さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

かつての自分自身を追う、旅の終わり 大場浩平、2-1判定勝ち(動画追加)

2021-07-19 00:17:39 | 大場浩平



ということで、昨日はWOWOWオンデマンドで世界最高峰の試合をひとつ見たあと、YouTubeで刈谷からの配信を見ていました。
メインの逆転KO(こういうの、続くもんですね)、セミの速攻劇等々、一昨日の八王子にも似た、激しい試合が沢山見られました。
しかしその中で、やはり一番気にかかったのは、静かな部類の展開だった、5試合目でした。


大場浩平、ラストファイトは2-1判定勝ち。
内容的には微妙な感じもありました。
若い中村龍明が少しでも大振りになれば、目と距離で外す防御が生きましたが、少しでも小さい振りで狙われると、外しきれない場面も散見。
初回、中村のワンツーが入ったときは、また防御センサーが機能せず打ち込まれるか、と心配になりました。

しかし、芯は外せていたようで、その後は少しずつ動きで外す感じが出てくる。
とはいえ、時に押されたりもつれたりした際にバランス崩したり、足取りも往時の軽快さとは程遠かったり。
かつて名人芸の域だった右アッパーやボディ攻撃も、目覚ましい効果は生まず。

中村に「攻めあぐみ」の展開を強いた、とも言えるが、試合は山場らしいものなく終了。
判定は2-1で大場でしたが、正直、どちらとも言い難い、という感じでした。


ただ、大場浩平が、リングの上でしか追い求めることの出来ない何ごとか...かつての自分自身の影か、片鱗か、どういう表現になるのかわかりませんが、そうしたものを再び「実感」したくて闘っているのだろうなあ、という心情的なところは、けっこう伝わってくるものがありました。

身体を左右に翻し、上体を反らし、そこから肩を捻って打つ右ストレート、ダイレクトで的を捉える右アッパー、相手の打つ手の前に、或いは後に狙うカウンターなどは、本人の意に反し、往時のような鮮やかな勝利を彼に与えはしませんでしたが、最終回に浅く?決まった右カウンターは、彼のせめてもの願いに、僅かながらかなうものだった、のかもしれません。



「自分はずっとボクシングやってきて、これしか好きになれなくて」
「他の何も、好きになれなくて」
「今日、リングに上がることを、ずっと夢に見てきました」
「今日、それを終わらせます」
「新しい人生を、家族と、もう一回、やり直します」
「(観客に向け)今日、本当に、ありがとうございました」



試合後、引退セレモニー(通算二回目)で涙を堪えて語る言葉は、どれも胸に迫るものでした。

長きに渡ってその才能に魅了され、その姿を追い続けてきた大場浩平との、お別れのときが(改めて)来たのだなぁ、としみじみ思っています。
そして、これをライブ配信で見られて良かった、と。
大場浩平と共に「ボクシング選手名鑑」管理人さんにも、感謝します。ありがとうございました。



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こちらに、昨日の全試合、別角度から、画質の良い動画がアップされています。
これは有り難いですね。重ねて感謝です。



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敗れてもなお、闘いうる者への敬意を 大場浩平、再起戦に敗れる

2020-09-28 13:24:37 | 大場浩平





昨日はWOWOWオンデマンドとYouTubeとG+(これはMotoGPですので、関係ないですが)で生中継を見まくる、まあえらい一日でした。
しかし、土曜日に行われた神戸の試合、ライブ配信がなかった「セミセミ」の動画が、YouTubeにアップされていて、まずはその感想から。



かつて大ファンだった「名古屋のメイウェザー」大場浩平、5年ぶりの再起戦は2回TKO負け。
若い湊義生の攻撃を食い止めるジャブが出ず、目で外す防御は機能せず、2回早々、右の狙い打ちを食ってダウン。
追撃されて反撃の手が出ず、ストップでした。


試合動画、ご紹介。







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正直言って、あらゆる想像のなかで一番「妥当」な内容と結果だった、と思います。
いくらトレーニングで体力面が回復していても、5年に渡り「通電」していなかった防御センサーは、以前の通りに働いてはくれなかった。
そういう試合に見えました。

大場浩平は、元々、堅調な技術が攻防のベースにあるのではなく、独特の勘、センスの存在が前提で作られていたボクサーです。
普通でも、ボクサーにとりブランクはもっとも恐るべき大敵で、その期間が5年にも渡るとなれば、再起後に明るい展望など持ちようもないところへ、大場浩平のようなタイプが、となると、ますます難しいだろうと。

そこへもってきて、コロナ渦の影響で海外からお手軽な相手を呼べないこともあったか、或いは大場の希望かわかりませんが、若く素質に恵まれ、なおかつ敗北からの再起を期す、という状況にある湊義生が対戦相手です。
土曜日の午後、この結果を知ったときは、残念に思いこそすれ、驚きは一切ありませんでした。




かつて、あるボクシングノンフィクションで、ボクサーが「未来」を夢見る様について、読んだことがあります。

そのボクサーは、戦績が目覚ましいわけでなく、もちろんタイトル獲得歴もない、普通のボクサーなのですが、口を開けば「次勝てば」「その次に、上の選手とやれて」「で、そこで勝てば、ひょっとしたらタイトルマッチの話が...」というようなことを語ったあと、自らの展望が、傍目には楽観が過ぎると映る可能性に思い至り、照れ笑いを浮かべ、しかしそれでもなお、己の未来に希望を込めた言葉を並べた...と。



全ての試合を他人事として見て、ファンとして楽しめるかどうか、という基準だけでモノを言う。
それが私の、というか本来の、ボクシングファンの立場です。

しかし時に、ひとりひとりのボクサーが心中に秘めた何ごとかに思いを巡らせると、そこには人間ひとりに、等しく、ひとつだけしか与えられない人生があり、その中で抱いた未来への希望が、彼らを突き動かしているのだ、という当たり前のことに気づきます。


大場浩平がこたびの再起について語った言葉は、専門誌にて読めましたし、その他のメディアでもちらほらと散見しました。
それを深く読み解かずとも、この試合に挑むにあたり、彼が望んだもの、求めたものが何だったのか、と色々思わずにはいられませんでした。

そして、ボクシングという優勝劣敗の掟に支配された闘いの場において、結果は明白に出ました。
全てが無残に打ち砕かれた、と言うしかない内容と共に。


「こうなる」ことも当然、多くの人々同様、大場浩平本人が一切想像していなかったわけではない、と思います。
それでもなお、彼はこの闘いに臨みました。

闘うため、それ故に失い、振り払わねばならない人生の何ごとかがあり...それでも闘いの場においては、勝者の数だけ、敗者が生まれる。
かつては鮮やかに軽やかに、すべてが自在だったように見えた大場浩平は、舞い戻ってきた闘いの場において、その冷酷無情な掟の前で、勝者となることが出来ませんでした。


その様を見て、第一に思ったことは、ボクシングとは何と残酷で、無情で、しかし美しいものだろうか、ということでした。
誰にも等しくある人生において、しかし、このように全てが明らかにされる闘いが他にあるだろうか、と。
多くのボクサーと同じく、大場浩平にもまた、その闘いの中に求めた何ごとかがあったはずです。


それ故に闘い、そして敗れた大場浩平に、傍目のこちらが、気の利いたことなど言えようはずもありません。
ただ、勝手に、様々に、思うだけです。闘う者、闘いうる者への憧れと、敬意を込めて。



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本日の一曲。
篠原太郎「ここにあるもの」。







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相変わらず読めんお人です 大場浩平、再起へ

2020-06-16 17:09:48 | 大場浩平




ということで、大場浩平が再起する方向で、トレーニングを再開しているとの報
薬師寺ジムのトレーナーを辞して、真正ジムから暖簾分け?で新設されたサンライズジムに所属し、ライセンスの再申請も済み、対戦相手も湊義生に内定とのこと。

若いイメージが残っていますが、もう35歳、大丈夫かなと思います。
記事では、ランディ・カバジェロ戦の際に患っていたという白内障が完治して、とありますが(それはそれで色々問題です)、元々勘や反射神経に比重がかかったスタイルでもあるだけに。

相手がユーリ阿久井に初回逆転KO負けを喫したとはいえ、新人王戦では光るものを見せた湊義生というのも...湊の側も、バンタム級より重い体重では受けないでしょうから、大場にしたら再起早々「噛ませ」ではない本気の若手相手と、厳しい体重設定で闘うことになります。


しかし、本人が望み、肉体的に問題がないのなら、心配事をあげつらってどうのこうのと言うたところで、意味は無いのでしょうね。
このご時世で、試合開催もままならぬところも多い中、対戦相手の目処がはっきり立っているだけでも、恵まれている方なのでしょうし。


それにしても意外な一報でした。当然ながら、全然知りませんでしたし。
現役時代から、やっているボクシングそのものも、キャラクターも、色々と、見る者の思い込みから逸脱した、意外性のかたまりのような印象がありましたが、まさかここに来て再び、とは...。

いずれにせよ、彼がリングの上で再び闘い、手にしたいものが、心残りがあるならば、それを追い求める姿を見ずにはいられない、という気持ちではあります。
コロナ危機で世の中が、時代がどう変わろうと、ボクサーが、人が心に思うことは変わらないのだなぁ、と思ったり...。


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神戸でお別れ/好試合続々/中国の未来がかかる/転級賛成

2015-03-05 19:14:07 | 大場浩平


昨日は今年初観戦、神戸にて大場浩平の引退式を見てきました。

リングに上がってシャドーを繰り返す姿には、最後になるリングの感触を味わいたい、という風情が見え、
なんとも言えない気持ちになりました。

スーツ姿でマイクを持ち、各方面に感謝を述べたあと、リングサイドにいた夫人とお子さんに向かって
何事かを言おうとして、言葉に詰まった彼を見て、ああ、もう本当に、彼は引退するのだなと実感させられました。
昨年9月の試合を見て、潮時だということはわかっていたつもりですが、それでも。


新人王戦や若手の頃の、いつも軽やかで自在で奔放だった彼は、その大いなる才能をもって、
目の前に立ち塞がる敵を翻弄し続けていくのだろうと思っていました。
しかしリングの内外における様々は、そのような夢を、結果として叶えてはくれませんでした。

それでもなお、長くに渡り、数多くの試合を通じて、壮大な夢を見せてもらった恩義のようなものを感じていました。
そういうことで、心の中で彼にお礼を言いたいという気持ちで、テンカウントを聞きに行ったようなことでした。


で、セレモニーの最後の方に、花道のついたての影に身を潜めていた不審な?人物が花束持って現れ、
誰かと思えば長谷川穂積でした。サプライズ登場、だったそうです。
山下会長や、その他、後援関係の「送辞」を貰って、セレモニーは終わりました。
BGMが、以前から使っていた入場曲(「件の」デュオの歌です)だったのには、うむむ、という感じでしたが、
そういうのも込みで、大場らしいといえばいえるのかもしれません。

その天才を思う様発揮して、それこそ長谷川に匹敵する、或いは超えるようなボクシング界のスーパースターに
なってほしいと期待していた頃からすれば、ささやかな感じのするセレモニーでしたが、それでもその場に
いられて良かったな、という気持ちになりました。

今後は、というか、すでに名古屋で会社員として働いているとのことです。
かつて、彼の試合を見るために、何度も名古屋に行ったものですが、最後は神戸でお別れでした。

第二の人生に幸あれ、と願います。お疲れ様でした。


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で、試合について。

岩下幸右vs奥田翔平戦が、奥田の負傷で中止となったのは痛かったですが、
メインの鈴木悠平は、当て際の強い右クロスを打ちまくり、大浦純生に3回KO勝ち
パンチはあるが、仕留める手際に課題がある選手ですが、今回は2回にダウンを奪ったあと、
追撃の3回に、左で相手をしっかり崩し、右を当てる流れを作った上で倒しました。

徳永幸大vs杉崎由夜の勝者へ挑戦というプランがあるそうですが、それに向けて良い勝ち方だったと思います。

セミは久田哲也が、本健太のインファイトに巻き込まれ、挽回をはかったものの攻勢点を失い、判定負け。
川端遼太郎は若松竜太と打ち合い。果敢に挑んでくる若松にヒットを許す場面もありましたが、
右の精度で勝り、4回で倒しました。


あと、岩下が同じグリーンツダジムの新人、前田紘希とスパーをしましたが、この前田という選手が、
ハメドかロイ・ジョーンズか、という変則スタイルの選手で、まあスパーだからなのかもしれませんが
2ラウンズの間、ポンポンとヒットを重ねて、岩下を捌いていました。
来月6日(正しくは5日でした、訂正します)にB級デビューだそうですが、ちょっと注目ですかね。

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この週末、アムナットvsゾウ・シミン戦です。
中国初のプロ世界王者は、我々にもお馴染みの熊さんですが、実際のところ、中国全土にインパクトを残す
世界チャンピオンとなりうるのは、ゾウしかいないのでしょう。

アムナットとの対戦は、好試合になるかどうかはさておき、勝敗に関してはどちらに転ぶか読みにくいところです。
また、この試合でゾウが勝つことにより、ボクシングマーケットとしての中国がますます大きな存在になるかも、
というような部分でも、興味のある試合ですね。

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今日は細野悟vs福原力也の試合です。
こういうの、CSのどこかでやってくれないものですかねえ。

と、セミで調整試合をやる松本亮について、こんな記事
やっぱりクラス上げるらしいです。

昨年末の試合は、どう見ても思うように身体が動いていない印象でした。
世界云々はおいといて、転級、賛成です。嬉しい情報ですね。

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苦闘の後、天才は断を下した 大場浩平、40戦目を終えて引退表明

2014-09-15 21:59:49 | 大場浩平


昨日は、メイウェザーの試合を見終えたあと、夕方からのんびりと府立の地下へ出かけました。
どうでも観戦しよう!と力を入れていたわけではないのですが、予定していた雑用が早く済み、時間が出来たので、
せっかくの三連休だし、観戦のひとつもしておこう、というくらいの気持ちでした。
結果として、見に行っておいてよかったな、という気持ちでいます。


大場浩平は立ち上がりから、ノーランカーの相馬圭吾という選手に、ロープ際に押し込まれて連打されました。
ロープを背負って攻められても、肩を上手く使ってのブロックでクリーンヒットを許さない大場ではありますが、
この日はあまりにも足が動かず、安易に手数を出させ過ぎ、相馬の果敢な攻撃に押されっぱなし。
それでも相馬のパンチの大半を防いでいて、ボディブローで反撃しますが、ガード、ブロックに依存し、
足を使って外す動きがほぼ皆無という状態が最初から最後まで続きます。

大場が従来から持つ、受け身になり過ぎ、安易に相手に手を出させすぎ、という悪癖ばかりが目に付き、
単発とはいえ、相馬のヒットを許す場面もあった試合は、大場の勝利は間違いないにせよ、苦戦であることも確かでした。
そして大場の良さである足のスピードはまったく見られず、距離を詰めてくる相馬に対し、距離を取れずに巻き込まれっぱなし。
バッティングもありましたが単発ながら打たれてもいて、試合後の顔はけっこう傷ついていました。
攻撃に関しては、ボディブローは多数のヒットがあり、相馬をかなり痛めつけていたものの、
上へのパンチは悲しいくらい精度を欠き、若手時代に見事なKOを生んだ右アッパーは、ことごとく空を切りました。

これはさすがに限界というか、序盤から容易に攻め込まれてしまい、その流れをまったく変えられず、
或いは変えようともしなかった?大場の姿を見て、きついようだがもうボクサーとしては何かが「切れて」しまっている、
たぶんこれより上の相手と闘えば、決定的な破局が待っている、というか、繰り返されるだけだろう、と感じました。


帰宅後、この記事を見つけたときは、正直言って安堵しました。
大場浩平は、先のランディ・カバジェロ戦でそのキャリアを終えるものと思い込んでいた私や、多くの思い込みに反して
今回、再起戦を闘ったわけですが、彼にとっては、自身の完全な納得を得るために必要な「もう一戦」だったのでしょう。

自身の進退は、自身の納得があった上で決める。
当たり前といえばそうでしょうが、それが許されるボクサーなど、考えてみれば一握りに過ぎないのかもしれません。
そういう意味では、彼もまた、一握りの幸福なボクサーだったと言えるでしょう。



名古屋の友人から映像を見せて貰って、その抜群の防御勘と、独特の感性によって繰り広げられる華麗なボクシングに刮目し、
若手時代から何度も名古屋に足を運んでは、彼の試合を見てきました。
様々な苦難を経て、彼の最後の闘いを、府立の地下で見ることになろうとは、当時は想像もしなかったことです。
しかも、TV中継もなく、まして、何かのタイトルがかかったわけでもない試合で、彼のキャリアが締め括られようとは。

何か、意外な、唐突な、という気持ちにさせられてもいます。
しかし、リングの上で、トリッキーな動きで相手の逆をとり、多彩なパンチをヒットしては動き回り、相手を翻弄していた
若き日の彼を思い起こせば、いかにも彼らしい、という言い方も出来るような気がしています。

大場浩平は、最初は名古屋の友人たちにとっての「星」であり、その魅力のお裾分けをいただくような気持ちで
ずっと応援してきたボクサーでした。
そしていろいろな事情があった果てに、関西のジムに移籍してきてからは、その変容の全てを含めて、
彼の姿を最後まで見届けねば、という気持ちで、会場に足を運んできました。

今回、危ういところでその「最後」を見落とすところでしたが、見に行っておいて良かったです。
長きに渡り、本当に楽しい試合を、そして素晴らしい「夢」を見せてくれたボクサーでした。
大場浩平選手に、改めて感謝したいと思います。


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この日のメインはヘビー級。
石田順裕が、フランスのダビド・ラデフに判定勝ちを収めました。

ラデフはモヒカン刈りの白人で、201ポンド。石田より背は低いが、上体の厚みがすごい。
自然なヘビー級、というよりは、少し絞ればクルーザー、という感じ。石田も201ポンド強。

で、試合は石田が速いワンツー、ボディブローのヒットでまさって判定勝ちでしたが、
やっぱり簡単には倒せない。ミドルのスピードを生かしつつ増量に成功している石田ですが、
頑健なヘビー級を倒す威力には、現時点では欠けていると見えました。

対するラデフは、もちろん技術では中量級でタイトルを獲った石田には及ばないにせよ、
一撃の迫力では上回り、速さもなかなか。石田リードは間違いない試合でしたが、終始気の抜けない展開でした。
ラデフの戦績は5勝7敗2分ということでしたが、石田にとってけっこう手強い相手で、
この辺の選手でもけっこう怖い、ヘビー級ってやっぱり化け物の世界なんやなぁ、と痛感した次第です。

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夢が破れたその様が、何故これほどに美しい 大場浩平、死闘に散る

2014-04-04 23:54:52 | 大場浩平



おそらく、彼のキャリアを締め括ることになるであろう、
大場浩平vsランディ・カバジェロの試合を神戸で見てきました。
以下、簡単に試合展開。

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初回、ジャブの差し合いで、カバジェロが大場と互角かそれ以上のハンドスピードを披露。
ボディに散らすパンチも力感がある。大場のジャブ、左フックを軽く食うも、
終了間際に右カウンターを合わせる。大場膝をつくダウン。

2回、大場猛反撃。左はレバーに、右はストマックに、ボディアッパーが次々と決まり、カバジェロ後退。
執拗なボディ攻撃にカバジェロ右クロスからボディ。大場懸命に食らいつく。やや大場。
3回、大場足を止めた展開で闘う。カバジェロが上下に強打を飛ばす。大場はボディ攻め。
カバジェロが有効な強打でリード。

4回、カバジェロがやや突き放しにかかる、接近戦を嫌い、くっつくとクリンチ。
大場は前に出るがややコントロールされ、ボディ当てるも単発。カバジェロ。
5回、接近戦、大場の左ダブル、コンパクトな連打が決まる。
しかしカバジェロは若さと体力を生かし攻める。手数で攻め、押し勝つ。カバジェロ。

6回、大場、ダメージと疲労ありあり。カバジェロの右アッパーでよろめく。
しかし大場くらいつき、連打で反撃。この回は一打の効果でカバジェロ。
7回、大場ロープ際でL字ガードも、カバジェロ攻め込む。
スイッチを織り交ぜ連打、右クロス、ボディ打ち。
大場右カウンター、上下に連打。カバジェロ。

8回、激しい攻防ながら、カバジェロが若さを見せる。大場はダメージと疲労ありあり。
カバジェロが前進、細かい連打で大場後方に倒れる。プッシング風に見えたがパンチによるダウン。
立った大場だが動きが止まり、再開後すぐタオル投入。カバジェロTKO勝ちとなりました。

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ランディ・カバジェロは、Youtubeの動画で見た以上に、バランスがよく、手のスピード、
反応、判断のスピード、若さと体力に秀でた、一級品の選手でした。
世界レベルの水準にある、ホンモノの世界ランカーと言える実力者でした。

おそらく、すぐに世界戦に出して、誰に挑んでも好試合が期待出来るでしょうし、
相手次第では圧倒して王座奪取を成し遂げる可能性も充分、と見えました。
世界戦以外の、普通の試合では、滅多にお目にかかれるレベルの選手ではない、
これはなかなかに有り難いものを見せてもらった、という満足さえ感じました。



そういう相手に、大場浩平は現状の自分の力を全てぶつけて、敗れました。

その現実を受け入れた上で、やはり長きに渡って、彼の天才を目にし、夢を見てきた者としては、
やはり無粋ではあっても、どうしても語っておきたいことがあります。


名古屋時代とは違い、足を止めて相手と正対した上で速いジャブを飛ばし、
相手の右は目で外し、ボディ攻撃で切り込んでいく。
中間距離から接近戦での打ち合いに全て応じ、打ち勝つことを目指して闘う。

最近の数試合をこのように闘い、いくつかの試合でその通りに勝った様に対し、
好意的な評論もいくつか目にしましたが、私はそれに対して強い違和感を感じてきました。

そして、今日の試合でも、私たちが長きに渡って見てきた大場の集大成としてこの一戦を見たとき、
多くの場面、局面で、過去の彼ならああだった、こうだった、と思うところが多くありました。

派手に足を使い、というより飛び跳ね、サイドに回ると速すぎて相手の背後に回ってしまう。
前進してくる相手を、バックステップを踏みながらジャブの連射で打ち据える。
ロープを背負って攻められたと見えた瞬間、クルリと立ち位置を入れ替え、右アッパーで倒す。
鋭い角度で相手の身体を直角に捉える、威力抜群の左右ボディアッパー。

今回の試合において、攻撃面ではこれらの武器が威力を見せた反面、
彼が本来持っていた、他のボクサーとは明らかに別物な天性、天才が見られなかった。
それもまた、事実です。

それが失われたものなのか、捨て去られたものなのかはわかりません。
言えることは、それが現在の大場浩平であるということです。



試合のさなか、場内は大場の好打に沸き立ち、劣勢には悲鳴が飛び続けていました。
両者の気迫、闘志、そして攻防の鋭さ、強さが間断なく披露される、熱く激しい闘い。
場内の入りは、これほどの好カードであってなお、少々寂しいものではありましたが、
リングの上には間違いなく灼熱の炎が燃え上がり、その熱は、観客の心に、確かに届いていました。

試合の後、大場浩平は傷ついた顔に笑みを浮かべ、四方に挨拶をしていました。
その姿は敗れてもなお清々しいものでした。

天才、天性、と軽々しく書く他人には思い知れない労苦の果てに、
得たものがあれば、失ったものもあったが、彼はその現実の中で、堂々と闘い抜いた。
遂に世界王座の夢には手が届かなかったにも関わらず、その闘う姿、
そして闘い終えた姿は、とても美しい記憶として、私の心中に残りました。


今日、大場浩平は素晴らしい試合を見せてくれました。
その事実を、改めて書き記しておきたいと思います。


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確かなものはまだ見えず 大場浩平、若手挑戦者を三度倒し完勝

2013-11-30 18:28:44 | 大場浩平


昨夜は神戸にて大場浩平の試合を見てきました。

対戦相手が「長谷川」姓だったので、この試合が決まった記事を見たときは
一瞬、何事かと思ったものですが(笑)
キャリアは浅いが上昇中の若手、長谷川雄治は、大手ジムの所属ということもあり、
実際見てみると、なかなかの好選手でした。

初回、大場は前に出て圧力をかけつつ、速い左を繰り出す。
最初はこれが決まり、大場が若く格下の相手を押す展開になるのかと思ったのですが
すぐに長谷川が頭を動かして外し、逐次リターンを返すようになります。

大場は左をほとんど外され、打ち合いではボディも交えて攻めるも、
長谷川の抵抗に遭ったため、攻めきる形をいったん止めて、
いつものL字ガードで相手の手を引き出す「対応」をせざるを得なくなりました。

おお、この挑戦者、若いけどなかなか筋がいいなぁ、と思っていたら、
初回終盤、打ち合いのなかで大場の左ダブル、下から上が決まってダウン。
ダメージはさほどではなかったかもですが、長谷川にとり痛い失点でした。

2回、大場は以前ほど派手に動かない。ワンツーの好打はあるが、
やはり昔の大場に比べると重く見えてしまう。
この回は長谷川の手数、浅いながらリターンパンチのヒットを取って長谷川。

しかし3回、やはりまともにやり合うと、どうしても大場の方がまさる。
左ダブルのヒットから、接近戦で小さい右アッパーを決めて長谷川を倒し、
4回、ボディを交えてヒットを重ねた大場が左フックでまた倒す。
カウントの途中で横浜光コーナーからタオルが入り、TKO。
表面的には、大場の圧勝、と報じられるであろう結果となりました。


しかし実際見ていて、そういう印象で全てを語れるような試合だったかというと、
ちょっと違う部分もあった試合でした。

挑戦者の長谷川雄治ですが、ちょっとタイトルマッチに出すのが早かった、という印象です。
なかなか良い選手でした。変な癖もなく、防御の意識も高く、手数も良く出て、闘志も感じました。

ただ、大場の速い左を小さい動きで外してはリターンを返す集中力が、
3分間続かないという面があり、初回にせよ3回にせよ、せっかくここまで
丁寧に外してきたのに、ダウンさせられるとは勿体ない、という感じでした。
この辺はもう少し経験を積めば、解消されるかもしれない課題です。
もう少し強くなってから挑んでいれば、大場をもっと苦しめたかも知れないですね。


で、勝った大場のほうは、これで2連続KO防衛ということですが、
結果はさておいて、闘った相手の質は、名古屋時代の王者在位時の方が遙かに上であることは
彼の試合をつぶさに見ている名古屋のファンの方ならご存じの通りです。
そして、闘い方というか、攻防のバランスをどこに置くかという面でも、かなり違いがあります。

本人もインタビューなどで語っているとおり、若い頃のように派手に動くスタイルではなく、
現状のコンディションを考えてか、足をあまり使わず、無駄に動かない形で闘っていて、
ここ二試合はTKO勝ちしていることもあり、攻撃に比重を置いているようにも見えます。
実際、若い相手とはいえ、好打を決めてダウンを奪い、それ以外にも相手を有効打でカットさせ、
以前よりも攻めに関しては迫力、決定力が結果に現れています。

ただ、格下と見える相手にも不用意に打たれる印象があります。
ことに連打したあと、リターンをよくもらいます。これは以前からの悪癖で、
簡単に言うと、打つ前はよく動き、フェイントも入れるのですが、打った後に止まるのです、大場は。
打った後に、丁寧にサイドに出る意識があれば良いんですが、これは長年の課題ですね。


そして、そういう今の大場が、以前闘っていたレベルの日本上位クラス、
或いは今の上位陣(岩佐、椎野など)と、もし闘った場合、
或いはさらにその上、世界王者と闘った場合、どうなるのか、ということが問題です。

今、彼の試合を見ることは、目の前の勝ち負けだけではなくて、
そういう「先」が見えるか否か、という問題に対する答えを求めることでもあります。

長谷川雄治は、上記の通り、良い印象を持つ選手でしたが、はっきりと経験不足でもありました。
その相手に、初回立ち上がりと、終了間際のダウンシーンまでの2分半あまりの時間、
大場はやや劣勢の展開を強いられ、あのままいけば失点していたでしょう。
2回の三分間も同様だったと思います。

テンポの速い打ち合いの展開において、防御の意識が崩れてしまう長谷川を
結果的には三度倒して勝ちました。しかし、攻撃に比重を置いた闘い方でもって、
世界タイトルを目指すのなら、あの、左のミスが多発し、リターンジャブを外しきれず苦しんだ
時間帯をどう顧みるのか、というところが問題になってくるでしょう。

個人的には、攻めに傾くなら傾くほど、小さい動きの防御が必要だと見ます。
それが無理なら、最初から強引に攻めるようなことはせず、ラウンドによってはもっと足を使って、
後退しながらのジャブでポイントを拾うような展開も必要だと思います。
その上で、攻めるべき展開になれば攻める、という、世界を言うなら当然持っていて然るべき
冷静さと判断力が、大場には求められるのではないかと。

そういう視点で見れば、手放しとはいかない、ちょっと引っかかる部分がある試合でした。
もっとこう「寄せ付けない」展開で始め、締め括って欲しかったですね。


試合後のインタビューでは、ジムは世界戦交渉に動いているという話も出ましたが、
どの相手に挑むのかは、まだ不明でしょうし、これはまだ先の話なのでしょう。
関西テレビの放送がついて3戦目、結果も出していることですから、
将来的には何とかなるのかもしれませんが。

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前座では、昨年のバンタム級全日本新人王、WOZジムの大森将平が初回で倒し
レコードを10勝(6KO)に伸ばしました。
長身のサウスポー、柔軟な動きの大森は、小柄なアルバート・アルコイを
左のロングでぐらつかせ、ラッシュしてストップ。
体格差のある相手とはいえ、無駄な抵抗を許さない即決ぶりでした。

この選手、非常に素質を感じます。コンスタントな試合の機会と
上質の指導に恵まれれば、大成しそうな逸材ですね。
見ていて「和製ツニャカオ」という言葉が頭に浮かんできました。
(おいおい、また始まったで...というツッコミが聞こえてきますが)

とにかく、要注目の選手です。
ちょっと試合ぶりを追いかけてみよう、と思わせる、楽しみな若手ですね(^^)


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久々の歓喜と右アッパー連打 大場浩平、二度目の王座を守る

2013-07-13 21:05:14 | 大場浩平

昨夜は神戸にて大場浩平vs丹羽賢史戦を見てきました。

二度目の戴冠である大場の通算6度目の防衛戦は、今どきのボクシングでは
ちょっと珍しいほどKO率が低いが、あのウィラポン、ナパポーンといったタイ勢、
国内では三谷将之、池原信遂といった強敵相手に判定まで闘いぬくなど、
強敵相手にしぶとい闘いを見せてきた歴戦のベテラン丹羽が相手となりました。

予想をすれば、やはり大場が有利とは思いました。
丹羽はランク1位とはいえ、大場が最初の王座在位時に破ってきた
三谷、児玉、川端、臼井、池原、そして移籍後に闘った村井、ジェロッピと比べると
どうしても戦力的には劣ると見ざるをえません。
しかし上記の通り、粘り強く地力のある丹羽が、復調の途上にある大場に食い下がり、
番狂わせを起こす可能性も、試合展開次第ではあるかも、というところでした。

試合は立ち上がり、大場があまり動かず、しかし例のとおり左を下げたL字ガードで構える。
丹羽は大場が足を使うと想定して、プレスをかけて攻めようとしていたら、
思わぬ形で打てる距離を得た、という感じ。連打で攻め、押し込む形で攻勢、初回を取りました。

大場は見るからに動きが重く見え、足を止めてL字ガードとスウェーで外す構え。
しかし、この動きのない構えで、相手が思い切りよく手を出せる距離で闘うの?と
不思議に思った初回を終えると、2回から攻めてくる丹羽のガードをアッパーで破り始めます。

2回からボディ攻撃と右アッパーが決まりだし、3回は名古屋時代によく見せた
右アッパーが3発、4発と続く攻撃が見られるように。丹羽も懸命に応じ、激しい打ち合いになるが
より多彩に、正確にヒットを重ねる大場が5回、左ボディでダメージを与え、
6回、攻勢の中で右のパワーショットを決めたところでレフェリーストップとなりました。

大場、タイトルマッチでは池原信遂戦以来のKO勝ちとなりました。
試合後、コーナーポストに駆け上がり、ガッツポーズを見せる姿を見て、
大場がこんな爆発的に喜ぶ姿を見るのは久しぶりだなぁ、と
こちらまでなんだか嬉しくなってしまいました。

しかし、立ち上がりからストップシーンまで、全体として攻めの姿勢が出た反面、
動き自体はちょっと重いか、と感じたのも確かです。
普通のボクサーではちょっと無い、アッパー中心の連打攻撃から、
ストップを呼び込んだ右クロスへの切り替えも最後には出ましたし、
攻撃面では良かったんですが、粘り強い丹羽の反撃を、単発とはいえもらっていたのも事実で、
パンチのある相手だとまだまだ不安かな、という印象もありました。


今後については、WBA王座挑戦を目指すという会長のコメントがあったようですが、
マルコム・ツニャカオとの二戦目で、サウスポー相手に右リードで、ボディで、プレスで、と
ラウンド毎に攻め口を変え、ツニャカオの力を封じた(と私には見えました)大場とはいえ、
アンセルモ・モレノを攻略するには、あの頃より少しスピードが落ちていて、
でもあの頃と変わらず、立ち位置、距離の取り方に慎重さが欠ける部分が問題かな、と思ったりもします。

まあ、次すぐに、おいそれと世界戦が組めるものでもないでしょうから、
ここは国内上位との試合で、徐々にそのあたりを整理していってもらいたいですね。
出来れば岩佐、椎野といったところとの絡みを、来春あたりに期待したいところです。

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大場浩平の「今」 (再度更新)

2013-05-31 08:42:26 | 大場浩平

関西ローカルにて放送された、大場浩平vsゼロフィット・ジェロッピ戦のドキュメントです。

Youtubeの動画紹介しておきます。その1その2その3です。

ボクサーという人たちが、膨大な数のパンチを空に放ち、バッグに叩き付け、
長い距離を走り、己の体を苛め抜いて絞り上げ、その果てに、
報われないことも多い、過酷な闘いに挑んでいるのだ、ということを
ふと思い返しますね、こういう番組を見ると。

あの飄々として軽やかな、いつまでも若く見えたはずの、大場浩平の「今」が
淡々と映し出されています。いいドキュメントだなと思いました。

ちょっと興味深かったのは、神戸移籍後のトレーナーが、
あのメイウェザー風スタイルの肝というか、代表的な防御である肩のブロックを
止めさせようとはしていない、むしろ積極的に生かそうとしているらしい、という点ですね。
良し悪しあるとは思いますが...。


とりあえず、こういうのはいつ消えるか知れたものではありませんので、
興味のある方はお早めに。


※現在、抹消、復旧を繰り返しております。見られる時とそうでない時があります。ご了承くださいませ。




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諦めきれない夢を追う 大場浩平、奪冠

2013-03-17 18:57:12 | 大場浩平
昨夜は神戸にて、大場浩平vsゼロフィット・ジェロッピ戦を観戦してきました。

シーソーゲームというほどでもないですが、互いの強みと弱みが両方出た、
ちょっと騒々しい、落ち着きのない試合だったという印象です。

簡単に試合展開を。

1回、大場スタンス広く、左低い構え。ジェロッピ右オーバーハンド、浅い。
大場飛び込んで左フックの連打。やや大場。
2回、大場速い左。ジェロッピの右ロングは大場の背中に。やや大場。

3回、ジェロッピの右が大場の左腕の上に当たると、大場がバランスを崩して?後退。
ジェロッピが攻勢。大場しばらく受け身になり、追撃されるがボディブローで反撃。
ジェロッピ右で追撃も、大場がボディから上に連打を決める。前半の攻勢でジェロッピ。

4回、大場逆襲続く。得意のボディブローが再三ジェロッピを捉え、ワンツーも交え攻勢。
大場の、上への右ストレートは、小さいバックステップで外すジェロッピだが、
ボディは防ぎきれずに、ロープ際に詰められ打たれる。大場の回。
5回、大場はガード上げて前進、ジャブは出さず接近、プレス。
ボディ攻撃を中心に攻める。ジェロッピはダメージを引きずっている感あり。大場の回。

6回、このまま攻めきるかと見えた大場、疲れたかミスが増える。ジェロッピ、ひと息つけたか。ジェロッピの回。
7回、ジェロッピが右ストレートを当てる。大場、ボディを攻める。ジェロッピ、再び失速気味。大場。

8回、ジェロッピ奮起、右で攻める。大場が出るも、ジェロッピがカウンターとジャブで抑える。ジェロッピ。
9回、大場出ては打たれる。7回から出血しており、視界が悪いのか。ミスしては軽いカウンターを食う。ジェロッピ。

10回、ジャブの刺し合いで大場負けている、やはり視界不良か。しかしワンツー当てる。
ジェロッピ疲れたか、クリンチ増える。大場ミス多いが強引に攻める。ワンツー、左ボディヒット。
両者疲れた中、大場が攻めきって試合終了。やや大場。

ということで私の採点では一応、96-94で大場の勝利となっていました。
公式採点の中では、一番辛いのと同じ数字でした。


大場は過去の試合ぶりと比べ、よく言えば積極性が出て、悪く言えば強引さが目につく、という感じでした。
得意のボディブローは、相変わらず威力があり、中盤などはこのまま攻め落とせるかな、と思いました。
しかし、上へのワンツー、右ストレートはもうひとつ軌道が緩く、また速い手に足がついてきていない感じで、
上体だけが伸びたフォームになっていて、相手に届かず、当たっても致命傷にはならない感じ。
良いボディ攻撃が出来るのだから、そのあとの攻め手、打ち方に変化が欲しいところです。

ジェロッピは随所に巧さを見せていましたが、大場のボディ攻撃をまともに受けて
明らかに劣勢になった中盤が惜しまれるところです。
大場は過去にも日本上位の相手を、何度もボディ攻撃でKO寸前に追い込んだ試合をしていて、
結果論ですがジェロッピにはもっと警戒が必要だったと思います。
しかしそれでも終盤、小さいステップと正確なジャブでペースを取り戻した回があり、
この辺はジェロッピの地力を感じました。今後については厳しい話も聞きましたが、健闘だったと思います。


ところで、試合後の大場のインタビューは、名古屋時代のとぼけた若者、という印象とは違うものでした。
自分は崖っぷちにいるボクサーだが、まだ諦めたくない、頑張りたい、まだ夢を追いかけたい、と
切実に語る大場の姿は、もう決して若くはない28歳というボクサーとしての年齢と立場の変容を感じさせました。

昨今のボクシング界を見渡せば、まだまだ高齢のボクサーが世界の上位にて活躍してはいますが、
そういう時代の趨勢とはまた別のところで、大場は自身のキャリアを、厳しく捉えているようでした。
以前ほどスピード頼み一辺倒という風ではなくなり、以前以上にボディ攻撃の厳しさ、攻める気持ちが見えた闘いぶりも、
そうした彼の心境の変化の現れなのかもしれません。

同時に、若くて奔放で、常に自在だった彼の姿は過去の物だということも、事実としてわかったような気もします。

かつての大場浩平を見るのとは、また少し違った気持ちで、私はこの異形の技巧派の試合ぶりを、
「最後」の時まで見届けていくのだろうな、と思いました。
昨夜の試合は、そんな試合でありました。



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