さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

事情はどうあれ賛成です

2012-04-24 20:25:48 | その他
石田順裕のWBO王座挑戦が近づいてきましたが、
国内では準備委員会設置とのことです。


IBF、WBO加盟の是非については、この拙いブログに長らくお付き合い頂いている方々は
ご承知のことと思いますが、私は基本的に「とっとと加盟せい」という意見を持っています。
いつまでも、あるものをないことにしたまま、小さな権益を護り続けたところで、
この先何がどうなるわけでもないでしょう、と。

WBAとWBCのみ認定、タイトルの権威を護る、或いは維持するため、と言ってみたところで、
そんなものはもはや無意味です。
結局、大手の、或いは特定の業者がこれらの団体と築いたコネクションと、そこから派生するビジネスの価値を
維持したがいためだけに、現実に存在する「世界」タイトルのうちの半数を「ないこと」にしてきた過去は、
私に言わせれば滑稽の一語です。


皮肉なことに、とんでもない新参者が現れて、既得権益を侵すと同時に、
常識では考えられないような形で次々と王座を手にしてしまったことから、
事実上のWBA切り捨て→残りの二団体認可、という流れになったというのが、実際のところなのでしょう。
昨年末のWBA総会に、上記の新参業者以外、日本からの参加者が無かったという事実が、それを物語っています。
誰もが知る、最大の「既得権益者」が、そう決めたから、皆がそれに従っている、ということなのでしょう。

残り二団体加盟となれば、大橋秀行協会長あたりは、色々上手いことを言うと思いますが、
実際のところはこんなところだろうと思っています。


事情はどうあれ、私は基本的に賛成です。さっさとしなはれ、と、ずっと以前から思っています。
直近の石田順裕、その前の高山勝成、山口賢一らが、引退届提出をせねばならないような現状が改まるでしょうし、
大手ジムが占拠するタイトルに挑むに挑めず、キャリアの盛りを過ぎてしまうような選手が減るかも知れません。
ロリー松下やマルコム・ツニャカオのように、実力充分ながら不遇を託つ外国人選手にとっては、
これまでリング外の(しょうもない)事情で得られなかったチャンスを得られるきっかけになるかもしれません。


しかし、諸手を挙げて賛成か、というと違います。

もう何年も前ですが、さる識者の方と話していてこの話題になったのですが、
私の賛成意見は一顧だにせず否定されました。

「断固反対。業者には定見も節操も何もない。今以上に滅茶苦茶になる」と言われました。


何がどう「滅茶苦茶」なのかについては、今さら語る気力もありませんが、
ここで言われる「業者」とは、あくまで一般の、普通の業者を指しています。あの一家のことを特別に指してはいません。

少なくとも例の一家については、この問題とリンクして考えるべきではない、と私は思っています。
以前はこのブログでも一生懸命批判していたとおり、彼らのやることなすことにいちいち腹を立てていた私ですが、
あの「さんかいきゅうせいは」以降、これはもうどうにもならんな、と、完全に関心が無くなりました。
どうにもならんものはどうにもならんのであり、団体の数が増えても減っても、彼らはどこかの隙間に潜り込み、
ボクシングファンの冷たい視線を無視しては、世間体を取り繕って生き続けることでしょう。

つまり、こういう「どうでもいい」存在のことは除外して、この問題を考えるべきだ、というのが結論です。


で、それ以外の業者の姿勢こそ信用できない、という点ですが、大まかに言えば、世界挑戦に至る過程で、
ファンにとり納得感のあるキャリア構築、挑戦資格の獲得がなされないまま、挑む世界王座の選択肢だけが増えると、
結果として「この程度で世界王者か」というような事例が頻発しかねない、というような懸念があるのでしょう。

このような意見の延長上にあるのが「挑戦資格をより厳密にせねばならない」という意見です。
私も、誰もが納得出来る挑戦者資格決定の方法があるならば、それを制定してほしいとは思いますが、
考えれば考えるほど、そんな方法は結局無いのではないかとも思います。

結局、この問題は「業者の定見、節操」にだけ、問題があるというにはとどまらないのだと私は思っています。
ファンの求める納得に辿り着ける環境、状況が、今の日本のボクシング界には無い、整っていない現状こそが問題であり、
その現状を構築してきたのが「二団体のみ認可」の旧体制だったのではないか、と。

そして、その歯痒い状況が、事情はどうあれ、現実に変わろうとしている。
その一点において、私はIBF、WBO認可(=事実上のWBA切り捨て)の流れを支持します。



まー、とても書ききれないほど色々な問題を抱えた話題で、他にもここから派生する様々なことを語りたくなりますが、
なんとか無理矢理まとめてみました。皆さんのご意見は如何でしょうか?

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統一戦決定/誇りを持って/ネットは困ったもの

2012-04-11 17:02:48 | 話題あれこれ

井岡一翔vs八重樫東戦、決定です。

かつての薬師寺保栄vs辰吉丈一郎戦のときの、狂想曲のような揉めっぷりとはえらい違いで
すんなり決まった印象がありますね。まあ水面下で何があったかは知りませんが(笑)
例えばTVはTBS(井岡側)だが、場所が東京とか、
TVはTV東京(八重樫側)だが、場所が大阪になるとか、
互いに何か譲り合って成立するのかな、と思っていたら、TVも場所も、井岡側ですね。
事情はどうあれ、八重樫側がこれで受けたというのは、まず何よりも自信があるからなのでしょう。

現時点では、井岡有利の予想が多いかも知れませんが、
私は五分五分か、八重樫勝利も充分あり得ると思っています。

タイトル奪取のポンサワン戦における序盤のスタートダッシュを見てわかるとおり、
ギアを入れたときのスピード、パワーは出色ですし、
そもそも7戦目で世界戦に出た選手だけあって、センスも抜群のものがあります。
彼の力がこの大試合にて存分に発揮されれば、井岡といえども相当苦しいでしょう。

反面、その7戦目の敗北の際に負った負傷を始め、もう若くない八重樫には、
心身に少なからず負った傷跡が見えたりもします。
ポンサワン戦では快調なスタートを切った反面、ハイテンポな仕掛けに自らついて行けず、
タフな相手の反撃にも苦しんで、ボクシングがバラバラになるような場面もありました。

どのようなボクサーにも光と陰があり、勝利を得た強さの陰に、弱点もまたあるものです。
八重樫が自らの強味をどれだけ出せるのか、それによって弱味を覆い隠せるのか。注目です。


対する井岡一翔は、数少ないキャリアで、大きな試合に勝ち続けてきた弊害が
同国に存在する対立王者の手によって暴かれるのではないか、と少し心配な目を向けています。
大晦日の初回ノックアウトは、行ってみれば相手との力量差が、わかりやすい形で結果になった、
ボクシングという競技においては、むしろ珍しい部類の試合です。
その前のエルナンデス戦などが、今の井岡一翔を測る、正しい物差しでしょう。

序盤、相手の技巧に苦しんでヒットを許しつつ、中盤以降、仕掛けを変え、展開を変え、
終盤にかけて確実にヒットを重ねて押し切ったあの試合は、むしろ若き天才というより、
年齢やキャリアの割には、老成したベテランのような趣きさえありました。

限界と言われるミニマム級への減量、夏期の試合という要因がさまざまにあった上での話ですが、
おそらく105ポンド級最後の試合と言われる今回はどうなのか。
仮に、八重樫に先攻を許した場合、立て直しが効くものなのか。それとも先手から仕掛けるのか。
どちらの展開にせよ、先に見える弱味はどちらのものか。歴戦の疲弊か、減量苦か。


挫折を乗り越えたかつての天才と、苦しみを抱えつつ最短奪取を成し遂げた若き天才の激突。
本当に楽しみな一戦ですね。

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石田順裕、引退届提出の上、WBO王者ディミトリー・ピログ挑戦とのことです。

協会がIBF、WBO認可をコミッションに要請したという話は、確か去年の暮れだったと思いますが、
やはり業界やコミッション内部には、慎重論も根強いみたいですね。
この話が具体化していれば、石田がこういう決断をする必要もなかったのでしょうが。

何にせよ、石田には急な話で、敵地でもあり、苦しい闘いになるでしょうけど、
海外のリングで勝利とは敗北を重ねて闘い抜いてきた彼の戦歴が、この試合を呼び込んだことに
大きな誇りを持って、全力を出し切ってもらいたい、ということに尽きます。
そして、かなうならば、吉報が届くことを願っています。

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佐藤洋太の初防衛戦は、指名挑戦者シルベスター・ロペスに決定とのこと...
なのですが、正式発表前に、えらい詳らかな情報が、ネットに出たんだそうですね。

しかし本当に、ネット時代ならでは、ですねー。
日時、場所、報酬まで出てしまうっていうのは...本当に困ったもんで。

7月8日、横浜だそうですが...おそらく文体なんでしょうね。まさかのパシフィコは無いか。
どうせなら、TV放送の有無もちゃんと書いておいてくれれば(笑)やっぱCSのみ生中継、でしょうか?


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「4分の1」を超えた王者(東京国際サウスポー祭り その3)

2012-04-09 17:48:30 | 粟生隆寛

豪華興行のメインイベンターとなった粟生隆寛は、強豪ターサク・ゴーキエットジムに
3-0のクリアな判定勝ち、見事な防衛となりました。

前回のデビス・ボスキエロ戦の苦闘は、やはりその後報じられたように、
調整失敗が響いたというのが実情のようで、いっちゃなんですがあの程度の相手に
這々の体で逃げ切った粟生の姿は、今回の試合ではまったく見られませんでした。

米国のリングで、ファン・マヌエル・マルケス、スティーブン・ルエバノに挑んだ経験を持ち、
東洋のレベルをはっきり超えた、世界的な選手であるターサクでしたが、
粟生はサウスポー同士のジャブ、鋭いカウンター、ボディブローの応酬で徐々に打ち勝ち、
6回の劣勢を凌いだ後は、7回、10、11回の攻勢で、明白な勝利を印象づけました。


この日の粟生は、確かな実力者である挑戦者相手に、ほとんどの時間を中間距離で正対し、
真っ向からヒット&カバーの攻防を繰り広げて、何の小細工もごまかしもない試合を
フルラウンドに渡って繰り広げた上で、クリアに勝って見せました。

もちろん、こういう闘い方をすれば、いつも以上に打たれる確率も高まり、
実際、ターサクのジャブ、左フックを食う場面もありました。
しかし粟生は、パンチを外すために大きく距離を取ったり、角度を変えたりすることよりも、
最小限の動きで外し、距離が欲しければ下がるのではなく、ジャブで突き放すことを選び、
受け身になることなく、常に相手に圧力をかけた上で、要所でカウンターを決めていました。

もちろん、これまで何度か書いてきたように、好機を迎えたときに、緩急をつけた、
詰めるための狙いを持った追撃が欲しかったところですが、その課題を除けば、
私はこの日の粟生隆寛について、絶賛の言葉を贈りたいです。
ちょっと手放し気味ですが、私はずっと、攻撃的、積極的なボクシングの中に、カウンターの巧さや
目の良さといった、彼ならではのセンスを生かして闘う、粟生の姿を見たかったのだ、と。


しかし、この試合に関しては、必ずしも絶賛されているわけではないようです。
会場も、二つ前の記事に書いたとおり、大会場を4分の1にカットしたような会場で、
TVの視聴率も、この日の二日前に行われた「でっち上げ」の王者の試合を下回ったのだとか。

繰り返しますが、私は、この日の粟生のボクシングが、そういう「ロケーション」を超えた、
高い価値のあるものだったと見ます。
そして、試合翌日のコメントは、そういう試合を闘い抜いた手応えが感じられました。

ただ、多くの評価が、その手応えに、誇りに見合わないものなのだったとしたら、
やはり、ターサク以上の相手との闘いに臨まねばならないのでしょう。
試合の内容とはまた別に、彼が手にする王冠が「4分の1」のものであることもまた現実です。
ならば、その分母をひとつでも減らすための闘いに挑んでもらいたい。
今の粟生なら、これまでとは一段違う期待をかけても良いのではないか、と思っています。

ただ、こういうセンスに恵まれた選手ほど、試合ごとに出来不出来の差が大きい場合もあり、
それが、ありがたいことに同じ国にいる対立王者との激突で、果たしてどう出るか、ですが。



しかし、今日になって飛び込んできた大ニュースのように、国内に多数の王者が存在する状況下で、
王座統一戦に対するファンの期待が現実になる流れが出来つつあります。
そうなれば、次はやはり粟生と内山でしょう。
もちろん難しい事情もあるやもしれませんが、何とか実現してもらいたいものです。



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最終回の心残り(東京国際サウスポー祭り その2)

2012-04-08 13:04:42 | 関東ボクシング
さて、まずは昨日放送された「せやねん」動画です。
本人が試合後と違って明るい表情です。まあ良かったかなと。
スポーツ報知にはこんな記事もあり。これが事実なら私の推測は大外れです。うむむ。
ジョニゴンさんは粟生挑戦希望とかいう話も出てますが、これは先方が粟生と長谷川の両にらみで、
良い条件を引き出そうとしているんだろうなぁ、という感じですが。


さて、金曜日の世界戦二試合ですが、家で録画した映像を見る時間がまだ取れず、
結局会場で見てきた印象のみで書きます。


バンタム級タイトルマッチから行きますが、なんと言っても一番の見所は、リングに上がってきたときの
ビック・ダルチニアンの顔でした(笑)
いや、本当に雰囲気持ってましたね。殺傷本能を持つ野獣の目でした。
何も本人、そういうのをひけらかすでもなく、余裕の表情だったんでしょうが、顔見ただけで怖かったです。
こういう選手って、そうそう見られるもんじゃないかもしれませんね...
これだけで、会場来て良かったな、というくらいでした。

対する山中慎介は、目線を合わせるでもなく、飄々とした印象。
相手の圧力を無理に撥ねつけようとして力み、自分の型を崩すほど愚かなこともないので、これはこれで良し。
ただし、相手を恐れて押し込まれるようでは駄目で、そのあたり、山中がどういうバランスを取れるのかに注目しました。

初回はダルチニアンが結構気分良く攻め、山中は受け身の対応。
見て立ったのか、それとも押されているのか、この流れが続くようならまず勝てないだろうと思いましたが、
2回から山中はいとも簡単そうにジャブを当て、左から右の返しもヒットします。

序盤、採点上は取ったり取られたり、だったのでしょうが、感心したのは山中の方。
上記の「雰囲気」はともかく、ラフなように見えつつ、要所で鋭い狙いをもって
強打を飛ばしてくるダルチニアンに対し、力んで撥ね付けるでなく、怖れて引くでもなく、
実に良いバランスを維持して、冷静に闘っていました。

中盤以降、左でカットさせ、左のボディブロー、身体を逃がしつつタイミングを変えた左。
10回返しの右でぐらつかせる。ダルチニアンは少しずつミスが増えていき、動きも落ちていく。
山中は無理のない闘いぶりでリードを広げ続けました。
このあたり、強引に出るでなく、捨て身で攻めるわけでもなく、試合を支配していく山中には、
想像していた以上の確かな強さを感じました。

最終回については、本田会長の指示で流した、という話ですが、理解できなくはないです。
この相手にクリアに勝つというのは、ノニト・ドネアとアンセルモ・モレノにつぐ快挙?であり、
東洋の選手でいえば、Z・ゴーレスでも勝ち取れなかった星です。
今後、山中慎介が国際的な評価を得て、米大陸のリングに進出するためには、
是非とも勝ちたい試合であり、大事を取るというのは、至極当然の選択、という考え方なのでしょう。
また、米大陸のスター選手が持つ力、土壇場でも油断出来ない力を、誰よりも深く見知っている
日本のボクシング人は誰か、といえば、その代表格が、他ならぬ本田明彦氏であることも、確かな事実です。

それはよくわかる話ですが、やはりそれだけでは割り切れないのが人間というもので。
選手本人も、おそらくセコンド陣も、最後攻めて勝つ、という気持ちだったでしょう。

私の率直な気持ちとしては、この試合に勝つことによって、山中慎介が一段ステップアップするとしたら、
最終回に攻めて出て押し切り、あわよくばストップに持ち込んで、一段どころか二段、三段のステップを
一気に上がって欲しかった、ということに尽きます。
ダルチニアン相手に、厳しい展開で、疲弊も被弾もあり、無理に無理を重ねたような展開の上での最終回だったなら、
そんな期待はしませんが、恐るべきことに、そして素晴らしいことに、山中はまったくそういう状態ではなかった。
だからこそ、というのが、心残りではありました。

この選択については、様々な意見があると思いますが、彼がこの試合のラストラウンドをこのように闘ったことが
果たして正しかったのか、間違いだったのかは、今後の彼の闘いぶりが証していくことでしょう。


全体としては、まずは見事な内容と、良い結果だったと思います。
そりゃ最終回、全然手を出さずにいて、最後の最後に左ストレートを突き刺して倒す、という
往年のサーマート・パヤクアルンみたいなことが出来ていれば最高だったんでしょうが...(^^;)



さて、もう一試合についてすが、また後日、ということで。
どうかご容赦くださいませませ...m(_ _)m




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必要な試合と時間の問題(東京国際サウスポー祭り その1)

2012-04-07 08:00:59 | 長谷川穂積
昨夜は会場にて観戦して参りました。

東京国際フォーラムという会場は、横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナといった大会場を
ビザのように4分の1くらいにカットしたような会場で、5千円の席だと、リングがかなり遠く感じました。
最近、この手の会場で観戦をしておらず、小さい会場での観戦が多いもので、久し振りの感覚でした。

そして、遠く感じるリングの上には大型モニタが設置され、そこに試合映像が映るもので、
インターバルでスローモーションを見た流れで、試合が始まっても時々画面の方を見てしまっていて
「おいおい、映像は家帰って録画したのを見たらええのや、会場に来た意味が無いがな」と思い直しては
リング上に目線を戻す、ということを何度もやっていました(^^;)

そんな感じで見ていた会場での印象中心ですが、とりとめもなく感想を。



まず長谷川については、ある意味、過去二度のフェザー級世界戦とは違った意味で、
これが「フェザー級の壁」なのかと感じました。

相手のフェリックスは30歳で18戦無敗という、少し妙なキャリアの選手で、
想像ですがメキシコ国内のローカルクラスではそこそこ出来ても、その上を目指す力量は認められず、
大きな試合の話がプロモーターから回ってこないという段階の選手なのだろうと推測していました。

実際、初めての強豪相手と言える昨夜の試合では、長谷川の速さとリズムについていけず、
「イモを引く」状態に終始しました。長谷川が左で釣って右フックを強振するパターンを狙ったときなど、
「釣り」の左に釣られるどころかさらに引いてしまい、結果、追撃の右を食わずに済む、という
見ていて思わず笑いが漏れるような場面がありました。
長谷川にとっては、再起初戦だし、このくらいの相手が適当で良いなあ、という感じの相手でした。

しかし、この程度の相手にすら「攻めあぐみ」の印象が残ったのもまた、事実でした。
左ストレートが何度か入り、フェリックスがぐらついたところに「ストップ用」連打を浴びせても
相手が打ち返してくる場面もあり、バンタム級時代ならとうの昔に倒せていたパンチが入っても、
なお相手が反撃してくる。これが世界上位のブルゴスやゴンサレス相手なら当然と思えても、
言ってみれば単にフェザー級である、というだけの選手でもこうなのか、という現実の前に
長谷川が直面する体格、パワーの問題をまざまざと見たような気がしました。

長谷川がフェザー級で再度、世界王座を目指すのなら、これで三度目となった126ポンドの試合で
誰の目にも明らかになったこの現実をいかに克服するかが課題になります。
バンタム級時代の、というより今までのように、ダイレクトの左ストレートを打ちたがるボクシングでは、
バンタムの選手相手ならそれで試合を終わらせられたのですが、フェザーでは相手が耐えて打ち返してくる。
よってフェリックス程度の選手にさえ、単発とはいえ好打を許してしまう。
この状態で相手が世界の上位であればどうなるか。その答えを我々は一年前に見ています。


この問題を克服するには、より強く、正確に左を当てる必要があり、そうなれば最初に、
自らのバランスを正し、リズムを刻み、繊細に相手との距離を測るための、
右のリードパンチの多用が求められるわけです。
そして初回から3回までの長谷川は、この部分に改善の跡が見えたように思いました。
フェリックスの長いリーチが気になりましたが、長谷川は以前なら右ジャブを省略していたような場面でも
2発、3発と右で探ってから左ストレートを上下に散らす、いわば普通のサウスポーが打つ
「普通のワンツー」を再三見せ、3回などは綺麗にヒットを取りました。

しかしそれでも、バンタム級時代のように相手がコロコロ倒れはしませんし、
単発ながら相手が来たときだけは手が出るフェリックスのヒットもある展開の中、
4回以降、長谷川が今まで通りの、彼ならではの特殊な、従来のスタイルに戻っていきます。

いきなりの左ストレートを狙う。引きっぱなしの相手を誘うため、ロープを背負い、
そのまま打ち合いに応じて、でも右フックを引っかけて回ったりはしない。
右リードを減らした分、攻めたときに反撃を食う頻度が上がり、それをより強引に攻め返す、
という繰り返しで左のヒットや連打を重ね、7回にストップ勝ちを収めましたが、
3回までは垣間見えた、新トレーナー、フランク・ライルズの手によるものと思える
より基本を重視したスタイル改善の痕跡が、ラウンドを重ねるごとに消えていくかのような展開は、
手放しに喜べるものではありませんでした。


試合後の長谷川の煮え切らないインタビューは、様々に解釈されるでしょうが、
私の印象としては、精神的な面でどうこう、というのとはまた別の話で、
この試合だけではなく、フェザー級転向以降のすべての練習や試合を通じての手応えとして、
長谷川は、フェザー級に適応するための試合を、あと数試合重ねたいと思っているように感じました。
少なくとも、次の試合ですぐに世界戦、というのは難しいという自覚があるのではないか、と。


かつて、西岡利晃に倒されたあと、7試合の無冠戦を闘う過程で、自らの攻撃力を生かしたまま、
より防御を引き締めて、フェザー級への適応も済ませたジョニー・ゴンサレスに倒され、
王座を失った長谷川穂積が、このような考えを持っているのならば、周囲はプロモートの論理で
話を進めるだけではなく、一度、ボクサー自身の感覚、スタイル構築に要する時間の長短を
より重視した上でのマッチメイクを可能な限り求めて欲しいと思います。

実際は2年前の極めて拙速な転級のように、興行優先の話に流されるのが常ですが、
05年のウィラポン攻略以降、日本のボクシング界を支え続け、至宝とも言える輝きを放った
長谷川の再起路線なのですから、そのくらいの慎重さがあって然るべきだと。



あと二試合については、ちょっとばたばたしておりますので、また後日書きます。
いっぺんに書くには、豪華すぎる昨夜の「東京国際サウスポー祭り」でありました(笑)


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王者の証明

2012-04-04 21:27:08 | 関東ボクシング
関西でも、生中継ではなかったですが、結果知らずに試合を見ることは出来ました。
結果はとにかく残念です。
清水智信の熱心なファンというわけではない私にも、この試合に至る過程、
あれやこれやと積み重なった「ヤカラ」なお話の数々に、ご多分に漏れず義憤を感じましたし、
今日の試合に勝つことによって、全てを覆してもらいたい、とも思っていました。


さて、今日の闘いぶりは、果たして清水智信本来のスタイルなのかなぁ、というのが、
見終えた今の率直な感想です。

清水の試合は日本王者時代の数試合、世界戦三試合などを見てはいますが、
基本的には左ジャブで突き放しては動き、距離を維持して闘うスタイルだと思っていました。
しかし今日は、初回早々からためらいなく右ストレートの好打、というより強打を求め、
正面からテーパリットを打ち込もうしているように見え、いつもの彼ではないように感じました。

4回にはダウン寸前のピンチがありながら、ラウンド終盤に右のヒットでテーパリットを
はっきりわかるほどスローダウンさせる見せ場もありましたが、やはり体力で上回る
テーパリットを「決壊」させるには至らず、9回、いつこうなっても不思議ではない、という
打ち込まれ方で劣勢となり、レフェリーストップとなりました。


少々、感傷的な見方が過ぎるかも知れませんが、今日の清水は普通ではない覚悟というか、
ある意味、勝ち負けを度外視したような精神状態で、リングに上がっていたのではないでしょうか。

そもそも、フライ級でも自身の体力に改善の余地ありと考えて、筋力トレーニングに励んでいたという
清水にとって、体格で自分を上回り、体力や連打の回転が武器の、若き王者テーパリットを
打ち崩すのは至難であり、しかし清水は、あえてその至難の業に挑んだように見えました。

しかし、両者の体格を見ると、やはり清水は115ポンドのボクサーとしては、急ごしらえの身体に見えました。
悔しいことに、9回の幕切れは、極めて妥当なものだった、と言わざるを得ません。

しかし、敗れたとはいえ清水の闘いぶりは、良くも悪くも、見る者を熱くさせるものがあり、
「ああ、そんな無茶な」「そこで無理したらいかんがなー」「今や、効いてる、行け行け~」などと、
TVの前で見ている私も、ついつい親戚の子を応援するモードに突入させられてしまいました(^^;)
結果は誠に残念ながら、力と力で勝負しての勝利と敗北の清々しさを感じました。


今後については、リング外の様々なことどもに辟易しているやも知れない清水智信に対し、
安易に再起を期待していいのかどうか、ちょっと答えが出せずにいます。
しかしベストとは言えない115ポンド級で、ウーゴ・カサレスに勝ち、タイの若武者テーパリットに敗れた、
この二試合をもって、我々ファンは、清水智信を、紛う事なきチャンピオンとして記憶するでしょう。

負けた試合でこういうのはおかしいかも知れませんが、今日の試合は、
敗れてもなお、清水智信にとり「王者の証明」であった、と思います。



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