遅くなりましたが日曜の両国、他の試合など簡単に感想を。
拳四朗は初防衛から、元王者ペドロ・ゲバラを迎える。
木村悠戦の、彼の側から見ればはっきりと「取りこぼし」だった敗戦はあるものの、
日本上位相手に、その質の高さを見せている強敵で、初防衛からこの相手というのは、
昨今多い、最初は緩いのから、というパターンとは違う、厳しいものでした。
序盤4回は、二階席から見ていると、採点はちょっと難しい。いきなり逃げですが。
初回ゲバラの長いパンチが伸びる。これはゲバラかと思ったが、2回以降は微妙か。
少し距離が詰まれば拳四朗も左がよく出たように見えたが、採点はゲバラのリード。
ちょっと辛めの?採点だったこともあり、5回から拳四朗が出る。
ボディ攻撃から打ち合いに。6回は右のヒットが増える。
7回微妙。8回拳四朗連打するも、ゲバラの好打あり、拳四朗少し効いた?
ここでの途中採点は三者三様。
序盤の感じからいくと、思ったより拳四朗が巻き返せているという印象。
9回以降、拳四朗がボディから上に攻めていく。
10回も攻勢でややまさるが、11回はゲバラも鋭い連打返す。
最終回は拳四朗ボディで攻めるが疲れもあり、クリンチ増える。ゲバラのヒットが上回ったか。
迷う回だらけ、拳四朗僅差か、ドローか、という風に見えましたが、2-0で拳四朗でした。
またしても、鮮やかに勝つ、とはいかなかった拳四朗でしたが、
誰が行っても難しいガニガン・ロペスと、正統派の実力者ゲバラとの連戦で、
この両者相手に伍して闘い、続けて競り勝ったことは、彼の地力の証明だと思います。
今回も彼の試合がTVで生中継されることはないだろう、ならば...
というのが、今回の興行を観戦するために上京する、ひとつの理由でもありました。
拳四朗には、誰の目にも明らかな形で、その技量のレベルを証明してほしかったですが、
他の試合と比べれば、地味な攻防であっても、左の応酬で渡り合い、ボディから攻め口を拓き、
ロングのパンチに苦しみつつも、競り勝つ分だけの攻勢を取れたことなど、
私としてはまずまず、見たいと思っていたものを、最低限見られたかな、と思っています。
王座獲得試合、初防衛を成してなお、この次がロペスとの再戦とのことで、
拳四朗は、いわば「正念場」の真っ只中にいます。
その現状は、例えば、比嘉大吾と比べて、華々しいチャンピオンロードではありません。
しかし、彼の確かな地力、見た目の印象以上に「設計強度」の高いボクシング、
その質と内容は、一定以上の評価に値する、と改めて思った、そんな試合でもありました。
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比嘉大吾は、フランスのトマ・マソンに7回TKO勝ち。
こちらも初防衛なりました。
どうにもボクサーぽく見えない風貌のマソンですが、バランスの良いボクサー型。
しかし、意外に足が動かず、ガードを固める防御が多い。
比嘉は早々からボディ、外からフック、内にアッパーと、上下内外を打ち分けるコンビ。
何も、最初から全部手の内見せることもないのに、と思ったが、
2回からは落ち着いて、左から崩す。セコンドに何か言われたか。
3回、マソンはガード絞り、比嘉の打ち終わりにカウンター狙う。
比嘉は左ダブル、右アッパートリプル、右サイドに回って連打と、目先を変える。
4回は真ん中に右アッパーをまた連発。パチンコチューリップ攻撃か(古い)。
比嘉の攻勢が続き、6回はボディが効いて、マソン決壊寸前。
7回、左ジャブで跪いたマソン、チェックのあとTKOとなりました。
比嘉は終始攻勢を取り、順当に勝った、という印象でした。
ただ、見た目ほどパンチが乗っていないな、ちょっと軽いというか、
上滑り気味かな、という風にも感じました。
初防衛の重圧、調整の難しさなど、まだ、世界王者として何もかもが行き届き、
まんべんなく備わっている、という段階にはない「若手」な部分も残っている。
それが比嘉大吾の、偽りない現状なのでしょう。
そのクラスにおいて、世界上位に長い相手と連戦している拳四朗と比べると、
今回の比嘉は「正念場」の一歩手前というべき試合を闘っている、という印象でした。
とはいえ、噂される減量苦や、調整の厳しさもあった上で、筋の良い挑戦者を圧倒した攻撃力は、
他の選手にはない、魅力的なものです。
まずは順当に勝ち、ひとつ着実にキャリアを積めたことを評価するべきでしょう。
今後に関しては、井岡一翔の状況が不明瞭なこともあり、統一戦はまずないでしょう。
次が沖縄で、その次に指名試合が回ってくるとしたら、ちょうど16連続KOの記録がかかることになります。
もちろん相手次第ですが、そこがひとつの正念場になりそうですね。楽しみです。
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この日は前座に、フランス人とウクライナ人のスーパーミドル級、しかも4回戦という
普段滅多に見られないような試合がありました。
両者、レベルがどうと言う以前に、間断なく動き、手を出し、無駄な間や休みがほぼ無く、
能動的に試合を展開していこう、という姿勢が印象的でした。
具志堅ジムの新人、大湾硫斗は、5勝5KO1敗のフィリピン人をダウンさせて判定勝ち。
相手も健闘し、なかなかの熱戦でした。
大会場の前座ということもあり、大盛り上がりとはいかない試合でしたが、
もしこれが後楽園ホールで、日本人同士で、東日本新人王準決勝くらいの試合だったとしたら、
好ファイトとして、ファンの記憶に残っただろう、と思います。
大手ジムの新人が、世に言う「独自路線」をゆく場合、その内容次第で「如何なものか」と
思ったりすることもよくありますが、今回のような試合なら、充分納得がいきます。
大湾の今後に、ちょっと注目したいですね。