さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

そこに刷新の意志はあるか 過去との決別はなるか 長谷川穂積、再起へ

2015-01-19 05:34:36 | 長谷川穂積



長谷川穂積が再起を表明しました。


昨年の試合後、なかなか引退表明がなされないことを不思議に思っていたら、
誰もが思うのとは違う方向の噂が聞こえてきて、そこで充分驚いていたので、
今、この時点で改めて驚いているわけではありません。
しかし、やはり本当にそうなるのか、という現実の前には、しばし言葉を失います。


昨年4月の敗戦をもって、ボクサー長谷川穂積がリング上で見せうる可能性の全ては終わった。
あの試合について、私はそう見ました。そのように書きもしました。

以前彼を勝者たらしめていたものが失われ、それ故に許されていた強者としての闘い方を変えられず、
相手の得意な試合展開を避けようという意志が見えないまま闘い、これ以上見るに堪えないほど傷つき敗れた
あの完敗を、そのように解釈する以外に、どのような見方があるのだろう、と。

しかし、彼はそれでもなお、再起の意志を表明し、それは現実の話として動き出すようです。


紹介した下の動画の中で、彼はその心境を率直に語っています。
一度しか無い人生で、闘える自分がいる限りは闘いたい、という意志そのものに対しては、
共感というより、そのように生きられる人に対する尊敬をもって、尊重されるべきものだと感じます。


しかし、ボクシングという、直截的に身体を叩き合う闘いにおいては、
他の数多の「スポーツ」とは違う前提が求められるべきである、とも思うのです。

バンタム級世界最強の強さを誇ると認められながら、それを実際に形として残すべく闘われた
フェルナンド・モンティエルとの一戦、痛恨の敗北。
一段飛ばしのフェザー級におけるWBCタイトル戦、2戦して1勝1敗。
その後の4試合を経て、122ポンド級における昨年の敗北。

この数年間、彼の苦闘と敗北は、試合ごとに違う様相はあれど、かつて常に自在だった彼を支えていた
強者たる所以が、当然ながら永遠ではない、という事実を、その都度突きつけられるようなものでした。
その現実を前に、私はやはり、彼の再起を全面的に支持する気持ちは持てないでいます。
そして、彼の再起が、かつての自分自身を取り戻すためだけに闘われるのなら、その気持ちはより強くなります。


しかし、そうではなくて、かつての彼自身とは違う、失われた天性に頼った闘い方とはまた別の、
新たな長谷川穂積が存在しうる、という確信の元で再起を目指すのであれば、話は違ってきます。

もちろん、今から箸の持ち方を変えられはしないでしょうが、試合の局面において、
従来の目の良さと手の速さに依拠して、セオリーに反する選択、対応で相手の読みを外して勝ってきた
かつての長谷川ボクシングとの、全面的ではなくても部分的な決別、刷新が見えるならば...と。


今後の活動については、陣営はそれを支援するが、トレーナーは山下会長から変更されるという話があり、
その人選も彼の今後を左右するものと思われます。
以前、フランク・ライルズの指導を受けて闘った試合では、第三者の俯瞰した視点から
長谷川を見た上での指導の痕跡が感じられたものですが、もしそのような指導体制が再現されるなら、
もっと前向きな気持ちで、長谷川の今後を見守ることが出来るでしょう。


今回のインタビューや報道では、まだそういった点については明らかになっていません。
はっきりしているのは、長谷川穂積がまた動き出した、という事実のみです。

ボクシング「業界」の愚かしき自業自得に、ファンが抱く失望と諦念を、その拳で打ち砕き続けた英雄。
ボクシングの存在意義そのものを、その闘いによって護ってくれた最後の砦、真のチャンピオンだった男。

再起決定という現実の前に平静ではいられず、あれこれ繰り言も書いてしまうわけですが、
私にとり、長谷川穂積は永遠に尊敬の対象であり、それは彼の今とこれからがどうあろうと、変わることはありません。


「せやねん」にて、短いですがインタビューなどありましたので紹介します。
数日で消しますので、お早めにご覧ください。





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ついでに、というと何ですが、年末世界戦ラッシュについても同番組で特集ありましたので。
主に大阪の試合中心です。井上、内山も映像が欲しかったところですが、この辺は大人の事情でしょうか。




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最後に、今の高校年代では最高のボクサーとしてよく名前を聞く、村田昴選手の動画。
井上、田中兄弟らのように、お父さんの指導で腕を磨いた選手なんですね。
大学進学して東京五輪を目指すそうです。楽しみですね。
その後はプロでも見たいなぁ...(^^)




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もひとつ、おまけ。こんなんもありました。



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さらにもひとつ。
昨年12月28日、住吉の試合でデビューした工学部学生ボクサー、坂本真宏。
内容はわかりませんが、凄く難しい研究をしてるそうです。
試合は熱戦でした。今後が楽しみですね。







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力でも技でもない「布陣」の時点で負けていた 金子大樹、ジョムトーンに完敗

2015-01-17 21:43:18 | 関東ボクシング



年頭の好カードでしたが、内容も結果も残念な一戦になってしまいました。

金子大樹は初回から、懐の深いサウスポー、ジョムトーンの正面に位置を取る。
セオリーならもっと左斜め前に踏み込んで右からリード、という形が思い浮かぶところですが、
そうではなく、正対して遠い位置から右を打つ。

このサウスポー正面突破の位置取りをする場合、どうしても右の位置が遠くなるので、
左ジャブの数を増やして崩してから右、とやるべきところですが、攻めは右からが多い。
ジョムトーンの右と金子の左、前の手の攻防で、はっきり金子が劣りました。

右から打っていくなら、あの位置から打っても遠い。
左回り、或いは左への重心移動と共に打たねば当たらない、しかし...
という構図が初回早々からはっきりしていて、この位置関係が変わらない限り、
どういう攻防であっても、十中八九、ジョムトーンの良いようにしか回らない。

残念ながら、この外れて欲しい即断は、最後まで覆ることがありませんでした。


実況の中で確か、ジョムトーンが前日来日した、というような発言があったように思うんですが、
もしそれが事実なら、けっして万全の状態でもなかったのかも知れません。
しかし王者ジョムトーンは、良い流れの試合展開の中で、終始落ち着き払って闘っていたように見えました。

大きな上体、長いリーチ、懐深く、力まず正確に左を当て、金子のリターンの種類を見定めた序盤。
左リードが甘く、ボディ攻撃が少ないと見切り、左をリードに右を返し、金子の左肩を右へと寄せ、
さらに金子の右を遠い位置に持って行かせ、左への重心移動を妨げる「セットアップ」を丁寧に繰り返す。

金子は強打するための身体の体勢、いわゆる「壁」を作れない時間帯が長くなるばかり。
悪い展開を打開出来る位置取りの変更は、試みたラウンドもあったかもしれませんが成功せず、
強引に攻め込むというもう一つの方法も、従来からのヘッドハンター傾向が災いしてかなわず。

単発のヒットを最大限に評価するジャッジが三つ並んでなお、勝利には手が届かない、
数字以上の大敗、完敗を喫しました。


単に技や力を真っ向からぶつけ合えば、金子とジョムトーンの間には、
今日の試合内容ほどの差はないと思います。
しかし試合が始まった直後、両者がリングの上に「布陣」した時点で、
勝ち負けの帰趨は、だいたい見えていました。
ある意味、負けて失ったものがほとんど無かったとさえ言える内山高志戦などよりも、
重くて痛い敗戦でした。
終わってみて、この巧くて強くて、しかもやりにくい相手と闘ったこと自体は称えたいと思いもしますが。


勝者ジョムトーンは、これで日本で三勝目ですが、ムエタイとの兼業ということもあり、
国際式における今後がどうなのか、ちょっとはっきりしませんね。

内山、三浦への挑戦を目指すのか、それとも内藤ら国内上位陣の挑戦をさらに受けるのか、
という想像を巡らせるには、単に冷静というのともまた違う、独特の佇まいが気になりました。
この人、ボクシングで世界獲って名を売って稼いだる!とか、本気で考えてんのかな、というか。
もっと強い相手に、思うに任せなかったり、追い詰められたりという試合展開になったら、
また違った様子が見られるのかもしれませんけど...。




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不屈の闘魂と落日の影 高山勝成、大平剛を逆転KO ダブルタイトル獲得

2015-01-05 21:13:06 | 高山勝成



試合の流れとしては、小野心戦と同様、高山敗北という結末が見えかけていた試合でした。

高山は左右にステップを踏み替えながらプレス、右リードを狙うが、大平は大きなサークリングで外し、
加えてダックとバッティングが頻発、思うように攻められない。
2回に左を好打され、4回には一瞬上体が立ってしまったところを右に回り込まれて左を強打される。
2回はまあ、やりにくそうだな、くらいに思っていましたが、4回の打たれ方は、そういうのを越えて
あまりに露骨に悪い打たれ方だったので、いよいよ高山にも落日の時が来たのか、とさえ感じました。

童顔、かつあくまで能動的なファイトスタイルのせいで普段はあまり考えないことですが、
考えてみれば10代でデビューし、新人王トーナメントから日本タイトル、世界戦と、
その都度考え得る最高レベルで闘い、その過程でライトフライからミニマムにウェイトを落として、
今もその階級で闘っている選手です。
しかも今回、八重樫東と同様、直近の試合で壮絶な「死闘」を闘って敗れ、その再起戦なわけです。


対して、好試合を期待されず、不利の予想を受ける立場である大平は、
研究材料には事欠かない高山を相手に、自分の持ち味を生かし、伸び伸びと闘っていました。
高山のプレスを足で外し、踏み込まれたら頭を下げて外し、時に起こるバッティングで止める。
単発の左を、時に左側からパワーを溜めて、時に右に回って打つ。
序盤、望外の好スタートだったことでしょう。陣営の声もよく通り、勢いづいているのがわかりました。


しかし5回半ばから、目に見えて高山の踏み込み具合が変わりました。
余裕があって手控えていたようにはとても見えず、ほぼ捨て身に近かったように思いますが、
右を振るって攻め、それをフェイントに?ボディブローも決めて、大平を止めると
7回、ロープ際に釘付けにして猛ラッシュ。大平に反撃の隙を与えず打ちまくり、ストップ。
この最後のあたりは、高山のあくなき闘志、勝利への執念が出たシーンでした。


IBF、WBO両王座を手にした高山勝成、四団体制覇なる、という話自体には、
残念ながらこの試合においてはあまり印象的な話題ではありません。
これが日本タイトルマッチとして挙行されていれば、名勝負として記憶されることでしょうが、
機会として与えられた「タイトルマッチ」を闘って勝つだけだ、という現場の声と、
ファンが未だ思う「世界」という言葉の意味が乖離した、そういう類いの試合でした。


何はともあれ二団体の王座を手にした高山は、敗れたロドリゲス戦が複数の媒体で
年間最高試合に選出されるなど、その名は軽量級の世界において、広く認知されている存在であり、
ことによるとそれは日本国内のそれを上回る次元にあるのかもしれません。

しかし、数々の激闘を経て、未だ燃え盛っている勝利への執念に感嘆する一方、
以前ならあり得ないのでは、と思える、あまりに無防備な打たれ方への驚きと不安を同時に見て、
高山勝成の今後の闘いは、ますます険しいものになるのかも知れない、と感じています。

そしてそれがどのような苦難であろうとも、彼は当然のごとく、その闘いの「火中」に
その身を投じて闘い続けるのであろう、とも。


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井岡一翔はジャン・ピエロ・ペレスに5回KO勝ちで再起二連勝でした。

元暫定王者ですが一応「世界」とつけるのはウソではない、という安心感から、
実況が世界世界と連呼するのを白けて聞きながら見ていましたが、
ペレスは思った以上に動けていて、距離も長くて柔軟で、時にクリーンヒットを取って
井岡を苦しめているようにも見えましたが5回、井岡の右を食いKO負け。

打たれる前の止まり方、隙のある時間が一呼吸長いせいで、
井岡がしっかり狙って力を入れた右をまともに打たれてしまいました。
井岡から見れば、見事なフィニッシュを決められたことは良かったですが。


試合のレベルとしては、アジア方面の格下に楽勝、というような試合とは違って、
先のカリージョ戦と同様、なかなか内容のある試合だったと思います。
フライ級の世界王者がゴンサレス、エストラーダの両巨頭どちらか、と仮定して、
カシメロ、アムナット、レベコ、ビロリアが上位グループ、
それに次ぐのがメリンド、ゾウ・シミン、井岡にタイ勢(この辺はちょっと不確かです)、
という感じでざっくり分けるとすると、第二グループの一員としての力を、改めて示した試合でした。

来年はレベコ挑戦が噂されているようですが、まずはこの辺りからやっていくのでしょうね。
両巨頭と比べれば一段落ちる相手とはいえ、ファン・カルロス・レベコ攻略というのは
井岡にとってもけして簡単なことではなく、フライ級の王者クラスや上位グループに対した場合、
どうしてもスピード、パワーの面で、下の階級とやっていた感覚では通じない部分が出てきそうで、
その差をどう埋めるかが課題でしょう。



まあ、おそらく今回、組みたくて仕方が無かったんでしょうけどね、レベコかアムナットか、どっちか。
TBSといえど、思うに任せんことは当然あるわけです。
その点においては、あのシャッチョさんなどとは次元が違って、まだ真剣勝負の世界の範疇にあるんだなぁ、と
ちょっと安心したりもしますが。

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復調ならず、相手の質も高かった 八重樫東連敗、王国の「佳作」ペドロ・ゲバラにKO喫す

2015-01-04 12:23:06 | 関東ボクシング



この年末世界戦ラッシュの中で、相手との技量力量の比較以前に不安だったのが、この試合でした。

あのロマゴン戦から4ヶ月弱での再起戦。しかも一階級下の試合で、それが世界戦。
たっぷり調整期間があったとしても不安な話です。

そこへ持って来て、加えて相手が極めて堅調な技巧の持ち主。
八重樫が絶好調、ベストであっても五分以上の予想は立たなさそうな相手と見ていました。


実際、試合が始まってすぐに、Youtubeで見た以上に、ペドロ・ゲバラの質の高さを感じました。
高く上げたガード、しかし肩に余計な力を入れず、脇や背中から絞った構えで、
構えた位置からまっすぐに左右のストレートパンチが飛び、最短距離で相手の軸を狙ってくる。
足捌きも良し、距離の取り方が丁寧でミスがない。

一打必倒の強打こそ持ちませんが、それがあったらリカルド・ロペスにも比較しうる、
そういう構えの良さ、確かさを叩き込まれた、一級品の「佳作」と言える選手でした。

八重樫はというと、一向に調子が出ず、連打は足で外され、攻め込んでも単発。
ハンドスピードも上がってこず、遠い距離から打たれ、正確さで劣る、苦しい展開。
バッティングでゲバラが切ったり、時にボディ攻撃が出たりという場面もありましたが、
好調であればともかく、散発的に出る攻撃だけでは到底及ばないだろう、と思わざるを得ない試合でした。

6回、右クロスを連発してはっきり優位に立ったゲバラが、7回も攻勢。
そのさなか、左ボディが綺麗に入り、八重樫がダウン。おそらく見えない角度から、
身体を締めるタイミングを外されて打たれたのでしょう、意外なほど効いていて、立てず。
八重樫はその力を発揮出来ず不調のまま、痛恨の連敗を喫しました。


ゲバラがいかに好選手であったとはいえ、この内容と結果は、想像以上に厳しいものでした。

やはり調整期間や階級の選択、そしておそらくは年末の放送枠を埋めたいTV局の意向と
井上が返上した王座にまつわる権益などが優先されたマッチメイクであり、
八重樫東というボクサーの現状、内実を後回しにして組まれた試合には無理があった。
その現実から陣営や報道陣が目を反らし続けたとしても、現実に結果が出ている以上、
そういう方向に対する批判は免れ得ないと思います。


9月の試合で敗れてもなお、その声名を高めた八重樫東でしたが、
その年の末には、痛恨の黒星を喫することになりました。
このレベルの相手と闘うには、やはり色んな意味で条件が整っていなかった。
勝ち負けは仕方ないにしても、そういう思いが残るような試合でした。実に残念です。


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この日のアンダーカードについてですが、ホルヘ・リナレスは見事なKO勝ち、
WBC2位ハビエル・プリエトを沈めました。
日本のジム所属選手としては初めての三階級制覇となるわけですが、全部決定戦というのは、
今更言うのはアンフェアでしょうが、残念ではありますね。

しかし、倒した三連打、ことに一番効いた右の威力、キレはさすがでした。
ここ数戦の無冠戦の圧勝続きとは少々違って、プリエトがしっかり狙って強振してくるので、
やや後退のステップが勝つ印象の試合運びでしたが、好機にきっちり決めました。
今後の防衛戦にてどういう展開があるのか、注目したいところです。日本勢との絡みはあるんでしょうかね。

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村田諒太はジェシー・ニックロウに判定勝ち。

場内に耳障りな大音量のライブ演奏が鳴り響いたあと登場、TVはここから生中継だったわけですが、
会場で見ていてまず思ったのは、この試合がTV放送の皮切りでは、全体の視聴率に響きやせんか、ということでした。

来年は世界ランカーと対戦して、遠からずその上に、みたいな「喧伝」はまあどうでもいいとして、
そんな話以前に、年末大イベント続きの中、ゴールデンタイムの生放送という、世界戦に準ずる扱いの試合を
闘う段階に、今の村田諒太はいるのだろうか、という疑問があります。

丁寧にボディにパンチを散らしていた序盤はまだしも、さして強さも鋭さもなく、
当然世界ランカーという言葉からも遙か遠い印象のニックロウを攻めあぐみ、迫力に欠ける展開のまま
あっさり判定に持ち込まれてしまう。これが将来、世界に飛躍する村田にとり、貴重な経験であるとしても、
その段階の試合に対する扱い、取り上げ方のギャップは、如何ともし難いほど広がってしまっている。

その現実が重く残ったように思います。そして、あの内容が「将来」「次」に繋がる何かであり得るのだろうか、という疑問も。

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長身イケメン無敗、ボクシングマガジン最新号、加茂佳子氏の記事によればなかなかの天然さんでもあるという
松本亮は、小柄なタイ人、ルサリー・アモールを最終回に倒し、WBO1位アーサー・ビラヌエバ返上のOPBF王座獲得。

しかしそれまでの展開は非常に単調で、小柄なタイ人をジャブで突き放し、右打ち下ろし、左右のボディを返し、と
ワンサイドに打ちまくり...というか当てまくっているのですが、緩急がなくキレもなく、相手の粘りを引き出し、
抵抗を許す、見ていて歯がゆい試合ぶりで、到底褒められた内容ではありませんでした。

見たところ、減量に苦しみでもしたか、動きが鈍く、切れ味が感じられませんでした。苦戦の原因はこの辺でしょうか。
一時、バンタム級転向かという話も聞いたような記憶があるんですが、どうなったんでしょうかね。

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井上尚弥の弟、拓真は、オマール・ナルバエスの弟、ネストールに判定勝ち。

桁外れに強いお兄さんと比べられるとしたら不幸ですが、この弟、普通に見てなかなか強いです。
間を詰めて出て、相手のリターンをカウンターで狙い、反撃してきたら足で外し、
ボディから上、また下、と目先を変えつつ攻め込む。
なかなかペースを上げられないネストールに再三好打を決め、7回は左ボディから右ストレート、
右ボディから左フック上、と対角線のコンビを見せるなど、ほぼフルマークでの勝利でした。

試合前の時点で、知らない間にWBAのライトフライ級5位になっていたそうですが、
さすがにそこまで言わんでも、国内上位に位置づけされて不思議の無い実力をすでに持っています。
こちらは最短だ何だと言わずとも、じっくり試合数を重ねていってほしいですね。
階級はフライくらいが妥当かもしれません、あのパワーを減量で削ってほしくはないですね。
例えばペドロ・ゲバラと組もうとかいうことは、あまり考えないでほしいです。それはさすがに無理でしょうが。


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「特別試合」を「勝負」に変えた 長身変則天笠尚、リゴンドーを二度倒す大健闘

2015-01-02 19:55:09 | 関西ボクシング



大晦日、帰宅してTVで観戦しました。この試合だけは生中継でした。
第一試合は3時くらいで、休憩の連続だったそうです。
前日東京の観戦を終え、この日の午前中に帰宅したわけですが、もし会場に行っていたら
それこそへろへろに疲れていたことでしょう。

しかし、それを考えても、会場に行っておけば良かったかも、と思える試合になりました。
天笠尚の健闘は、想像以上のものでした。
それこそ模範試合とまで言わずとも、客観的に見た場合、稀なる「特別試合」であったカードが、
もちろん実力差はあれど、充分、普通の「勝負」の範疇にある試合になりました。


ギジェルモ・リゴンドーは、例えばドネア戦のような張り詰めたものはさすがに感じませんでしたが、
調整不足とか油断という次元のものを見せるでもない。概ね集中しているように見えました。
5回、左を好打したあと、ひとしきり打ったが手を止めたのも、いつも通りのセーフティーな選択だった、と見るべきでしょう。

それに対する天笠は、地道に、果敢に、自らの武器を生かして闘いました。
初回から、ガードの上でも良いから打つ。
一階級上でも抜きん出た長身、リーチを生かして、普段リゴンドーと闘う選手よりも遠い位置から
ボディストレートを叩く。的が高いせいで少しパンチが遠回りになるリゴンドーの打ち終わりを狙う。
広いスタンスで低いダックからサイドに出るところを、本来届かないはずの右で追って打つ。
7回、この形でダウンを奪った右は、長身、変則、強打が売りの天笠ならではの一撃でした。

しかし次の8回、追撃しきれなかったのは、ここまで、過去の試合にはない、濃密な攻防に神経をすり減らし、
好打を再三浴びた上に、相当苦しかった減量の影響も加わっての疲弊が原因だったのでしょう。

リゴンドー反転攻勢、10回に左でダウン、11回終了後TKOで試合は終わりましたが、
天笠は己の特性を生かし、出来ることは全てやり切って敗れました。大健闘だったと思います。


このカードが決まった経緯や事情については、釈然としないものもあり、天笠尚のキャリアにとっても
良い話だとは思っていませんでした。前の試合が10月15日、最終回までリードされての逆転勝ち。
ダメージも疲労もあったでしょうし、最近の報道では体調を崩して休養していたとも。
見た目どおり長身で、ただでさえ減量がきつそうなのに、さらに一階級下のクラスまで落とさねばならない。
そして相手が、言わずと知れたリゴンドー。世界的ビッグネームと闘うには、悪い条件が重なりすぎている、と。


しかし、頭で考えたことが仮に正しくても、試合を見終えたあとに心で思うことはまた別だったりもします。
理だけでも情だけでも語り尽くせぬものがボクシングだとしたら、リゴンドー相手に堂々と闘い抜いた天笠尚は
実に素晴らしいボクサーである、と思わせてくれました。
そして、天笠の果敢さと体格差に苦しみ、若干の緩みもあったかも知れませんが、世界一流の技量を
要所でしっかり見せてくれたギジェルモ・リゴンドーもまた、同様です。


終わってみれば全然悪くなどない、なかなかの好試合だったと思います。
それが両者の技量の差を大前提にした感想であったとしても、意外なほど後味の良さが残る試合でした。

今後、リゴンドーは実力と人気のギャップをどう埋めるのか。
天笠は本来の階級で、新たなチャンスを掴むところまで勝ち続けられるのか。
この闘いを終えたふたりに注目が集まり、期待されることでしょう。


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この日のアンダーカードについてはまた後日。
それぞれに見所がありましたね。高山vs大平は、危うく見過ごすところでした。
あんな放送の仕方がありますかね(呆)


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一年ぶりでも違和感ゼロ 内山高志、またも大トリで勝利 闘士ペレスを寄せ付けず

2015-01-01 15:19:55 | 関東ボクシング


昨年も拙いブログではありますが、見ていただいていた皆様に感謝いたします。
本年もよろしくお願いします。


そういうことで今年一発目の更新はこれから行きます。
またも大トリ、ボクシング界の北島三郎...とか書こうと思ってたら、会場にいてはりましたね、本物が。


プレビューめいたものを書いたとき、数試合を映像で見たイスラエル・ペレスですが、
実際見ると力的にはほぼ見たまま、しかし身体はかなり大きく、厚く見え、これは内山の状態次第で
手こずる可能性もありそう、と改めて思いました。

しかし実際は、内山高志の強さばかりが目に付く展開でした。ワンサイド、と言える試合でしょう。

ペレスのガードの中央をジャブで突き、アッパーで拓き、右ストレートを貫く。
ガードの外側からは右をひっかけ、左ボディブローも再三再四。
コンスタントにクリーンヒットを重ねて、ラウンド毎にペレスの心身を削っていきました。

内山を「技術不足」と切り捨て、リング上で打たれて劣勢でもそれを認めぬ素振りで抵抗する
ペレスの意地はある意味天晴れでしたが、同時に「諦め時」が来れば、それを受け容れる分別もあり。
不遇の末に世界戦に辿り着いたという、35歳の元世界一位は、その「闘士」ぶりを見せ続けてもなお、
それを受け止め、撥ね付け続ける内山高志の圧倒的な力の前に、完敗を喫しました。


内山高志は、今更褒めても白々しいですが、圧倒的に、揺るぎなく、強かった。
ペレスの連打に受け身に見える時もありましたが、当然打たれても大丈夫だから打たせているに過ぎず、
「やらせて」おいてから毎回、きっちり反撃し、打ち込み、の繰り返し。
好機を慎重に探り、待ち、それでも懸命に粘るペレスに対し、もっと強く攻め込んで行くかな、と思った
その前に試合が終わったのは残念でしたが、変わらず強い内山の姿を十全に見られた、満足感のある完勝でした。


一昨年、けっして内山に落日の影を見た、とは言わずとも、勝ってもダウンを喫するなどした金子大樹戦から丸一年、
右拳の負傷、周辺事情にもよる?一年のブランク、35歳という年齢を普通に考えれば、ランクの数字よりは
明らかに力のありそうな挑戦者相手に、不安を感じ、そのように書いたわけですが、全ては杞憂でした。
内山高志の日々の鍛錬は、彼の心身をいまだ強固に保ち、その強さを維持し続けていることが証明されました。


若き井上尚弥の、脅威の躍進とは対象的なところもありますが、その揺るがぬ強さはますます、千金の輝きを放っています。
今後について、陣営は三浦隆司との統一戦を含めて、防衛記録更新が基本のようですが、一部に報じられているように、
昨年、米国での試合観戦を機に、海外進出への気持ちが一層強くなった、という本人の希望も汲んだ展開を期待したいですね。
何度も書いていますが、彼はやはり、従来型の国内ボクシングビジネスの枠内に押し込めておいていい器ではありません。
未だ衰えぬその強さを見て、改めてその思いが強くなりました。
今年はコンスタントに試合の機会があること、そしてより開かれた話の中で、内山高志の勇名が聞かれることを願います。


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TV東京の放送枠にフルラウンドの世界戦三試合を押し込めるのは不可能とわかっていても、やはり残念なことに、
あとふたつの世界戦放送、ラウンドカットがありました。
田口良一の勝利はまあ、問題ないとしても、河野公平の試合は6ラウンドからの放送だったので、
試合後にノルベルト・ヒメネス陣営ご一行様が激怒、という報道を見ても、ちょっとその是非は判断しかねますね。

河野はここ数試合、以前よりはバランスが良くなり、前にのめらず要所で身体を回して打てるようになったので、
世界戦でもダウンを奪い、KOを決めたりしていましたが、昨日はちょっとだけ、以前の悪いとこが戻ってしまってましたかね。
リーチがあって足を使う相手だと、どうしてもそうなってしまうのは無理からぬところでしょうが。

ただ、序盤5ラウンド分を見ていない前提で、残りの様子だけで言えば、完璧に打ち込めはしなかった反面、
捌かれているという風でもなかったので、見た範囲で言えば僅差、という印象ではありました。
相手は戦績から持つ先入観よりは良い選手で、そこそこ巧かったですが、一級品ともいえず、微妙なところでしたね。

ちょっと残念な試合かな、まあ防衛したんやし、と思った終了直後、変なテロップが出て、ちょっとヤな感じでしたが。

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田口良一はペルー初の世界王者、小柄なアルベルト・ロッセルをパワーと体格で圧倒して、クリアな勝利でした。

ダウンや減点にまつわる裁定が有利に出た、というのは事実でしょうが、そういうのが逆に出ていても、
田口の勝利は動かなかったことでしょう。より強く、正確にヒットを重ね、相手を確実に上回っていました。
終盤、けっこうきついクリーンヒットを数回浴びたところなど、まだ粗いところも見えますが、
体格、パワー、積極性などによって、その欠点もほぼカバーされていた、そんな試合でした。


井上尚弥の挑戦を逃げずに受けて、敗れたものの健闘と言える試合を闘った田口が、こうしたチャンスに恵まれ、
結果を出したこと自体が、何よりもファンとしては嬉しいところです。
試合後、スパーリングでも再三拳を交えているという井上から祝福されたとのことですが、なかなか良い話ですね(^^)

しかし初防衛戦で暫定王者のランディ・ペタルコリンと対戦という話が事実なら、いきなり正念場が来ることになります。
小型パッキャオと呼ばれるサウスポーの強打者、以前井岡一翔と対戦か、と一部で報じられたときに動画を貼ったことがありますが、
相手次第でどうかは不明なれど、その時見た映像では、けっこ強いなこれ、という印象でした。
もっとも、強制的な指令が来ない限り、最初は他を当たる可能性の方が高いのでしょうし、それも仕方ないことかも知れませんが、
日本王者時代にそうしたように、今後も最強の挑戦者と闘ってほしい期待もありますね。
何せあの怪物相手に逃げなかったんですから。ペタルコリンが強いにせよ、まだ人間の範囲内ですしね(笑)



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