仙台でのダブル世界戦、WOWOWでの生中継を楽しく見ました。
両選手の紹介VTR、入場、国歌吹奏込みの世界戦生中継というのは、何か昔懐かしい感じでした。
日本人挑戦者が共に不利の予想を背負う試合、ということも含めて、昭和末期の記憶が甦ってくるというか(笑)
ただ、それが二試合続くというのは、昭和の時代にはあまりなかったですが。
懐かしいような、でもやはり今時な感じのTV観戦でした。
そんなことで、ざっと感想。
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木村悠の試合は、少なくとも5回までは、完敗へのプロセスにしか見えませんでした。
基本ベースというか、技術面では、少なくとも大きく劣ってはいないにしても、
あれだけ攻撃の質量に差があると、今から逆転はまずないだろう、と。
まして一打逆転の強打を持つでもない、一点ずつ返していかねばならない木村ですし。
対するペドロ・ゲバラは、以前より身体が大きくなったように見えました。
その分、攻撃に迫力が増していた代わりに、以前見たときの距離の維持、立ち位置の設定に
ちょっと緻密さが欠け、雑になっているのかな、とは見えました。
立ち上がりはその辺が少し気になったのですが、3回からは少し落ち着いてきて、序盤リード。
5回右をヒットして攻勢、リズムも出てきた。ところが6回から「急落」していく。
6回40秒過ぎくらいか、木村の右フックがボディに入って、そこからボディ攻撃が続く。
木村が攻勢、ゲバラは見ているのかと思ったが、ここから失速。
これ以降、ほとんどのラウンドで木村が攻めて取り、僅かに迷う回があり、という流れに。
ゲバラは1、2回の雑な感じが戻り、対する木村は爆発的ではないが淡々と攻め続ける感じ。
この辺は木村の揺るぎなさに感心。劣勢の試合でも、焦りが顔に出ないのが凄い。
判定については、ゲゲゲゲ、ゲ木木ゲ、木木木ゲ、で7対5。ゲバラと見ました。
しかし8、9、12はちょっと迷いもあります。この辺を全て木村に振れば、一応逆もあります。
あくまで、一応、ですが。
最初の途中採点は、3対1でゲバラが二人いました。これは1、2回のいずれかが木村に行ったのかもです。
これも私は4対0と見ていましたが、この辺りは見方次第、なのかもしれませんね。
いずれにせよ、12回戦の世界戦で、序盤これだけべったりとリードされていながら、
地道に、こつこつと攻めてポイントを取り返していって、KOではなく判定での逆転劇というのは
そうそう見られるものではないでしょう。この辺りはもう、木村悠の真骨頂とでもいうべきものです。
それを、おそらく最初で最後であっただろう世界戦の舞台で見せて勝った。お見事でした。
私の見方もそうなのですが、判定の是非については議論の余地あり、な試合だったかもしれません。
しかし、けっして有名でなく、王座奪取が有望視されていたとも言えず、仙台の観客も、WOWOWの視聴者も、
彼のことを詳しく知る者は少数派だった中で、人々の目を惹き付け、思わず応援させてしまうに足る何事かを、
この日の木村悠は終始、体現していました。それも確かだったと思います。
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江藤光喜はカルロス・クアドラスに判定負けでした。
体格、パワーでまさっていて、強打を振るって追いましたが、足使われて、左で捌かれて、というのが
大まかな流れでした。
江藤が体格を利してかけた圧力は、クアドラスにとっても脅威だったと思いますが、
残念ながら左ジャブの数が不足していて、その圧力が逃げてしまっていました。
クアドラスから見れば、一番外しにくいパンチの数が少ないから、足使って回る際に、
ルートの選択についての自由度が高くなる。その分、体力面でも効率的に闘えました。
江藤から見れば、距離を維持し、突き放しつつ追う、という流れになれば、
後続のパンチの測定も出来て、もっと正確に、多くのヒットを期待できたでしょう。
しかし、効率的でなくてもなお、あれだけ圧力をかけて、パワーではまさっていた。
時にボディ、時に右クロスなどを決めて、後続があればこの回取れたのに、という回も何度かありました。
ジャブの少なさや、安易に打たせる傾向など、問題もありましたが、それを受け容れて言えば、
その果敢さや、スケールの大きさは魅力的でした。
問題は、そうした「素材」として褒めるべき段階の選手なのかどうか、なのでしょうが。
カルロス・クアドラスは、ずいぶん体格に差があり、身体の強い相手との対戦だったこともあり、
とてもじゃないが良い出来の試合だったとは言えませんでした。
しかし、以前見たときよりも身体が厚くて、ボクサーとして出来上がったんやなー、という印象で、
闘いぶりも、良い表現をすればクレバーになっていましたね。
採点については、8対4、と見ました。江藤から見れば惜しい、というか、取っとかな!という回が
ふたつくらいはありましたが、それを取れてても届かなかったですね。
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とまあ、なんだかんだとありますが、やはり生中継は良いですね(^^)
大いに楽しませてもらいました。
業界的には色々と事情もおありでしょうし、何もかも帝拳がやるんか、というのもアレなんでしょうが、
世界戦は当然、日本国内の試合でも「コレや」というようなのを、WOWOWでやってもらえたら、
もう契約年数が20年を越える身としては、大変有り難いんですが。
そのへん、如何なものでしょうか。是非にご検討を。って、いっぺん要望メールでもしてみようかなぁ...。