで、不当(といっていいと思います)に脅かす。

こんな酷い話があっていいのか。ルイス・ネリーを批判してきた我々、日本のボクシングファンは、
今後、誰に何があっても、一人前の口をきけなくなってしまうではないか。

二重三重、いや四重か、もういくつか数えることも出来ない失望が重なる中、
試合は始まり、半ば茫然と、リングの上を見ていました。


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試合については、これまた広い会場で見た印象のみで、簡単に書かせていただきます。
録画をチェックする気力は、今はまだ沸いてきませんので。

初回、大雑把に言えばボクサータイプのフォルムに見えるが、打ち合いが好き、というか
積極的に攻める選手、という風評どおり、ロサレスが攻める。

比嘉は、単純に考えれば、体重を落とせず、回復時間もあったはずだが、
やはり「本当に落とそうとした末」の失格であり、体調が良くなさそう。
普段の試合ぶりより、前に出る馬力が見えず、後退する動きが目についてしまう。
間違っても「受け」て強い選手ではないだけに、早々に暗雲が見えたような気がしました。

ロサレスはリズム感あり、左から右、左アッパーが出て、打ち合いでまさる。
比嘉は攻めるが、威力、切れともに欠ける印象。
4回はロサレスの右アッパーも出る。

4回終了後の途中採点は、見た感じとはだいぶ違う。
しかし、この辺については、どうでもええわ、勝手にせえ、と聞き流す心境でした。

5回、比嘉はボディ攻撃。6、7回、打たれながらも、半ば捨て身で奮闘。
しかし8回、ロサレスの右クロスが入る。
9回、ロサレスがヒットを取り、ジャブを当てたところで、陣営が棄権の意思表示。
TKOで試合は終わりました。


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見終えて思ったのは、この結果になる以外、意味のなかった試合が、
唯一、意味を失わない結果で終わったな、ということでした。
それを「良かった」と言えはしませんが、勝者クリストファー・ロサレスという、
拍手を送れる対象が、試合後のリングにいたことは、せめてもの救いではありました。

ロサレスは、足を使って動くタイプが苦手なのかもしれませんが、
この日の試合ぶりを見ると、なかなかの好選手でしたし、積極的なボクサーファイターで、
この日出た選手の中で、見ていて一番、目に心地よい選手でした。
もし比嘉が減量を順調に成功させていても、好試合になっただろうし、出来ればそれを見たかった、と思います。



そして、最後に、比嘉大吾について。

陣営の決定、会長の独走、その他周辺事情があったにせよ、当然自らの失態である
計量失格という事実、そして「本当に落とそうとして落ちなかった」実態から、
当然、体調も万全ではなく、さらに言うなら、精神的にも落ち込んだ状態で、
勝っても手にするものは無く、称えられることもなかっただろう試合のリング。
それはまさしく、比嘉大吾にとり「奈落の底」に見えました。

翳りを隠しようも無い表情でリングに上がり、
いつもと違って、相手を捉えても弱らせられない、自らの拳を振り回す姿は、
あまりにも悲しく映るものでした。

同情や擁護など、しようもありませんし、今後についても、何も言いようがありません。
然るべき処分を受けたのち、再起してほしい、ということにすら、今は思いが届きません。

しかし、今度どうあれ、周囲の状況がどうであれ、勝ち負けどうという以前に、
今回のような試合は、二度としないでもらいたい。
それを峻拒する意志こそを、何よりも大事にし、それを基準に物事を判じ、
我が身の置き所を定めて、生きていってほしい。

ボクシングファンの一人として言えることは、今のところ、それだけしかありません。



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「有力挑戦者」への道半ば 村田諒太、前欧州王者をKO

2018-04-16 16:31:19 | 関東ボクシング



昨夜は横浜アリーナにて観戦してきました。

たぶんウィラポン、西岡第二戦以来となる観戦でしたが、相変わらずの大箱にしては、
なかなかの客入り、という印象でした。
カードの弱さ、エンダム第二戦に比べると話題性に乏しいこともあり、
前回ほどの熱気とは行かなかった感じでしょうか。
もっとも、話題性という点では、もうひとつの試合に関する、
悪い話でそれが生まれてしまいましたが。


そういうことで、村田諒太はエマヌエール・ブランダムラを8回KO。
WBAミドル級レギュラー王座の初防衛を果たしました。

試合ぶりについては、広い会場で見ていた者の印象ですので、
TVで見るのと違う見方になっているかもしれません。
大会場でも、見やすいものもあればそうでないのもありますし。


村田は基本、見て圧す立ち上がり。
初回から手の内全部さらして、1ポイント先取と引き換えに、
相手に様々な対策のヒントを与えてしまうような選手よりは上等だ、と思う反面、
打てるくらいの間は詰めているだろうに、打たないなぁ、という物足りなさも。

しかし、村田にしては、というべきか、右ボディストレートの強打もあり、
過去の試合と比べると、平均よりは攻めている方か。
ただ、そのくらいでも、非力ながら技巧と粘り強さが売り?のイタリア人挑戦者にとっては、
十分に脅威だったらしく、足を使っても早々に迫られ、打てば硬いブロックの上。

初回終えた段階で、両者の力関係、試合の趨勢はほぼ見えました。
ここから中盤まで、散発的ながら、村田の右ボディストレート、左ボディなどが決まり、
コーナーに詰めて攻める場面も。

ブランダムラは、足で捌けず、反撃は非力な上、そこで止まっちゃいかんだろう、と
見てるこちらが心配になるようなところで止まったりする。
しかし村田の詰めに厳しさはなく、左へ逃げる相手を右で追い、逃がす。
5回、左フックが上に返るが一発だけ。この日も全部で三発くらいだったか。


いつも同じこと書いてますが、村田は、奇異なほどこのパンチを打ちません。
アマチュア時代に、左フックに相打ち気味の合わせでも食って、えらい目に遭ったことがある、
とでもいうのでしょうかね。その辺は全然知らないもので、わかりませんが。


ブランダムラは早々に劣勢に追いやられ、結局ほぼ全般、圧されたまま。
回が進むにつれ、半ばダルマ状態。しかし村田は慎重に、連打はせず、ワンツー止まりの防御優先。
打たせちゃいかん、という心がけは良いが、それ故、この程度の相手にも、厚みのある攻撃が出ない。

変わり映えのしない展開が続き、ESPNでも流れてるのになぁ...
とかなんとか、見ているこちらも邪念に捕らわれ始めた8回、
村田が右好打、ロープへ追って追撃、ガードの外から引っかける右で倒し、KOとなりました。


村田は前の試合と比べて、目に見えて変わる、伸びる、という選手ではなくとも、
たとえば5、6試合遡って見比べれば、少しずつだが違いが見える、というところがあります。

エンダムとの二戦目でも、相手の構えが変わるたびに、攻め手を少し変えたり、
それに応じて、追撃のテンポが上がったりしました。
今回も、ガードの内を打つ軌道のパンチが多かったあと、外から巻く右で見事に仕留めました。

そこだけ切り取れば、巧い、強い、と言えますし、
過去の日本人ミドル級で、欧州王座獲得歴のあるイタリア人選手に対し、
ワンサイドで勝てるボクサーが、果たして何人いただろうか、と考えれば、
村田諒太の存在は貴重なものであり、その実力には、一定以上の評がなされるべきでしょう。しかし。



今朝、売店のスポーツ新聞はほぼ全部村田が一面で、
日本人初の世界ミドル級王座防衛、という見出しもちらほら見かけました。
そうか、竹原慎二は初防衛で負けたからなぁ、と思い出したあと、
毎度のとおり、中身を語らず、こういう見出しを作る報道の仕方に、げんなりしました。

本人が改めて、試合後、口にしたように、村田諒太の現在地は、そういうところにはありません。
王者ゴロフキンへの「有力挑戦者」たりうるか否か、それを問われる闘いのさなかにいる。
それが村田諒太の、偽らざる現状です。それは善し悪し共に、試合内容にほぼ全て、出ていました。

そして、その道半ばで、その目標に近づくには不足あり、と目された対戦相手に完勝した。
これが往時のウィリアム・ジョッピー級の相手なら、辛勝でも絶賛するところなれど、そうではない。
着実、堅実、堅牢さは示したけれど...というところで今回は止まり、でしょうね。


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しかし、ボブ・アラムは、ミドル級シーンにおける手駒として、
村田を思うさまに使いたい一心か、あれこれ勝手な?ことを言い散らかしてますが、
本当にゴロフキンと対戦できたら、大変なことではありますね。

村田の挑戦者としての実績や、現状の力が、それに値するものかどうかは、
本人が「今やったら勝てない」と、怖いくらいの率直さで言ってしまっています。
何もかもが望み通りに揃い、準備万端、誰にとっても待望の...という形の挑戦など、
そうそう実現するものではない、というのが実際のところなのかもしれませんね。



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久高寛之、悲願の初戴冠 翁長吾央の追い上げ届かず

2018-04-15 00:32:39 | 久高寛之



ということで、今日は府立にて観戦してきました。

どこを押してもTV放送はなさそうで、ネット配信の話も聞こえてきませんが、
明日の観戦のこともありますので、できるだけ簡単に。


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久高寛之と翁長吾央の再戦は、久高が2-0判定勝ち。
久高が悲願の日本タイトル獲得なりました。

お互いに、けっして相性、組み合わせが良いとはいえない感じは、
負傷ドローの初戦でも見えていましたが、初回、探り合いで鋭いパンチの交錯があったのち、
クリンチの回数が多い、見ていて少し難しい展開になりました。

翁長は遠い距離から左ストレートを飛ばし、当たっても当たらなくても、次はクリンチ。
久高は本来の型ではない、ファイター化したスタイルで右から入る。

初回、両者の右が交錯。2回、久高が右から入り、押し込む。
3回は久高が右から連打。4回、もみ合い多い。
5回、翁長が左当て盛り返す。

途中採点、50-46(翁長)、48-47(久高)、49-47(久高)。
さうぽん採点は、翁久久久翁、48-47で久高も、迷う回続出。

6回、翁長左当てるも、久高の右が立て続けにヒット。翁長少しダメージ見え、後退。
7回、久高また右ショート、左ボディも決め、攻め立てる。翁長、スリップダウンを3度。

このまま行けば、KOは無理でも、クリアに久高の勝ちかと思ったが、
8回、翁長追い込まれて奮起、左を上下に伸ばす。
9回、久高は若干、相手を見て引き込むような動きも。
翁長はきつそうだが、粘る。この回は迷うが、翁長に振るべきか。
最終回、両者ヒット応酬、やや翁長?

公式採点は97-95、97-94、95-95の2-0で久高。
さうぽん採点は、数えてみたら95-95、でした。
ただし、迷う回をほぼ全部、翁長に振ったので、久高に辛めではありますが。


何はともあれ、長年にわたり、その試合ぶりを追ってきた選手ですから、
やはりその戴冠は、感慨深いものがあります。

中盤、ことに7回までの闘いぶりは、久高の闘志と気迫が伝わってくるものでした。
長い距離からの左ストレートに光るものがある翁長相手に、
圧力をかけて、右から入って、クリンチに遭うも、ショートの距離でボディも打つ。
多少ラフになるのもいとわず、気合いで負けていないところを見せていました。

それはかつての久高自身が、その才能の輝き故に?持ち合わせておらず、
長年の闘い、いくつかの挫折を経た今だからこそ手に入れた強さ、だったのでしょう。


そういうことで、諸手を挙げて大喜び、という記事を書きたいところですが、
当然、こちらもラストチャンスと言われ、ボクサー人生を賭していたであろう翁長相手とはいえ、
7回にあれだけ打ち込んでいながら、8回以降の奮起を許した部分は、やはり反省材料かと思います。

もちろん、さっきの回、優勢だったから次も、と簡単にいかないのがボクシングですが、
8回以降、若干下がり加減の動きがあり、それに乗じた翁長の巻き返しに遭って、
終わってみれば、採点も微妙な印象になってしまった感じで、ちょっともったいなかったな、と。


しかし、勝って戴冠し、彼はまた、闘える「次」の試合、語りうる「未来」を手にしました。
ファンとしては、これが最後にならず、また次の試合がある、そのこと自体が、何より喜びです。
新チャンピオン、久高寛之、おめでとう、ですね。


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メインは、日本ライトフライ級タイトルマッチ、久田哲也vs板垣幸司戦でした。

かつて名古屋で見た、滝沢卓戦の記憶も、もはや「懐かしい」と言わねばならない
広島期待の板垣が、足を使って、ジャブ、右ストレートを中心に、
WBA1位の王者、久田をリードする展開。

久田は両ガードを締め、ぐいぐい圧力をかけて出るが、2回までは音無し。
3回くらいから、徐々にボディ攻撃で攻め上げる。
強打の迫力は時折見えるが、前半、ポイントを取れたと見えたのは4回のみか。

ところが途中採点は三者三様。
見方によって違うのかもしれませんが...ええ、そうかなぁ、という感じでした。

この採点、板垣にとって見込み違いだったかどうか不明ですが、
特に、目に見えて、後半の闘い方に影響した、という風でもなし。
久田が出るが、板垣は軽快に動いて、ヒットを取る。

巻き返したい久田だが、7回にアクシデント。
バッティングが起こり、両者出血はないものの、久田の左目周辺が腫れ上がる。
視界が悪くなった久田、ロープ際に板垣を追って、ボディブローを振るも、
明らかに影響のある空振りも散見される。

板垣は終盤、その左目に右ストレート、アッパーを決める場面もあり。
久田はラスト3回、強い右を決め、板垣を打ち合いに巻き込むが、
板垣も要所で打ち返し、互角に渡り合う。

採点は96-95(久田)、96-94(板垣)、97-94(久田)。
さうぽん採点は二人目と同じでした。


ここのところ、9連勝で、倒せなかったのは堀川謙一戦だけと、
強打者として開眼し、絶好調だった久田哲也ですが、試練の一戦となりました。

試合としては、双方の持ち味がよく出た、好ファイトだったと思います。
そういう意味では、見終えて満足感のある内容でした。

だからこそ、遠からず世界と言われる久田哲也のみならず、堂々と戦い抜いた板垣幸司にも、
この試合内容に相応しい「次」が、つまりは再戦の機会が、与えられてほしい。
そんな風に思った試合でした。



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先降り/関東ローカル!?/話題になると動き出す/茶番に生きる/闘いは続く

2018-04-04 21:37:32 | 話題あれこれ



カネロ・アルバレス、自ら5月予定のゴロフキン戦を「辞退」とのこと

聴聞会より先に、自ら会見開いたということは、相当「情勢」が悪い、という判断材料があったんでしょう。
いわば、先に降り、ネバダのコミッションに恭順の姿勢を示した、ということでしょうか。
本当にやましいことが無いなら、徹底抗戦すりゃ良いようなものですが、
そうはしないというのが、全ての答えやな、というところですね。

後日、当然出るであろうサスペンド期間は、数日前は「半年」と見込まれていたのが
一年間になるかも、ということですが...正直、まだ足らんな、と思うものの、
半年なんていう馬鹿げた話より、マシではあります。
そんなもの、普通の試合間隔と変わりませんものね。
に、したって、事の重大さからすれば、一年でも「そんなもので済むのか」と思いますが...。


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マクドネル、井上戦の5日前、5月20日の日曜、ところも同じ大田区総合体育館で、
WBA、IBF王者田口良一の防衛戦決定。元ミニマム級王者エッキー・ブドラーと。
京口紘人とのダブル、こちらは相手未定(誰かなー)。

元ミニマム級王者のビジーファイターで、メリンドに僅差負けなど、
ライトフライでも実力者といっていい、手強い相手ですね。
これは好カード、ダブルタイトル保持の防衛戦に相応しい...と喜んでいたら、
試合は日曜午後二時から、TVはTBS生中継、しかし関東ローカルのみ、と!

年末はTBSが「はりこんだ」おかげ?で、統一戦が実現したのは事実ですが、
せっかく勝っても次がこれですか。かないませんなー...orz

TBSさん、BSかCSかで、同時に生中継してもらうわけにはいかんものですかね。
仮にCSになっても、ちゃんとお金払って見ますから...と
こんなところでぼやいても仕方ないですね。要望メールでもしますかなー。


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日本ボクシング協会、JPBAが、体重超過にペナルティを課す方針を固めた、とのこと。

方針自体は賛成ですし、そうあってしかるべきと思いますが、
敢えて言わせてもらえば、動き出すのが遅すぎます。
この業界、世間を賑わす話題にならないと、何もしようとしない。
これまでもそうだったし、今回もそうです。
山中慎介という名選手が「被害」に遭って初めて、やっとか、と苛立ちもする話です。

日本王者クラスや、もっと無名の4回戦などでも、体重超過案件はいくらでもあります。
ここ数年、しょっちゅう聞きますし、観戦に出かけた先で出くわすことも、数回ありました。
ひどいのになると、明らかにやる気の無い選手が、10キロ超過して、
それを笑い話のように、SNSで披瀝していた、なんてこともあったらしいです。

大半の業者さんにとり、興行は多くに開かれたものでなく、半ば身内で完結するものにすぎないのかもしれませんが、
ファンの立場で、暇割いて身銭切って見に行った試合が、こういう話で「壊れ」てしまうと、本当に徒労感しかありません。
それは世界戦であれ、4回戦であれ同じです。

しかるに...まあ、今後の推移を見守ろうとは思いますが、
こんな当たり前の方向性を打ち出すため、そのためだけに、山中慎介が「犠牲」にならねばならないとは、
この業界、本当に「心」がないなぁ、と、改めて思わされますね。


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復帰戦をやる、と少し前からネットで記事を見かけていましたが、
どうせインターネットTVの「番組」におけるイベントなんだろう、と思っていました。
今日出た記事によると、JBCが許可するのせんの、という話になっていて、
「え、公式戦のつもりだったの」と驚いたようなことです。

しかし、話の前後を見るに、結局、相手に許可が出ないことは見越した上での
復帰宣言だったのだろうな、というところですね。
それでも充分、体裁としては取り繕える。本気で再起するつもりだったが、
組織の壁に阻まれた、みたいな話が通じる?層相手の商売なんでしょうし。

この人、体裁が現役だろうが引退だろうが、変わらんな、と改めて思います。
その場しのぎの体裁を繕い、「場面」を作り、茶番を繰り返して、生きていく。
ある意味、終始一貫してはります。見ていて気の毒なほどに。

あれこれやって「しのいで」いくにもいよいよ苦しい、という感じありありですし、
もうそろそろ...ほんまに「引退」して、楽になったらどうや、と思ったりもしますね。
余計なお世話もええとこですが。


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日本時間でいえば、田口、ブドラー戦と同日、オーストラリアで
河野公平がWBAオセアニアのバンタム級タイトルマッチに出場
相手はWBA4位のジェイソン・モロニーとのこと。

こちらは話を聞くだけで、厳粛な気持ちになります。
その試合ぶり、実力への評はさまざまにあれど、今なお闘う志を持ち、
勝つことで未来を切り拓くべく、敵地に赴く姿には、畏敬の念を抱かざるを得ません。

傍目にどう見えようと、誰が何を言おうと、行く道はひとつ。
河野公平の闘いは、まだ続いています。
これも何とか、後日でも、映像を見たいものですね。


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手の内見せずに闘うも、仕留め損ねは誤算? 田中恒成、強振バルドナドをTKO

2018-04-04 10:32:44 | 中部ボクシング



中部在住の友人の厚意により、田中恒成フライ級転向初戦の映像を見ることができました。
簡単に感想。

立ち上がりから、スピードの差は歴然。田中は速いジャブ、右から左ボディへと当てていく。
中国は北京での連続KO勝ちも含め、10勝7KO無敗のスインガー、ロニー・バルドナドは
当たれば威力十分と見せる右を振るが、田中が躱す。

田中は左フックのボディ(外から)、左アッパーを上に返し、右クロスという攻めが見られる。
スピード充分で、WBOオリエンタル王者のフィリピン人は、思うに任せぬ展開。

3回、バルドナドは攻めも空振り、ブロックに遭うことがほとんど。
田中が連打で攻めると、わざとガード下げる?場面あり。

4回、田中が左ボディでダウンをマーク。ダメージありありだったが、
闘志十分のバルドナドが生き延びる。

このあたりから7回まで、田中はバルドナドの攻撃を、足で外すだけでなく、
敢えて止まって、ガード、ブロックで受けておいて攻める型。
故に単発のヒットを喫する場面もあるが、大半は防いでいる。

8回あたりから、田中はリズムを取り、動きで外す方向にシフト。
バルドナド苦しくなり、後退が目立ち始める。
9回、右をヒットされ、明らかに動きがおかしくなり、田中が攻めたところで
福地レフェリーがストップ。妥当な、良いストップだったと見ます。


眼窩底骨折による王座返上と転級を経ての初戦にしては、
ランクも実績もまずまずあり、闘志は十分すぎるほどの相手でしたが、
田中恒成は冷静な闘いぶりで、勝利を収めました。

試合運び自体は、相手の強振にも冷静に対処し、動いて外すのは当然、
止まって受ける防御においても、一定の余裕を持っていて、
CBCの放送席に招かれたWBO王者、木村翔の目を意識してか?
ギアを上げきらずに闘っていたようにも感じられました。

4回のチャンスに仕留めていれば完璧だったのでしょうが、
相手の闘志とタフネスが予想以上だったか、生き延びさせてしまったのが誤算だったかもしれません。
それは自身の手応えと同時に、木村との対戦を意識した部分においても。

いざ対戦すれば、田中は今回のように止まり加減ではなく、
ギアを上げて動き、より鋭く攻めては外すことでしょう。
木村の波状攻撃は、バルドナドよりも正確で、テンポも速いですから、
当然そうなる、ならざるを得ない、ということでもありますが。


王者でありながら上昇期のど真ん中、木村翔と、
挑戦者でありながらその才能をすでに認められた逸材、田中恒成。

比嘉大吾や、WBA新王者ダラキアンの台頭もあり、
ようやく上位陣が整ってきたフライ級にあっても、なかなかの好カードです。
また、日本人同士、という枠を外して見ても、楽しみな一戦と言えるでしょうね。


TV局の系列のことも考えるに、今後、具体的に対戦への構想が伝わってくると思われます。
木村がゾウ・シミンに挑戦した際につけられたオプションの問題があり、
それをクリアにできるか否かで、対戦の時期も変わってくることでしょうが。


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そういうことで動画貼っておきます。

※ひとつにまとまったのがありますので、そちらに貼り替えておきます。


コメント (3)
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「スーパー・ヘビー級」の限界 ジョシュア、パーカーに大差判定勝ち

2018-04-01 11:29:16 | 海外ボクシング



ということで早朝から生中継を見ておりました。

アンソニー・ジョシュアがジョセフ・パーカーに大差の判定勝ちで、
WBC以外の三団体統一となったわけですが、試合内容は平板なままでした。

序盤からジョシュアが圧力をかけ、ジャブを突いてパーカーを下がらせる。
パーカーはジャブの速さでは負けていないかと思ったが、あまり手が出せず、後退気味。

基本、この構図で試合は進む。
ジョシュアは自分のリーチを生かし、遠い距離を構築し、安全圏から打つ。
ポイントは毎回取る。しかしさらに踏み込んで攻める意思は見えない。

パーカーは、スピードやパワーで劣るのは明らか。
ジョシュアが元気な序盤から、まともにやり合えばひとたまりもないだろうし、
序盤はポイント取られても仕方なし。

と、そういう覚悟、前提の元、中盤、あるいはそれ以降、ジョシュアが疲れて落ちてきたら、
そこで勝負をするのだろう、と思って見ていましたが、
ジョシュアもそれは承知か、無駄に打たず、省エネボクシングに徹する感じ。
このジョシュアの「自重」を、パーカーが崩せぬまま、試合は終わりました。

パーカーはジョシュアの右を外して、インサイドに入ってボディから連打、
或いは右アッパーのカウンターなども見せるが、いずれも「時折」止まり、でした。

ジョシュアのジャブや右を外して入り、その距離でもさらに外してカウンターを取り、
また出て、外して入り...それこそアンドレ・ウォードのようにやれれば良いですが、
そのレベルの機動力や勘と、パーカー並みの体格や体力を併せ持つ選手など、
残念ながらどこにもいないでしょう。


アンソニー・ジョシュアは、一定以上の力を持つ対立王者相手に、
ほぼ破綻なく、質を維持したままフルラウンドを闘い終えました。
初の判定勝利でしたが、12ラウンズを崩れず終えられると証明したことは、
新たな自信にもなったでしょう。

その闘いぶりは、クルーザー級時代のイベンダー・ホリフィールドを
二回り大きくしたかのようにも見えました。
中量級のスピードとテクニック、そして「超」重量級のパワーと体格を兼ね備えた、
スーパー・ヘビー級の肉体が、リズミカルに動いてジャブを繰り出し、
軽やかにステップを刻む姿は、それだけで大いに「見もの」です。


しかし、その姿が長丁場でも崩れなかったのは、ひとえに無理をせず、
さらに一歩踏み込み、相手を攻め、打ち崩す意志を抑えて闘ったが故、でもありました。
相手より一回り大きく、リーチで勝り、速くて強い方が、
相手を打倒する意志を示さず「膠着」の構築をもって、良しとする。

それがヘビー級の頂点を争奪する試合(のひとつ)において、是認されるべきか否か。
意見はさまざまにありましょう。私ははっきり、否、の側に立ちますが。
いかにも「当世風」やなぁ、と思います。


同時に、致し方ない部分もあるのかな、と思ってもいます。
タイソン・フューリーが「ギリシャ彫刻のような」と、揶揄する意味で言った、
アンソニー・ジョシュアの、この世の物とは思えない身体は、
その膨大な筋肉から来るスピードとパワーと引き替えに「燃費」の悪さを抱えてもいる。

ウラジミール・クリチコ戦の激闘のみならず、カルロス・タカム戦での勝利においてさえ、
中盤以降、ペースが落ち、攻防ともに緩み、相手の反撃を受ける余地が生まれてしまいました。
相手の力量次第では、単なる危機に留まらず、致命傷にもなりうるところです。

アンソニー・ジョシュアの「自重」は、彼自身にも、その自覚があるらしい、と思えるものでした。
結局それは、ボクシングにおけるスーパー・ヘビー級、その肉体が持つ、優位性と引き替えの限界、なのかもしれません。


そして、今回は「自重」により、それを露呈しなかったジョシュアですが、
次の対戦相手と目される、あの選手に対して、同じような試合を展開することが可能なのか。
それで済み、つつがなく勝てるかも知れませんが、それでは済まんのではないか、とも思います。

結局、私は、ヘビー級の試合(に、限った話でもないですが)を見るとき、
「それでは済まん」試合を見たい、と思っているのです。
その一点において、今日の試合は、仕方ない部分があると思いつつ、やはり不満足なものでした。

でも、次の相手なら、きっと...という期待は、当然ながら、大きなものがあります。
安定感ならジョシュアの方にあるのでしょうが、何しろ相手はあのとおり、
理屈も何もあったもんやないですから...。

何しろ、すんなり試合が組まれることを、まずは願います。楽しみですね。



ところで今日、観戦しに来る、って話でしたが、中継見てる限り、映ってなかったですよね。
試合後、リングに上がってきて、軽く小芝居でもするんかな、と思ってたんですが、
見た限りではそれもなかったような。ちょっと意外でした。



コメント (5)
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