山中慎介のV8戦は、意外にもボディーメーカーコロシアム、略して府立で開催。
意外な展開でした。相手はアルゼンチンのディエゴ・サンティリャン。
23戦全勝15KO、ランクは7位とのことです。
しかし
こちらで拝見した動画の限りでは...まあ、健闘に期待しましょう。
前回、スリヤン・ソールンビサイを退けて、指名試合(だったんですよね?)を終えたのだから、
その次の選択試合が下位相手じゃなく、何か特別な意味を持つ試合であってくれんかな、という
ファンの密かな期待は、あっさりと意味を失いました。
これが防衛回数の少ない王者ならともかく、もう7回防衛しているのに、
大昔ならともかく、今のボクシング界の情勢下で、これはなぁ、と思わずにはいられませんね。
まあ、興行事情や、陣営の山中に対する評価その他を総合的に判断した結果組まれるのが
こういう試合なのでしょうが、何とも淋しい話です。
山中慎介は、相手が強かろうが弱かろうが関係なく、本物の実力者であることは
誰もが認めるところの筈なんですが、上記のような判断の枠を越えた何事かを期待するのはまだ早い、のでしょうか。
それこそ長谷川がモンティエル戦に辿り着いたときのように、10度防衛が目安である、とか?
もしそうだとしたら、あんまりな話ですが。
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で、その興行で、下手するとメインと同等か、それ以上に注目されそうなのが、
辰吉寿以輝のデビュー戦です。
色々思うところはありますが、なるほど...そう来るか、というのが最初の感想です。
小さい興行で、ひっそりと4回戦デビュー、という形にはなりようがないのが現実なのかもしれず、
ならばいっそのこと、という感じなのでしょうね。
以前にも少し書きましたが、あの父を持つ若者が、父と同じ道を歩もうとする決意そのものが、
感服に値するものだと思っています。彼自身の今後がどうあったとて、です。
しかし彼の背負う宿命は、その決意をもってしてもなお、彼にとって重いものなのかもしれません。
かなう限り、彼が手にし得るものを、ひとつでも多く手にしてもらいたい、ということ以外に
彼に期待することは今のところありませんが、現実はそんな悠長な話でもなさそうですね。
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こちらは米国のリングで再び浮上を期しての一戦が決まった、
カメはカメでも大違い、亀海喜寛です。
アルフォンソ・ゴメスは世界挑戦こそ厳しい結果でしたが、世界上位に次ぐグループの一員として、
堂々と活躍しているメインイベンター級の選手です。
打ち合いに巻き込まれたら危ないでしょうが、攻めながら外して、また攻めてという波状攻撃に期待ですね。
これに勝てば、また着実に一歩前進でしょう。WOWOWでは翌日放送でしょうか。オンデマンドはないのかな。
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岩佐亮佑のIBFイリミネーションバウトが相手変更で中止となりましたが、
IBF王者ランディ・カバジェロも負傷で防衛戦延期とのこと。連鎖反応ですかね。
なんか、一時しきりにこのカバジェロと山中が統一戦やるのかも、みたいにほのめかされてましたが、
岩佐がイリミネーションに勝てた場合、彼が挑んだあとになるのか、という情勢に変わり、
まあそれはしょうがないかと思っていたら、揃って不測の事態です。
もういっそのこと、岩佐が山中に直接挑んだらいいのに、と思いますね。
その方が、見るからにスローモーションな(あ、書いてもうた)アルゼンチン人よりもよほど、
見るに値する試合だと思いますが...。
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昨日はあの
TOKYO SHOCKER から25年とのことです。
もう、四半世紀前のことなのですね...とりとめもなく、思い出を。
米国のプライムタイムに合わせて挙行され、こちらは日曜昼間、TV観戦でした。
あちらでは売れないカードを押しつけられたような格好の興行で、前座に高橋ナオトや
デビュー2戦目の辰吉丈一郎などを持って来てもなお、東京ドームには空席が目立ちました。
私も勝敗自体をまともに予想してすらおらず、何回で倒すんかな、という感じで見てましたが、
実にほどよく身体が絞れていたジェームス・ダグラスの快調ぶりに段々「あれ?」という感じになり、
中盤以降はうわー、そんなあほな、ほんまかこれはー、と。最後はひたすら、大興奮でした。
最後は実況も興奮してて、わけわからんことになっていましたが、昨年末の香川さんみたいな
「やらかし」とは違って、今思い出しても腹は立ちません。そらそうなるわ、無理もない、という。
史上最高、世界最強、いや宇宙一強い、と思ってたマイク・タイソンが、日本で負けた。
冗談抜きでベルリンの壁崩壊に等しい「事件」でした。
確かにこの一年前、フランク・ブルーノ(初戦)の不出来は、早熟の怪物タイソンの姿に
影を見た最初でしたが、そこからの復調の過程を見るための試合が、このダグラス戦だとも思っていました。
次の挑戦が内定していたイベンダー・ホリフィールドの、困惑した表情も印象的でした。
あれから四半世紀が経ち、当時はタイソンの試合では無視されていたWBOも権益を拡大し、
タイソンはその後、嵐のただ中を突っ切るようなキャリアを経てリングを去りました。
高橋ナオトは伝説を残し、引退後は様々な曲折を経て今に至ると聞きます。
辰吉丈一郎もまた、忘れ得ぬ壮大な夢と熱狂を残しましたが、こちらは未だに
「引退」という言葉を峻拒し続けています。
色々な夢が散り、色々変わったこともあります。
しかしあの試合において、不利な予想を受けて、ほとんど期待もされない中、
あの試合に向けて牙を研ぎ、強敵に噛み付き、全てを引き裂いたジェームス・ダグラスの姿は、
今思い出しても、変わることなく、ボクシングの真実そのものでした。
日々の鍛錬を怠らず、強敵相手でも怯まず、己の全てをぶつけて闘えば、道が拓けることだってある。
あの試合のダグラスは、見ていて一点の曇りもなく、濁りもない、澄み切った心を
闘いの中で構えて見せ、それは最初から最後まで揺るぎなく続きました。
その後、リング外での喧噪に巻き込まれた彼は、その心の構えを崩し、全てを失います。
しかし、あの一試合のみを見れば、その闘いぶりは見事の一語で、千金の価値を持つものでした。
そして、この貴重な試合の熱狂が、広く一般にも見知られ、それが大橋秀行の王座奪取と共に
日本ボクシングの復活、躍進に繋がっていきました。
当時若手だった辰吉や、鬼塚勝也の時代の熱狂を後押ししたものは、この一戦に間違いなく秘められていました。
思えば、ボクシングファンとして、あの頃はとても幸福な日々だったのかもしれません。
忘れ得ぬ、というより、忘れようもない試合でした。