だいたい、年に2回くらい、上京して観戦するのが、ここ数年のパターンでして、
実は土曜日、のこのこと東京国際フォーラムにお邪魔しておりました。
ご存じの通り、内容、結果ともに、惨憺たるメインイベントに出くわしました。
内容は知らず、結果は当然勝ちであろうと思っていまして、実のところは
セミファイナルの岩佐亮佑がお目当ての上京観戦だったのですが、こちらもいまひとつで、
三浦vs三垣の衝撃ノックアウトがなかったら、文字通り目も当てられない興行でした。
粟生については、正直、何かを語ろうという気が湧いてこない試合でした。
ガマリエル・ディアスは、日本で藤原直人や上原誠を破った時と、何も変わっていませんでした。
左足の膝が固く、腰高で、ウェイトが乗らない代わりにテンポ良く出るストレートパンチで
相手の打ち終わりや連打のつなぎ目を狙って打っていき、反撃を外してはまた打つ。
頭突きの話を抜きにして言えば、勝ち目のある展開はたったひとつだけの選手です。
そして、粟生はその展開に、いとも簡単に巻き込まれて劣勢となり、そのまま負けました。
試合後、識者の方や友人と話し合ったのですが、かつての具志堅用高や渡辺二郎と違い、
最近のボクサーは「上手くいかなかったら負ける」選手が多いような気がします。
思うに任せぬ展開、判定では勝ち目がない、という状況に置かれたとき、
反撃せねばならない、展開を覆さねばならぬ、という意志を、技術や戦術面において、
いかに具体化するか、という面で、能力のないボクサーが増えているのではないか、と。
まして今、WBCのタイトル戦では、試合の最中に公式の採点を教えてくれるわけです。
行くべきかどうか迷う必要もなければ、試合中に本部席行って盗み見する必要もないのです。
なのに、今回の粟生は、本人は本人なりに必死に闘っているのでしょうけど、
傍目には何の打開策もなく、漫然と同じことを繰り返しているだけにしか見えませんでした。
この、打開、挽回の意志が具現化されないことこそ、粟生及び陣営の問題点でしょう。
試合後に報じられたコンディション云々については、これも傍目にはわからない話ですので
どうこう言えません。しかし、本田会長のコメントが全て事実と仮定するなら、
世界王者としてはいささか、不安が過ぎる話ではありますね。
私は粟生隆寛というボクサーの才能は素晴らしいものだと思ってきましたし、
その片鱗を何度も試合で見せてもらってきましたが、今回の試合はあらゆる意味で
「それ以前の問題」としか言えないものでした。残念の一語です。