さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

痩身の王者は憤っていた 辰吉、8戦目で世界挑戦決定

2020-06-30 08:25:21 | 辰吉丈一郎




ということで、とりとめもなく辰吉丈一郎の思い出、7回目。


辰吉丈一郎の世界挑戦は、誰がそうせないかんと決めたんや、という一般ピープルの疑問をよそに、当初予定?の7戦目からひとつだけ猶予が加わった末、8戦目で決まりました。
期日は9月19日、守口市民体育館。
辰吉が苦闘の末引き分けたトーレス戦から一週間後、91年の2月25日、難攻不落と目されていたメキシコの長身ラウル・ヒバロ・ペレスをスピードと手数で圧倒し、王座を奪取した痩身の技巧派、グレグ・リチャードソンへの挑戦です。

アマチュア歴270戦260勝15敗。レナードやスピンクス兄弟と近い世代で、USAゴールデングローブと、AAU選手権を制覇した、アメリカ軽量級屈指の名選手。
プロ転向後、日本の専門誌でも、選手紹介ページに早くから紹介されていた選手です。

初防衛のビクトル・ラバナレス戦も接戦、辛勝と伝えられましたが、映像見ると確かに苦しいところもあったものの、細身の代わりに、異様に足が速く、手数が出て、ヒット率も高い。
確かに悲しいくらいパンチ力に欠ける...ように見えるが、打ち込み体勢を取らないだけで、いざ鎌倉、と抜刀したときどうなのか、知れようはずもなし。

ここまでのキャリアで、スピード勝ち出来る相手には快勝するが、そうでない場合、苦しいところも見える辰吉にとり、相性的に、あまり良い的だとは思えませんでした。
しかし、強豪揃いのバンタム級歴代王者の中では、これでもまだ、与し易い部類ではある。それも事実だったのでしょう。


陣営はパショネス戦の前と違い「バンタム、ジュニアフェザーの両方で交渉」している、と報じられたとおり、どうでも世界戦を組まないかん、という前提で動いていたようです。
このときの王者は、WBAバンタム級がルイシト・エスピノサ、ジュニアフェザーは攻防兼備の強打ルイス・メンドーサ。
WBCバンタムがリチャードソン、ジュニアフェザーはというと、6月に畑中清詞を番狂わせで破ったダニエル・サラゴサでした。

ルイシト、メンドーサ共に圧倒的に強く、選択肢としてはWBC方面だったのでしょう。
もしここで、畑中に勝ったとはいえ、抜群に冴えた試合をしたわけでもないサラゴサと組んでいたら...若き122ポンドの辰吉丈一郎は、ひょっとしたら「老巧」の境地を極めきる前のサラゴサを圧倒していたのかもしれません。
しかしサラゴサには、他に闘わねばならぬ試合があり(畑中との再戦交渉もあったか)また畑中戦での負傷もあって、この年9月の再来日は不可能だったのでしょう。


そういうわけで、グレグ・リチャードソンの来日が決まりました。
スピードと手数、フットワークで辰吉の攻撃力を無力化せんとする技巧派に、辰吉はどういうスタイルで対するのだろうか、と思いつつ、辰吉世界挑戦決定を報じる専門誌を読んでいたら、恒例の王者来日前インタビューに、リチャードソンが取り上げられていました。



「(辰吉戦を決めたのは)私ではなくプロモーター」
「もう一試合だけ、私の試合の権利を持っているナチョ・フィサーの希望通りに闘うことにしました」
「ただひとつだけ納得出来ないのは、アメリカには長い間、いくら頑張ってもタイトルに挑戦出来ずにいるファイターが沢山いるのに、日本のファイターはボクシングの経験が少なくても簡単にタイトル挑戦の機会が得られるということです」
「私は長い間、沢山の授業料を支払ってボクシングを学び、今ようやく栄冠を手にしました」
「願わくば、私と闘う辰吉が少なくとも20戦くらいは経験しているファイターであってくれたら、私の気持ちも、もっと満たされたものになるでしょう」
「もし辰吉がアメリカにいれば、6戦くらいの経験ではとても...タイトルに近づくことさえ不可能でしょう」


インタビュー全般から受けた印象は、大言壮語も悪口雑言もない、実直な人柄の持ち主だ、ということでした。
試合の展望を聞かれ「ファイターには色々なタイプがあるけれど、私は喋るのが苦手です」「リングの上ではベストを尽くして闘い、より力のある者が勝ち残れると思っています」とだけ、答えています。

しかし、そういう人柄のボクサーであるからこそ、自身と比べ、あまりに短く、乏しいキャリアでタイトル挑戦の機会を得た日本人と闘うにあたり、隠しきれない思いを語らずにはいられなかった。
勝手に「若き挑戦者に、飄々と対する王者」の構図を思い描いていた私は、言わずには居れぬ、という風情で語られる王者の「憤り」に触れて驚き、動揺させられました。

試合の日、リングの上でぶつかり合う、ふたつの思い。勝利によって、その思いを遂げられるのはどちらなのだろう。
そして、優勝劣敗の掟は、いつも残酷に、その行く手をふたつに分かつ。
思いの深さを、切なさを、重さを一切、斟酌することなく...。


この一戦に賭けられたものの重さは、自分が辰吉丈一郎に託す、壮大な夢と、それ故の危惧だけではなかった。
当然ながら、反対側のコーナーに立つ者にも、等しく、いや、それ以上の思いがある。
それに気づかされた、とても印象的なインタビュー記事でした。



そして、この記事の中には、もうひとつ見逃せない、重大な記述がありました。
リチャードソンが、辰吉の映像は見たか、と問われたときの答えです。
「ビデオテープで2試合見た。チューチャード戦、トーレス戦」というのが、その答えでした。

この「選択」が何を意味するかは、おわかりいただけるかと思います。
今風に言えば「情報戦」とでもなるのでしょうか。
辰吉側は、敢えて、岡部繁戦やパショネス戦を見せることはしていない。今なら通じない手法ではあるのでしょうが。

闘いは、ゴングが鳴る前から、すでに始まっているのだ。そう思った記憶があります。





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井上尚弥、長谷川穂積のインタビュー受け、近況語る

2020-06-29 09:19:47 | 井上尚弥
井上尚弥、ジャンクスポーツに出演
長谷川穂積のリモートインタビューを受け、近況などを語る、という記事です。

スパーリングを積めていないが、その点を除けばコンディションは良く、来週にでも試合が出来ると語っています。
その他はまあ、プライベートも含め、色々と。
動画上がっていましたので、見逃した方はご覧ください。





ついでに長谷川穂積の近況?も少し、語られています。
家庭内で若干、虐げられているようです(笑)。
あと、こんなに手品が上手いとは知りませんでした(棒読み)。


しかし、真面目な話、引退後、これだけ自分を殺して我を出さず、現役選手を引き立て、自分のことは笑い話に徹するあたり、頭が良いですね。
どこへ出しても妙なことにはならん、という安心感があります。
この辺の世代が中心になって、ボクシング界を動かしていってほしいものだ、と常々思うところですね。


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「ジム」より先に「事務所」で同僚に

2020-06-28 20:30:22 | 井岡一翔




先日、旧オザキジムが Ambitionジムと改称し、そこに井岡一翔が移籍すると発表されたところですが、同じくそのジムに移籍すると目される比嘉大吾が、井岡一翔の属するマネジメント会社と契約した、とのこと


以前、内藤大助のマネジメントを手がけたことで、その名を知った会社ですが、井岡、比嘉と並ぶのみならず、記事にもあるとおり、東京五輪を目指すアマチュアのトップスター、堤駿斗とも契約しているところを見ると、今後も継続してボクシング界の有力選手をマネージしていく方針なのかもしれません。

年頭に井岡の新ジム構想を詳らかに報じた記事には、アマチュアの有力な人材をサポートしたいという目的がある、という内容の記述がありましたが、Ambitionジムとこのマネジメント会社の関係が、それを後押しするものになれば幸いです。
今は五輪出場権獲得に全てを賭けている堤駿斗ですが、将来プロ転向となれば、帝拳を始めとする従来の大手ではなく、こちらを選択するのかもしれません。

その是非を今からとやかく言えはしませんが、若い世代により作られた、新たな選択肢が生まれること自体は、良いことだと思います。
ボクシングという過酷な競技にその心血を注ぐ、アマチュアやキッズのボクサーの行く末に、時代に適応した、然るべき行く先が、ひとつでも多く生まれるように、と願う次第です。


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マッチルーム、8月から無観客試合 DAZN配信も

2020-06-27 15:01:17 | 海外ボクシング




トップランクの無観客試合は、以前テオフィモ・ロペスvs中谷正義戦や、ベテルビエフvsグボジーク戦をライブで見たときに利用した、FITEという有料配信サイトで見られるようになっています。
この2試合は試合ごとの料金でしたが、今は月額プラン(5ドル強)もあるのやそうです。
最近になって、人に教えてもらって知りました。

まあ、ロマチェンコvsロペスや、井上vsカシメロはWOWOWで見られるでしょうから「それ以外」のカードは...どうしたもんかな、というところです。
ミゲル・ベルチェルトが大きな試合をやって、それがWOWOWでライブ中継も配信もない、となれば考えねばなりませんが、この場合は別料金ですかね。


で、月額料金といえばDAZNですが、マッチルームボクシングの試合開催、配信予定が出たとのこと。
8月に入ってから4試合。
会場はかねてから噂の、社長さんちの庭?って話通りなのかどうか、本社の敷地内、という書き方になってますね。

屋外だから換気は問題ない、というところですが、先のジョコビッチ主催のテニス大会の件などもあり、やはり無観客であることに変わりはなし。
ジョコビッチの母国セルビアでは、政府が屋外の大イベントを許可したことを受け、サッカーで有観客試合が行われて、10日に行われた、首都ベオグラードの二大伝統チーム、パルチザン・ベオグラードとツルヴェナ・ズヴェズダ(=レッドスター・ベオグラード)の「エターナル・ダービー」には、2万人の観衆が集まったのだとか。
この数字だと、おそらく一定の制限はかけたのだと思われますが、それにしても時期尚早の感あり、ですね。

東欧ではベラルーシなどが一切の制限無しにサッカーリーグを継続していたという事例もあります。
まあ、英国ではそんな無茶も通らないでしょうが...とはいえ、トップランクの無観客試合も、いつまでも続けられるものではないでしょうし、マッチルームとて当初はともかく、順を追って、という運びに持っていきたいのでしょうね。


とりあえず、8月中にディリアン・ホワイトvsアレクサンドル・ポベトキン戦がライブで見られるのなら、楽しみです。
当然、DAZN日本でも配信されることでしょう。
確度に疑問あり、とも言われるPCR検査など、関門や手順は数多くあるでしょうが、何とかつつがなく、と願うのみです。




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森武蔵、清水聡戦を希望 国内カードの充実なるか

2020-06-25 05:01:40 | 中部ボクシング




薬師寺ジムのWBOアジアパシフィック王者、森武蔵が、堺のミツキジムで、対戦予定だった河村真吾とスパーリング
OPBF王者清水聡との対戦希望を語ったそうです。

しかし、対戦するはずだった相手とのスパー、というのは、あまり聞いたことがありません。
これもコロナウィルスの影響ならではか、ちょっと珍しい話ではないかな、と。
名古屋と大阪、スパーも強い選手相手、とはいかないことが多いでしょうから、良い機会だったのでしょうが。



さて、森と清水、実現性はどうか知りませんが、こういうのはこれから、どんどんやってもらいたいですね。
地方の上位選手にとり、日本タイトルというものは、実感として、なかなか「回ってこない」場合が多いのも事実で「そのため」にOPBFやWBOアジアが存在する、という面が、確かにあります。
その実情を、ファンとして是認するかどうかはともかく、森vs清水戦が実現すれば、その勝者がさらに一段、評価を高められるだろうと思います。

また、世界戦を含む、国際試合の開催、出場は、色々と難しいかもしれない、という現状を考えれば、なおのこと、と思ったりもします。
欧州各国のサッカーリーグは、今のところつつがなく行われているようですが、元々の状況が違う上に、我々が思う常識が通じない場合もある、と端的に示した、ジョコビッチ主催のテニス大会におけるクラスターの件がありましたし、今後再開されるアメリカのMLBなども、そういう面では色々と不安視する向きがあります。
中谷、マグラモ戦のように、決定している試合もありますが、全体的にはやはり、不安要素が色濃く見えます。

やはり、ボクシングは国内での好カード実現と、それを少しでも多くに見てもらうための放送、配信ルートの確保が求められると思います。
薬師寺ジムが森の試合開催を断念したように、従来型の興行形態が取れない現状、個々の業者のご都合が温存されたままのカードばかりでは、今後の見通しなど立てようが無い。
その厳しい現実が、物事を良い方向に動かしてくれれば、不幸中の幸いというものですが...。




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井上、カシメロ戦早期開催はかなうか 年内二試合希望

2020-06-24 05:11:24 | 井上尚弥



今年、二試合はやりたい、とツイッターで井上尚弥がつぶやいた、という記事です。
色々困難な状況にあっても、本人は闘志に溢れ、意欲に満ちているようです。
なかなか前向きな気持ちになれないニュースばかりの昨今ですが、こういうちょっとした話でも、元気づけられたような気になります。
それも井上がスーパースターであり、本物のヒーローであるからこそ、でしょうね。


ただ、米国入国の手続きもままならない状況らしいので、その希望はかなうものかどうか。
言うてる間に7月ですが、年内二試合...最初の試合がカシメロ戦なのだとしたら、短期間で次、といくものかどうか。
我々ファンとしては、当然、一試合でも多く井上尚弥の試合を見たいとは思いますが、スーパーチャンプと言われた過去の名選手の中にも、それは日程的に詰め込み過ぎやないか、と思うような活動をした結果、思わぬ敗北を喫してしまった、という事例もあります。

若手時代の無冠戦や、国内レベルの試合の頃ならまだしも、世界のタイトルマッチを闘う場合、日程面での無理は避けるべきだ、と思います。
試合ごとに統一戦や世界上位相手の試合を闘うところまで来ている井上なら、なおのことです。
仮に、9月に格下相手の無冠戦をやり、年末にカシメロ戦、という運びならまだしも、というところがせいぜいではないでしょうか。


とはいえ、本人の言を見てしまうと、何とかならんか...という気にもなってしまいますね。
とにかく、次の試合、どういう形であろうとも、早く決まってほしいものです。



===============



昨日のワンヘン引退表明の記事ですが、書いたその日に撤回、という報がありました。
まあ、こういうこともあろうかとは思ってはいましたが、昨日の今日ですから、何とも言えん気分です。
とりあえず、この手の話は、見てすぐあれこれ言うより先に、少し事態を見守ってからにした方が良いですね。
皆様、どうも失礼しました。



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「自分で決めた」のが事実ならば ワンヘン、王者のまま引退表明

2020-06-23 05:18:52 | タイ国ボクシング



WBCミニマム級王者、ワンヘン引退
王座は12度防衛中で、メイウェザーの連勝記録を超えていて、という表面上の話からすれば、普通はあり得ないことでしょう。
米国進出が新型コロナの影響で頓挫した、というのは理由のひとつかもしれませんが。

しかしこの記事で一番目を引くのは「引退は誰にも相談せず自分で決めた」という部分です。
カオサイ・ギャラクシーのような桁外れの例外を除けば、タイのボクサーは基本的に、自分の意志で何かを決められるような立場にはなく、それは「引退」ですら同じです。

王者クラスの選手でも、最後は刀折れ矢尽き、という様を見せた挙げ句に、となるのが常で、希に嫌気がさしてジムから姿を消す、というパターンがあるくらい。
このように、負けたわけでも、限界を露呈したわけでもないまま、自分の意志で引退を表明する、という事例は、珍しい部類のように思います。

しかし、そういうタイの事情、実情にも、知らない間に変化が起こっているのでしょうか。
或いは、この件がその端緒なのか。コロナの影響もまた、その一因なのか。

いずれにせよ、特殊な状況に閉鎖され、試合運営の公正さに著しく欠ける、と批判され、現に見ていて呆れるような試合が、いまだに散見されるタイのボクシング界にも、様々に限界があることでしょう。
今回、選手の意志がこうして通った...それが「辞める」ことであったとしても、あの国においてはひとつの変化であり、良い方向性が見える話であるのかもしれません。

もっとも、近々「撤回」がなくば、という話ではありますが...。
物事なんでも、巻き返しを図ろうとする意志はあるものでしょうし、ことにあのような国における「旧弊」の存在は、軽く見られるようなものでもないでしょう。

はっきり言って、特に好きな選手ではないし、別段興味のある選手でもないんですが、引退にせよ撤回にせよ、自分の意志で何事かを決められるような状況を、一度なりとも手にしてほしいものだ、と思います。
それがタイ国ボクシング全体を、良い方向に導く一歩だろうとも。それが例え、小さな一歩でしかなくとも。



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意外に?謙虚 デュラン様、自身を10位に置く

2020-06-22 08:26:46 | 海外ボクシング


少し前に見た記事ですが、ロベルト・デュランが歴代王者のトップテンを選出した、というもの。

記事の通り1位アリ、2位フレイジャー、3位マルシアノとヘビー級から始まる。
この辺は現役時代に指導を受けたレイ・アーセルやフレディ・ブラウンらの影響もあるのか。
或いは、少年時代にパナマで見られたボクシングの映像が、アメリカのヘビー級のものが多かったのか。

4位がチャベスというのも、ラテンアメリカの英雄同士でありながら、えらく上に置くんやなあと。
なんなら、ここに自身を置くのかな、と思うくらいで。
で、自らは10位で、その上にレナード、ハーンズ、ハグラーを置いていたりも。

なんか、意外に謙虚な感じ。失礼ながら。
傍目には、見方ひとつでデュラン1位でも「あり」だと思うし、実際、アリやロビンソンよりデュランが上、という見解の評論家も、けっこういると聞きます。
世界上位での活躍期間の長さでは、デュランが一番だ、という評もあるそうですし。

この辺、どういう心境なのだろうかなあ、と思います。
ひょっとしたら、時を置いてまた訊いたら、全然違うランキング出してくるかもしれませんが(笑)



====================


ところで、以前も別の動画貼りましたが、トップランク社が期間限定で出している過去試合動画(画質の良いのが見られます)で、最近出たのがムーア戦。
何度も語っているMSGでの「復活祭」です。

改めて、まあ巧い。自分より若くて速くて手数も出る相手を、本当に考えられないほど見事に攻略します。
挙げ句、わざと相手コーナーの椅子に座ったり、倒れかけた相手に腕引っかけてさらに打ったり、色々ともう、デュランならでは、デュラン大盛り、という感じ。
ライト級の頃とはまた違った趣きもありますが、天性、野生、天衣無縫なデュランの、禍々しくもチャーミングな魅力溢れる試合ぶりです。






トップランクは最近、ハグラー、ハーンズ戦や、ハーンズ、シールズ戦などの過去動画を出してくれましたが、こういうことはどんどんやっていただきたいです(笑)。
昔の好試合を、良い画質で見られるのは、やはり嬉しいことですので。



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様々な思惑見えた7戦目 終わってみれば「非凡」の一語

2020-06-21 09:35:27 | 辰吉丈一郎


ということで辰吉丈一郎の思い出シリーズ、6回目です。


アブラハム・トーレス戦の引き分けを受けて、辰吉の世界挑戦計画は修正を余儀なくされました。
対戦相手に選ばれたのは、当時WBAジュニア・バンタム級2位の比国人、レイ・パショネスでした。

トーレス戦の引き分けが評価された、と書くのも微妙な感じですが、辰吉はバンタム級でWBA11位、WBC16位にランクされていました。
世界挑戦が決まれば、言ってしまえばどうとでもなる位置までは来ているが、やはり試合内容からくる評価、及び本人の心身への影響も考え、もう一試合「挟む」選択がなされたのでしょう。

そういう試合の相手としては、トーレス級の強敵は避けたい。でもランキングは高い方が良い。
そんな都合のええ話ありまっかいな、と普通なら思うところですが、こういう難問を見事に解く能力に関しては、日本のボクシング関係者は、辰吉以上に天才的です。


レイ・パショネスはこの試合の時点で37戦、31勝(9KO)2敗3分。
対戦相手の中には、ローランド・パスクワ(後のWBCライトフライ級王者。チキータをKO)、コブラ・アリ・ブランカ(カオサイにKO負け)、タシー・マカロス(元IBFライトフライ級王者、ムアンチャイに敗れる)、エボ・ダンクアー(=エボ虎井、ガーナ人のライトフライ級世界ランカー。大鵬健文に判定負け)らに勝った星がありますが、いずれも下の階級ばかり。
バンタム級の強豪との対戦はない選手でした。

そういう選手と辰吉を闘わせるにあたり、陣営は当初、契約体重を117ポンドに設定する、と発表していました。
ジュニア・バンタム級での世界挑戦も、選択肢のひとつとして見据えた上で、という報道を見た記憶があります。

しかし、いざ試合当日になってみると、そんな話はなかったことになっていました。
いつ、バンタム級ジャスト、118ポンドの試合に変わったのか、はっきりとした発表を見た記憶がありません。
まあ、この辺は単に私の見落とし、記憶違いなのでしょう。



なんやかやと思うところはありましたが、試合が始まると、辰吉丈一郎は己の非凡な才能を、試合全般に渡り、これでもかと見せつけました。
スピード満点のジャブとフットワークでペースを握り、毎回のようにヒットを重ね、パショネスのパンチの大半に空を切らせる。
時に挑発的なパフォーマンスも見せつつ、多彩なジャブ、左ボディブローから上へ左右の返し、といったコンビネーションを決める。

中盤、何ラウンドだったか忘れましたが、バックステップを踏みつつ左ボディブローを決めたシーンには、思わず目を見張りました。
洋の東西を問わず、それまで見た試合の中では、あまり見たことのないテクニックでした。
前に出ようとしたパショネスが、ダメージと共に「驚き」をもって、一瞬、動きを止めてしまった姿を覚えています。


試合は大差の勝利に終わりました。
世界2位、という内実を持つ相手だったかというと違うでしょうが、少なくとも一定の水準以上にはある「比国王者」を、それこそ寄せ付けず完封して勝つ。
思えば、アマチュア19戦(18勝1敗)、プロ7戦目のボクサーの仕業ではありません。
しかし判定のコールを聞く際から、辰吉の表情に喜びはなく、試合後の取材対応時にも、陣営共々、感情的な言葉が飛び交った、と報じられました。


歳若い本人が、己の才能も含めた上で、高い理想を持つこと自体は仕方ないのかもしれませんし、それを頼もしいと見る見方もあるでしょう。
しかし陣営はというと、プロモーターは最短記録前提で動き、トレーナーは冷静に、地に足のついた態度で接することもない。
報道陣相手に「確かに倒せなかったけど、相手は世界の2位なんですよ!」と声を荒げた、という話が後日、伝わりましたが、あらゆる面で、この試合にまつわる状況を正しく認識していないな、と思い、げんなりしたものです。


この一戦は、キャリア浅く歳若い辰吉丈一郎の持つ才能、その非凡さを十全に見た一戦でした。
また、118ポンドに落としたときに共通する足取りの軽さは、岡部繁戦以来のもので、この辰吉なら、最初から無理に決め手狙いに出ず、きちんと相手を見て、試合を繊細に組み立てる良さが出せるのだ、と思えたことは、今後に向けて明るい材料でもあった、と思います。

しかし、その若く非凡な才能を、ボクシングの世界最高峰に到達させることより、ビジネスの算段を優先する者、そして辰吉の才能に「惚れ」ているが故に、冷静に立ち振る舞えない者で構成される陣営の姿が、様々に見えた一戦でもありました。


ファンとして、類い希なる才能の持ち主に対する期待と、それ故に?まとわりついてくるあれこれへの危惧を抱えつつ、辰吉の世界挑戦決定の報を「仕方ないこととはいえ...」という思いで、待ちました。
まあ、大方、ここに行くんだろうな、という気はしていて、その通りの相手に挑戦することになるわけですが、その結果と内容は、またしてもこちらの想像を遙かに超えた、凄まじいものでした。



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井岡一翔の新ジムに比嘉大吾も移籍 再起戦は9月にも?

2020-06-19 14:35:33 | 井岡一翔



以前、一部で詳らかに報じられた井岡一翔が立ち上げる新しいジムの開設が決まり、そこに比嘉大吾も所属する、というニュースです。

17年に、火災で建物が全焼してしまった「オザキジム」の会長、元日本チャンピオン木谷卓也氏のライセンスが使用され、会長も務める。
ジムの名称は未定。練習場、つまりジムの施設もまだ開設は出来ていない。
井岡一翔、比嘉大吾が所属し、試合中継はTBSとなり、9月にも比嘉の試合のプランがある。
比嘉を指導する野木丈治トレーナーも移籍する。


従来のクラブ・ジム制度の枠内でいえば、まだあれこれと不備だらけ、となりますが...現実と規制が乖離しているボクシング業界の現状を象徴する話だというしかないでしょうね。
高額な加盟金による新規参入の阻害、マネージメントとプロモート権益の独占も、時代の変革により、いずれ瓦解していくことでしょうが、そういう流れの上にある「事件」だとも言えるでしょう。


何にせよ、選手がリング上で闘うことに専念出来て、相応しく報いられる環境であれば、我々ファンにとっては、本来、細かいことはどうでもいいはずです。
この新ジムが、そういう場であってくれれば何よりです。井岡一翔他、関係者諸氏の健闘を願うのみ、ですね。




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