さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

苦しみながらも巧みさを失わず 八重樫東またも見事なサウスポー攻略、三階級制覇達成

2015-12-31 05:52:39 | 関東ボクシング



八重樫東が、五十嵐俊幸戦に続いて見せた、サウスポー攻略の一戦は、
立ち上がりから快哉を叫びたくなるほどの、見事な出来映えでした。


長いリーチで押し込んでくるサウスポーのファイター、という形自体が変則ともいえる
王者ハビエル・メンドサに対し、攻めるときは僅かに身体を左に寄せて打ち、
右に回るときは斜め後方へ遠ざかりつつ回る。
会場で見ていると、リングの全景が見えるので、八重樫がこの基本を丁寧に守って、
試合を運ぼうとしている意図がはっきりわかりました。

右からリード。返しの左フック。時折左アッパーを、メンドサの右腕の下に通す。
メンドサの伸びてくる左ストレートや、変な引っかけ気味のフックから、左回りで遠ざかる。
序盤から、サウスポーの泣き所であるレバーを、小さく左フックで叩く。

対サウスポー戦で、こう出来たら良いな、と思うことが、ほぼ完璧に網羅された好スタート。
メンドサの膨大な手数を、完全に外せたわけではないが、それに倍する好打を重ねて、
試合の流れや「回り」自体は、間違いなく八重樫のものになりました。

4回あたり、八重樫が敢えて?メンドサに手を出させて下がった時間があり、
それ以降も上下動のダックではメンドサの左や連打を外せなかった場面もありました。
しかし、八重樫はすぐにコンパクトな右リードなどを当て、流れを取り戻します。
失点があったとしたら後は6回と、終盤にひとつあったかどうか。

その終盤は、ヒットを許す場面が増え、両瞼も腫れ気味、意図してペースダウンする時間もあったか。
しかし、攻められた、と思った直後に、逆に右から反撃して打ち込み、逆にそれを山場にしてしまう、
果敢でありながらも巧みな試合運びを見せ、最終回などはTKO勝ち同然の、見事な締め括り。
その闘いぶりは、多少ハラハラしたものの、すぐにそれが安堵、感心に変わる繰り返しでした。



かつて、イーグル京和戦での大敗を受け、当時、最短記録狙いに走った陣営の判断を批判し、
八重樫という優れた素材が無駄に傷つけられた、という主旨の記事を書いたことがあります。
あのとき、私は八重樫の将来を極めて悲観的に捉えましたし、その後の国内戦線での苦闘は、
それが残念ながら間違っていないことを証しているように思えました。

しかし、数多くの傷、というより深手を負い、挫折を経験しながらも、彼は当初のイメージだった
天才型のパンチャー、という枠を越え、より逞しく甦り、世界王座を手にして以降は、
その果敢さが世に広く知られる選手となりました。
井岡一翔戦、ローマン・ゴンサレス戦などでは、敗れてもなおその声名を高めたものです。

今回の試合は、その果敢さが彼に災いするのでは、という心配をしていました。
五十嵐戦、エドガル・ソーサ戦での巧みな試合運びが見られれば、充分勝機もあるはずだが、
一打の決め手を持たない代わりに、相手を乱戦の流れに絡め取るハビエル・メンドサの術中にはまれば、
八重樫を待つのは、その果敢さ故の敗北ではないかと。


しかしそれは全くの杞憂に終わりました。開始から僅かの時間で、そう思えた試合でした。
目の前の暗雲が、早々に吹き飛ばされたような思いでした。
その後の展開は、確かに激しく、苦しいものでもありながら、私には終始、晴れやかな気持ちで見られた一戦でした。

八重樫東が、激しい闘いの中でも、冷静かつ巧みであり続けたから。
冷静な思考と、燃える闘志の両方が、矛盾無く両立する、真のボクサー、ファイターの姿が、
そこにあったから、なのだと思います。


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採点は、会場で見ていると11対1。TVの録画を見ても9対3までか。
公式採点もだいたい、その範囲に収まっていました。

いずれにしてもクリアな勝利で、八重樫東、三階級目の世界タイトル獲得。
これは日本初の「棚上げなし、決定戦なし」による三階級制覇でもありました。

しかし、リングの上では、清々しい言葉が、八重樫東によって語られていました。

「(三階級云々は)オマケ...です。」
「強い相手と闘うことが、プロボクサーにとり、喜びであり、仕事であり、皆様への恩返しで...」

言い終わらないうちに、場内から沸き起こった大きな賞賛の拍手が、彼の言葉を掻き消してしまいました。
その拍手に、私も参加させていただいた一人です。

余計なことは、言う必要も、思う必要もない。
余計なことを繰り返し、でっち上げと取り繕いを繰り返しながら生きていくしかない「連中」の存在は、
八重樫東のような、真のプロボクサー、チャンピオンの前では、徹底的に無意味でしかありません。

自分の心中にある「余計」を恥じつつ、そう思えたことが嬉しくもありました。


素晴らしい闘いぶり、そして見事な勝利でした。八重樫東を、またも心から称えたい気持ちです。
井上尚弥の衝撃的強さと共に、本当に良い物を見せてもらえた一夜でした。素晴らしかった!



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「王」の拳、炸裂 井上尚弥またも圧勝「三人目の世界1位」を一蹴

2015-12-30 04:20:59 | 井上尚弥



毎度の通り、言葉を失ってしばし経つ、井上尚弥の試合観戦後です。
それでも何とか、簡単に感想を。




挑戦者ワレリト・パレナスは、初回から強く構えて前に出る立ち上がりでした。
しかし、その構えを刃物で削ぐかのように、井上尚弥の拳がかすめていきます。

その速さ、鋭さに目を奪われつつ、過去の井上の世界戦で、減量が限度を超えていると見えた
ライトフライ級の初防衛戦を除けば、若干、大人しめの初回だな、とも感じました。

アドリアン・エルナンデス戦では、腰をもっと落とした右ボディストレートを叩き込みましたし、
オマール・ナルバエス戦はもう、改めて言及するまでもありません。

それに比べると...ひょっとすると、右はまだ...と、ちらりと思った2回早々、
無意味な懸念は、力ずくで吹き飛ばされました。


速い踏み込み、連打、左フックの好打、というか着弾。
そして、こちらが「良いの入った、さあ次!」と思うよりも速く、もう追撃が始まっている。
間断なく続く攻撃、パレナスが左ガードを上げて懸命に防ぐ。
ところがその上から井上の右拳が打ち込まれ、もう一発、これもガードの上?
いずれにせよパレナスの身体が揺らぎ、崩れ落ちる。

場内騒然、ガードの上じゃん!と周辺から声が聞こえる。
こちらもわけがわからないまま、立ち上がったパレナスを見ると、
もうストップでもおかしくないほど、ふらふらとして、頼りなげ。
結局続行されたが、結果として蛇足でした。左フックが決まり、二度目のダウン、TKO。

場内の歓声の中、少し髪型が変わり、若干大人っぽくはなったけれど、
それでもまだまだ若々しい井上尚弥が、笑顔で右拳を突き上げるのが見えました。



試合の予想自体は、過去記事にも書いたとおり、一応、井上勝利で問題はないと見ていました。

しかし、一年ぶりの試合で、ブランクや拳の不安や、という懸念もないわけではない。
天才的な才能、見事な強さを見せたボクサーが、こうした要因から、
別の試合で、別の顔を見せることなど、ボクシングの世界では珍しいことでも何でもありません。

でも、やはりそれは杞憂に終わりました。
井上尚弥の強さは、権威やシステムが瓦解した、荒廃したボクシング界の現状を超越する、
絶対的なものとして、変わることなく存在している。

彼は、単なる、強いタイトルホルダーではない。
真の「王」たる者の力とは、強さとは、つまりはこういうものなのだ。


それを当然のように体現し、勝利を実現して見せる井上尚弥には、
感心を通り越して、呆れにも似た感情さえ抱いてしまうほどでした。
もう、どう称えていいのかさえもわからない。
これまでにも似た感情を彼には抱いてきましたが、またしても...でした。


そして、これまたまたしても、ですが、彼の今後には、改めて壮大な夢を見てしまいます。
同級の並立王者たち、加えて今は無冠ながら井上にとり最大の難敵であろうゾラニ・テテ、
そして、軽量級では史上でも希なるPPVファイター、ローマン・ゴンサレスとの対戦。
或いは、バンタム級への進出などなど。

これほどの壮大な夢を、ひとりのボクサーに仮託出来る、してもいいと思わせてくれる
井上尚弥の存在に、改めて感動しています。



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対戦相手のワレリト・パレナスは、井上戴冠後の一年で、井上への挑戦を辞退、回避、
まあ表現は何だっていいですが、そういう判断をした「WBO1位」の選手が二人居た後、
三人目に、その座に据えられた、最上位挑戦者でした。
俗な言い方をすれば、逃げなかった人、ということでしょう。
試合が終わった今、何よりもそのことを称えてあげたい、そんな気持ちでもあります。

そして、井上はこの相手を文字通り一蹴したことにより、
彼の前に居た二人もまとめて下したようなものだなぁ、とも思ったりします。
一つの勝利で、いっぺんに三度防衛したようなものかな、という。

まあ、あまり意味のないこじつけに過ぎませんね、こんなの。
ただ、このブログをどう書き出したらええのかね、井上凄すぎー、尚弥様ステキー、
なんてそのまんま書くわけにもいかんしね、どうすべや、とあれこれ考えあぐねているうちに、
こんなしょうもないことを思いついたので、最後にちょっと書いてみました。


でも、彼の試合には、ホントに、普通の数倍の価値がある、という意味では
案外外れてないのかも、と思ったり...いやはや、本当にもう...。


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細野悟-下田昭文ほか速報予定

2015-12-29 11:05:23 | 井上尚弥
本日有明コロシアムより、アンダーカード速報予定です。
こちらからご覧ください。

数ラウンドずつお送りしたいと思っていますが、
電波状態によっては結果のみになるかもしれません。ご了承を。

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若き才能、歴戦の王者を制す 拳四朗6連勝で日本王者に 堀川は引退へ

2015-12-28 08:34:14 | 関西ボクシング



昨日は京都、大山崎町立体育館にて観戦してきました。


先日、大森将平の衝撃的な敗戦があったばかりですが、この日は京都のジム所属選手同士による
日本タイトルマッチという、たぶん史上初の試合が実現しました。

長きに渡り数多くの強敵と闘い、惜しくも苦杯を舐め続けながら、ついにチャンピオンの座に就いた
歴戦の勇士、堀川謙一に挑むは、寺地永を父に持つ若き俊才、寺地「拳四朗」。

何もかもが対象的な、絵に描いたような新旧対決の構図でしたが、試合前の予想としては
「6戦目で挑むには、堀川は手強すぎる相手ではないか」と思っていました。
拳四朗は確かにセンスがあり、良いリズムがあり、攻防一体の良いスタイルを持っているが、
まだ不安定な面もあり、その隙を突いて、切り込んでいく力が堀川には充分あるのでは、と。


試合展開は昨日、速報というか経過のみになってしまいましたが、こちらに記した通りです。

私の採点は96-94、拳四朗でした。もちろん、迷う回もありましたが。
公式採点と比べると、少し堀川の攻勢を高く評価した採点になっています。
しかし公式採点に異議はありません。前半終了時、拳四朗フルマークの採点には少し疑問ですが、
概ね、納得のいく数字だと思います。

全体的に見て、拳四朗が自分のリズムで試合を制し、果敢に切り込んだ堀川を捉え、迎え撃ち、
そこから得た好機には正確な追撃を加えて打ち込む、という流れで、拳四朗のクリアな勝利だったと見ます。


立ち上がりから、左ジャブのヒットはほぼ拳四朗。堀川の左は、ボディにはヒットするが、
顔面をジャブやフックが捉えた回数は少なく、空いた「間」には、高い頻度で拳四朗のジャブが差し込まれる。
これが採点上、高く評価された面があったでしょう。

中盤以降、堀川がより強く押して出て、接近戦、さらにいうなら密着戦の割合も増えますが、
そこでも拳四朗はアッパーカットによる迎え撃ちで、堀川の攻撃をある程度までに食い止めます。

さらに7回、右カウンターから左フック、そこからコンビネーションを繰り出して堀川を後退させ、
ロープ際に追って打ち込む。
終盤、堀川がなかば捨て身で迫ってくる展開でも、時に足を使って捌き、時に打ち合いに応じ、
大崩れはせず、大過なく試合を終わらせました。


拳四朗のボクシングは、高い精度で的を捉えるジャブ、良い距離を保つフットワークに加え、
迎え打ちのアッパーやボディ攻撃、そして右のカウンター、さらに好機の追撃に威力が増していて、
元々あった繊細な攻防、リズミカルな動きがさらに生きていました。
前の試合よりも、着実な成長の跡がはっきり見えたように思います。
好選手としてアマチュア時代から評価が高く、良い素養を沢山持った選手ではありましたが、
一戦毎に目に見えて伸びています。

昨日の試合では、「今はそういう時期だから」と言うだけでは収まらないものを見せられた。
そんな風にも思う、鮮やかな新旧交代、戴冠劇でした。拍手を送り、今後のさらなる飛躍に期待します。


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敗れた堀川謙一は、試合前から報じられた進退への決意が、試合前の様子からも見てとれました。

花道をゆっくり歩み、赤コーナーのリングエプロンに立った堀川は、なかなかロープをくぐらずに
何度もストレッチを繰り返し、花道の応援団に視線を送り、それからリングに入りました。
まるで、自分にとり最後となるかもしれないリングの感触を、じっくりと確かめているように見えました。

花道を、ステップを、キャンバスを踏みしめる足の感触。汗と血の臭い。人々の声。リング上に浴びせられる光。
今、彼はそれをどのように感じているのだろうか。その世界はどんな絵として、音として、記憶に刻まれるのだろうか。

彼の姿を見ていると、そんな風に、試合以外のことをしみじみと思ってしまいました。


その闘いぶりは、実直かつ果敢な、いかにも堀川謙一らしいものでした。
歴戦の経験、辛酸を乗り越えて頂点に立った男は、若くて戦績の浅い、しかし抜群のセンスを十全に生かす確かさを持った
若き挑戦者の技巧の前に及ばず、王座を失いましたが、その姿は堂々たる王者のものでした。
敗れてなお、若き才能に容易い勝利を与えはしなかった、誇らしい闘いでした。

見終えて、とても味わい深く、濃密な、良い試合だった、と思います。
出来れば、少しでも多くの目に触れて欲しい試合だった、とも。


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ところで、年末興行ラッシュといえば世界戦のみならずの今年ですが、かねてから
「何でこんなことに」と言いたくなる日程数あれど、昨日、12月27日はまさしく狂気の一日でした。

何せ関西では、京都大山崎、大阪阿倍野、兵庫は三田。最初は同日三興行!と驚いていたら、
阿倍野が二部興行だと後に知り、なんと四興行だったという...。

私はこれを勝手に「関西ルナティック27」と称しておりましたが、本当にどうかしてます。
何のために協会があるんだろうか、という。「協会」じゃなくて「狂会」と書くんかいな、と。
昔、サッカーだったかラグビーだったかがマイナースポーツだったころ、そのように自称した
好事家の集まりがあったそうですが、そういう微笑ましい話とも違うでしょうしね。

審判員は当然人数が足りなかったようで、私が昨日行った京都の会場では、
第一試合の四回戦から、お馴染みの福地勇治レフェリーが登場しました。
また、会場では関東から観戦に訪れた方ともお会いできました。
中には、阿倍野の一部興行を見てから駆けつけた、という豪の者、というかお方まで。
皆様、お疲れ様でした。


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本日、京都より速報の予定

2015-12-27 13:18:22 | 関西ボクシング

本日の日本ライトフライ級タイトルマッチ、堀川謙一vs拳四朗戦
京都は大山崎町立体育館から速報する予定です。こちらからご覧ください。

電波の状況などが悪い場合もありますので、結果のみになる可能性もあり。
出来れば数ラウンドずつ速報したいと思っていますが。


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強引だけど柔軟/強打と脆さ紙一重/万全の意味/足を攣る/大幅改正

2015-12-24 08:44:14 | 関東ボクシング



これだけタイトルマッチの日程が立て込むと、それ以前に大変なのが公開練習ラッシュ。
連日あれこれと続いて、大賑わいです。取材される方々は大変でしょうが。


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IBFライトフライ級王者、ハビエル・メンドサの公開練習。記事はこちら

あのテリーブレことエリク・モラレスが来日するんですねー。何か嬉しいですね(^^)
内山高志や三浦隆司がもう何年か早く生まれていれば、日本人との対戦があったのかも、と思うと残念ですが。
いっぺん、直に試合してるところ見たかったですね。

えー、面戸差じゃなくてメンドサに話を戻しますが、サウスポーのファイター、ということで、
どんな感じかなと動画探してみると、ミラン・メリンド戦はすぐ見つかりましたが、
あとは同姓同名の歌手とか俳優さん?とかがずらっと出て、なかなか他の試合が出て来ません。
で、とりあえずメリンド戦。当時の記事はこちら
WOWOWでやったかな、と思ってたんですが、記憶にありませんでした。
ひょっとすると録画はしたが見落としたのかもしれません。

サウスポーで、白地に青のラインがメンドサ。黒トランクスがメリンド。





試合展開はドタバタしてて、見て楽しい試合ではありませんが、メンドサの闘いぶりは
強引だけど柔軟で、単なる喧嘩腰ではなく、彼には彼なりの理屈があるのだな、と見えるものでした。

攻撃的なサウスポー、常に手を出しつつ前進。体型だけならボクサータイプに見える痩身。
攻撃は右リードも、左ストレートも、ボディ攻撃も、まんべんなく出す。
一打必倒、というのではないが、相手のリズムを断ち切る意識を持って?嫌なタイミングで攻めて来る。

基本、多少打たれて止む無し、という風に見えるが、前後の移動、頭の上下動で外す防御。
しかしこういうファイタータイプながら、身体が柔軟で、ほどよく力が抜けている感じ。

それが攻めの際の手数、動きで外す防御に生きていて、打ち合いの中、相手の対応を見て、
攻めに緩急を付けられる。なかなかの難物、という印象です。
さりとて足使って外そうとしても、長いリーチで追いかけてきそうですし。


対する八重樫ですが、離れて捌く形は、おそらく採らないでしょう。
ここ最近、そういう試合をしてませんし、周囲の期待もそういうものではないでしょうし。

うまくサイドへ回る意識を持ち、単に打ち合うのでなく、接近戦であっても捌く、という発想で
いい回りの試合展開に持ち込んでほしい、と思います。
フライ級でやっていたぶん、パンチ力ではまさるでしょうし、五十嵐戦のように、対サウスポーの
インファイトで先手を取り続け、ダメージを与えてまた攻める、という展開になれば良いのですが。

ただ、メンドサは、実力的にスーパーチャンプクラスではないにせよ、自分の強みが何かをわかっていて、
粘り強そうでもあり、攻略が容易だとは思えません。まだ大激戦になるかも、という気もします。
八重樫が良いコンディションで仕上がれば、勝てない相手ではないはず、ですが...。


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井上尚弥に挑むワレリト・パレナスも公開練習
日本での試合ぶりも含め、Youtubeで探すと数多く動画が出ますが、
とりあえず直近のダビド・カルモナ戦だけ。
黒とゴールドのトランクスがパレナス。緑地のメキシコカラーがカルモナ。





2回、ワンツーで倒す。4回、逆に右ヒットされる。7回、左フック好打も詰めが甘い。
カルモナ動いて速いパンチを当てていく。
パレナス、好スタートだったが、競った試合に持ち込まれ、ドローで暫定王座獲得ならず。

全体的に見て、自分のテンポで強打が決まっているときは相当強いです。
しかし、防御面で、相手がスピードのあるパンチを打ってくると、対応が遅く、打たれる場面が増える。
日本でやった数試合では、その粗が出る前に終わったか、出てもパワーで抑え込んで勝った、という印象です。

井上尚弥相手に、相当な好スタートを切って先制するとか、或いは井上の拳が万全でなかったりとか、
戦力分析の範疇を超えた何事かが起こらない限り、井上の勝利はほぼ間違いない、と見えます。
カルモナ相手に中盤以降、再三ヒットを許して失点していますが、井上相手にこれだけ打たれたら、
失点どうこう以前に試合が終わってしまうでしょう。

ただ、ブランク明けの井上にとっては、分析がどう、前の試合がどうというよりも、
こういう一打必倒の強打を持つ相手は、やはり不安が残ります。
今回は、派手な試合はいいから、丁寧にやってほしい、という気持ちもありますね。


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内山高志は、やはりこの試合をクリアすれば米国進出、ウォータース戦へ、という話が
目の前の試合を差し置いて、大きく取り上げられてしまいますね。無理からぬところですが。
こういう話が出るときって、悪い予感もあったりしますが、内山高志なればこそ心配無用、でしょう。

しかし、この話にゴーサインを出した理由が「5年ぶりに体調万全だから」という話になっているのには、
ちょっと鼻白む部分もありますね。
まあ、そういうことにしときましょか、という各紙記者のつぶやきが聞こえるような気がしますが(笑)


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田口良一、公開スパーで足を攣る

その後は無事に練習を続けたそうですが、ホントに大丈夫なんでしょうか。心配ではありますね。
練習熱心さが仇になったりというのは悲しいので、気をつけて調整してほしいものです。

記事にもある国内のライバル戦というのも、ランディ・ペタルコリン戦と同様、期待したい話ですね。
かつて勝った木村悠がWBC王者になり、加えて八重樫に宮崎と、良いライバルがたくさんいるわけですし。

この選手達をどういう順番で評価するかは、人それぞれ意見ありましょうが、誰と組んでも
良い試合をしそう、という意味では、八重樫か田口が一番を争うだろう、と思います。
そういう王者には、防衛を重ねて行く中で成長をし、もっと良いカードに出て欲しいものですね。


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大幅ルール改正、とのこと。
今までは、割とWBAルールに準拠、という感じだったのが、そうではなくなった印象ですね。

フリーノックダウンルールについては、よりレフェリーの裁定に的確さが求められる、という意味で、
JBCの一部レフェリーの名前や顔を思い浮かべると不安になったりもしますが、
全体的に見れば、より現実味のあるルールに近づいた、というところでしょう。

問題はルールそれ自体のみならず、いかにそれが適切に運用されるかであり、
それはルールがどう変わろうと同じ事、ですね。


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順当あり波乱あり、相も変わらず頭も当たる 全日本新人王決定戦2015TV観戦記

2015-12-21 07:45:50 | 新人王戦



ということで前夜に続き、昨日はG+生中継で有り難く観戦しました。
こちらの記事に詳細ありますが、感想を簡単に。


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ミニマム級は東の小浦翼が、接近戦でもセンスのあるところを見せました。
2回左フックでダウン奪い、粘る北村琉生の左ストレートに左フックを合わす。
くっついても冷静で巧い小浦に感心。この選手、あとは離れた位置に立って
巧く試合を回せるようになったら、上位進出は普通に出来そう。
ミニマム級が新人王戦に新設されて以降、最も才能に恵まれた選手かも知れません。

北村は相手が普通だったら充分全日本獲れそうだったが、相手が悪かった。


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ライトフライ級は、西で技術的に一番安定していると見たユーリ阿久井政悟が
細谷大希のインファイトにつきあってテンポを落とし、体力を浪費した印象。
TVで見てると、判定は若干意外な感じ。ホールでこの内容だと、大概負けかと思いましたが。

西軍代表決定戦では拳を傷めていたとかですが、過密日程の影響もあったか、
巧いけど攻撃に厚みがなさ過ぎます。体力強化も含め、今後に課題あり。


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フライ級は話題の工学部大学院生ボクサー坂本真宏登場。
坂本、試合開始の時点で疲労感あり、身体が重そう。過密日程とダメージの影響か。
ここまで無敗だけど、打たせる試合が多かったせい、と見えました。
対する志賀弘康は果敢に攻めてきて、坂本ヒット取るも手数で負ける。
強打と連打の対決でしたが、坂本は苦しいながらも打ち勝ち、左アッパーでKO。

坂本は防御を強化出来れば、身体も強いし良く鍛えているので、今後に期待ですね。


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スーパーフライ級は、18歳の強打者、梶颯が見事な初回KO。MVPはこちらかと思いましたが。
井上太陽は果敢に攻めて来るが、受けて返す形の梶が左フックから連打、右合わせて倒す。
再開後右ショートで二度目のダウンでKO。パワーがあって冷静で、若いけど、闘う男の風格があります。
今後は相手のレベルが上がるので、受け身になりすぎないことが大事かなと。

敗れた井上太陽は気合いも充分、短いながらも、こちらも魅力的な攻撃ボクシングを見せました。


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バンタム級は長身サウスポー武田航の技巧が、西軍代表決定戦で事実上MVP級の試合をした
姫路木下の清瀬天太を制しました。1回、清瀬右から入るが届かず、武田の長い左ストレートでダウン。
清瀬は右で入るが単発、武田は左、返しの右、また左ロングとヒットを重ねる。
終盤やや武田疲れたか、クリンチ、ホールド増えるが、要所で左を合わせて判定勝ち。

攻防共に新人王の水準を超えた内容の濃い試合。
武田は清瀬の攻撃を、距離を生かして外したが、終盤はやや失速気味。今後に少し不安も見えました。


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Sバンタム級は市村蓮司が金井隆明を初回KO。始まった時点で体格差あり。
金井果敢に闘うがパワーの差歴然、左フック二発、右ストレートが決まり、ツーダウンKO。
市村はMVP獲得。確かに見事な勝利でした。


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フェザー級は壮絶な打ち合い、ただし少々問題あり、な試合。
小柄ながらパワフルな萱沼徹平に対し、大柄な仲里周磨がヒットを重ねる立ち上がりだが、
中盤かなり酷いバッティングを喰らった仲里が出血。レフェリー、ろくに注意も警告もせず再開させる。
萱沼がこの後、左フックで仲里をダウン。
2回、仲里立て直す。接近して打ち合い、これは互角か。萱沼もカット、バッティング。

3回以降、萱沼押すがヒットで仲里。左ボディや右が再三決まる。
萱沼単発の強打と共に、バッティングやローブローも目に付くが、レフェリー放置。
最後は両者フラフラだが、懸命に手を出す。双方の闘志に拍手。
しかしヒットの正確さでは仲里。萱沼はラビットやオープンも多い。

ダウンした初回以外は、ほぼ仲里が抑えたか、イーブンラウンドがあるにしてもドローか、と見ました。
判定は1-0(49-46萱沼、47-47×2)、マジョリティドロー、萱沼優勢点で新人王獲得。

判定については見方はそれぞれでしょうが、TVで見てると仲里勝利で問題無いと見えました。
しかしリングサイドで見ているジャッジには、萱沼のパワーが印象的だった、ということかもしれません。

それは仕方ないとしても、これじゃあ、頭突きはやったもん勝ちなんやね、という感じも残りました。
こういう試合を見ると、やっぱりWBCルール(切ってない方から減点)導入も必要なのかなぁ、と考えてしまいます。


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Sフェザー級は、何でも生年月日が同じ、戦績も7勝5KO無敗同士という石川元希と中谷有利の対決。
1回、中谷はいつもよりはガードを上げ気味。長い右ボディストレート、しかし石川右フック合わせ、中谷が腰を落とす。
石川は右目を傷めたか、気にする仕草。
2回、両者共、強打には自信があるが、防御には不安がある模様。打ってはクリンチ。リズムがなく、流れもない。
3回、中谷身体を晒して正面から右連発。石川は左を返すが、中谷がそれを外して右でダウン奪う。
しかし両者とも、打ち合うとガードを忘れ、打たれたら思い出す、という繰り返し。ひとことで言うとドタバタ。

4回、石川の右目にドクターチェック入る。パンチが目に入って視力が落ちているらしい。
この後バッティングで二度目のチェック、石川今度は鼻骨骨折とのことでストップ。
負傷判定となり、38-37、39-36×2で中谷。

両者とも体格、強打に恵まれた者同士ながら、技術面では到底褒められた試合ではなし。
中谷の半ば捨て身の攻撃が、従来からある石川の防御の問題点を拡大させた、という印象。

試合後のインタビュー、アナウンサーが「見事なノックアウトでしたね」とボケをかます。
長丁場で疲労しているのは観客や視聴者だけではない模様...。


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ライト級は、サウスポーの中島龍成が西のMVP松村智昭に対し、当てては動くの繰り返し。
松村、サウスポー相手に苦戦、距離が合わない。
2回ローブローで中島少し休憩。3回左喰ったあと松村右ヒット。
4回中島の右フックで松村バランス崩す。判定はスリップ。中島終盤カウンターから攻勢。
5回、中島右で突き放す。
西のMVP松村の強打不発。技巧のサウスポー相手に苦杯。


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Sライト級は東のMVP河田神二郎と、鹿児島のサウスポー藤田光良。
1回藤田回って左、河田少しやりにくそう。
2回河田左ボディ連発。しかしこの後バッティングがあり少しだけ休憩。
出血こそなかったが河田、けっこうダメージある様子で、見るからに動きが悪くなる。

藤田左ストレート、右フック合わせ、河田動きが止まり、腰落とし、という場面あり。
4回は河田が強引に出るが、藤田もカウンター。微妙。5回バッティングで河田カット。
もつれながら手数で河田が取ったか。

2回、3回は藤田、5回は河田、あとは微妙という印象でしたが、藤田が3-0で勝利。
この試合も、2回のバッティングが試合の流れに影響したように見えました。

ということで、東西共にMVP受難の決勝戦。揃って対サウスポー戦で苦杯を舐めました。


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ウェルター級は、永野祐樹が抜群の長身、リーチを持つジラフ麒麟神田を初回KO。
長い右ボディをヒットしていた神田だが、踏み込まれて左を喰い、二度ダウン。
神田は距離を支配できれば良いのですが、やはり左ジャブが出ないのでは厳しいか。


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ミドル級は、外国人選手との連戦となった長濱陸が、ロックハート・ブランドンシェーンに判定勝ち。
両者良く見て打ち外す。初回ややブランドンシェーン。2回長濱左ボディヒット。
3回大柄な長濱が左フックなどで押す。ブランドンシェーン徐々に失速。4回も長濱左ボディなど手数出す。
意外にというと失礼ながら、キャリアの浅い長濱が全体的に良くなっていた印象でした。


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そういうことで、全体的にトピックが多い決勝戦でした。
あれこれ見所があり、起伏があり、順当な勝利あれば波乱も重なり、やや問題もあり、という。

三賞はMVP市村、技能梶、敢闘坂本でしたが、個人的にはMVPと技能は逆でもOKかなと。
敢闘は、観戦していた方とも意見が一致したんですが、私が選ぶならやはり、仲里周磨ですね。



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形になってきた/良い話進行中/5位ということは/終わり時間/申し訳ないですが

2015-12-19 22:37:42 | 話題あれこれ



本日の辰吉寿以輝3戦目は、G+で生中継がありましたので、ありがたく観戦しました。

初回、左ジャブをボディへ突くが、相手の脇田洸一が左フックを合わせてくる。微妙な回。
2回は辰吉が逆ワンツーで入って連打。3回脇田がフェイントを使いコントロール。
4回、辰吉の右が脇田にダメージを与え、追撃。終了間際に打ち込んで、3-0判定勝ちでした。

本人は倒せなかったことに不満そうでしたが、デビュー戦の時から比べると、
構えたガードから手を出す動作がずいぶん滑らかで、だいぶ「形になってきた」と言えると思います。
アマチュア経験無しでプロ3戦目の4回戦ボーイとしては、悪くない部類ではないかと。

否応なしにつきまとう注目選手としての立場と知名度(=興行価値?)故なのか、
新人王トーナメントへの出場はしない方針になったらしいですが、こればかりは微妙な判断ですね。

今日の試合でも、最終回の明白な攻勢がなければ、ジャッジ次第で負けもありえたと思うくらいで、
新人王戦で本命視されるような力は、残念ながらまだ無いとすれば、とにかく試合の数をこなすべき、
という判断もあり得るのかもしれません。ファンの勝手を言えば残念ですが。


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体重超過でフェザー級王座を失ったニコラス・ウォータース、転級初戦の話。

何でも、内山高志との対戦については、海外情報であれこれと出ているようですね。
帝拳の本田会長が動いてるという話もあり、ワタナベジムやTV東京も了承済みなら、
今回はホントなのかも知れません。

先日、私も色々、前向きな話をさる筋から聞きました。
もちろん大晦日、内山がまさかの取りこぼし、なんてことが無ければ、です。
相手はそんなに大した選手でもなさそうですが、油断は禁物ですね。
というか、ある意味ではものすごく緊張して見ないといかん試合になりそうです。


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唐突に?日本王座を返上した小國以載、調整試合にKO勝ちしたそうです。

ランキングは、知らない間にWBCで5位になっていたんですね。
サンタクルス返上の後、空位決定戦があって、上が空いたせいでもあるんでしょうが。

で、上位でイリミネーションのような組み合わせがあるという話ですが、
上位の中には、試合枯れから再起したはいいが、また色々あれこれとナニなあの方が含まれていて、
その方がああなったりこうなったりすると、ひょっとすると小國が繰り上がったり...?

まあ、そういう話の目処でもあるなら、今回の返上について納得...はしてないですが、
目一杯譲って言えば、仕方ないことなのかもしれませんね。
そういう話への最後のステップとして、久我勇作戦をやってほしかった、とも思いますが。


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フジテレビが大晦日に井上尚弥を出してくれないボクシング業界を諦めて?
格闘技イベントに力入れてるという話ですが、当初聞いてた三日連続開催ではなくて、
29日と31日の二日に分けての開催となったようですね。

この記事によると、29日のフジテレビ放送開始時間は、午後9時からとのこと。
下の記事によると、延長があっても9時24分まで、とのことです。

先日手にしたチケットによると、第一試合開始は午後3時半とのことですが、
何にせよ、終わり時間が無茶に遅くなるようなことはなさそうです。これは有り難い話です。


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で、当日は、こんなイベントもあるとかですが...全体的に高齢化著しいボクシング観戦客に、
需要があるとは思えず、出る方も見る方も、どちらにとっても不幸な話やなぁ、と思っちゃいますね。

去年も人気バンド?のライブがありましたが、正直、往生しました。参ったな、の一語でした。
今年は、売店行くかトイレ行くかして、やり過ごそうと思っております。申し訳ないことですが。



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敵を寄せ付けて打たれた 大森将平、必然の初黒星

2015-12-17 07:15:12 | 関西ボクシング



昨夜は京都にて観戦してきました。
GAORAで生中継もされた一戦ですが、終わってみればあまりに厳しい結果でした。
感想を簡単に。


初回早々、正対したふたりのサウスポーの位置関係を見て「こりゃまずい」と思いました。

試合前のアナウンスを聞き間違えていなければ、116ポンド1/4で計量パスしたという
マーロン・タパレスは、大森将平と比べて小柄に見えましたが、やや広めのスタンスを取った
彼の右足は、踏み込みひとつ、というより、時にそのまま打てる位置を、早々に確保している。

TV画面で見てどうだったかはわかりませんが、会場で見ていると、そういう風に見えました。
「いかん、近い近い!」と。


対する大森将平は、小柄な上にスタンスを広めに取り、当然重心の低い相手に、
右リードを出しましたが、強く撥ね付けるヒットを取る角度を見つけられずにいました。
これはジャブだけでは止まらん、他のパンチも出して止めないと、いつでも打ってくる...
と思った直後、あの左クロスが来て、大森がダウン。あとは一気呵成でした。

見るからに足に来てるとか、それこそ目の前真っ暗で、星が飛んでいるとかいうのでもないでしょうが、
思うように動けず、外せず、相手が思うより速く来る。おかしいなおかしいな、という感じだったか。
大森は右ジャブと右フックでさらに二度ダウンを追加されました。

2回、右アッパーなどを見せて、タパレスが来るところを打つ手立てが見えたか、と思ったのですが
タパレスは自分の良い流れを手放しませんでした。左を叩いて大森を脅かし、返しの右で強烈に倒す。
追撃されてバランスを崩した大森を、レフェリーが救って、試合が終わりました。



これまで、大森が圧倒的な強さを見せた試合では、相手が思うように打てる位置に立つより先に、
鋭く伸びる右のリード、左ストレートで突き放し、相手を寄せ付けない展開がほとんどでした。
加えて、柔軟な下肢から良い感じのリズムが身体全体に連動し、攻防が一体化していて、
積極的に攻めつつも迎え撃ちが出来て、しかもパンチ力がある。

しかし、前回の向井寛史戦では、右ジャブの差し合いで後手に回る場面があり、下肢の柔らかさも
あまり感じられなかったことを、少々不安に思いはしました。
日本王座を圧倒的な強さで手にし、注目度も上がり、様々にこれまでとは違う風景の中で闘うことが、
彼に少々の停滞をもたらすことがあっても仕方ない、というくらいに思っていたのですが。


結果的に、このタイミングで組まれた世界ランカーとの試合は、その僅かな停滞を、決定的な破局へと変えました。
序盤というか立ち上がり、僅か10秒か20秒かの間、相手に悪い位置に立たれてしまっても、
例えば日本タイトルの防衛戦で対する選手なら、それを逃さず打って倒す力は無い場合が多いでしょう。

しかしマーロン・タパレスには、最初の好機を逃さぬだけの力があった。それが全てでした。


こういう内容と結果は非常に残念に思いますし、結果論として、今やるにはちょっと早い試合だったかもしれません。
これまでの試合における、良い展開で見せた大森の、圧倒的な強さ、素質の輝きにばかり目を奪われていた者が、
こんなことを言えた義理では無いのですが。

しかしまだまだ若く、心身のダメージを回復させ、敗因から課題を見出す可能性は充分あるはずです。
言ってみれば、敗因はかなりはっきり見えた試合でもありました。幸いにも、とは言えない部分もありますが。


京都の逸材、大森将平の初黒星は、ボクシングの持つ勝負の厳しさ、怖さを改めて知らしめる、
優勝劣敗の掟に基づいた、必然の敗北だった。そういう試合だったように思います。




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思った以上に鋭かった狼の牙 尾川堅一王座奪取、内藤律樹無念の敗戦

2015-12-15 19:24:59 | 関東ボクシング


正直なところ、技術面でいえば格が違う、と思っていました。

内藤律樹の安定した技巧は、日本上位をことごとく退けてきた実績により証されている。
対する尾川堅一の強打と、その闘いぶりに秘められた「牙」の鋭さは、
蠱惑的な魅力を感じさせるものであっても、勝利には届かないであろう。
そのような、いかにもありふれた想像をしていました。

仮に内藤に危機が訪れるにしても、それは展開次第で何らかの不確定要素が生じる
試合の後半部分であろうし、結局は内藤が試合を巧くまとめ上げてしまうだろう、と。


ここまで、対内藤律樹を想定して?尾川は対サウスポーの試合を重ねてきました。
しかし試合全体を見て、彼が対サウスポーの「システム」を構築しているかというと、
そのスピードとパンチ力に依存した、強引さのほうが目につくものでした。

やはり、正面に立って遠回りの右から攻めるので、その圧力で相手を崩せれば
右を当てて効かせ、攻め込めるが、相手の力が残っているうちは、それが適わない。

そういう状況に相手を追い込む圧力が尾川にある、それは凄いことですが、
同時に、それは相手との力関係に左右されているだけの話でもあります。

いつ左に移動し、いつ右に戻るか。その移動ルートと、打つパンチの選択を
どのように組み合わせれば、より自分の力を有効に生かし、サウスポーの優位性を殺せるか。
尾川のボクシングには、そのような発想や組み立てが、どうしても見えませんでした。

確かに尾川は中野和也を3回、デイビ・バッサを10回かけて倒した。
しかしそれと同じ方法で、内藤律樹に対したら?
倒す機会に辿り着くまでに、規定の10ラウンズは過ぎ去っているだろう。

それが私の事前の想像でした。



実際の試合がどうなったかというと、昨夜速報したとおりです。

立ち上がり、先手を取ろうとした尾川を冷静にいなした内藤の姿を見て、
私の想像通りに試合は進むのかと思ったのもつかの間、
尾川のパンチが思いの外、鋭かったのか、内藤が二歩、三歩と続けてまっすぐ下がりました。

あれ、あの内藤がこんなことをするのはどうしたことか、と思っていたら、
尾川の攻撃が続き、右がボディに打ち込まれる。
続いて右ストレートが上に飛び、まともに打たれた内藤がダウン。
立ったが内藤は視線も定まらないように見える。カウントアウトかストップか!?
しかしレフェリーが試合続行を許可し、内藤はゴングに救われる形になりました。


場内が騒然とする中、心底から驚いたというのが正直なところです。
尾川堅一は、基本的には正面突破の形ながら、思った以上に鋭い牙を剥いて
内藤律樹に襲いかかり、早々に深手を負わせた。そして、それはほぼ、致命傷に見えました。


しかし内藤は2回、攻めこまれながら耐え抜き、右ジャブを繰り出して反撃の姿勢を見せます。
3回、内藤はさらにジャブ、左ストレートを繰り出す。尾川は強引に連打で押す。
4回、内藤は足の動きこそ止まっているが、突き放すパンチがさらに増える。

この内藤の粘り、回復、立て直しもまた驚きでした。
ダメージは深いはずで、思うように動けていない反面、パンチの正確さが戻ってきている。
内藤が止まり加減なので、打ち合えるうちに追撃したい尾川だが、思うに任せない。


早々に終わるかと見えた試合の流れが変わりつつあった5回、尾川は左フックを好打。
内藤がクリンチすると、追撃を阻まれた尾川が投げを打ちかけて、レフェリーが注意。
もし内藤が踏ん張りきれず投げられていたら、一発減点もあり得た勢い。
そして直後に尾川が右、内藤が左を同時に振るが、当たるのはパンチでなく頭、という
バッティングが二度繰り返され、二度目で内藤がカット、ぐらつく。
内藤の傷は相当酷く、レフェリーが割って入り、早々に試合が打ち切られました。


このバッティングについては、内藤側から見ると悪質な反則行為かもしれません。
同じことが二度繰り返されているのですから、減点すべきだったかも、と思います。
見た直後は、ダメージを負った内藤もバランスを崩したまま左を振った「お互い様」の
バッティングかと思ったのですが、その少し前から、内藤の反撃を受けて焦った尾川が
徐々に苛立ち、荒くなっていた印象でもありました。
この辺は、もう一度映像で確認したいところでもあります。何せ興奮しながら見ていましたので。



このように、試合の終わり方は、唐突かつ残念なものでした。
しかし、若干の無念、残念があったとしても、この試合自体は、見に来て良かった、
こんな試合は滅多に見られるものではない、という気持ちの方が強く残るものでした。

尾川堅一の牙の鋭さ、傷を負いつつ立ち向かう内藤律樹、両者の闘いぶりは共に、
こちらの賢しらな事前の想像を超えて激しい、壮絶なものでした。
彼ら二人は、私の見たいと思っていた以上のものを、存分に見せてくれました。
まずはそのこと自体を称え、両者に脱帽したい気持ちです。


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試合後、ふたりの子供と共に、応援団の歓声に応え、最近亡くなったという父君の遺影を掲げ、
インタビューに応じた尾川は、自身の喜びを語るのみならず、内藤との再戦を受ける意志も語りました。
この試合、決着への意見はさまざまでも、この発言は立派だと、誰もが認めることでしょう。
簡潔ながらも、闘う男の、真の誇りを感じさせるものでした。良く言った、と思います。

王者となった尾川堅一の今後には、課題も残れど、さらなる期待をしたいです。



そして、敗れた内藤律樹。その戦績は、常にファンの望む、時にそれ以上の好カード続きで、
それをことごとく勝ち抜いてきた彼には、日本国内における「PPVファイター」の趣さえありました。

「スカパー!」の番組表を見ていると、プロレスや格闘技の大イベント生中継を、
別料金払って視聴する番組がありますが、内藤律樹の試合の生中継を、一試合500円とか
1000円とか払って見るか否か、と言われれば、私は「見る」と即答します。
実際、以前はフジNEXTの生中継が、それに該当していました。

単に、上京してホールで見るより安く済む、という話でもありますが(^^;)
彼がやってきた試合の数々は、内容や結果以前の段階で、そう思わせるカードの連続でした。
そればかりか、荒川仁人戦のような「それ以上」の試合も含むのですから。

ファンにとり、王者とは、トップボクサーとはかくあれかし、という理想を
少なくとも国内レベルにおいて、ほぼ完璧に実現し、体現していた内藤律樹の敗北は、やはり残念です。
しかし、内藤が王者として、試合ぶりのみならず優秀だったが故に、彼がいかに再起するか、
そして無念が残った敗北を雪辱出来るか否かは、さらなる注目を集めることでしょう。



昨夜の試合は、それ自体だけでも、見る者の心を震わせる劇的なものでした。
そして、その終わり方の無念があったが故に、新たなる闘いの始まりを思わせもしました。

また、昨夜と同じように、いや、それ以上に目を離せない、離してはいけないという思いで、
彼ら二人の闘いを見る日が来ることでしょう。

それを思うと、今から再び、心震える思いです。


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