日曜のライブ配信、DAZNのセミ、尾川堅一vsアジンガ・フジレは、尾川が都合ダウン3度奪取で判定勝ちでした。
右強打の威力を存分に見せるだけでなく、いつもより、左ジャブの数も多めに見える。
スピードも馬力も最初から最後まで落ちない体力も驚異的。攻撃の際の身体の切れも、時に目を疑うほど鋭い。
速いサウスポー相手に、その距離感や、合わせのセンスを徐々に「潰し」ていく。場所がNYであろうとどこであろうと関係ない。
尾川堅一は、いつもどおりの尾川堅一のまま、闘い抜いて勝ちました。
しかし、早々からそのあまりの荒々しさ...「頭当たれど、是非もなし」とでも思っているかのように、頭の位置に無頓着なまま、文字通りに「突撃」する様もまた、いつもの尾川のままでした。
フジレが時折見せる、信じられないと言わんばかりの表情(まあ、常に驚いているような顔ではありますが)が象徴するように、何と荒っぽい...というか、違う常識の持ち主だなあ、というのが、この試合で初めて尾川を見た人の印象だっただろう、と思います。
私はここまで、この闘いぶりで「通ってきた」様を、割とつぶさに見てきた方だから、驚きはしませんが...。
フジレは初回、2回(これはフジレが左手で「ブロック」しましたが)、4回と続いたバッティングを、10回には「決定打」という感じで受け、左右の瞼に傷を負い、5回のダウンのダメージに疲弊を抱えた挙げ句、最終回には右フックで「チェック」したつもりが、尾川の右ショートを先に当てられ(パンチの距離が違う以上、必然の出来事です)、さらに二度ダウンを追加されて敗れました。
この辺はもう、冷静に適切な選択を出来る状態ではなくなっていたのでしょう。初回に出したそれと同じように打てるはずもありませんでしたし。
試合後の表情は諦観とも取れました。それもこれも「やられた」自分が悪い、ということなんでしょうし、また実際、そういうものかもしれません。が。
尾川堅一、IBF王座獲得は、日本のファンにとっては喜ばしく受け止められる向きが大半なのでしょう。
以前の無効試合の件も、立場によっては悲運とし、今回の勝利をもって、それが雌伏の時を経た感動のドラマへと転じたりもするのでしょう。
しかし、私はそれを抜きにして、やはりこの試合だけを見ても、喜ばしい気持ちにはなれない側の人間です。
この試合内容を、例えばアメリカ人やメキシコ人のボクサーがやっていたとしたら、素直に称えることが出来るかどうか。答えははっきりしていると思います。
別にコスモポリタンでもなければ、辛口批評を気取るつもりもありません。
ただ、ファンとして率直に思うことを簡単に言うと「こういうのは、いただけんなあ」というところです。