中谷正義のビッグチャレンジがあったまさにその日、もうひとりの「ナカタニ」も米国リング登場、というニュースが出ていました。
WBOフライ級王者、中谷潤人の初防衛戦は、9月10日(日本時間だと11日)に、アリゾナの興行にセットされたとのことです。
相手は当初のとおり、指名挑戦者アンヘル・ティト・アコスタ。
アリゾナでプエルトリコ人との試合が単独開催ということはなく、オスカル・バルデスがメインの、トップランク興行のセミになるとのこと。
アコスタといえば、田中恒成との激闘で知られ、かつてはプエルトリコの英雄の再来を期待され「現世に甦ったウィルフレッド・ゴメス」とまで評された強打者です。
田中戦、エルウィン・ソト戦では挫折を味わいましたが、フライ級に上げて、WBO1位まで上がってきました。
フライ級での試合は見ていませんが、減量から解放された若い強打者、というのは、大抵手強いもので、中谷潤人にとっては、初防衛から試練の一戦かもしれません。
コロナ渦による興行事情があったとはいえ、まるで中南米のボクサーみたいな話やなあ、と思ったりもします。
従来の日本の常識でいえば、なんとかかんとか自国開催にこぎつけるのが当然で、先方もそれは織り込み済みで、統括団体共々、色々と言うてはくるが、結局は機嫌良う来日して闘う、という様式美というか、古典芸能みたいな話の運びになる、と決まってたものですけど。
場所的には米国、それも東側ではないので、プエルトリカン相手に極端なアウェイ、という状況ではないにせよ、それでも若干は、そんな雰囲気も出ることでしょうね。
中学生の頃から、ロサンゼルスのジムで腕を磨いてきたとはいえ、アメリカでの公式試合は初めてで、色々と難しいこともあるなか、それがタイトル初防衛戦で、考え得る中で最上位の強敵と闘うのですから、いかに中谷潤人といえども、苦しい試合になるかもしれない、と想像します。
とはいえ、逆に言えば、若くして米国デビュー、しかも勝てば評価や注目度の上昇が見込める舞台に立てる、それは多くのボクサーが望んでも得られない好機でもあります。
キャリアの段階がどう、初の防衛戦からきついのは避けたい、というような、内輪の論理ではなくて、世界中のボクサーが米国のリングで富と名声を求める、という「世界基準」に沿った話でもあります。
それでいて、アコスタ側主導の興行ではなく、帝拳と良い関係にあるトップランクの興行でもありますし。
普通なら、上記の通り簡単ではない、と思う反面、見た目の印象以上に、心身共に強靱な技巧派、中谷潤人なら、そうした普通には収まらない「世界」で、堂々と闘って見せてくれるのでは、という期待も、大いに抱いています。
小柄ながら、抜群のセンスを持つ強打のアコスタと、長身サウスポーの技巧派、中谷潤人の、かなり対象的な組み合わせですが、中谷が単に巧くて繊細なだけでなく、長短の切り換えに長け、揉み合っても打ち合っても強い、という、二枚腰ぶりを見せて、粘り強く勝ち抜ければ、当初予定の国内興行での勝利では得られない、様々な対価が、そこにはあることでしょう。
日本時間では土曜日ですが、最近はDAZNに負けじと生中継連発、メイウェザー対YouTuberや、ドバイの尾川堅一戦までやろうというWOWOW様(こんなときだけ「様」がつく)ですから、きっとこの試合も生中継、ないしはライブ配信があることでしょう。いえ、あるに決まっています。
ということで、またひとつ、大いに楽しみで、手に汗握って見るであろう試合が決まりました。当日、しかと見ましょう。