さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

半年ぶりの上京観戦は空振りでした

2012-10-28 22:06:32 | 粟生隆寛

だいたい、年に2回くらい、上京して観戦するのが、ここ数年のパターンでして、
実は土曜日、のこのこと東京国際フォーラムにお邪魔しておりました。

ご存じの通り、内容、結果ともに、惨憺たるメインイベントに出くわしました。
内容は知らず、結果は当然勝ちであろうと思っていまして、実のところは
セミファイナルの岩佐亮佑がお目当ての上京観戦だったのですが、こちらもいまひとつで、
三浦vs三垣の衝撃ノックアウトがなかったら、文字通り目も当てられない興行でした。



粟生については、正直、何かを語ろうという気が湧いてこない試合でした。

ガマリエル・ディアスは、日本で藤原直人や上原誠を破った時と、何も変わっていませんでした。
左足の膝が固く、腰高で、ウェイトが乗らない代わりにテンポ良く出るストレートパンチで
相手の打ち終わりや連打のつなぎ目を狙って打っていき、反撃を外してはまた打つ。
頭突きの話を抜きにして言えば、勝ち目のある展開はたったひとつだけの選手です。

そして、粟生はその展開に、いとも簡単に巻き込まれて劣勢となり、そのまま負けました。


試合後、識者の方や友人と話し合ったのですが、かつての具志堅用高や渡辺二郎と違い、
最近のボクサーは「上手くいかなかったら負ける」選手が多いような気がします。
思うに任せぬ展開、判定では勝ち目がない、という状況に置かれたとき、
反撃せねばならない、展開を覆さねばならぬ、という意志を、技術や戦術面において、
いかに具体化するか、という面で、能力のないボクサーが増えているのではないか、と。

まして今、WBCのタイトル戦では、試合の最中に公式の採点を教えてくれるわけです。
行くべきかどうか迷う必要もなければ、試合中に本部席行って盗み見する必要もないのです。

なのに、今回の粟生は、本人は本人なりに必死に闘っているのでしょうけど、
傍目には何の打開策もなく、漫然と同じことを繰り返しているだけにしか見えませんでした。
この、打開、挽回の意志が具現化されないことこそ、粟生及び陣営の問題点でしょう。


試合後に報じられたコンディション云々については、これも傍目にはわからない話ですので
どうこう言えません。しかし、本田会長のコメントが全て事実と仮定するなら、
世界王者としてはいささか、不安が過ぎる話ではありますね。


私は粟生隆寛というボクサーの才能は素晴らしいものだと思ってきましたし、
その片鱗を何度も試合で見せてもらってきましたが、今回の試合はあらゆる意味で
「それ以前の問題」としか言えないものでした。残念の一語です。


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「素敵な続編」に感謝

2012-10-14 17:33:45 | 西岡利晃

結果も内容も、非常に残念な試合だったと感じました。

西岡利晃の偉大さが、この一試合で変わることはないと思う反面、
この国際的に大きな注目を集めた一戦が、こういう試合になったことは、
何よりもまず、残念に思えます。まずはその気持ちから書きます。


立ち上がりからの、右ガードをこれまで以上に高く上げる代わりに、
右のリードをほぼ放棄したかのような闘い方は、あまりにも防御に偏りすぎと感じました。

試合後のコメントで、前半しのいで後半勝負、という狙いがあったとありましたが、
率直に言って、今時の世界戦でそんなファイトプランは成り立ちません。

12回戦制が導入されて約30年、短いラウンドの中にどれだけ濃密な攻防を詰め込むか、
そのテーマの元に、攻撃技術、コンビネーションの多様化、パワーショットの強化が進み、
昔日の「探り針」のために序盤の数ラウンドを放棄するボクサーなど、ほぼ皆無です。

そして序盤から相手にほぼ無償でペースを与え、リズムに乗せてしまったら、
12ラウンドなんてあっという間です。右向いて左向いたら終わり、の世界でしょう。

私は、序盤から積極的に右リードと左強打で攻めて出て、
ドネアに脅威を与えれば、その脅威を軸にドネアの速さを削り落とし、減じさせて、
試合を作れるだけの力が、現状の西岡には充分あると思っていました。

しかし現実には、西岡はそれとはほぼ正反対のアプローチをしました。
そのアプローチがいかにして無力化され、結果として破局を招いたか、
その過程は皆さんがご覧になった通りです。


結果論でなく、あくまで一般的に、ですが、あれだけ防御に偏り、重心を後ろに置いて構える型は、
自分が優位に立つ時なら、あれで良いのかもしれません。
しかし、自分より若く、速く、強いとされる相手に対して採る闘い方では無かったと思います。


あれこれ考えると、上記のような残念さが残る試合でした。
それは率直に、ファンの気持ちとして書かせていただきます。



しかし、仮に私が戦前に想像したような展開になっていたとしても、
それでも結果が変わることはなかっただろう、とも思っています。
その意味では、納得感のある試合でもありました。

ノニト・ドネアが、122ポンド級三試合目にして、ついにベストフィットした状態であったこと。
西岡の堅いガードを見て、左フックの強打に固執せず、サイドに出て多彩な攻撃を仕掛けてきたこと。
そして何より、西岡の頼みの綱である左を、徹底して外しきり、リターンやカウンターで抑え込んだこと。

これらの面で、ドネアは最近の西岡の試合をつぶさに見て、徹底的に研究してきたことが伺えました。
パウンド・フォー・パウンドで上位につけ、軽量級では最強と目されるボクサーに、
これほどまでにしっかりと見られ、水漏れ無しの完璧な仕上げで迎撃された日本のボクサーが、
果たして過去にどの程度存在したでしょうか。

例えばエデル・ジョフレを破ったファイティング原田は、これほどまでにジョフレに警戒されていたでしょうか。
もしこのレベルの対応を試合前からされていたら、原田はジョフレを破り得たでしょうか。
答えはそれぞれにありましょうが、私は否だと思います。


西岡利晃が挑んだ最高峰の闘いは、最強のノニト・ドネアとの試合前からの関係性において、
日本のボクサーが過去に挑んだどの試合よりも困難なものだったと、終わってみて思います。



そして、上記の見解と矛盾するかもしれませんが、その困難な闘いに赴いた西岡が、
すでに昔日の力を失っていたのかな、とも感じました。

もちろん、ドネアの圧倒的な速さ、多彩さ、肉体面での優位性(これほど西岡より大きく見えるとは
想像していませんでした)などが、西岡を圧倒したのは事実だと思います。
しかし西岡が防御偏重の構えを取らざるを得なかったのは、西岡自身がすでにこれまでの試合で見せた、
攻撃を仕掛けながら、相手の攻撃をガードだけでなく、柔軟で立体的な動きで外してきたボクシングを
実現できなくなっていたからだ、とも言えるのではないかと。



いずれにせよ、言えることは、西岡利晃の「素敵な続編」に、ついに幕が下りる日が来たということです。
私なぞがつべこべ言うてみたところで、その事実は変わりません。
結果として、西岡利晃はノニト・ドネアに、力で、技で、負かされたのです。
残念ですが、仕方のないことです。何せ、今まで自分だって大勢を負かして来て、今日は負かされた。
言ってみればだたそれだけのことに過ぎないのですから。


数年前、無冠時代の西岡の試合を、後楽園ホールまで見に行ったことがありました。
時は長谷川穂積台頭の時期で、世界戦の目処など全然立たず、ファンからの注目もされなくなった西岡が、
目の前の現実に懸命に抗い、闘っている姿に、悲しみさえ覚えたものです。

しかし彼は孤独な闘いから這い上がり、最後には、全世界注目のビッグマッチのリングに立ちました。
残念な結果に終わりましたが、その道程において、多くのボクシングファンが、
彼の戴冠に涙し、世界への飛躍に驚愕し、壮大な夢を抱き、希望を与えられてきました。
その過程はアラサーファンさんが「素敵な続編」と名付けられた通り、本当に素敵なものでした。



加古川の天才少年は、本人すら改めて振り返れば驚くであろうほど、長きに渡り闘い続け、
様々な希望や絶望、歓喜や悲嘆と共に存在し続けてきました。
そして、その日々も、今日、終わります。


西岡利晃というボクサーが与えてくれた壮大な夢に、感謝と拍手を送りたいと思います。
長きに渡り、数々の試合を楽しませてもらいました。本当にありがとう。お疲れ様でした。



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衝撃の予感

2012-10-11 05:30:51 | 西岡利晃

いよいよ迫ってきましたね、世紀の一戦...というか、
少なくとも今月、世界中で行われる数多のタイトルマッチの中でも、
はっきりとこの試合がナンバーワンのビッグマッチです。
そういう試合に、あの西岡利晃が出るのですから、これはもう大変なことです。

「せやねん」前日動画紹介しておきます。


まあ、試合が迫ってきたので予想というか、思うところをつらつらと書きます。

西岡ですが、まず昨年秋からほぼ一年のブランクがあり、その面では不安がありますね。
年齢、歴戦の疲弊、拳の状態などもまた、同じくです。

ただ、ムンロー戦やラファエル戦で見せた安定感、左強打という武器を持ちつつ、
布石の部分が充実し、展開がどうなっても適応して闘えるボクシングは、
これまでノニト・ドネアが闘ってきた122ポンド級の相手には無かったものです。

試合展開としては、西岡の左がどの程度、ドネアに脅威を与えられるかで、
だいたいの流れが決まってくるような気がします。
ガードの上からでも、西岡の、相手の急所に鋭く角度やタイミングの「合わせ」をする
左ストレートの威力を実感させることができれば、その左を軸に、展開が作れます。


で、問題なのはドネアが、その左に対して、どう応対するのかですね。

ドネアが、西岡の強打を警戒して足を使うことは、普通にあるでしょうが、
さりとてドネアがセーフティにポイントアウトを狙うのか、というと
どうもこの人、そういう風な考え方はしなさそうに思えて仕方ないんですね。

この試合、ここからが何より怖い話になってくるんですが(^^;)
ドネアというボクサーは、ベタに左回りなんかして、こつこつ当ててポイント取って、
あわよくば終盤に攻めて詰めて、みたいな、普通の発想を持っているのでしょうか。
私には、この辺がどうにも疑問に思えてしまうのです。

そもそも、フライ級であのビック・ダルチニアンに勝ったときの、あの倒し方からして、
普通の発想から遙かに遠いもののように思います。
軽量級最高の強打者であるダルチニアンに対し、左のガードを下げて構え、
相手が強打を振るタイミングを見極めて、左フックをカウンターして倒した。
ほんのわずかでもタイミングが狂い、立ち位置を間違えれば、
一打でキャンパスに沈んだのはドネアの方だったでしょう。

まあ、何もそこまで遡らずとも、122ポンドで闘った二試合を見ると、
フライ級から数えて4階級目の試合にも関わらず、これまでと同じように、
攻めて攻めて、相手の手を出させて、そこにカウンター決めて、さらに攻める、という型です。


この試合は、普通の世界トップクラスの発想を超えた、
セーフティな考え方がある程度排除された試合になるのではないかという予感がします。
究極の力、技、速さを、真っ向から競い合おうとする、シンプルでスリリングな試合。
ノニト・ドネアの「フラッシュレフト」と、西岡利晃の「モンスターレフト」、
いったいどちらが先に決まるのか。結局はそれだけを見る試合になるのではないかと。
ことに、早い勝負になった場合は。


もちろん、この強打の応酬が、試合を決しなかった場合、その後の展開は、
ドネアの若さと、西岡の経験、どちらが優るのか、ということになりましょう。
私は、ドネアの若さ、速さが優るだろうと思う反面、様々な苦境を乗り越えて
このビッグマッチまで闘い続けて来た西岡の経験が生きる場面も、必ずあると見ます。
あと、122ポンドクラスにおいては、かつて全てを思いのままに支配してきた
ドネアの絶対的な強さが発揮されるには至っていない、という気もします。



つらつらと書いてみて、自分でも全然予想になっていないことに呆れていますが(^^;)
とにかくこの試合は、単に楽しみというより、むしろ見るのが怖いという気さえしますね。
この試合はそれほどに、勝ち負けを越えた衝撃を、我々に与える試合になりそうです。


実は先の週末、風邪ひいて寝込んでたんですが、治りかけにこの試合のプレビュー番組を見て、
あれこれと思いを巡らせていたら、また大汗をかいてしまい、シャツを二枚も着替えました。
エエ歳こいて何やっとるんですかねぇ...己のバカさ加減に、ほとほと嫌気がさします(--;)


...まあ、そんなどうでもいい話はおいといてですね、
いよいよ週末、決戦です。
西岡利晃の長きに渡る闘いの到達点となる一戦。しかと見ましょう。








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今頃デビュー戦雑感

2012-10-09 16:18:06 | 井上尚弥

井上尚弥のデビュー戦、おそまきながら映像を見ました。


デビュー戦のボクサーとしては非凡としか表現のしようがありません。
どう見ても普通に、メインイベンターとして風格のある闘いぶりでした。

試合以前の話ですが、比国王者相手のデビュー戦、TV中継あり、取材殺到、
という状況に置かれて、心の揺らぎや、器の不足をまるで感じさせないのは、まさしく脅威です。
この点において、若き日の井岡弘樹以外に、これに類するボクサーを見たことはありません。

また、かつてデビュー戦から注目を集めたボクサー数あれど、
これほど全体的に、落ち着き、まとまり、完成度の高さを感じさせたボクサーを知りません。

基本的には相手と正対して圧力をかけ、互いに当たる距離ギリギリまで接近する形。
密度の濃い正攻法のボクシングで、それ故に単発のヒットも受けましたが、
2回でしたか、ちょっとリズムを変え、身体の軸を半歩ずらしてコンビを飛ばしたあたり、
上記したとおり、デビュー戦のボクサーとは思えない落ち着き。

再三見せた、右ストレートでのボディ攻撃も、踏み込みの速さ、重心の下り加減が良い。
4回のフィニッシュとなった左ボディも、身体の軸を身体半分、右にずらした上のもので、
思い切り力を込めたパンチを相手のガードの真ん中に打ち込めていました。

とにかく上記のとおり、この若さで、デビュー戦から手応えを欲しがる風も見せず、
オフ・バランスになることもほとんどないままに闘って、当たり前のように倒した。
本当に脅威というか、どないなっとるんですかこの子わ、と言いたくなるような選手でした。

もちろんこの試合だけで、短いキャリアで世界挑戦していいとは思いませんし、
長引いた試合や、もっと距離の違う選手との試合を見てみたいところです。
ただ、希なる逸材であることは事実ですね。今後が楽しみです。



しかし、井岡一翔を見ていても思うことなのですが、これからこういう選手って
どんどん増えてくるのかもしれないですね。

かつて、日本のボクシングを見ることは忍耐である、突然変異の天才が現れるのをひたすら待ち、
その歳月にひたすら耐えることなのだ、と言った人がいました。
私もある程度それに同感でした。

デビュー戦から凄かった選手、というと、私にとっては誰よりもまず辰吉丈一郎です。
彼なんかは本当に、デビュー戦の時点で世界チャンピオンの技量を持っており、
あとは体力だけ強化して世界を獲ったようなものだ、という感じさえしています
(実際、デビュー戦と世界戦でほとんど同じ型のボクシングをしていますから)。

しかし彼とて、アマチュア19戦、プロ8戦で世界というキャリア構築が
いかに無理、無茶であったかをその後のキャリアで証明してしまった一例です。
高二でインターハイ優勝、大学一年で全日本準優勝の大橋秀行もまた、
プロ7戦目で世界に挑み、完敗を喫しています。
まして彼らに及ばぬ才能でありながら、同様の苦杯を味わった例も数多くあります。

少ないキャリアで世界戦という例に、私が拒否反応を示してきたのは、
つまりは日本のジムからプロになる選手って、大抵アマチュア歴も乏しく、
その上ある意味ガラパゴス的な指導しか受けていない選手が、ちょっと勘がいいとか
パンチがあるからという程度で、大それたことを言うもんじゃないでしょう、という
気持ちがどこかにあったように思います。

しかし井岡一翔にせよ、この井上尚弥にせよ、少年時代からボクシングを教わり、
アマチュアでも100戦前後のキャリアを持ち、全日本や国際大会の経験もある、
すでにして一流のボクサーであるわけです。

井上尚弥が、例えば辰吉を、大橋を凌駕する「天才」の持ち主だとは、
現時点では思っていません。
そして、辰吉の持つ天賦の才、リスキーなほど相手と正対しての攻防にこだわった大橋。
彼らが見せた、蠱惑的な魅力を秘めた闘いぶりは、井上尚弥にとり、
ある意味では、無用の長物なのでしょう。


少年時代からの指導、アマチュアのリングで若くして重ねた多くの試合経験、
そうしたベースに基づいたプロのリングでの落ち着き払った、無理のない立ち振る舞い。

今回、井上尚弥のデビュー戦を見て、その確かさに頼もしさを感じた反面、
ちょっと物足りなさ、寂しさを感じてしまった私の感性は、
一言「古い」と言われるべきもの、ですね。わかってます。自覚してます(笑)。


今後、U-15大会などがますます発展し、少年時代からボクシングを教わった
数多くのボクサー達の中から、第二、第三の井上が現れ、日本のボクシングシーンを席巻し、
新たなスタンダードとなる時代が来るのかも知れませんね。
そのことについては、素直に期待しております。楽しみです。



えーと、他にもあれこれ書こうかと思っていたんですが、長くなったんでまた後日、ということで...。



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