さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

長きに渡る闘いの日々、遂に終わる 久高寛之、ダウン喫し敗戦、引退へ

2022-04-26 07:05:56 | 久高寛之




土曜日は久々に府立の地下で観戦してきました。
今頃ですが感想文、簡単に。


久高寛之と中川健太の元チャンピオン対決は、サウスポーの強打、中川がロングの距離で左を外から、内からと繰り出し、ヒットを重ねる好スタート。
久高は右カウンターを狙うが、強打するバランスが取れず、また中川の左を良い距離で狙われて、なかなか外せない。

最近の久高の試合ぶりは、けっこうファイター化している、と見えたので、これはもう「行く」シフトに変えてくるだろう、と思ったその通りに、3回からはガードを固めて前に、というスタイル。
右から入って攻め、左右ボディも決める。しかし中川の左ボディ、内外の左ロング、右フック、アッパーを好打され、抑えきるに至らず。

この回は割れるか、というところまでは持って行けたかもしれないが、4回以降、中川は改めて間を取り、来たらクリンチを増やす。
元々インファイトは苦手、というかほぼ出来ない選手だが、その弱味を出さないように「良い回り」を作って闘っている。

中盤は久高が出て、単発のヒットはあるが、中川の左クロス、ボディなどのヒットが重なる。
5回終了、途中採点が3-0中川と出て、6回に出た久高が、この試合随一のヒット、左フックを決める。
かなり良い踏み込みで当てた、攻めのカウンター、とも見えた一撃。

中川少し効いたか、久高が右で追撃し出るところ、中川が少しだけ見せていた、出鼻への右アッパー。カウンターで入って、久高ダウン。
まさか、右アッパーでのカウンターがあるとは、傍目にも想像できませんでした。当の対戦相手、久高とて同様だったのかもしれません。何しろお見事、としか。

正直、これで終わりか、と思ったくらいですが、久高立って続行。
終盤、果敢に攻める回もありましたが、中川がヒット、手数で上回り、終了。判定は大差の3-0で中川でした。

試合としては、中川の強打の威力で序盤から抑えられ、距離も取られてしまい、カウンター狙いもインファイトでの挽回も届かず、ということで、久高のクリアな敗戦でした。
引退を表明したという記述がある記事を複数見ましたが、おそらくその通りになることでしょう。



久高寛之は、偶然映像を見ることになったデビュー戦から、長きに渡ってその姿を追い続けてきた選手です。
その時々に思ったこと、ファンとしての勝手な思いをあれこれ、カテゴリひとつ設けて書いてきましたが、私にとっては本当に、様々な思いを...彼というボクサー個人についてのみならず、彼の姿を、闘い様を通じて、ボクシングそのものについて、思いを巡らせる機会をくれた存在でした。

その長きに渡る拳歴が、どうやら遂に終わるらしいです。
もちろんファン目線で、勝ってさらなる未来を切り拓いてほしいと願いつつ試合を見に行ったわけですが、結末は非情でした。


しかし、それもまた、彼の闘いを通じて、ボクシングの非情、そして、だからこそかけがえの無い輝きを見ることが出来た、という得心がありもします。
何か、ボクシングファンとしての自分にとり、ひとつの大きな区切りとなる試合を見たのかもしれない、とも思っています。
例えば辰吉丈一郎や、長谷川穂積の「最後」を見終えた、その時の心情にも似た気分、というか。
おそらく、こんなことを書いても、ほとんど誰にもわかってはもらえないと思いますが。



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この日は試合中止が相次ぎ、このタイトルマッチ以外には、坂晃典と大沢宏晋のエキジビションマッチ、そして4回戦がひとつだけ。
公式試合は2試合だけ、というラインナップになってしまいました。
その割りに場内、空席の割合は思ったよりも低めでしたが、やはり残念でした。

坂と大沢、ノーヘッドギアで2ラウンズ。ヘッドギアした方がええんちゃうかなあ、と思いましたが。
もちろん互いに本気では打たないわけですが、大沢が坂の左ガードの隙に右を当てたり、坂も連打で出たりと、互いに「やれる」ことを見せ合った、という内容でした。
このふたり、以前対戦したときは、本当に好ファイトを繰り広げたわけですが、その後はスパーなどもよくやっていて、大沢がアドバイスを送ったりする間柄とのこと。
野次馬根性丸出しで「坂、倒したれ」とか思ったりもしましたが(笑)まあ冗談抜きで、防衛戦が宙に浮いてしまった坂にとっては、良い挑戦者候補じゃないのかなあ、と。なかなかそうもいかないのかも知れませんが。




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挑戦者負傷で坂晃典防衛戦中止 久高寛之ー中川健太戦メイン昇格

2022-04-18 13:53:23 | 久高寛之




先日、小原佳太負傷によりメインカード中止、セミの佐川遼、久保隼戦がメイン昇格という事態があったばかりですが、西でも同様のニュース
23日府立のダブル日本タイトルマッチのひとつ、スーパーフェザー級タイトルマッチが、挑戦者中川兼玄の負傷により中止。
スーパーフライ級の久高寛之ー中川健太戦がメインに昇格。
チャンピオン坂晃典は、かつて対戦したこともある大沢宏晋とエキジビションを行うとのこと。


実はチケット買っていて、当初は坂の試合だけかと思っていたらダブルになったので、お得な感じだったのですが、残念なことです。
とはいえ、ご存じの通り久高寛之ファンでもある身ですので、予定は変えずに普通に見に行くわけですが。

これもまた、良いカードがもうひとつあったから、リスクを回避出来た事例かもしれません。
もちろん坂晃典と中川兼玄「のみ」を応援しようという観客の来場は見込めなくなるのでしょうが。


久高寛之の長きに渡る拳歴については、改めて語るまでもないと思うほど、凄いものになっています。
語弊があるのは承知で書きますが、彼のレコードを眺めていると、ちょっとした世界タイトルホルダーのそれよりも、厚みを感じます。
今回、その締め括り...ではなく、新たな展望を拓くための闘いに相応しい、好ファイトを見られたら幸いですね。




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日程被りの大阪二興行 久高寛之、挑戦権獲得ならず

2019-12-27 14:16:41 | 久高寛之



ということで、先の日曜、観戦を目論んでいたんですがかなわなかった、府立地下の興行と、もうひとつ住吉の試合を、BoxingRaiseで見ました。
こちらも簡単に感想など。


府立の方は、日本スーパーフライ級王者、中川健太への挑戦権を賭けた8回戦。
1位の元王者、久高寛之と、2位のユータ松尾が対戦


初回から、久高はL字ガードでやや上体そらし気味の構え。
そこから相手の手を外し、ジャブから右ボディストレート、左ボディアッパーを決める。
松尾はそれに手数で対抗。先に攻め、打たれてもすぐ手数で相殺を狙う、という流れ。

この攻防は基本的に終始変わらず、ラウンド毎にどちらの質量が上だったか、を選択する採点になる、という試合。
正直、毎回微妙な印象でもあるが、全体的には久高の正確さが上か、と見えたのですが。

6回はこの試合のベストラウンド。松尾がさらに手数を増して、ロープ際に久高を追い、のけぞって外そうとするところを左右で追い込む。
二度にわたり攻め込まれた久高だが、回り込んでリング中央で右クロス、左返して連打。打ち合いでまさる。

しかし、7、8回と松尾が果敢に前進。右、左ダブルなど、身体を寄せてさらに手数で攻勢。
久高も要所でヒットを返し、押し返すが、印象的に悪かったか。

判定は77-75で割れ、76-76が一者で、三者三様のドロー。
ドローのジャッジが優勢点で松尾を支持し、タイトル挑戦権は松尾が手にしました。


正直なところ、大阪でやったということもありますが、この内容でドロー...まではあるのか?微妙な印象ではあります。
しかし両者、懸命の闘いでしたし、試合自体は好ファイトでした。

とはいえ、ベテラン久高にとっては痛い「敗退」となってしまいました。

3回の最中、客席から「久高さん、余力残さんボクシングしましょう。8(回)なんてすぐ終わりますよ」と声がかかりました。
おそらく若いジムメイトの声援、激励の声だったのでしょう。
確かに以前、煮え切らない内容で負けたいくつかの試合同様、L字ガードで若干引き気味の闘い方ではありました。

しかしその声が飛んで以降、久高は出すべき手はしっかり出していた。
ボディへの好打のみならず、6回などは右クロス、さらに連打で打ちかかって、打ち合いでも勝っていたように見ました。
久高の闘う姿勢自体は、選択したスタイル、闘い方とは別に、物足りないという印象ではなかったです。

しかし、それでもなお、もうひとつ、試合を決定づける一打が決められなかった、という意味で、今回の内容はより深刻なものかもしれませんが...。


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住吉区民センターの試合は、WBOアジアパシフィック、バンタム級タイトルマッチ。
ストロング小林佑樹が、韓国のコ・キチャンとノンストップの打ち合いを繰り広げ、判定勝ちでした

初回から両者、パンチの威力や切れにやや欠けるものの、手数を惜しまず打ち合い。
2回、右クロスで小林がダウンを奪うが、コ・キチャンも半ば捨て身で反撃。
互いに単発のヒットながら、アッパーなどで相手の顔を跳ね上げる場面も。

9回にも、プッシュ気味?な感じながらダウンを追加した小林の勝利でした。
正直、アジアタイトルというお題目に値するグレードは感じませんでしたが、両者休み無く打ち合った熱戦ではありました。


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今年の関西ボクシングは、明日、府立地下での石田匠、イスラエル・ゴンサレス戦のIBFイリミネーションバウトで締めです。
会場に行きたいのはやまやまですが難しく、これまたBoxingRaiseの配信で見ることになります。

大晦日の大田区は、井岡一翔、シントロン戦はTVありますが、田中恒成の試合は、関西では放送なし。
TBSの有料オンデマンド配信paraviで、ライブ配信があるようなので、そちらと契約して見るしかありません。
中部ではCBCが当然生中継なんでしょうが、他の地域ではどうなんでしょうかね。


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15歳デビューから11年、奥本貴之悲願の戴冠 元同門の久高寛之を僅差で下す

2018-08-11 13:28:40 | 久高寛之



ということで、昨夜は府立の地下にて、蒸し暑い中、観戦してきました。
全5試合ながら、アンダーカードにも見たい選手が出るし、ということで、
蒸し暑いさなかですが、会場に足を運びました。


メインは久高寛之と奥本貴之の関西対決、ついでに元同門の対戦でした。

初回、2回と、サウスポー奥本がジャブ、左ストレートを当て、右回り。
右サイドへ出て、左アッパー、フック。久高は前に出て、ショートで打ち返す。
やや揉み合いの多い展開。いずれも奥本が先手で、ポイントを抑えたか。

3回、奥本は足を使いつつ、ストレートパンチで捌きにかかるが、
久高が右ショート、左フックをカウンター。見事な当て勘を披露。
久高、バッティングでカット、出血。
4回、久高左右ボディ、右フック決める。久高が連取。

5回、久高にドクターチェック。ショートの攻防、互いに打っては揉み合い。
久高正確に当てているが少ない。手数で奥本。
6回、奥本足使い、久高が押す。

7回、さらに試合は白熱。久高がボディ攻撃。振りの小さい右ショートを再三決める。
奥本も果敢に打ち返す。
8回、久高の流れになるかと思ったが、奥本が左ストレートを決め、手数でもまさる。
久高は疲れたか、上体が前にのめり、バランス悪い。

9回、久高はこの回、2度目、3度目のドクターチェックを受ける。出血はけっこうあったか。
両者果敢に打ち合い、奥本が左のヒットでややまさる?迷う回。

10回、ラストに来て両者、ヒットの応酬。攻防が激しく入れ替わる。
久高が右ヒット、ボディも。連打で追い上げ、奥本きつそうだったが、左から右フック。
左で追撃、久高打たれる。しかし久高また反撃、左右フック。奥本もまた返す。やや久高?


判定は三者とも96-94、奥本。
さうぽん採点は、奥奥久久 奥久久奥 △久 で、95-94、久高でした。
迷ったラストふたつを逆にすれば、公式採点と同じになります。

私は、久高がインサイドから入れたパンチの正確さを採って、こういう採点をしましたが、
久高本人が「やりにくいと思っているうちに終わった」とコメントしているとおり、
単にファイター一辺倒じゃなく、足を使ってストレートで突き放し、久高が来たら右サイドへ出て、
左アッパーを当てる、という風に、闘い方に思ったよりも幅があった奥本が、
要所でポイントを抑えた、という試合だったのでしょう。

もちろん、試合の全てにおいて、奥本の狙いが通じていたわけではなく、久高のインファイト、
ショートの右、ボディ攻撃などは、充分奥本を脅かしていました。
しかし奥本がその都度、果敢に打ち返して相殺し、踏みとどまって、また反撃する。
先制に成功した序盤、苦しかった中盤、両者ぎりぎりのところで踏みとどまった終盤、
いずれも、奥本からその果敢さが消えることはありませんでした。

タイでの15歳デビューから11年、26歳のサウスポーの歩みは、順風満帆だったわけではありません。
しかし、何度も直に見たその試合ぶりは、常に全力、果敢、時には捨て身にさえ見えるもので、
ある意味「これぞプロ」という、強い納得感を覚えたことが何度もありました。
今回の試合でも、奥本貴之は、その闘い方を貫きました。


敗れた久高ですが、従来から持っていた輝きと、厳しいキャリアを経て身につけた果敢さは、
充分に見られたと思います。右ショートの当て勘、ボディ攻撃など、攻め口も色々ありました。
ただ、インファイトに持ち込もうとし過ぎたあまり、負傷もしましたし、
何より奥本の粘りを引き出してしまった面もあるかな、とも。
離れた距離では、奥本の方が優勢らしい、と見えたのも、若干意外でした。

いずれにせよ惜敗でしたが、充分、良い試合をしてくれた、と思います。
関西依怙贔屓全開でいえば、負けた相手が奥本で良かったかな、と。誠に勝手ですが。
逆に言えば、奥本の奮闘には、それだけの納得感があった、ということでもあります。


暑いさなか、両者とも調整は大変だったことでしょうが、なかなかの熱戦を見せてもらえました。
勝ち負け以前に、両者に拍手したいと思います。


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昨日はアンダーカードにも、見たいな、と思う選手が出ておりました。

仲村正男は、フィリピンのマルボン・ボディオンガンを打ちまくり、5回終了TKO。
強い左を、リベットのように打ち込み、足を使って捌き、右強打を打ち込み、連打をフォロー。
仲村は以前の、一撃必殺!という打ち方ではなく、7~8分の感じでヒットを重ね続けました。
ボディオンガンは、打たれても打たれても闘志を見せましたが、5回、右アッパーを好打される。
なおも粘りましたが、セコンドが棄権しました。

仲村、再起二戦目ですが快勝でした。格下とはいえ、骨のある相手でしたが、
全体的な質の向上が見えたように思います。
この上、要所で以前の一発強打が出れば、鬼に金棒です。今後が楽しみです。


引退かと目されていた40歳、野中悠樹は、タイのミドル級王者マタワット・マサムインに
大苦戦の末、判定勝ちでした。
サウスポー同士なんですが、小柄なマタワットが引いて、野中が追う流れ。
マタワットは自分からはほぼ打たず、野中が打ったら、外して左を被せ、右返す。
本当にそれだけなんですが、意外に目が良く、上体が柔軟で、野中がミスしたところに、
何度か左がクリーンヒットし、場内どよめく場面も。

野中は得意な展開ではないことに加え、ウェイトもミドル級オーバーで、身体の切れも悪い。
単発ながら左を当て返し、ボディ攻撃も見せ、判定は3-0で野中でしたが、
これ、見方次第で逆あるやろ、と思ってしまいました。
まあ、ほぼ全部、待ちっぱなしのマタワットに、勝つ意欲が欠けていた、とも言えるでしょうが。


昨年の新人王戦で、ウェルター級西軍代表だった安達陸虎は、
インドネシアのマキシ・ナハクを、3回左フックのダブル(下→上)でKO。
ウェイトが意外に重く、158.5ポンドでした。今後は上のクラスで闘うのでしょうか。


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ところでこの興行、TVはなくとも、BoxingRaiseで配信などあるのかな、と思っていたら、
今月に入って配信予定が出ていません。この辺は気がかり。

※BoxingRaiseにて、動画がアップされていました。
先日の久我ー和氣戦も見られます。ひとまず安心です。


まあとにかく、ほなら会場行かなしゃあない、と思って足を運びましたが、
チケットの価格が、この暑さにやられて正気を失っているのか、と聞きたくなるようなものでした。
府立の地下で、リングサイド3万から始まって、2万、1万5千、1万と来て、立ち見でも5千円。

先日の中谷正義、富岡樹戦も同様の設定でしたが、これを額面通りの価格で買う「一般客」は、
いたとしてもきわめて少数派でしょう。

しかも、メインの両者が地元大阪の選手であり、さらにアンダーにも、仲村、野中、
そして井岡弘樹ジムのホープ安達が出たので、それぞれの選手やジムの応援や後援の方々が
あの狭い府立の地下で、一堂に会したわけで、当然、場内盛況。
そのため、人の熱に冷房が負けてしまったか、非常に蒸し暑い。

もはや「異様」と言っていい価格設定でありながら、見る者に忍耐を強いる状況は、
まあボクシングファンなら慣れっこではありますが、やっぱり、あらゆる意味で、
ここは「閉ざされた空間」やなぁ、としみじみ思わされました。
アンダーからメインまで、見せ方次第で、もっと多くの人に見てもらえるものなのになぁ、
本当にもったいない...と、そんなことを、いつもどおりに思った次第です。



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久高寛之、悲願の初戴冠 翁長吾央の追い上げ届かず

2018-04-15 00:32:39 | 久高寛之



ということで、今日は府立にて観戦してきました。

どこを押してもTV放送はなさそうで、ネット配信の話も聞こえてきませんが、
明日の観戦のこともありますので、できるだけ簡単に。


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久高寛之と翁長吾央の再戦は、久高が2-0判定勝ち。
久高が悲願の日本タイトル獲得なりました。

お互いに、けっして相性、組み合わせが良いとはいえない感じは、
負傷ドローの初戦でも見えていましたが、初回、探り合いで鋭いパンチの交錯があったのち、
クリンチの回数が多い、見ていて少し難しい展開になりました。

翁長は遠い距離から左ストレートを飛ばし、当たっても当たらなくても、次はクリンチ。
久高は本来の型ではない、ファイター化したスタイルで右から入る。

初回、両者の右が交錯。2回、久高が右から入り、押し込む。
3回は久高が右から連打。4回、もみ合い多い。
5回、翁長が左当て盛り返す。

途中採点、50-46(翁長)、48-47(久高)、49-47(久高)。
さうぽん採点は、翁久久久翁、48-47で久高も、迷う回続出。

6回、翁長左当てるも、久高の右が立て続けにヒット。翁長少しダメージ見え、後退。
7回、久高また右ショート、左ボディも決め、攻め立てる。翁長、スリップダウンを3度。

このまま行けば、KOは無理でも、クリアに久高の勝ちかと思ったが、
8回、翁長追い込まれて奮起、左を上下に伸ばす。
9回、久高は若干、相手を見て引き込むような動きも。
翁長はきつそうだが、粘る。この回は迷うが、翁長に振るべきか。
最終回、両者ヒット応酬、やや翁長?

公式採点は97-95、97-94、95-95の2-0で久高。
さうぽん採点は、数えてみたら95-95、でした。
ただし、迷う回をほぼ全部、翁長に振ったので、久高に辛めではありますが。


何はともあれ、長年にわたり、その試合ぶりを追ってきた選手ですから、
やはりその戴冠は、感慨深いものがあります。

中盤、ことに7回までの闘いぶりは、久高の闘志と気迫が伝わってくるものでした。
長い距離からの左ストレートに光るものがある翁長相手に、
圧力をかけて、右から入って、クリンチに遭うも、ショートの距離でボディも打つ。
多少ラフになるのもいとわず、気合いで負けていないところを見せていました。

それはかつての久高自身が、その才能の輝き故に?持ち合わせておらず、
長年の闘い、いくつかの挫折を経た今だからこそ手に入れた強さ、だったのでしょう。


そういうことで、諸手を挙げて大喜び、という記事を書きたいところですが、
当然、こちらもラストチャンスと言われ、ボクサー人生を賭していたであろう翁長相手とはいえ、
7回にあれだけ打ち込んでいながら、8回以降の奮起を許した部分は、やはり反省材料かと思います。

もちろん、さっきの回、優勢だったから次も、と簡単にいかないのがボクシングですが、
8回以降、若干下がり加減の動きがあり、それに乗じた翁長の巻き返しに遭って、
終わってみれば、採点も微妙な印象になってしまった感じで、ちょっともったいなかったな、と。


しかし、勝って戴冠し、彼はまた、闘える「次」の試合、語りうる「未来」を手にしました。
ファンとしては、これが最後にならず、また次の試合がある、そのこと自体が、何より喜びです。
新チャンピオン、久高寛之、おめでとう、ですね。


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メインは、日本ライトフライ級タイトルマッチ、久田哲也vs板垣幸司戦でした。

かつて名古屋で見た、滝沢卓戦の記憶も、もはや「懐かしい」と言わねばならない
広島期待の板垣が、足を使って、ジャブ、右ストレートを中心に、
WBA1位の王者、久田をリードする展開。

久田は両ガードを締め、ぐいぐい圧力をかけて出るが、2回までは音無し。
3回くらいから、徐々にボディ攻撃で攻め上げる。
強打の迫力は時折見えるが、前半、ポイントを取れたと見えたのは4回のみか。

ところが途中採点は三者三様。
見方によって違うのかもしれませんが...ええ、そうかなぁ、という感じでした。

この採点、板垣にとって見込み違いだったかどうか不明ですが、
特に、目に見えて、後半の闘い方に影響した、という風でもなし。
久田が出るが、板垣は軽快に動いて、ヒットを取る。

巻き返したい久田だが、7回にアクシデント。
バッティングが起こり、両者出血はないものの、久田の左目周辺が腫れ上がる。
視界が悪くなった久田、ロープ際に板垣を追って、ボディブローを振るも、
明らかに影響のある空振りも散見される。

板垣は終盤、その左目に右ストレート、アッパーを決める場面もあり。
久田はラスト3回、強い右を決め、板垣を打ち合いに巻き込むが、
板垣も要所で打ち返し、互角に渡り合う。

採点は96-95(久田)、96-94(板垣)、97-94(久田)。
さうぽん採点は二人目と同じでした。


ここのところ、9連勝で、倒せなかったのは堀川謙一戦だけと、
強打者として開眼し、絶好調だった久田哲也ですが、試練の一戦となりました。

試合としては、双方の持ち味がよく出た、好ファイトだったと思います。
そういう意味では、見終えて満足感のある内容でした。

だからこそ、遠からず世界と言われる久田哲也のみならず、堂々と戦い抜いた板垣幸司にも、
この試合内容に相応しい「次」が、つまりは再戦の機会が、与えられてほしい。
そんな風に思った試合でした。



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過去の自分を乗り越えて 久高寛之、井上拓真に惜敗

2017-08-31 22:16:25 | 久高寛之



ということで昨夜は遅い遅い夏休みを利用して、久しぶりにホールにお邪魔。
井上拓真復帰初戦の、久高寛之戦を見てきました。



4度世界戦に敗れた久高の、その後の試合については、会場で見たり、映像で見たりしてきました。
その中のひとつについては、以前あれこれつべこべと書いたりもしました。

昨年の村中優戦などを筆頭に、結果以前にその試合内容を再評価に繋げている今の久高を見れば、
そのときの思いは、愚にも付かない感傷でしかなかったのだ、と思ったりもします。

しかし、彼をそこまで闘いに駆り立てるもの、奮い立たせるものは何なのだろうか。
その答えが、いち観客として試合を見ることで知れるものだとも思いませんが、
今の久高の姿を、是非もう一度、直に見れば、何かを感じることはきっとあるだろう。
そんな思いで、ホールに足を運んだ次第でした。



試合としては、両者ともに、終始、密度の濃い攻防を繰り広げた好ファイトでした。

初回は井上が厳しく構えを立てて、圧す。久高怯むか、と見えたが、反撃。井上。
2回、久高がボディ攻撃から攻め込む。久高。

3回、井上右アッパーから左返す。久高すぐボディ、井上左フック合わす。やや井上か。
4回、両者ボディ好打、互いにカウンター合わせる。攻防の密度上がってくる。競っているが久高。

5回、久高はボディを再三攻めるが、井上の左もレバーに決まる。
最後、両者意地を見せての打ち合い。場内沸く。やや井上。

6回、久高ボディ、右を被せる。井上カウンター鋭いが久高が攻める。久高か。
攻防が激しく入れ替わる展開。

7回、流れは井上に行って不思議はないが、久高の奮闘続く。
井上は攻め込んで押し切りたいのだろうが、久高がそれを許さない。
井上ボディを攻められながら、左フック、右クロス当てる。攻勢で久高か。

8回、井上右ヒット、攻め込む。久高左瞼カット、出血かなり。
ドクターチェック入り、再開後久高が反撃。
井上カウンター取るが、久高怯まず出る。凄い闘志。井上。

9回、井上右、久高しかしなおも出る。右パンチはまだ切れている。
井上当てて捌く。両者もつれてスリップ。井上か。

最終回、両者意地の打ち合い、久高笑みも見せつつ打ち合う。
井上三連打、右。久高も右返し、きわどいパンチの応酬続く。井上。


判定は公式よりは競っていたと見ましたが、それでも6対4で井上かな、というところ。
残念ながら、久高が勝っていた!とまでは言えないように思いますが、
それにしても久高の闘いぶりは、勝敗を越えて感動的でした。


試合を見ながら、彼の過去の試合ぶりをあれやこれやと思い返していました。

高度な狙いを持って放つ、一撃必殺のカウンターパンチに固執し、
「それ以外」の部分に心を配れなかった故に敗れた、いくつかの大切な試合。
才能あるが故に、と簡単に言って良いのかはわかりませんが、
それ故に欠落したものが、彼の大成を阻んだのか、という思いに囚われた、
そんなやるせない気持ちを抱いた、かつての彼の姿。

しかし、天性の輝き、鋭さ、切れ味が失われたかに見え、黒星を重ねても、
彼は今なお、若き強敵、井上拓真相手に、こんな凄い試合を闘っている。


井上拓真の強い「陣立て」を押し返し、鋭い反撃を際どく外し、
カウンターを取られてもなお、間を詰めて反撃し、攻勢を譲らない。
試合の流れに緩みが無く、無駄な間がなく、休み無く入れ替わる攻防から逃げない。
むしろ進んで、試合自体の「急流」を作り上げ、そこに自ら身を投じるかのような...。

まるでかつての「ヒサタカ ヒロユキ」が、もっとも苦手にしたようなボクサー、
「クダカ ヒロユキ」が、そこにはいました。


一体彼は、何故に今なお闘っているのだろうか、と思います。
むろん、眼前の敵、井上拓真を倒し、その先にさらなる未来を切り拓くため、なのでしょう。

しかし、本人に直接問う立場にもなく、その術も無く、勝手に試合を見て、勝手にあれこれと思い、
それを勝手に書き連ねているだけにすぎない、ひとりの観客として、勝手ながらに思います。

きっとそれは、かつての自分自身を乗り越えるため、それを闘うことで証したい、という決意なのではないのか、と。


久高寛之の闘う意志は、その熱は、確かにホールの客席にまで届いていました。
過去がどうあれ、今後がどうあれ、嘘偽りの無い闘志を持って、彼は闘って、生きている。

その姿を直に見て、その熱に、直に触れることが出来て、本当に良かった、と思っています。
素晴らしい時間でした。



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果敢なる者の落日/格の違いは不変?/特別な英雄/親子対談/どこででも

2014-10-12 09:06:49 | 久高寛之

一昨日はネット中継で粉川拓也vs久高寛之戦を見ることが出来ました。

久高が接近戦でのボディ攻撃に出て、粉川が突き放しきれず苦戦、という流れの中で、
2回に右のカウンターで粉川がダウンを奪うも、3回久高反撃、4回には逆に右を決めて
粉川がダウンしかける場面を作るなど、よく言えば一進一退。

しかし内容は、粉川は打たれたダメージのせいかバランスが崩れていたし、
久高は果敢にインファイトを挑むも、単発のボディのあと、こちらも身体の軸を維持出来ず、
双方クリンチ、揉み合いの多い、映えない、冴えない展開が続きました。

ことに久高。これまでのどの試合よりも、彼の姿に、懸命さ、果敢さを感じた試合ではありましたが、
その反面、彼が従来持っていた柔軟さ、狙いの鋭さが消えてしまっている、とも見えました。
ボディへの強打を狙って仕掛けたインファイトに関しては、前に出る身体全体の膂力を支えきれず、
身体の軸が前に折れてしまって、単発のヒットのあと、ヒット、カバーの動作に戻れず、クリンチされるか、
自らするか、の繰り返し。加えて頭の位置、置き所も悪くて、バッティングも頻発。
見ていて、相手の粉川に対しても心苦しくなるような場面の連続でした。


双方、けっして悪い意味でなりふり構わずという風ではなく、もつれた展開であっても、
きちんとヒットを取って勝ちたい、という意志を捨てているわけではない、とも見えて、
その点には救いも感じましたが、同時に、現在置かれているそれぞれの苦境が、故無きものではないのだな、
と思わされる、少々寂しい試合ではありました。


このネット中継を見たあと、G+で先週土曜に行われた村中優と阪下優友の試合が録画放送されていましたが、
年齢的には大きく違わない村中の、身体の軸がぶれない、機動性の高い攻撃ボクシングと比して、
粉川と久高の、歴戦の疲弊から来る落日のイメージは、より一層強いものに感じられてしまいました。
ボクサーの生きる時の流れとは、かくも苛烈なものなのか、と。

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話題もあれこれと。
ジャーメイン・テイラーがサム・ソリマンを破ったそうです。

どちらも、ええ加減長いですけど、全盛期の力、格を言えば圧倒的にテイラー、でも今は?
という組み合わせだったわけですが、結果はこういうことになりました。
そのうちWOWOWでやるかもですが、どんな様子だったのか、けっこう興味ありますね。

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日本で言えばどういうカードに相当するんですかね、これ
えらい視聴者数を獲得した、って話もありますが、例えば辰吉丈一郎がカムバックして
長谷川とか山中とかとやるようなものなんでしょうか。

普通に言えば、無茶なカードではあるんですが、ホルヘ・アルセの飽くなきバイタリティというか、
生命力というか、闘うことへの欲というか、そういうものには、数多の「評」の言葉をも飛び越えた何かを感じます。
そして、毎度毎度こんな試合ばかりでも困りますが、時にはこうした試合を闘いうる、特別な存在が生まれ、
それに強く惹き付けられることもまた、ボクシングを見るという行為のうちではある。そんな風に思います。

アルセに対してそこまで強い想いがあるわけではありませんが、私(たち)は、すでに「彼」の存在を知っている、
その一点において、わかるような気がする話だな、とは言えますね。

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で、親子対談。その1その2

私のような辰吉ファンの世代だと、この子が産まれたときの様子などを
ドキュメンタリー番組で見たりしていたものですから(笑)
何か、他人事みたいな気がしないですね。
実力に関しては不明ですが、この親と同じ道を歩むことを選んだというだけでも、凄いことだと思います。
まあ、あまり騒がずに、そっと見守ってあげたいな、という気持ちですね、今のところ。

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おまけ。
闘えるリングがあればどこでも」だそうです。
口が裂けても「誰とでも」とは言わないのが、安定と信用の亀田ブランド、でしょうか(笑)。



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新旧対決、彼はもう「旧」の側にいた 久高寛之、松本亮に判定負け

2014-04-10 00:17:43 | 久高寛之


もう10年以上前の話になります。

当時、ある4回戦ボクサーと縁があって、応援していたことがあります。
その選手は、すでに数戦のキャリアがあって、ある試合で初回KO勝ちを収めました。
観戦しに会場へ行けなかった私のために、試合映像のビデオを送ってもらって、それを見ました。

当然、結果は知っていて見たのですが、私は応援していたその選手よりも先に、
これがデビュー戦だという、対戦相手のボクサーの動きに目を奪われました。

力み無く、しかし高くガードを掲げ、上体を柔らかく、リズミカルに振って、
構えた位置から伸びてくるジャブ、鋭く飛ぶ後続の右ストレート。
一目見て、普通のボクサーとは段違いの素質が見て取れました。

しかし、私の応援していたボクサーは、素質では劣ったかも知れませんが、
よく鍛錬を積む努力家で、勇敢な試合ぶりを見せるのが常でした。
この試合でも相手の鋭い攻撃を浴びつつも果敢に踏み込み、右クロスをヒットさせて反撃、
返しの左、ワンツーなども交えて、結果としてツーダウンKOで勝利を収めました。

見終えて、よくぞこの相手に勝ったものだ、と思う、短くも激しい、壮絶な試合でした。
聞けば試合後、勝ったにも関わらず、その選手はしばらく、険しい表情を崩さなかったそうです。

「結果は勝ちでしたが、相手、強かったです」
「完全に屈服させたかというと、全然違います。もう一回やったらわからないです」

この選手は、この次の試合で、6回戦昇格をかけた試合を引き分けたのち、引退を決意します。
私の目には、もっと上を目指せるのでは、と映る、芯の強さを持つ選手でしたが、
自らの先行きに対して、彼自身は極めて厳しい断を下しました。


そして、この敗れた、デビュー戦のボクサーは、その次の試合も判定で落とした後、
3戦目から連勝街道を走って、全日本新人王の座に就くことになります。

その後の彼、久高寛之のキャリアについては、改めてあれこれ書くまでもないかもしれません。
数々の強敵と、場所を選ばず拳を交えるも、日本、東洋の王座を獲れなかったマイナスを語られる反面、
世界的な選手と数多く闘い、そのいくつかに勝利した、国際色豊かなキャリアは、
少なくとも私にとっては、一定以上の納得感があるものでした。

しかし、三度目にして初めて地元で挑んだウーゴ・カサレス戦の、歯がゆい「敗退」と、
昨年の敵地アルゼンチンにおけるオマール・ナルバエス挑戦における完敗を経て
さすがに引退か、と勝手に思っていたところ、今回の大興行に彼が出場すると知りました。

正直なところ、感慨深い何事かが、私の心中にあったわけではありません。
ああ、この手の試合に、あの久高が出るのか、というだけのことでした。
もちろん、寂しく感じはしましたが、彼に対して、ここから何かを期待する、
激しい気持ちで応援するぞ、というような心境にはなっていませんでした。


対戦相手の長身、松本亮は、序盤から圧倒的な体格、リーチの差で、久高を圧倒しました。
久高が懐に入れたか、と思う瞬間もありましたが、そこには振りが小さく、切るように打つ右ショートが
必ずと言っていいほど飛んできて、ヒット、攻勢、いずれも松本の圧倒的なリードで試合は進みました。

大手ジムの若手選手の中には、ジムの自主興行にばかり出て、選ばれた相手に連勝を重ねているが、
戦績ほどには強くは無い、という選手が時々います。しかし松本亮は、そういう選手とはひと味違いました。
井上尚弥のような桁外れの驚異ではなくとも、素質に恵まれ、着実に力をつけていると見えました。

久高寛之は苦闘のさなかにいました。
敵地でダウンを奪って、優勢に進めたにも関わらず負けたデンカオセーン戦に代表されるように、
タイ、フィリピン、アルゼンチンなどで苦しい闘いを強いられた経験の多い久高ですが、
この試合は、事実上違う階級の選手といえる松本と闘わねばならないという、
言ってみれば試合が始まる前からの「立場」の違いが、彼を苦しめていました。

ベテランと若手の新旧対決、という構図の試合で、彼はもう、その先を期待されることのない「旧」の立場にいる。
そして、その立場に甘んじた数多の、過去の選手たちが受け入れざるを得なかった理不尽な状況と、
松本亮の若さと力にさらされた久高寛之の姿は、彼の試合を長年に渡り、ほぼ全て見てきた者にとり、
やはり悲しいものとして映りました。


ラスト2回、久高は果敢に右で打ちかかり、松本がやや冷静さを失ってその打ち合いに応じたこともあり、
いくつかクリーンヒットをとって、場内を沸かせました。
その姿は、綺麗な形でのカウンターパンチ狙いに固執することもあった過去の彼の姿とは、まったくの別物でした。

「ベテランの意地を見せた」と、紋切り型の表現をすれば済むものなのかもしれません。
しかし私には、抜群の素質を持ちながら、いつも何かが手遅れになり、僅かに的を外し、運に恵まれなかった
久高寛之が、彼自身の過去を振り払わんと、呪いを絶ち斬ろうと、その拳を振り回しているようにも見えました。

あれほどの才能を持ち、期待もされ、でも誰もが思い描いたような栄光には、手が届かなかった。
その理由が何なのか、などと今更問うてみたところで、意味はありません。
ボクシングとは、闘うこととは、そのようにして人を、ボクサーを振り落としてゆくものです。

かつて彼を破ったボクサーが、その次の試合で、自らの先に、厳しく断を下したように。
久高寛之にも、いくつもの闘いと、勝利と敗北があり、それが積み重ねられた過酷な日々が、
そして、振り返れば幸福だったかも知れない日々が、終わりを迎える日がやってくる。
おそらくこの試合が、その終の日となるのだろう。

最終回のゴングを聞く頃、そんな風に思っていました。そんな試合でした。



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不足が不足のまま これが終止符か? 久高、強豪ナルバエスに惨敗

2013-08-25 17:47:46 | 久高寛之

ネットで生中継を見ていましたが、正直、見るに堪えない試合でした。
久高寛之に対する私の心情は過去にも何度か書いてきたとおりのもので、
本当に、見ずに済ませたほうが良かったかな、という気持ちでいます。


初回、両者スローな立ち上がり、ことに最初の方、ナルバエスは見ているだけ。
ところが対する久高、手数を出して先手を取りに行くでもなく、
そうかといって頼みの右を隠すでもなく、中途半端に右を覗かせ、手の内をさらしてしまう。

地球の裏側アルゼンチンへの遠征、しかも地方都市への相当な距離の移動だったとかで、
ただでさえ自信を持てない体力の温存策だったのかもしれませんが、
ならばもっと、決め手の右をも温存して、いろんな布石を打つべきなのに、
いかにもやることが中途半端で、この時点で先行きが暗いものに感じられました。

さほど好調とも見えなかったオマール・ナルバエスですが、
2回からは徐々にリターンの形から手を出し始めます。
ラフなフックを上に捨て、ロングの距離から左右のボディブロー。
少しタメを作っての右を打つ以外攻め手がなく、引くでもなく、攻めるでもない
中途半端な久高の構えに乗じ、どんどん手数を出してくる。

4回、久高が左右の連打を繰り出して攻めるが、すぐに攻撃が止む。
決して万全ではなさそうに見えたナルバエスですが、ここまで楽な間合いで闘えれば、
さすがに調子も出てきます。
身体の軸を半分、右サイドにずらした位置取りから左右の連打を当て、
アッパーで煽り立て、ボディを叩きと、多彩な攻撃で久高を打ち込みます。

中盤以降、ダメージと疲れ、両方がはっきり見える久高、両手を下げて挑発しますが右ジャブを突かれる。
L字ガードを固めて右アッパーを覗かせる場面もありましたが、やはり続かず。
右でセットしてサイドに回り、上下左右と多彩に当てるナルバエスの連打で試合は一方的に。
10回、レフェリーストップがかかったときは、悔しいより安堵の気持ちが先でした。


タイやフィリピンへの遠征経験が多くあり、なおかつ試合内容も良いものが多く、
勝ち星も上げてきた実績のある久高寛之だけに、いかに過酷な敵地での試合とはいえ、
結果はさておいても、もう少し見せ場を作れるような試合になるのでは、と期待しましたが、
実際は、あのもどかしく悔しい、各方面から厳しく評されたウーゴ・カサレス戦以上の惨敗でした。

確かに上記の通りの長距離移動、東南アジアとはまた違った南米でのアウェー戦での調整の困難、
試合への準備期間の問題などなど、大変なことが多かったのは事実でしょう。
きっと、好調時に比べれば、思うようには動けないコンディションであったことも推察できます。

しかし、あまりにも単調で、狙いが見え見えの闘いぶりや、右以外の攻め手の無さなど、
かつてのいくつかの試合で露呈した久高寛之の「不足」が解消されるどころか、
さらに拡大したような試合展開を見ると、それらを考慮してもなお、思わず溜息が漏れました。

4度目の世界挑戦、近年の南米大陸では屈指の強豪であるナルバエスに挑んだこの試合は、
その状況がひょっとすると不本意なものであったかもしれませんが、
仮にこの試合、又は他の相手との試合が、国内におけるベストな状況下で実現したとしても、
結果的には同じだったのではないか、とまで思ってしまいました。


今後というか、先のことについて、何事かを望むという気持ちは、正直、持てないままでいます。
よく一面的な見方で批判的に語られる、彼のこれまでのキャリアについては、
私は内容的に、数多の挑戦者たちに劣るものではないと見てきましたし、
それが間違いだったとは今でも思いませんが、そういう是非論以前の問題として、
今日の久高寛之が喫した惨敗、その内容の乏しさには、衝撃的というか、驚愕というか、
なんと表現していいのかわからないものを感じています。

優れた才能を持ちながら、それを十全に生かすための心技体に不足を抱えた久高寛之の闘いは、
根本的なところで変化が見られないまま闘われた4度目の世界戦において、
終止符を打たれることになるのでしょうか。


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未だ足りぬもの

2010-12-23 20:05:19 | 久高寛之
府立体育館から帰ってきました。

久高寛之、三度目にして初の大阪での世界戦は、ウーゴ・カサレスに3-0の判定負け。
またも王座奪取はならず、でした。


スカイAで生中継されたので、ご覧になった方も多いかと思います。
久高は一打のカウンターの切れ味に秀でたものを見せたものの、
その得意技が出せて、明白に山場を作れた以外のほとんどのラウンドを落としていました。

それは王者ウーゴ・カサレスが名城信男との二試合でも見せた強みによるものでした。
久高を押し込める体格の大きさ。時に単打のカウンターでぐらついても耐え抜く粘り。
毎回のように繰り返すスイッチによる幻惑、ペース掌握、或いは奪回。
劣勢のあとに、必ず見せる懸命な連打による攻勢。

これらの前に、久高は単発の好打を決めても、追撃するリズムがなく、そのバランスを持たないし、
そもそも自らリードパンチを繰り出して試合を作れませんでした。
カウンター狙い「だけ」で構成されたボクシングは、世界戦の12Rの過半数を支配するには、
あまりにも欠落した部分が多すぎました。

また、カウンターにつなげるために最善の策と考えているのであろうL字ガードによるディフェンスは、
中盤まではカサレスの連打をかなりの頻度で防いでいましたが、
疲れの見えた終盤はそうもいかず、明白に失点を重ねてしまいました。
さうぽん採点は久高に甘くて116-112。明白な敗北でした。


久高寛之は優れた素質を持つボクサーです。それは誰もが認めることだと思います。
しかし、上記したとおり、世界を獲るには、部品が足りない。試合を見ていて、率直に思ったことです。

久高寛之はデビューから連敗、その後メインイベンタークラスになってからも、
海外遠征を含む強豪との対戦を重ね、節目で痛い敗北を重ねつつも、
三度の世界挑戦機会を与えられるところまで闘い抜いてきました。

それでもなお、こうして明白に不足なところを露呈した今回の敗北は、
いったい彼から何を奪い、そして彼に何を与えるのでしょうか。

目の前の敗戦を見てなお、こんなことを考えるのはひいき目が過ぎる甘い感傷かもしれませんが、
試合後、正直に思ったことです。


三度目の世界戦を地元で実現するにあたり、彼の周囲や陣営が費やした労苦たるや、
きっと相当なものだったでしょう。とてもじゃないが盛況とは言えない入りの会場で、
懸命に彼に送られ続ける声援を聞きながら迎えた試合の終盤、この試合が終わったあとの
久高寛之の未来はいったいどんなものになるのだろうか、と、そんなことをぼんやり考えていました。

安易に四度目などと期待していいものなのだろうか。
そもそも彼は、その期待を受けるに値する逸材なのだろうか。
もしそうでないなら、そうなるためには、単に技術面云々ということではなく、
彼にはいったい何が求められ、何を証さねばならないのだろうか。

今のところ、何の答えも出しようがない問いではあります。
そして、もし今後、久高寛之がなお闘い続けるのなら、きっとこの問いを思いながら、
私を含めたファンが、彼の姿を見つめ続けることになるのでしょう。

久高寛之は、普通のボクサーには無い素質の輝きを持つが故に、
それ故に背負った重い宿命を背負いつつ、なお闘ってゆくのでしょうか。





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