さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

大場浩平の「今」 (再度更新)

2013-05-31 08:42:26 | 大場浩平

関西ローカルにて放送された、大場浩平vsゼロフィット・ジェロッピ戦のドキュメントです。

Youtubeの動画紹介しておきます。その1その2その3です。

ボクサーという人たちが、膨大な数のパンチを空に放ち、バッグに叩き付け、
長い距離を走り、己の体を苛め抜いて絞り上げ、その果てに、
報われないことも多い、過酷な闘いに挑んでいるのだ、ということを
ふと思い返しますね、こういう番組を見ると。

あの飄々として軽やかな、いつまでも若く見えたはずの、大場浩平の「今」が
淡々と映し出されています。いいドキュメントだなと思いました。

ちょっと興味深かったのは、神戸移籍後のトレーナーが、
あのメイウェザー風スタイルの肝というか、代表的な防御である肩のブロックを
止めさせようとはしていない、むしろ積極的に生かそうとしているらしい、という点ですね。
良し悪しあるとは思いますが...。


とりあえず、こういうのはいつ消えるか知れたものではありませんので、
興味のある方はお早めに。


※現在、抹消、復旧を繰り返しております。見られる時とそうでない時があります。ご了承くださいませ。




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多階級制覇流行の弊害極まれり 最高峰なのに退屈 メイウェザー、またも大勝

2013-05-10 11:38:16 | フロイド・メイウェザー

今更ですが日曜日の、メイウェザーvsゲレロ戦について。

展開についてはあの通り、予想のまんまというかなんというか。
最近は、一試合にひとつずつ、ちょっとどうかなと思わせるところもあるメイウェザーでしたが、
今回は序盤にロバート・ゲレロが果敢に攻めたものの、穴が開きそうな予感は皆無でした。

マルケス戦で、体重超過を金銭で処理した件。オルティス戦の倒し方。
モズリー戦、2ラウンドの危機。コット戦では若干苦闘。そしてその後の収監と再起。
こういう過程を経て、若干風貌が「ムショ帰り」ぽかったのは笑えましたが、
試合ぶり自体は、相変わらず抜群の防御技術と勘が冴え渡る、メイウェザーならではの
ボクシングの科学と天才の華麗なる融合、とも言えるものが、
フルラウンドに渡り、滞りなく披露され続けるものでした。

と、凄く良い表現をすれば上記のとおりですが、それが見てて面白いのかというと
全然そうではありません。同様の感想をお持ちの方も多いと思います。

メイウェザーの防御を攻め崩す技量、力量が見るからに欠けているゲレロ、
防御は見事だが、攻撃に関しては必要最小限、「打倒」が期待できないメイウェザー。

両者の闘いは、技術的には見どころがあっても、傍目の我々が期待するスペクタクル、
スリルといった要素が乏しく、何一つ戦前の予想、想像を裏切る要素がない展開が
延々と続く試合は、言っちゃなんですが退屈の一語でした。

まあ余計なお世話かもしれませんが、こんな試合で数千万ドルの報酬を得るといっても
そんなお金、どこの誰が出してんのかね、と不思議に思います。
アメリカのPPV視聴者って、こういうのホントに好き好んで見てるんかね、と。

何だか、アメリカのトップシーンって、結局のところは複数階級、というより
もはや「多階級」制覇の王者が乱立し、それによってステイタスを得た者同士が
PPV放送のビッグマッチを闘うことが成功、という図式になっています。

しかしその挙句、選手がベストウェイトを外してボクシングの質を落としてしまい
(マニー・パッキャオのような、驚異の例外もありますが)、
これ、ベストの階級でもっと早くぶつかってればな、と思うカードもけっこうあります。
昨年ならメイvsコットですね。140ポンドのときにやってればな、と思いました。

そして、もしメイウェザーがライト級あたりに留まって、防衛や統一戦を続けていれば、
抜群の防御センスとともに、もっとスリルのある攻撃、KOシーンが多く見られたのではないか、とも思います。
実際、このあたりでは、カスティーヨ戦は苦闘でしたが、フィリップ・ヌドゥ戦や
スーパーライトでのアルツロ・ガッティ戦など、強敵相手に見事なKO勝ちをしています。

結局、ビジネスとして成功であっても、それにより犠牲になっているものもある、と思えてならないのです。
統括団体乱立、階級増加により、真の強さや王座の権威が高額報酬に繋がる図式が崩壊した結果、
ビジネスとしては肥大したものの、ボクシングの魅力自体が削られている面があります。

ウェルター級より上に上げてからのメイウェザーの試合を見るたび、そのように感じることが多かったですが、
今回の試合などは、本当にその典型というべきもので、もしゲレロとの試合が、
下の階級で闘っていたころに実現していたら、まったく違った内容と結果になっていたでしょう。


往年のレナード、ハーンズによって先鞭がつけられ、デラホーヤ、パッキャオ、メイウェザーらが主導した、
近年のこうしたボクシング・ビジネスの傾向は、
いい加減限界に近づいてきているのではないか、という気もしています。

実際、今回SHOWTIMEへの移籍初戦で、メイウェザーの試合にしては、PPVの契約件数が少なかった、とか。
当初、カネロ・アルバレスvsオースティン・トラウトとのダブルメイン?予定だったことから、
視聴者の購入意欲を削いだ結果なのかもしれませんが、今回の試合内容が容易に想像できるものだったことも事実でしょう。


そしてこの流れに掉さす新たなスターは現れないのでしょうか。
メイウェザーやパッキャオも、遠からずリングを去る日が来るでしょうが、
その後に世界のトップシーンを担う、次世代のスーパースターといえばなんといっても
エイドリアン「アホと天才は紙一重」ブローナーということになるのでしょうが、彼も彼とて、
次の試合は一気にウェルター級、しかも一番攻略容易と目されるポール・マリナッジに挑む、ということになっています。

今はかつてのメイウェザーと同じく、ライト級でバッタバッタと相手を倒しているブローナーですが、
今後はそういうわけにいくのかどうか。今のところ、強打者揃いの140ポンドをパスしていますが、
そのうち真の強敵と出くわしたとき、いったいどうなるのでしょう。

今のところ、メイウェザーよりも相手との距離を外さず、密度の濃い攻防一体のボクシングを繰り広げている
天才ブローナーですが、彼もまたクラスを上げることにより、その密度を薄めて、防御に比重を置いたスタイルに変わるのでしょうか。

そして、そのような変容の末に、多階級制覇を果たしたとして、それが変わることなく、
選手のステイタスと、高額報酬を保証するものなのでしょうか。

米国における現状のボクシング・ビジネスには、次世代の選手層育成や、ファン層の維持という面において、
かなり不足した面があるように感じていますが(ヘビー級の衰退はその先駆けのような気がします)、
往年のように、ひとつの階級で多くの防衛と統一戦を重ねるスタイルが評価されるようになる、
そういう揺り戻しはないのでしょうか。今のところは、そんな兆しはどこにもありませんが。


話は戻りますが、もしメイウェザーが、ライト級に留まって闘い続けていたとしたら、
いったい今頃、世界のボクシングシーンはどうなっていたのでしょう。
パッキャオ、マルケス、カサマヨールにエドウィン・バレロ...もし彼らと、メイウェザーが
135ポンドで対戦していたら、きっとボクシングの歴史に残る、凄まじい試合ばかりだったことでしょう。
そしてメイウェザーがこれらの試合に勝ち抜けば、彼は石の拳ロベルト・デュランを凌駕する、
同級史上最強の評価を得たはずです。

しかし、そういう夢というか妄想というか、こうしたものが実際に試合として提供されるときには、
双方の選手が本来の体格よりも数階級上の肉体をまとっているのが、近年の常識です。

やはり、そういう傾向は、どうも好きにはなれませんし、
そして、長い目で見て、けっして良いことだとも思いません。
今回の試合を見て、フロイド・メイウェザーの才能が稀有なものだと改めて感じたからこそ、
余計にそういう思いが強くなりました。


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勝ち試合を見た気がしない 宮崎亮、苦闘の末KO勝ち

2013-05-08 22:28:23 | 関西ボクシング

今日の試合はTVで見ました。会場にはとても行く気がしませんでした。
その理由を繰り返して書きはしませんが、正解だったという気がしています。
感想を簡単に。


宮崎の出来は、とてもじゃないが良いとは思えませんでした。
始まって早々から足がべったりで全然動きがない。打つタイミングは彼ならではの非凡さが見えましたが、
防御のセンサーが全然働いていないというか、もろに相打ちをもらうことが再三再四。
挑戦者のカルロス・ベラルデは、威圧感に乏しい風貌のとおり、ボクシング自体も怖さは感じなかったですが、
その対して鋭くもなく力感もないパンチを、相打ちのタイミングで身体の芯に食っていて、
大丈夫かコレ、倒されるんちゃうかとヒヤヒヤ、というより、覚悟しかけるような試合でした。

5回、少しずつ足が動き出し、多少は良いタイミングと、立ち位置の移動によって得た良い角度から
クリーンヒットを奪って反撃を外し、という宮崎らしさが見えたところで、唐突に左フック一発。
鮮やかなワンパンチ、フィニッシュは大変結構でしたけど、そこまでの過程については、
絶不調というか何というか、よくぞこれで勝てたものだという感じ。
暫定王者シルベストレなどの上位陣と闘っていたら、おそらく陥落していたことでしょう。

空位決定戦を暫定王者の存在を無視して行い獲ったベルトを、このまま返上するとのことで、
それは批判されて当然でしょうが、その経緯をあえて棚上げして言えば、もうこのクラスで
これ以上試合をすることは不可能でしょうから、その意味では返上、賛成です。
まあ、そんならなんで、そもそもこのクラスで...というのは、これまた繰り返しになりますので、
敢えて書きませんが。

しかし、なんでもいいから世界王座を獲って、親子愛やら、昔不良だったとかの話をまとわりつかせて、
それで勇気や感動や、と言われても、宮崎亮というボクサーの持つ才能、異形のカウンターパンチャーとしての
スリルと芸術性をはらんだ彼の魅力に、一切触れられないままの知名度向上については、
若手時代から見てきて、彼の将来に期待したり、心配したりしてきた我々にしてみれば、
なんだかなぁという感じがしますね。
今日の試合なんか、最後の回を除けば、宮崎何やってんねん!の一語に尽きてしまうんですが...。

今後は、転級というか復帰というか、ライトフライ級で闘うことになるんでしょうかね。
まあ、4団体認可で間口は広がっていますが、かくあれかし、という話になるのかならんのかはともかく、
彼本来の魅力が見られるような良いコンディションで、彼と闘うに相応しい強豪との試合を
是非見てみたいものです。



さて、メイン?の井岡一翔vsウィサヌ・ゴーキャットジムの一戦ですが、
単発の左上下がそこそこ伸びる以外にあまり見どころもないウィサヌを、
コツコツ攻める井岡の堅実なデラホーヤ風城攻めボクシングが攻め落とした、という展開でした。

9回、ウィサヌが打たれてバックステップしたとこに井岡のボディブローが入り、派手に飛ばされて
そのままダウン、という流れは若干、漫画的ではありましたが、井岡の堅実さと集中力は
相変わらず高いレベルにありました。もう少し、爆発的なものがあってほしいとは思いますが、
それが彼のボクサーとしてのキャラクターなので、仕方ないところですね。

しかしこの試合は、結局のところは「ライトフライ級転向(復帰)第二戦」という位置づけで
見る以外に見ようがない、そういう試合でしたね。相手の選手の力量不足、過大なランクの数字、
そして何より、本来の王者の存在を無視した興行者と、それに追従するメディアの怠慢により
本来その意味を持たないはずの試合が「世界タイトルマッチ」として虚構、じゃなくて挙行されている
この現実の前に、私は言葉では言い尽くせない感情を持っています。


今後についても、宮崎亮の転級とともに、彼の持つ「モラトリアム王座」の行方は、妙なことになるのかもしれませんね。
まあ、この辺については、かくあれかし、という話になることなど、期待する方がどうかしている、
というのが正しいんでしょう。なるべく、然るべき方向に話が転んでくれれば幸いなんですが...。


同じWBAのダブル世界戦、一昨日もあったばかりなんですが、何だか見終えた後の心境が、
自分でも驚くほどに違います。統括団体の批判など、私もあれこれやってきたクチですが、
結局は「向き合い方」の問題なのかなぁ、と、ぼんやり思っております。



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内山快勝、河野熱闘 充実のダブル世界戦

2013-05-06 22:47:42 | 関東ボクシング

ただいまTV放送を見終えました。ディレイだったみたいですね。
まあしかし、どちらも見ごたえ十分の試合で、視聴率高いといいなぁ、と思える二時間でした。


河野公平はリボリオ・ソリスに0-2判定で敗れ王座を失いました。
河野、敗れたとはいえ、懸命な闘いぶりで、見る者を惹きつける熱戦だったと思います。

暫定王者で1位のソリスは、序盤見たところ、力を入れて打つ強打者で、
これは強い間は強いが、スローダウンするのも早い、河野が我慢して序盤を乗り切れば
中盤以降、河野に流れが来る、と感じました。

しかし2回に劣勢と見えた河野が右を決めてダウンを奪う。思いのほか早い逆襲。
後から思うに、これが良かったのかどうか、と思いましたが、ここから両者の打ち合い。
序盤はダウン以外はソリス若干優勢。中盤は河野が攻勢。案の定ソリスが落ちてくる。

ただ、河野も攻めているがフィニッシュには持ち込めない。
ここで意外にもソリスが少しずつよみがえってくる。セカンド・ウィンド、というやつか。
8回あたりから足を使い出し、お世辞にもこなれた感じには見えませんが、アウトボクシングする。
この回左で河野を倒し、終盤も完全ではないにせよ、互角の打ち合い以外の時間帯において、
なんとなくジャブを出しては、捌くというでもなく、ペース掌握とも言えないけれども、
試合展開構築の意志は我にあり、みたいな感じを醸し出す。
採点表見ていないので終盤の数字は分かりませんが、
これが終わってみれば採点に影響したかな、という印象でした。

しかし河野の闘いぶりは、終始見せた懸命さ、以前よりずっと増えた好打と、
ずっと減ったラフな行為のおかげで、素直に「頑張れ」という心境でいられる、好ましいものでした。
これも勝敗に響いたローブローの減点など、問題もなくはないですが
(このせいで、普通のボディブローまでもが採点上、辛く採点された可能性もあるでしょう)、
全体的に見て、初防衛戦で、まあ1位に相応しい選手だったかどうかは置くとしても、
なかなかの強敵相手に、立派な闘いぶりだったと、称えたいです。

惜しいというか、タラレバを言えば、勝負どころがもっと後だったらどうだったかな、と。
ダウンを奪い返すのがもっと後だったら、その流れで河野の押し切り勝ち、になったような気もします。


内山高志は、ランクの数字よりも強いな、という印象のハイデル・パーラに完勝でした。

序盤、内山よりも一回り大きく見えたパーラの、踏み込みの良いジャブが目を引き、
これはけっこ強いな、大変かも、と思ったんですが、2回には早くもパターンを読んで
左右を打ち終わりに合わせていく。おお、やっぱさすが、と、見ているこちらはこの時点で安心。

4回からさらに好打が増え、5回、ロープ際でパーラが伸びあがったせいで、普通のボディが
ベルトラインに入ってしまい、休憩があったあと「このあと、下打ちにくいかな」と思った私の
凡人のスットコな感覚を嘲笑うかのよな、左のレバーブロー。

あれ、聞いた話だと、腹が痛いというのはまた違うらしいですね。
肝臓をきつく打たれると、脇腹を起点に、それこそ頭のてっぺんから足の先まで、
刺されたような激痛が走って、なかなか収まらないんだそうです。
試合後、セコンドが背中とか肩とかをさすってはりましたが、
あの辺にも痛みが走っていたんでしょうか。
仮にも世界戦に出てくる、そして実際けっこう強そうに見えた、
中南米の上位クラスのボクサーに対してこんなことをいうのもなんですが、
本当に見ていて気の毒、可哀想なくらいの苦しみようでした。


内山高志、そんなことで終わってみればまたも完勝。
世界のスーパースタークラスが、スーパーファイトの合間に、少し知名度や実績は落ちるけど、
もちろん普通よりはずっと強そうな相手とやって、でもやっぱりレベルが違って一蹴してしまう、
そんな風な試合と似たような印象を持つ試合でした。

なんというか、こういう盤石がトランクス履いて試合してるような王者の存在というのは、
本当に有難いというか、得難いというか。
試合見終えて、こういう王者もいつか王者でなくなる日が来るのだろうけど、
それがいったいどういう形でやってくるものなのか、想像出来へんなぁ、
でもそうなったときの喪失感って、ものすごく大きいんやろうな、とか、
今まさに勝負を賭けた闘いがあったばかりだというのに、ちょっと場違いというか
時と場合を外した感慨を抱きながら、大歓声が湧き上がるTV画面を見ていました。

内山高志、本当に強いですね。この王者の存在は、もっと多くに知られ、称えられるべきものでしょう。
次は指名試合か何かになるんでしょうが、ユリオルキス・ガンボアか、それに匹敵するクラスの相手との
大きな試合をそろそろ見たいものです。現実を無視して言えば、ガンボアがライト級に去るというなら、
フェザー級のミゲール・ガルシアとの対戦なんて、見てみたいものですねー。


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槍を失い、雑兵に討ち取られた 佐藤洋太、タイで完敗

2013-05-03 21:11:38 | タイ国ボクシング

開始早々、シーサケット・ソールンビサイがサウスポーで立ち上がったこと自体を、
佐藤洋太が苦にしているとは、最初の内は思いませんでした。
さして踏み込まれているようにも見えず、長い右ストレートや速いサイドステップも
時折出て、敵地にしては悪くないのかな、と。

しかし、そう思えた時間は、振り返ってみればほんのわずかでした。
低い姿勢から力強く攻め込み、上下に強打を散らし続けたシーサケットは
試合が進むにつれて、どんどん自信、確信を得た者の強さを見せていきます。
佐藤の左ボディブローや、単発ながら良い角度で入ったかと見えた右クロスは、
シーサケットの肉体を打ってはいても、彼の闘志を挫くことは出来ませんでした。


佐藤洋太は長い距離の攻防で、多彩で卓越した技巧をもって、
対戦相手の力を削ぎ、自身の特徴を生かして闘う展開においては、
間違いなく世界屈指の実力者だと思います。

しかし今日の試合は、その観点からいって、まったく彼の試合ではありませんでした。
対戦相手は持てる力を全て出し切り、佐藤自身はその特徴を全く生かせない。

距離を取れず、サイドに出られず、フェイントは見てもらえず、踏み込まれて打たれる。
足を止めても、ショートパンチを出すスタンス、アングルを元々持っていないので、
結果として手数で劣り、シーサケットを勢いづけてしまい、また打たれる、の繰り返しでした。

リング外での、我々の目には見えないところでの何事かを想像はしてみても、
これだけ何もかもが悪い方に回る試合では、佐藤の完敗もやむなし、としか見えませんでした。
長槍の騎兵が、その槍を早々に失い、雑兵の振る小太刀に切り刻まれるような試合展開は、
その終幕が容易に想像出来て、3回あたりから、見ているのが辛かった、というのが正直なところです。


試合前は、佐藤の技巧が、大した選手とも思えないシーサケットを圧倒するのでは、と想像していました。
原田、海老原などとは、悪いが相手が違うだろう。あのパスカル・ペレスを破ったタイの英雄キングピッチと、
聞けば日本でいわゆる「噛ませ」的試合に出て負けたこともある、シーサケット「とかいう選手」を一緒にしてどうする、
いかに敵地といえ、佐藤が捌くだろう。
万一があるにしても、競った試合で、変な判定が出て、とか、そんな感じではないか、と。

しかしその甘い想像は、木っ端微塵に砕かれてしまいました。
今まで見た中で、おそらく最悪の佐藤と、これこそ想像ですが、おそらく過去最高のシーサケットがぶつかった。
その結果が、今日の試合だったのではないか、と思います。


佐藤が今日のような状態に陥ってしまった原因は、目に見えない範囲でいろいろあるのでしょうが、
見えた範囲で言うと、やはり相手の左構えに戸惑った?こと、キャンバスとシューズの違和感など、
その他にも試合開始の待ち時間、会場の気温等々、いくつかエクスキューズはあるのかもしれません。

しかし何よりも、対戦相手のシーサケットの闘志、果敢に攻めきろうとする強固な意志こそが、
もっとも佐藤にとって脅威だったのではないか、と思います。
佐藤の左ボディや右クロスが、序盤の内に何度か好打しましたが、地元の後援と声援を受けて
前進してくるシーサケットにダメージを与えても、その闘志を削ぎ、打ち砕くには至りませんでした。
タイのボクサーの、母国における本来の強さは、佐藤の想像を超えたものがあったのでしょう。


悪いですが、この挑戦者を日本に迎えていれば、仮につまらない試合になったとて、十中八九、
佐藤が防衛していたと思います。しかし、これがボクシングの怖さなのでしょう。

今日負けたから明日頑張ろうとか、次は来週、会場を相手の地元に移して第二戦、とかいう
他のスポーツとは違って、一発勝負のボクシングというものの怖さ。
優れた技巧の持ち主とて、ひとつの歯車の狂い、好打しても手応えが得られない戸惑い、
そうした僅かな切欠から、徹底的に打ち崩されてしまう、身体を傷つけ合う直截的な闘いの持つ怖さ。

何だか、未だに内容と結果が信じられない、納得出来ないまま書いていますが、
本当に、ボクシングとは怖ろしいものだ、ということだけは確かに感じています。


そして、佐藤洋太のボクシング、あの多彩な技巧、様々な仕掛けがちりばめられた
見ていて楽しい、飽きの来ないボクシングは、また再現されることがあるのでしょうか。
それを安易に期待していいのか、疑問に思うほど、あまりに重く、傷の多い敗北でした。本当に残念です。




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