ということで昨夜は遅い遅い夏休みを利用して、久しぶりにホールにお邪魔。
井上拓真復帰初戦の、久高寛之戦を見てきました。
4度世界戦に敗れた久高の、その後の試合については、会場で見たり、映像で見たりしてきました。
その中のひとつについては、以前あれこれつべこべと書いたりもしました。
昨年の村中優戦などを筆頭に、結果以前にその試合内容を再評価に繋げている今の久高を見れば、
そのときの思いは、愚にも付かない感傷でしかなかったのだ、と思ったりもします。
しかし、彼をそこまで闘いに駆り立てるもの、奮い立たせるものは何なのだろうか。
その答えが、いち観客として試合を見ることで知れるものだとも思いませんが、
今の久高の姿を、是非もう一度、直に見れば、何かを感じることはきっとあるだろう。
そんな思いで、ホールに足を運んだ次第でした。
試合としては、両者ともに、終始、密度の濃い攻防を繰り広げた好ファイトでした。
初回は井上が厳しく構えを立てて、圧す。久高怯むか、と見えたが、反撃。井上。
2回、久高がボディ攻撃から攻め込む。久高。
3回、井上右アッパーから左返す。久高すぐボディ、井上左フック合わす。やや井上か。
4回、両者ボディ好打、互いにカウンター合わせる。攻防の密度上がってくる。競っているが久高。
5回、久高はボディを再三攻めるが、井上の左もレバーに決まる。
最後、両者意地を見せての打ち合い。場内沸く。やや井上。
6回、久高ボディ、右を被せる。井上カウンター鋭いが久高が攻める。久高か。
攻防が激しく入れ替わる展開。
7回、流れは井上に行って不思議はないが、久高の奮闘続く。
井上は攻め込んで押し切りたいのだろうが、久高がそれを許さない。
井上ボディを攻められながら、左フック、右クロス当てる。攻勢で久高か。
8回、井上右ヒット、攻め込む。久高左瞼カット、出血かなり。
ドクターチェック入り、再開後久高が反撃。
井上カウンター取るが、久高怯まず出る。凄い闘志。井上。
9回、井上右、久高しかしなおも出る。右パンチはまだ切れている。
井上当てて捌く。両者もつれてスリップ。井上か。
最終回、両者意地の打ち合い、久高笑みも見せつつ打ち合う。
井上三連打、右。久高も右返し、きわどいパンチの応酬続く。井上。
判定は公式よりは競っていたと見ましたが、それでも6対4で井上かな、というところ。
残念ながら、久高が勝っていた!とまでは言えないように思いますが、
それにしても久高の闘いぶりは、勝敗を越えて感動的でした。
試合を見ながら、彼の過去の試合ぶりをあれやこれやと思い返していました。
高度な狙いを持って放つ、一撃必殺のカウンターパンチに固執し、
「それ以外」の部分に心を配れなかった故に敗れた、いくつかの大切な試合。
才能あるが故に、と簡単に言って良いのかはわかりませんが、
それ故に欠落したものが、彼の大成を阻んだのか、という思いに囚われた、
そんなやるせない気持ちを抱いた、かつての彼の姿。
しかし、天性の輝き、鋭さ、切れ味が失われたかに見え、黒星を重ねても、
彼は今なお、若き強敵、井上拓真相手に、こんな凄い試合を闘っている。
井上拓真の強い「陣立て」を押し返し、鋭い反撃を際どく外し、
カウンターを取られてもなお、間を詰めて反撃し、攻勢を譲らない。
試合の流れに緩みが無く、無駄な間がなく、休み無く入れ替わる攻防から逃げない。
むしろ進んで、試合自体の「急流」を作り上げ、そこに自ら身を投じるかのような...。
まるでかつての「ヒサタカ ヒロユキ」が、もっとも苦手にしたようなボクサー、
「クダカ ヒロユキ」が、そこにはいました。
一体彼は、何故に今なお闘っているのだろうか、と思います。
むろん、眼前の敵、井上拓真を倒し、その先にさらなる未来を切り拓くため、なのでしょう。
しかし、本人に直接問う立場にもなく、その術も無く、勝手に試合を見て、勝手にあれこれと思い、
それを勝手に書き連ねているだけにすぎない、ひとりの観客として、勝手ながらに思います。
きっとそれは、かつての自分自身を乗り越えるため、それを闘うことで証したい、という決意なのではないのか、と。
久高寛之の闘う意志は、その熱は、確かにホールの客席にまで届いていました。
過去がどうあれ、今後がどうあれ、嘘偽りの無い闘志を持って、彼は闘って、生きている。
その姿を直に見て、その熱に、直に触れることが出来て、本当に良かった、と思っています。
素晴らしい時間でした。