さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

心が無いから悲劇が起こる

2009-03-24 22:25:25 | 関東ボクシング
日本ミニマム級1位の辻昌建選手、今朝、亡くなられたとのことです。
ご冥福をお祈りします。

先日の試合、辻選手の様子を見ていて、9R終了で棄権すべきだと感じました。
そして、セコンド陣がそういう決断をしないだろうこと、
レフェリーが試合を終了させないであろうことも、同時に予想しました。
加えて、10Rの悠長なレフェリング。結果は悲劇となりました。

恐ろしいことを敢えて書きますが、見慣れた光景でした。
私はあの試合をTVで見ていて「またこんなことやっとるわ」と思ったのです。

JBCのレフェリー達の中には、いつも、赤コーナー側(=主催者側、大手ジム側、日本側)の選手が
劣勢に陥り、ダメージを負っていても、ぎりぎりまでその選手の勝利の可能性を探る者がいます。
そしてその選手は、余計なパンチを受けてさらにダメージを受け、その試合は壮絶な終焉を迎え、
時に深刻な事態を招きます。

日本人同士の試合を例に引くと「また地方依怙贔屓の奴が、中央のボクシングに文句つけとる」と
思われてしまうので、日本人対外国人の試合の例を挙げますが、
私が会場で直に見たなかでもっとも酷かったのが、宮城誠vsロデル・オライス戦。
映像で見たなかでいうと、フェデリコ・カツバイvs藤掛真幸戦です。

共に、レフェリーがダメージ甚大な日本選手に対し、ぎりぎりまで試合を続行させ、
そして試合は目を覆いたくなるような「昏倒」で終わりました。
側頭部にオライスの左ストレートをモロに受け、目線も定まらないまま追撃される宮城。
相手と正対出来ず、自らコーナー際へふらふらと後退したあと、打ちまくられた藤掛。
悪夢のような光景でしたが、当該のレフェリーが何か処分されたとか、公式に注意を受けたとか、
そういう話は一度たりとも聞いたことがありません。

つまり、JBCという組織は「それでよし」という認識の元、日々の試合を管理運営しているのです。
そして、その心無さがまたしても悲劇を生んだ。そうとしか言いようがありません。


組織を批判しても、レフェリーやセコンドを批判しても、仕方がない。
そういう意見もあると思います。それは、人の気持ちとしては、わかる話です。

しかし、それだけでは済まない話もあると思うのです。
この10数年だけでも、何度、こんなことが起こっていますか。
結果が事故になっていないだけで、このような危うさを感じる場面が、何度あるでしょう。
事は単にストップのタイミング云々、棄権すべきタイミングの話だけではありません。
公正に、厳密に、情実なしに正しい試合運営をしようという意志の希薄さが、
こういう悲劇を招いているのです。

先の試合において、もし、ダメージ甚大で劣勢だったのが、辻選手ではなくて
対戦相手の方だったら、あの試合は早々にストップされていた、と、私は確信しています。
問題はレフェリーの判断の正誤にはありません。それ以前に問題があるのです。
そこから目を背けていては、この問題の本質を見落とすことになります。


日本のボクシング界は、多くのボクサー、関係者の、膨大な献身によって支えられています。
しかし、頭数で言えばごく一部の、しかし業界の「支配体制」の人々による、
あまりに心無き数々の所業によって、日本のボクシングは、日々痩せ細っているように思えます。

悲劇から、人が何かを学ぶことは大切なことでしょう。
しかし、人ひとりに人生はひとつ、辻選手の命は、もう戻りません。

ボクシング界は今度こそ、根本的な転換を実現しなければならないでしょう。
繰り返しますが、単にレフェリングの基準云々だけの話ではありません。
辻選手への追悼のためではなく、せめてもの「償い」として。

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アイリッシュの新チャンピオン

2009-03-22 19:32:22 | 海外ボクシング
アイルランドのバーナード・ダンがパナマのリカルド・コルドバを11回に
ノックアウトして、WBAスーパーバンタム級の新チャンピオンとなった
そうです。

アイリッシュがパナマ人を攻略、というと、エウゼビオ・ペドロサが
20度目の防衛戦でバリー・マクギガンに破れた一戦が思い出されますが...
まあ、いわゆる「レギュラー王座」の話でもあり、比較するのは苦しいところかもです。
しかし地元での盛り上がりは、なんだかだいって相当なものなんでしょうね。
日本にも関わりが多そうなこのクラスだけに、どんな試合だったか気になります。


それにしても、かつてのマクギガンはものすごい人気者でしたねー。
詩をこよなく愛するアイリッシュの文化については、いつだったか、ボクシングマガジンで
草野克巳氏が詳しく紹介しておられましたが、それまではマクギガンの

「詩人にはなれない。物語を語る方法を知らないんだ」

という発言を、なんてキザな...と、完全に誤解していたもんです(^^;)

しかし、バーナード・ダン、来日の可能性はどうなんでしょうね。
クラスとしては可能性もあるかもしれません(長谷川の相手にもなり得ますね)けど、
何せ地元での人気がすごいでしょうから、ウェイン・マッカラーのように、
チャンピオンになる前ならまだしも、なってしまった今、ちょっと難しいでしょうか...。

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寿な話題

2009-03-20 10:07:35 | 名城信男
名城信男婚約発表、だそうです。めでたい話題です(^^)

12日の富山戦は地上派ノーTVという、残念な話題があったばかりですが、
こちらはおめでたい、良い話ですね。
本人もコメントしているとおり、もし負けでもしたら大変です。
何が何でも勝たないかんですね。


で、こういう、TVのない興行こそ、会場行って見たいところなんですけどねー。
なかなか難しいところです...。
我らがスカイA様が中継してくださるそうですが、どうも野球(やはり阪神?)の関係で、
生中継ではなくディレイになるそうですし...。

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嫌な気分です

2009-03-15 02:30:25 | 小松則幸
亀田大毅が小松則幸と対戦決定、というニュースを知りました。

亀田側は、過去の実績と現状の落差を見越した上で小松にオファーをして、
小松側は小松側で、ラタナポン戦敗北からの捲土重来という目論見でそれを受けたんでしょう。

と、話としてはわからんでもないですが、こういうの、受けて欲しくなかったですね。
今の小松は、現状の力で勝てるかどうかの心配をする状態ですらない、と思うからです。

最近数試合のうち、大半の試合でダウンしており、直近の試合でも初回TKO負け。
いかに強打のラタナポンが相手とはいえ、相手が踏み込んできた最初の攻撃で捉えられ、
効かされてストップされたあの負け方は、技量力量以前に、防御勘と耐久力が共に衰えていて、
残念ながら、もう潮時と言わざるを得ないものでした。


しかし、仮に小松が往時の力を維持していて、やれば勝てそうと思えたとしても、
ああいう「連中」とは、一切関わり合いになってもらいたくない、とも思うのです。

数年前、ランダエタ戦前の亀田興毅がまだ大きな顔で一世を風靡していたころ、
後楽園ホールで内藤大助とダブルタイトル戦を闘った小松は、完敗を喫しました。
勝者の内藤はその後、3度目のポンサクレック挑戦へと辿り着き、勝利し、現在、栄光のさなかにいます。

小松は、ボクシングの宿命、強者との闘いを望み続け、その宿命に殉じて敗れたのです。
その姿は、技量云々を論じることとはまた別に、ボクシングファンを納得させうるものでした。
そうしたボクシングの宿命を、欺瞞に満ちた手法で忌避し続けてきたのが、亀田一家です。

小松陣営にいかな勝算があるのかわかりませんが、対戦相手の過去の実績を宣伝材料に
使うことしか頭にないような「連中」と、いかなる形であっても関わってほしくないと、
小松のファンとして、そしてボクシングのファンとして、切実にそう願うのですが...。

とにかく、決まってしまったもの、どうにもなりませんね。嫌な気分です。

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強者のこれから

2009-03-14 22:38:10 | 長谷川穂積
ダブル世界戦翌日会見、まぁ、ハッピーな話題ばかりですね。
選手も取材する側も、いつもこうだと楽しいでしょう。

長谷川は減量苦を訴え、上のクラスへの転級を希望しているようです。
タイトルがかかるか、或いはノンタイトルかで、クリス・ジョンとの対戦希望、とのことです。

今朝、山下会長と共に、関西ローカルの番組に生出演したときも、
「上のクラスの方が身体が動く。もっと良いパフォーマンスが出来る」と
かなり真剣に語っていました。
そしてこの試合に向けたトレーニングの様子も、これまで以上に厳しく、辛いものでした。
練習後「もぉええわー。もうええ...」と、ジムの前に大の字になって、
珍しく、減量の辛さをあからさまに漏らしている姿は、ちょっと驚きでもありました。

実際、木曜日の試合、花道に現れた姿を一見したときも、
これは限界寸前まで削ぎ落とされ、研ぎ澄まされた身体だ、と感じました。
その減量の苦しさは、顔の不自然なむくみにも出ていましたし、
最初にダウンを奪ってコーナーにたたずんでいたとき、マリンガのジャブを
数発受けただけの右目周辺が、はっきりと色濃く、赤くなっていました。

もちろん、マリンガの拳がそれだけ鋭かったのでしょう。
マリンガは倒されたあと、攻め込まれているときに数発、左ストレートや右フックを
腰が落ちかけた状態で打ち返していましたが、その拳の軌道は、なお鋭いものでした。

つまり、長谷川もぎりぎりの調整を強いられ、苦しんでいましたし、
マリンガの力量もまた、展開次第では長谷川を脅かしうるものだった。そう思います。
長谷川穂積の圧倒的な強さだけに目を奪われがちですが、
あの試合は完勝、圧勝ではあっても「楽勝」ではなかったのでしょう。
また、彼ほどのボクサーだからこそ、楽に勝てるような試合など、
今更闘いようがない、ということでもあります。

その強さ故の過酷な宿命の延長線上に、どんな試合が待っているのでしょう。
クリス・ジョン戦、本当にあるんでしょうか。或いは他の誰かとの大試合か...。
しかしこれだけは確かです。ボクシングファンとして、長谷川穂積のこれからを見られること、
これはやはり、変わることなく、間違いのない幸福である、と。


さて、粟生は自分からユリオルキス・ガンボアの名前を出して対戦を希望しました。
対戦が実現するかどうかはさておいて、本人の闘志はこういうものなのですね。
強敵相手に勝つことで、真の王者としての証を打ち立てて欲しいものです。



ところで専門誌ですが、マガジンは今日発売でしたね。
西岡と佐藤って、同郷なのは知ってましたが同い年だとは知りませんでした。
あまり接点がなさそうなイメージで、ぱっと表紙見たとき「誰?」と思っちゃいました(^^;)
ワールドは16日の月曜日発売、こちらは速報が載るのでしょう。楽しみです(^^)

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幸福な一日

2009-03-12 23:58:56 | 長谷川穂積
先ほど録画を見終えました。
で、とりいそぎ、書いておるわけですが...。

なんとなんと、まぁ、もう...(^^)
言葉が出て来ませんね。思い出しても、震えが来るほどです。
かつて、日本のボクシング界が、これほどに強いチャンピオンを持ったことが
果たして何度あるでしょうか。そんなことまで思うほどでした。


不気味や不気味やと書きまくったマリンガ、立ち上がり長いジャブを2、3発当てて、
長谷川これ外せへんのかな、ちょっと困ったことに...と思ったのもつかの間でした。
長谷川が右に左に、早速見切りを始め、綺麗に外します。
おお、これは...と思った直後に、この試合一発目の左ストレートでした。

初回、リード無しでいきなり、その試合一発目の左ストレートで、
世界1位の挑戦者を倒す世界チャンピオン。
こんなん、見たことありますか、みなさま。剣崎順やないんですから(←古い...)。
今日び、漫画家でももうちょっと考えるで、という感じです。

あとは長谷川の猛攻。パンチの速さ、繋ぎの速さを全面に押し出した連打で攻め立て
粘ろうとするマリンガも防ぎきれず、2度のダウン追加でTKOとなりました。

少し前に「いかな長谷川といえど、今後は快勝続きとはいかないでしょう」と書いた馬鹿は、
TVの前で口をあんぐり開けたまま、阿呆面をしておりました。
いくらなんでも、これは...長谷川は私のしょうもない心配を鼻息ひとつで吹き飛ばしました。
彼はもう、私の思うより遙かな高みに存在するようですね(^^)


粟生についても昨日、厳しいことを書きましたが、こちらも見事な勝利と言っていいでしょうね。
序盤からどっしり構えて、圧力かけてラリオスを下がらせ、互いに手を出す機会が少ない展開ながら、
厳しく鋭いカウンター、リターンパンチでポイントを重ねました。
ラリオスは最初から足下がやや覚束ない感じで、けっこうあからさまな衰えも感じましたが、
10R終盤の一発のような怖さもまだ残っていて、そういう相手にきっちりと勝ちきったのは立派でした。
出来れば、インタビューでもう少し、ビシッと決めてほしかったですが...(^^)


何はともあれ、今日はボクシングファンにとって、これまでの長谷川の試合の日の中でも、
もっともハッピーな一日になりましたね。
とりあえず明日の新聞読むのが楽しみですね。次の専門誌買いに行くのも、です。
...えーと、15日には出ないのですかね。数日遅れ、でしたっけ?

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靴下履いて?

2009-03-11 22:54:46 | 長谷川穂積
いよいよ明日、神戸と東京で同日開催のダブル世界戦です。
で、前日計量、4選手全員パス、となったわけですが。

長谷川に挑むブシ・マリンガ、靴下履いたまま計量して115ポンド1/2。
スーパーフライ級に毛の生えたような数字が出ました。

...なんなんでしょうかね、これ。
youtubeで見たウィラポン戦の映像では、大柄、長身のパワーヒッター、という風に
見えたんですが、これじゃ最近減量苦を公言するようになった長谷川の方が、
ずっと大柄なんてことになってしまいます。
いくら今から丸一日でバカバカ食うと仮定しても、さすがに長谷川との2ポンド以上の差が
埋まるとは思えませんし、仮に埋まったらかえって問題でしょう。

私はマリンガの強打、特にアッパーを長谷川が外し、スピードでまさって勝つ、という
展開を想像(というか願望)していましたが、長谷川が自分よりはしっこい相手に
アッパーで攻め込まれるなんていう、想像しなかった展開になるかもしれません。

長谷川は最近、攻撃的志向が増しているというか、外す自信があるせいでしょうが、
互いに当たる距離にいる割合が多く、相手の力を削ぐことよりも、互いに力を出し合う試合をします。
もしマリンガが機動力でも長谷川に匹敵するものを持っていたら、厳しい結果もありうるかも...。
元々、マリンガは不気味な印象でしたが、この計量結果を知って不気味さが増幅されました
かつて引き分けたジェロッピ・メルカド(瑞山)戦なんかは、かなり苦戦してたそうですが、
ウィラポン戦では、これ以上ないという圧勝劇でしたし。
それからまた、けっこう試合間隔が空いてて、一戦も挟まず明日の試合なんですね。
どうも、正体が見えないというか、なんというのか...。


ラリオスと粟生の再戦ですが、予想云々以前に、粟生にとっては絶対勝たないといけない一戦でしょう。
フェザー級という強豪揃いのクラスで、リナレスともジョンとも闘わずに済み、
ユリオルキス・ガンボアのような次世代の強敵とも絡むことなく、全盛を過ぎて、油断もあった
ラリオス戦を落としていながら、なお直接再挑戦が認められるなど、常識外の優遇だと
言わざるを得ません。この好機を落とすようだと、どうやって世界獲る気や、という話です。

明日のラリオスがどういう状態かにもよるので、なんとも言いにくいところではありますが、
前回は油断したと反省しているラリオスは、長くて強いストレートパンチ主体で
粟生を突き放しにかかるでしょう。
果たして、粟生が速く踏み込んで、或いは他の攻め手で、懐の深いラリオスを攻め落とせるでしょうか。

私は、やはり惜しかったなぁ、というところに落ち着くんじゃないか、という気がしますが、
粟生には前回以上の爆発的な何か、或いは的確な状況判断による試合運びをもって、
なんとかこの好機をモノにしてもらいたいと思います。

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闘う人の心

2009-03-10 18:50:51 | 辰吉丈一郎
辰吉、タイでの二試合目は7回TKO負け。世界戦以外では初の黒星となりました。

相手はタイ1位とのことですが、少なくとも国際的なレベルでどうこうという選手ではないはずですし、
往年の辰吉ならば、2、3回での片付け仕事、という試合になっていたことでしょう。

動画を見ていないのですが、ネット上で散見した写真で見た印象でいえば、
倒れかけた時の表情などは、本人の感覚ではよけたつもりのパンチがよけきれずに打たれ、
それによってよろめく自分の身体を制御出来ず狼狽している、という様子でした。
つまりは、典型的なオールドタイマー、ロートルボクサーの姿がそこには見て取れました。

以前も少し書いたとおり、今の辰吉が上位ランカーだチャンピオン・クラスだと言わずとも、
「まともなプロのボクサー」と闘って勝てる状態にあるとは、誰も思っていなかったでしょう。
そして今回、まさしくその通りの結果が出たわけです。
にもかかわらず、辰吉は「まだやるのかと思う人が大半やろう。けど、それが辰吉や」と、
なおも現役続行の意志を語っているそうです。


「闘い続ける人の心を 誰もがわかっているなら 闘い続ける人の心は あんなには燃えないだろう」


昔、こんな古い歌がありましたが、今回の辰吉のコメントは、傍目には理解不能です。
おそらくこれまで支援してきた周囲の人々が、なんらかの形で説得するのでしょうし、
時間が彼の心を、今とは違う方向へと導いてくれることを願いますが。


これまた以前も書きましたが、辰吉丈一郎の試合結果をTVの生中継でなく、
こんな形で知らされることがあるとは、かつてはまったく想像できないことでした。

若き日の、誰もを一目で魅了し、驚愕させたその才能は、眼疾と敗戦、引退と再起、
強いられた引退制約と海外渡航、その他諸々、嵐のように降りかかる苦難との闘いの果てに、
JBCの与えた、欺瞞に満ちた特例ライセンスの失効を待ってのタイ渡航という、
誰もが想像しなかった形で、その終焉を迎えようとしています。

彼がこのような形での再起を選んだ影に、様々な事情と、彼自身の譲れない思いがあったことは、
報じられている範囲の話だけでも充分に想像でき、ある程度は理解もしているつもりでした。
しかし、それでも、かつて彼の才能に魅了された全ての人々にとって、それはあまりにも悲しく、
受け入れがたい運命なのです。
その果てに敗れて、なおも「それが辰吉や」とは、誰も思ってはいないのです。
そのことだけは、辰吉丈一郎にもわかってもらいたいと思うのです、が...


「闘い続ける人の心」のありよう、その狂気とも言える凄まじさの前に、
私は無意味な言葉を連ねているに過ぎず、ただ、打ちのめされたような気持ちでいます。
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ボクシングに非ず

2009-03-07 14:31:33 | その他
先日の亀田兄弟の二試合、一応、録画して、見ました。

事前にあれこれ話題になっていたとおり、まともな相手とまともな試合をするわけではない、
それはわかっていたつもりでしたが、いざ実際に見てみると、やはり気分が悪くて、
数日何かを書こうという気力がわいてきませんでした。


まず、長男の試合ですが、もう、何をか言わんや、ですね。
こんなものはボクシングでもなんでもない、終戦直後のプロレス、外人打倒ショー以下です。
そもそも、あんなスローなWBC20位がどこにおる。馬鹿にするなと言いたいです。

以前、一生懸命批判してきたJBCについては、こんな詐欺試合を見過ごす時点で、
もう何も言う価値なし、馬鹿負けした、とだけ言っておきます。

長男については出来云々ではなく、試合後のコメントが痛々しかったですね。
世界挑戦(?)について、確定的なことは何も言えないけど、
最低限言うておかないかん宣伝、告知だけは、一生懸命言うてました。

なんかもう、若い身空で分不相応の肩書きを追わねばならない者の悲哀が見えた、
とでも言いましょうか...哀れですね、ホンマ。


で、比較的評判がよかった次男の試合、あれもある意味、長男の試合以上に酷いものでした。
元々、ワンディーは世界王者とはいえ、ミニマム、ライトフライの選手です。
そこへスーパーフライでも大柄な次男と、あんなに真正面からお付き合い、とは。

別に八百長だなんだという大仰な話ではないでしょうが、本気で、水漏れなしの万全に仕上げて、
絶対勝つ、何が何でも勝つ!というつもりでもなかった、ですね。
ビジネス・モード、とでも言いますか。

あと、次男が別に防御の意識を持って何か動いたわけでもないのに、
中間距離でワンディーがコンビネーションをスカスカ空振りした場面だけは、
見ていてどう理解していいのやら、判断に困りました。
あれ見ると、やっぱり...って気もしてきます。

それでも、次男が今までやってきた、あまりに酷い試合に比べれば、
なんだかすごくまっとうな、立派なように思えてしまうところがいとおかし、ですね。
ある意味、長男の試合ほどあからさまに酷く見えないぶん、かえって悪いと思います。

少なくともあの次男が「元世界王者をKO」したと評価されるならば、
相手はマルティン・カスティーヨか、一階級おまけしてもポンサクレックでなければならないはずです。
そこ忘れちゃいかんと思いますね。


それにしても、こんなのを仮にも全国ネットで、そこそこ良い時間帯に放送するんですものねー。
一方、関東ローカルのみとはいえ、かろうじて生き残っていた日テレのダイナミックグローブが
今日の榎洋之再起戦を最後に終了とのことで...。

亀田兄弟、一家の今後など、どうなろうと知ったことではないのですが
(というか、どうにもなりようがないでしょうが)、
数年前まで、亀田人気をきっかけにボクシング界全体の人気を上昇させよう、
そのために亀田の所業はある程度黙認せねばならんのだ、という「大人の態度」で、
亀田を容認、擁護していた業界のえらいさんたち、今、どう思ってんでしょうね。
誰かコメント取ってきてほしいですね。

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大場浩平という夢

2009-03-04 00:13:29 | 大場浩平
大場浩平vs臼井欽士郎の日本バンタム級タイトルマッチの映像を、
中部在住の友人の厚意により、見ることが出来ました。
本当にありがたいことであります。嗚呼、支えられて生きている私...


そゆことで、放送では2Rと4Rがカットされていましたが、
だいたい、試合全体の様子はわかりました。
最近、苦戦続きの大場ですが、好ファイトではあったものの、
鮮やかに快勝、という試合ではなかったようです。

1位の挑戦者、臼井は腰の据わった良いバランスで攻め込み、
接近戦に持ち込んでは左フックを中心に、ヒットを取ります。
大場は柔軟な動きで芯を外そうとしましたが外しきれず、
序盤は臼井の攻勢とヒットが目に付く展開でした。

しかし中盤以降は徐々に大場が右ストレートをヒット、
遠い距離から飛び込んではサイドに回る、大場のペースになる時間が増えます。
臼井も果敢に攻めて相打ちの危ういタイミングもあったものの、
大場のクリーンヒットがまさりました。

9R、10Rは明確に大場が打ち勝ち、ことに10Rは
大場得意のボディアッパーが再三臼井を捉えます。
終始前に出ていた臼井が初めて下がり、自らクリンチに出るほどで、明らかに効いていました。
残り1分くらいでは、レフェリーのブレイクの際に臼井が身体を折ったまま
動きを止めてしまい、あれは見方ひとつでダウンになるかも、という場面もありました。

しかし大場が一瞬間を置いて詰め切れず、臼井の反撃もありゴング。
判定は97-94のスコアが割れ、大場が2-1判定で三度目の防衛成功でした。


昨年来、三谷、児玉、川端、そして臼井と、日本上位との対戦が続き、
大場はその独特のスタイルをもって、これらの強敵を下してきました。
低いガード、相手を良く見てフリッカージャブ、柔軟な上体とL字ガード、
入り込まれたらアッパーカット、左右のボディブローを決める。

その独特のスタイルは、時に危うさをさらけ出す場面もありました。
ガードを下げたまま正面から攻めたり、詰めの場面で身体をサイドに逃がす動きが消えたり、
大場には人にないセンスがある反面、多くのボクサーが持つ護身の常識が欠けているのではないか。
きついようですが、最近の試合ではそんな風に見える場面が何度かありました。

上記した大場のボクシングを構成する「パーツ」をどう組み立てるか、
或いは取捨選択をするか。そろそろ厳しく考えねばならない時かもしれません。


しかし、その反面、思うのです。
大場には、私などが思う常識的な危惧を超えた存在になってほしい、と。

大場の試合を見ていると、時折、なんと凄いことを狙っているのかと思うことがあります。
三谷戦、今回の臼井戦でも散見されましたが、相手との攻防が今始まる、その一瞬の間に、
大場は相手の出鼻、動き出しの一瞬先のタイミングで、リードパンチも探りのフェイントもなしに、
「先手のカウンター」とでも言いたくなるような、ダイレクトの右を狙って打つのです。
残念ながら今のところ、強敵相手にこのパンチが決まったことはないのですが...。

もし、あのパンチがまともに決まったら、そして相手が倒れたら。
それは文字通り、天才の一打として、見る者の記憶に永遠に残ることでしょう。
あのパンチにこそ、大場浩平が誰にも語らず、心中に秘めた夢があるように思います。


天才と呼ばれるボクサーが辿る運命とは、実は過酷なものであることの方が多いのかも知れません。
天才が、天才である証を、勝利によって打ち立てることは、その天才故に難事であるのかも知れません。


しかし、大場浩平には、いつか実現したい、己自身の理想があるはずです。
そして私の目には、それは壮大な理想であると見えます。
ファンというのは誠に勝手なものですが、それを承知で、彼がその理想に近づき、それを実現する姿を見てみたいのです。

今回の試合でも、大場の思いを裏切って、鮮やかに相手を打倒し得なかった、
あのいきなりの右ストレートの軌道を思い浮かべながら、改めて、そう思っています。
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