ということで、3月から全試合が中止となったボクシング、当面最後の興行ということで、昨日はBoxingRaiseのライブ配信を楽しく見ておりました。
この興行自体は、色々心配でもありましたが、試合は選手諸氏が全力で闘う熱戦続きでした。
しかし何と言っても
メインの熱戦に尽きる、というところで、簡単に感想を。
OPBFウェルター級王座決定戦は、無敗の日本ユース王者、アフガンの強打クドゥラ金子の戴冠なるか、と目された試合でした。
相手は当初、韓国人選手だったそうですが、上位ランカー長濱陸に変更、試合開催も一ヶ月遅れ。
これがどう作用するものか...当初の通りなら、普通にクドゥラが勝つのだろうけど、元々ミドル級、未完成なれど筋の良さも感じるボクサーファイター長濱が、徐々に階級下げてウェルターでベストフィットすれば、良い試合になるだろう、と思ってはいました。
初回、思ったよりもさらに長濱が良い。ジャブが上だけでなく下にも飛んで、ペース掌握。クドゥラ、最後に右一発だけ。
2回、長濱が距離を取って左から当てていく。左ボディジャブのヒット目立つ。バッティングでクドゥラ痛そう。カットあり。
3回、長濱左のボディジャブからワンツー、右クロス好打。さらにワンツーをボディへ。
クドゥラ、まだ序盤だが動きが重い。少しだが口が開いているようにも。
4回、クドゥラ左ボディ当てるも、長濱が連打でお返し。右フックヒットして回り込む。
クドゥラ一発に対し、長濱はボディを組み込んだ連打、間が空けばジャブ、という具合。手数もヒット率も断然上。
4回の途中採点は4対0が三者。誰の目にも明らかに長濱リード。
5回、クドゥラのワンツーが長濱のガードの間を通る。長濱クリンチに逃れる。
クドゥラなおも攻め立て、右をヒット。拍子木の音をまたいでゴングまで猛攻。初めてクドゥラの回。
ただ、長濱もしっかり左返していて、応援の声が期待するほどのダメージではない。
6回、クドゥラ攻めたいが長濱がこつこつボディを打ち、下がらない。クドゥラの方が押されて下がり、ロープ背負う。
長濱、巧いインファイトを見せる。クドゥラ左フックも、長濱右クロス返す。クドゥラ得意の右アッパーも浅いヒットに留まる。
7回、クドゥラ手数増やして出る。長濱乱れずジャブ上下、右クロス、左ボディの連打で攻め返す。
長濱もう少し強打したいところだが。
8回、長濱の手数がまさり、クドゥラ出たいのに押されて下がる。長濱押して攻め、ボディ打ちを忘れない。
途中採点は7対1で揃う。これまた同感。
9回、長濱左ボディからワンツーヒット。左ボディジャブで下がらせ、右サイドに出て右フック。良い攻撃。
長濱少し疲れも見えるが、力まず当てては動いている。クドゥラは相当「削られた」状態で、ヒットがあっても本来の威力にはほど遠い。
10回、両者顔も腫れ、きつそう。クドゥラ、右のボディブロー。これがまともに入って長濱後退。ガードを締めて前に出てしのぐが、手がぱったり止まる。ダメージあり。
クドゥラ左ダブル、右クロスで追撃するが、長濱懸命に上体を振って外す。しかし長濱、膝が伸びているのがはっきり見える。
元気なクドゥラなら一気に攻めて、KOチャンスを作れる場面だが、そこまでには至らず。クドゥラ、5回以来のポイント。
11回、クドゥラがロープ際から左フック好打。追撃したいがワンツー返される。
長濱きつそうだがクリンチで休み、手を出してまた休み、という具合で凌ぐ。両者、際どく右相打ち、長濱の方が浅いながら当てる。
クドゥラ出て、ワンツー当てる。長濱少しのけぞる。地味に数を当てているのは長濱だが、自らクリンチに出る回数が多い。印象はどうか。ややクドゥラか。迷う回。
最終回、きつそうだった長濱が踏ん張る。先に打って回り込み、頭下げてクリンチ。「凌ぐ」ことに徹した割り切りが見える。
見映えは悪いが、予想不利の立場での試合で、強打者相手にリードした展開での最終回なのだから、当然の選択。
その上でボディジャブをしっかり打ち、距離を確保してもいる。そしてまたクリンチ。
クドゥラ、間合いを外されたかと思えば、巧く身体を寄せられる、という具合で、思うように攻めさせてもらえない。
焦って出たクドゥラの右を、小さい動作のスウェイで外した長濱、その体勢から身体を回しての右ショートカウンター。
まるでメイウェザーばりの一撃。最終回にこれをやるのだから、まだ余力があったということか。ポイントは長濱。
採点は9対3が二人、10対2がひとり。私もだいたい同じ。
長濱陸がクリアな判定勝ちで、OPBFウェルター級王座獲得、クドゥラ金子に初黒星をつけました。
長濱陸は井上岳志、永野祐樹といったところに敗れてはいますが、日本の重いクラスの選手の中で、体格に恵まれ、スタイルも基本的には筋の良さを感じさせて、これはもう少し磨けば、良いところに行くだろうなあ、と思う選手でした。
新人王のときはミドルでしたが、体重には余裕があったのか、クラスをひとつ下げ、ふたつ下げて、今回の戴冠となりました。
昨年は移籍もしていて、好選手の多い角海老ジムという練習環境も、この日の充実した試合ぶりに繋がったのでしょう。
永野祐樹を破り、日本最強を証明した小原佳太にとって、次の脅威は強打クドゥラか、拳が癒えれば九州の雄・別府か、と思っていましたが、大柄で技巧に優れ、しぶとさのある新たな敵が浮上してきた、という一戦でした。
試合後のインタビューでは、両方の拳を傷めていた、という話でしたが、それが癒えて、要所でもっと力を込めて打てるようなら、さらに今後が楽しみです。
クドゥラ金子、BoxingRaiseの動画で多くの試合を見て、府立地下でも一度直に見ましたが、今回は予想外の完敗、という印象でした。
元々大柄な長濱と比較すれば、ある程度小さく見えるかも、とは思っていましたが、それだけに留まらず、身体つきが「薄く」見え、最初からいつもの力強さが欠けていたようにも。
長濱とは逆に、クラスを上げての再起を考えた方が良いのかも、と思ったりもしますが、実際のところはど知れようもありません。
しかし、これまでの試合で見せた、正確な強打と、今回も片鱗だけは見えた迫力ある攻めは、やはり魅力的です。
外国人ボクサーの常で、たったひとたびの敗戦が何もかもを覆してしまうなんてこともあったりしますが、是非、そんなことのないように...と、ファンとして「余計」なことかもしれませんが、願っております。