さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

確かなものはまだ見えず 大場浩平、若手挑戦者を三度倒し完勝

2013-11-30 18:28:44 | 大場浩平


昨夜は神戸にて大場浩平の試合を見てきました。

対戦相手が「長谷川」姓だったので、この試合が決まった記事を見たときは
一瞬、何事かと思ったものですが(笑)
キャリアは浅いが上昇中の若手、長谷川雄治は、大手ジムの所属ということもあり、
実際見てみると、なかなかの好選手でした。

初回、大場は前に出て圧力をかけつつ、速い左を繰り出す。
最初はこれが決まり、大場が若く格下の相手を押す展開になるのかと思ったのですが
すぐに長谷川が頭を動かして外し、逐次リターンを返すようになります。

大場は左をほとんど外され、打ち合いではボディも交えて攻めるも、
長谷川の抵抗に遭ったため、攻めきる形をいったん止めて、
いつものL字ガードで相手の手を引き出す「対応」をせざるを得なくなりました。

おお、この挑戦者、若いけどなかなか筋がいいなぁ、と思っていたら、
初回終盤、打ち合いのなかで大場の左ダブル、下から上が決まってダウン。
ダメージはさほどではなかったかもですが、長谷川にとり痛い失点でした。

2回、大場は以前ほど派手に動かない。ワンツーの好打はあるが、
やはり昔の大場に比べると重く見えてしまう。
この回は長谷川の手数、浅いながらリターンパンチのヒットを取って長谷川。

しかし3回、やはりまともにやり合うと、どうしても大場の方がまさる。
左ダブルのヒットから、接近戦で小さい右アッパーを決めて長谷川を倒し、
4回、ボディを交えてヒットを重ねた大場が左フックでまた倒す。
カウントの途中で横浜光コーナーからタオルが入り、TKO。
表面的には、大場の圧勝、と報じられるであろう結果となりました。


しかし実際見ていて、そういう印象で全てを語れるような試合だったかというと、
ちょっと違う部分もあった試合でした。

挑戦者の長谷川雄治ですが、ちょっとタイトルマッチに出すのが早かった、という印象です。
なかなか良い選手でした。変な癖もなく、防御の意識も高く、手数も良く出て、闘志も感じました。

ただ、大場の速い左を小さい動きで外してはリターンを返す集中力が、
3分間続かないという面があり、初回にせよ3回にせよ、せっかくここまで
丁寧に外してきたのに、ダウンさせられるとは勿体ない、という感じでした。
この辺はもう少し経験を積めば、解消されるかもしれない課題です。
もう少し強くなってから挑んでいれば、大場をもっと苦しめたかも知れないですね。


で、勝った大場のほうは、これで2連続KO防衛ということですが、
結果はさておいて、闘った相手の質は、名古屋時代の王者在位時の方が遙かに上であることは
彼の試合をつぶさに見ている名古屋のファンの方ならご存じの通りです。
そして、闘い方というか、攻防のバランスをどこに置くかという面でも、かなり違いがあります。

本人もインタビューなどで語っているとおり、若い頃のように派手に動くスタイルではなく、
現状のコンディションを考えてか、足をあまり使わず、無駄に動かない形で闘っていて、
ここ二試合はTKO勝ちしていることもあり、攻撃に比重を置いているようにも見えます。
実際、若い相手とはいえ、好打を決めてダウンを奪い、それ以外にも相手を有効打でカットさせ、
以前よりも攻めに関しては迫力、決定力が結果に現れています。

ただ、格下と見える相手にも不用意に打たれる印象があります。
ことに連打したあと、リターンをよくもらいます。これは以前からの悪癖で、
簡単に言うと、打つ前はよく動き、フェイントも入れるのですが、打った後に止まるのです、大場は。
打った後に、丁寧にサイドに出る意識があれば良いんですが、これは長年の課題ですね。


そして、そういう今の大場が、以前闘っていたレベルの日本上位クラス、
或いは今の上位陣(岩佐、椎野など)と、もし闘った場合、
或いはさらにその上、世界王者と闘った場合、どうなるのか、ということが問題です。

今、彼の試合を見ることは、目の前の勝ち負けだけではなくて、
そういう「先」が見えるか否か、という問題に対する答えを求めることでもあります。

長谷川雄治は、上記の通り、良い印象を持つ選手でしたが、はっきりと経験不足でもありました。
その相手に、初回立ち上がりと、終了間際のダウンシーンまでの2分半あまりの時間、
大場はやや劣勢の展開を強いられ、あのままいけば失点していたでしょう。
2回の三分間も同様だったと思います。

テンポの速い打ち合いの展開において、防御の意識が崩れてしまう長谷川を
結果的には三度倒して勝ちました。しかし、攻撃に比重を置いた闘い方でもって、
世界タイトルを目指すのなら、あの、左のミスが多発し、リターンジャブを外しきれず苦しんだ
時間帯をどう顧みるのか、というところが問題になってくるでしょう。

個人的には、攻めに傾くなら傾くほど、小さい動きの防御が必要だと見ます。
それが無理なら、最初から強引に攻めるようなことはせず、ラウンドによってはもっと足を使って、
後退しながらのジャブでポイントを拾うような展開も必要だと思います。
その上で、攻めるべき展開になれば攻める、という、世界を言うなら当然持っていて然るべき
冷静さと判断力が、大場には求められるのではないかと。

そういう視点で見れば、手放しとはいかない、ちょっと引っかかる部分がある試合でした。
もっとこう「寄せ付けない」展開で始め、締め括って欲しかったですね。


試合後のインタビューでは、ジムは世界戦交渉に動いているという話も出ましたが、
どの相手に挑むのかは、まだ不明でしょうし、これはまだ先の話なのでしょう。
関西テレビの放送がついて3戦目、結果も出していることですから、
将来的には何とかなるのかもしれませんが。

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前座では、昨年のバンタム級全日本新人王、WOZジムの大森将平が初回で倒し
レコードを10勝(6KO)に伸ばしました。
長身のサウスポー、柔軟な動きの大森は、小柄なアルバート・アルコイを
左のロングでぐらつかせ、ラッシュしてストップ。
体格差のある相手とはいえ、無駄な抵抗を許さない即決ぶりでした。

この選手、非常に素質を感じます。コンスタントな試合の機会と
上質の指導に恵まれれば、大成しそうな逸材ですね。
見ていて「和製ツニャカオ」という言葉が頭に浮かんできました。
(おいおい、また始まったで...というツッコミが聞こえてきますが)

とにかく、要注目の選手です。
ちょっと試合ぶりを追いかけてみよう、と思わせる、楽しみな若手ですね(^^)


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堅調、復調、違和感と様々な想いと パッキャオ、マカオで大差の勝利

2013-11-25 14:38:10 | マニー・パッキャオ

昨日の試合の感想文です。

ブランドン・リオスは、思いの外、堅牢なガードを用いて立ち上がりました。
2連敗からの再起を期すマニー・パッキャオを苛立たせる展開を作り、
全体重を乗せて踏み込んで打つ左ストレートの強打を誘って、その前後に勝負を賭ける、
そんな、普通なら無茶な企図が見えて、序盤は緊張感を持って試合を見ていました。

しかしパッキャオは、意外というべきかどうかはわかりませんけど、
こちらが勝手に思い描く悲壮感や力みをほとんど見せず、右回りのステップと
左ストレートの軽打で試合をコントロールしました。
リオスが狙う強打を、出す前の時点でほぼ無力化してしまうレベルのアウトボクシングでした。

また、左右のコンビではなく、左、または右のダブル、トリプルにボディ打ちを交える攻撃を多用したのも、
一発強打を狙うリオスの射程に、自分の体の軸を置きたくなかったからでしょう。
もちろん、スピードで勝るという確信を持っていないと出来ないことでしょうが、
この日のパッキャオは、中盤以降、見てるこちらが少々退屈に思うほど、
完璧なリスク管理を見せて、大差の勝利を得ました。


この闘い方と内容を、どう見るかはそれこそ議論百出でしょう。
まずは堅調、復調を示した、と見るのが基本なのでしょうけど、
普通のボクサーならそれで済む話ですが、やはり歴史的強豪たるパッキャオの
過去の試合ぶり、試合の度に新たな歴史を作ってきた驚異の男の姿を思い出すと、
そう簡単に得心がいかない部分もあったりします。


やはり、再起初戦とはいえ、あれだけ優勢に進めた試合の中で、
弾丸のように飛び込んで打つ左ストレートなどによって「打倒」の意志を撒き散らし、
果敢に攻め込む場面が無かったことは、仕方が無いことなのか。

もちろん普通のボクサーならそれでいいのですが、パッキャオを見る物差しとして
その普通の見方は正しいのか。

今回は無難だったが、次回以降はもう一歩踏み込んだ攻撃もあるだろうから、
今からとやかく言う必要はないのか。

或いは、この攻め急ぎを抑制した闘い方は、ブラドリー、マルケス戦で見せた
それぞれに形の違うペース配分の失敗を教訓とした「新生パッキャオ」のスタイルであり、
さらに踏み込んで言えば、強打を狙う相手の意志を最大限に「活用」する天才、
フロイド・メイウェザーを攻略するための第一歩なのかもしれないのか?
かつて彼を「序盤限定」の高速ボクシングで苦しめたザブ・ジュダーの「速さ勝ち」を
もっと多くのラウンドで実現しようという、壮大な構想の序章を、我々は見たのか?


...ちょっと(かなり?)飛躍や脱線が過ぎましたが(^^;)
とにもかくにも、再起初戦として、基本的には良い内容と結果だった、とは思います。
今回見られなかった、今後に期待する部分について語れば、上記のような疑問を抱く試合でもありました。

しかし、やはり我々は、再び起った英雄の姿を見て、勝手なものごとも含めて大きな期待をし、
あれやこれやと想いを巡らせる楽しい時間を得られるわけです。
今後の展開がどういうものになるかはわかりませんが、とにかく次の試合が楽しみです。それだけは確かです。
パッキャオの今後から、やはり我々は目を離すことなど出来ません。
後に振り返って、この試合の位置づけ、意味がどのようなものになろうとも。



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名古屋のリングに大器登場! 田中恒成、デビュー戦で難敵下す

2013-11-12 11:35:55 | 中部ボクシング

WOWOW生中継二本立ての日曜日、もしこのふたつの放送が無かったら、
当日はひさびさの名古屋遠征をしようと考えていました。
中京の怪物こと、田中恒成のデビュー戦を見たいと思っていたからです。
残念ながら見には行けなかったのですが、中部在住の友人の好意により、
当日夜、中部ローカルのCBCにて放送された番組を見ることが出来ました。


対戦相手は、WBOのミニマム級ランキング6位に名のある、オスカー・レクナファ。
いきなりデビュー戦から世界ランカー、という、マスコミ向けの話題性が高いマッチメイクでしたが、
田中がライトフライの選手であること、レクナファの戦績に世界的な強豪が見当たらないこともあり、
これはまあ、世界6位という名の国内王者レベルかな、と思い込んでいました。

しかし実際試合を見ると、これは「世界の105ポンド級で6番目」とはいかずとも、
4団体のうちのどれかのトップ10に入っていて、何の不思議も無い、間違いではないレベルだと見えました。
動き自体がまずまず速く、圧力があり、積極性、闘志がある。考えてみたら当たり前なのですが。

加えて契約ウェイトが48.5キロで、思ったほど田中との体格差が大きくはない。
その選手が、意欲に満ちた態度で、伸びるジャブを軸に、どんどん攻めてくる。
田中恒成はキレのある動き、跳ねるようなフットワークから速いパンチで対抗。

これは大変な試合になるかも、デビュー戦から当てる相手やないな、と思いつつ見ていた、
その矢先に田中の左ダブルから、速いワンツーが決まり、レクナファが倒れました。

レクナファに若干の油断があった?にせよ、速くて切れのある連打と、
当て際にナックルが綺麗に返った、打ち出しが小さくて、フォロースルーが長い右が
見事に決まってのノックダウン。
これがいわゆる「噛ませ」的な要素が少しでもある相手なら、試合はここで終わっていたでしょう。

しかしレクナファは立ち上がり、ここから執拗な反撃を見せます。
田中は速い右、正確な左、左右へのステップでレクナファをコントロールし、
レクナファは懸命に出て、左右の重いフックで攻め立てる。

田中が動いて距離を取り、速いストレートパンチや、時折ボディブローを決めて優勢でしたが、
デビュー戦で闘う相手としては圧力のレベルが高く、偽りなき闘志をもって、
それこそ頭突き混じりで攻め立ててくるレクナファに押され、
足を止めてガードを絞る防御に頼らざるを得ない場面もありました。

もしこの試合が6回戦でなかったら、という印象もあった試合でしたが、
判定はクリアに田中の勝利でした。

KOデビューとはいきませんでしたが、この相手なら、むしろ判定でも賞賛すべき、だと思います。
はっきり言ってレクナファは、井上尚弥がデビュー戦や2戦目で倒した相手よりも、一段上の選手でした。
むしろ、このような相手をデビュー戦から当てることに疑問を感じるほどでした。

しかし田中は、初回に倒した後も、若干苦しい場面もありつつ、全体的には破綻することなく、
自分のペースを守って、速いパンチで要所を抑えていました。
頻繁にグローブで顔や目のあたりを擦って、顔をしかめていましたが、
あれは相手のジャブか頭が目に入りでもしたのでしょう。ちょっと心配ではありました。


これはしかし、またも大変な逸材が現れたものだ、というのが率直な感想です。
こういう冒険が過ぎるマッチメイクは、率直に言って、あまり歓迎出来ませんし、
こういう話題性によってしか、選手の付加価値を得られない昨今の趨勢を批判したいですが、
それをひとまず置いて、今回の試合で見せた田中恒成の、新人離れしたレベルの高さは
もうすでに「中部の」という枕詞を外して、全国のボクシングファンが注目すべきもの、と見ました。

井上尚弥のことを何度か書いたときと同じく、とにかくこういう逸材は、
良い意味で「大事に」育ててもらいたい、と思います。
やれ最短だ何だ、というような話が、仮に派手なKOデビューにでもなっていたら
またぞろ飛び出してくるのかも知れませんが、そういう意味では、今回の判定勝利という結果は
違う面では幸いなことだったのかも知れません。

もちろん、試合を見れば、それぞれに見解があることでしょうが、
私はこの試合を、井上尚弥や村田諒太のデビュー戦と同等か、ある面ではそれ以上に
内容のある、高く評価されるべきものだと感じました。


そういうことで、下に、動画紹介しておきます。
いつ消されるかわかったものじゃありませんので、皆様、お早めにご覧くださいませ(^^)









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猛々しき「蛮勇」を打倒 ドネア、凄絶な返り討ちで再起

2013-11-11 23:28:15 | 海外ボクシング

以前、一度だけ生で見たことのあるビック・ダルチニアンは、
試合ぶりがどう、勝敗がどうという以前に、その存在感の凄さが記憶に残るボクサーでした。
リングにふらりと現れたとき、遠くの客席にいるこちらにも、
まるで獲物を求めて目を光らせる、野獣のような佇まいが見えたように思えたものです。
そして昨日、TVの画面に映った彼には、またも同じ恐怖を感じました。

バンタム級転向後、思うように勝利を得られず、日本遠征でも山中慎介に敗れた後、
フェザー級において実現した、仇敵とのリマッチ。
しばらく続いた苦闘の日々を、たった一勝で精算出来る機会が目の前にある。
彼は自らの持つ殺傷本能を、全てさらけ出して、ゴングを待っていました。

その相手たるノニト・ドネアもまた、無人の野をゆく連勝をストップされての再起戦。
こういう状況で、ただでさえ、勝利のためにまず「打倒」を目指す両者です。
試合は初戦以上に、一打の致命傷を狙い合う、猛獣と狙撃手のような闘いになりました。


だいたい、各ラウンドはラスト近くになるまで、狙い合い、探り合いが多く、
ラスト10秒前後からヒットの応酬、という流れでした。

共に一打で致命傷を与えるパンチを持ち、またそれを共に狙っているものだから、
試合に流れというものがなく、突発的に起こるアクションを待つ間、
見てるこちらも息が詰まるような思いでした。

9回、激しい打ち合いからドネアの左が決まり、ダルチニアンが前にダウン。
追撃のさなか、ダルチニアンの打ち方を真似たような左を決めたドネア、直後にストップでしたが
勝負が決まった瞬間、何か興奮すると同時に、やっと一息つけるなぁという安堵もありました。

6年ぶりの再戦、共にフライ級時代からすると、当然スピード感はやや落ちましたが、
同時に、一打の決め手を持つ者同士のスリルは、やや形を変えたものの、まったく死んでませんでしたね。
よく「真剣勝負」なんて言いますが、本当に真剣で斬り合うような闘いでした。


勝ったドネアは、フェザー級ではまだまだ未知数というか、相手次第で苦闘もありそうですが、
この日勝ったWBA王者への挑戦ということになるんでしょうかね。
スーパーバンタム級でも最初はちょっと思うように行かず、西岡戦の快勝まで数試合を要しましたし、
徐々に調整していく可能性もあるでしょうね。

そしてダルチニアン、改めてその、唯一無二の存在に拍手です。
単なる勝利だけでなく「打倒」のために、蛮勇をふるって闘うその姿には、
傍目のあれこれつべこべを吹き飛ばす、蠱惑的な魅力、爽快感がありました。
最近は敗北の数も増えましたが、もうそういうこっちゃないですね。忘れ得ぬ王者のひとりでしょう。
一度だけとはいえ、直に見られたことも含め、有り難いボクサーだったなぁ、と思います...。

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次はそろそろ「枠」の外へ 山中慎介、難敵を倒し4連続KO防衛

2013-11-10 18:12:34 | 関東ボクシング

今日は昼と夜にWOWOW生中継という、とんでもない一日でありました。
いや、本当にありがたいことで、有料局は数あれど、お金払って見る値打ちのあるTV局ですね。
しかも終わってみれば、濃密な試合がたくさんあって、本当に楽しい一日になりました(^^)


とりあえず今終わったところですが、山中慎介から。
ご覧の通り、4連続KOで、5度目の防衛なったわけですけど、
初回を見終えた時は、正直「こりゃ、判定やな」と思っていました。

アルベルト・ゲバラの足捌きの巧さ、速さはなかなかなもので、
本人がそれを存分に生かそうという意志...というか、
逆にいうとそれ以外のことは何もする気がない、というのが、一目見てわかりました。

山中が少し落ち着いて、腰を据えてという風になる前にごしょごしょ、と打ち、
時に上体を折って頭持ってくる。この割り切りを打ち崩すのは大変だろうなあ、と。

ただ、それが変わったのははっきりと4回終了後の途中採点だったと思います。
三者リードとは少々意外で、私は38-38、悪くすると39-37でゲバラかなと見ていました。
5回、それまで落ち着き払っていたゲバラの振るまいが目に見えて変わり、
試合は山中に幸いする方向に流れていきました。
ここで「遅くとも10回には捕まえられるかな」と、こちらの印象も変わりました。

徐々に、相手の体の芯にパンチが届き、当たり出し、8回二度倒し、9回にフィニッシュ。
このあたりはもう、展開通りの結果、という感じ。
ゲバラは自分の出来ることが何も無くなり、敗北を受け入れたという風でした。


終わってみればああ良かった、ですが、今の山中にこの選手を当てることには
あまり意義を感じなかった、というのもまた正直なところでしたね。
これだけ強いと、従来の日本におけるボクシング・ビジネスの枠内で相手を選ぶのは大変でしょうが、
だからこそ、そういう枠を超えたリングへの進出というものも、そろそろ具体的な話として聞きたいです。

トップランクのアジア進出路線など、広がりのある話に関与してもらいたいですし、
ずばり一階級上の最強王者、レオ・サンタクルス攻略を目指すための展開を期待したいところです。
国内のしょうもない相手との「統一戦」とかは、どうせやる気もやる意味もないでしょうし...。


前座は放送を見ていると、あれよあれよと終わってしまいましたね。
しかし物足りなさは全然無くて、ローマン・ゴンサレス、ホルヘ・リナレス、粟生隆寛といった元王者が
相手どうこう以前に引き締まった試合ぶり、倒しぶりを立て続けに見せてくれて、
彼らの来年以降の飛躍にも、大いに期待をかけたくなりました。

その中でも、リナレスは良かったですね。ライト級で体も出来てきたか、良いバランスで構え、
腰がしっかり据わっていて、でも手の速さは以前と変わらず、攻撃の組み立ては多彩さがあり、
リナレスが本来持っている天性が生きている...そりゃ、初回KO勝ちで悪く見える選手もいないでしょうが、
ライト級での王座奪取も、相手次第で十分期待出来ると思います。

また、世界戦中止は残念だったですが、代役の相手の選手がまた、ほんまに代打かコレ、
と思うほど良い選手だったのも驚きでした。元々、他で試合予定があったと聞いて納得しましたが、
この辺は帝拳さんならではの「エエ仕事」で、会場に足を運んだ皆様も、ある程度納得されたのではないでしょうか。


昼間の試合についてはまた後日、何かごしょごしょと書きたいと思います。
山中はよくぞあのおっとろしい男に勝ったものですね...(^^;)

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