さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

驚異の復調、されど「復活」なのか否か パッキャオ、9年ぶりのKO勝ち

2018-07-15 17:05:25 | マニー・パッキャオ



ということでWOWOWの生中継を昼前から見ておりました。

ほぼ一年ぶりの再起戦、即WBA王座挑戦のマニー・パッキャオは、
前回の不調から一転、快調な試合ぶりで、強打ルーカス・マティセを一蹴しました。


パッキャオ、初回から右リードが良く出る。真っ直ぐなジャブ、フック気味のショート。
左右ボディを叩き、ジャブが上に返る。肩振って左ストレートも。

マティセは先制され、前に出たいが出られず。
下がって受けて強い選手ではないだけに、この展開はきつい。
3回、外からの右を警戒していたところ、インサイドに左アッパーを食ってダウン。

4回以降、パッキャオ変わらず好調、多彩な右、当てて遠ざかる左が決まる。
5回、僅かにマティセが右当て、さらに出られるかと見えたが、右フックで膝をつかせる。
6、7回もワンサイド、最後は左アッパーでKO勝ちでした。


試合前は、ジェフ・ホーン戦のパッキャオの不出来を思えば、さらに一年経って、
39歳になって闘う試合に、何を期待出来るのだろう、と思っていました。
稀代の英雄、アジアのボクシング史上最高のボクサーが、ついに終幕を迎える試合、
それも、しばし目を背けたくなるような展開を見せられるのではないか。そんな風にさえ。

しかし、実際はというと、考え得る中で、もっとも好調なパッキャオの姿が見られた一戦でした。
よくぞ、これほどの復調を示せるものだなあ、と驚かされました。
単に体調が良いだけでなく、右リードを多彩に出し、そこから次の攻め手を適切に選び、
相手の裏を取る狙いで、長短、内外を打ち分けて崩していく闘いぶりは、
今回陣営から離れたという、フレディ・ローチの教えが生かされた、質の高いものでした。

もちろん、ルーカス・マティセの、強打者としての天分に隠されてきた、
技術面での不足、展開構築力の乏しさがあり、パッキャオからすれば、
思う以上に「手が合った」面もあるのでしょう。
しかしこの試合は何よりも、パッキャオが今だに、普通の常識では計れないボクサーである、
その事実が改めて見えた試合でした。


そして、同時に、この試合の勝利が、真の「復活」を祝う「祝祭」ではない、
そのように喜ぶには、あと一歩、届かないところでの闘いだった、とも思いました。

かつて、ロベルト・デュランはレナード第二戦の「ノーマス」事件で王座を失い、
さらにベニテスにも敗れ、その評価、名声を失った状態から、
ピピノ・クエバスに勝って浮上し、デビー・ムーアを倒して「復活」を果たしました。
会場であるニューヨークのMSGは、パナマのフィエスタ、英雄復活を祝う、祝祭の場と化したものです。

今日、クアラルンプールの大会場は、パッキャオがマティセを倒すたび、大歓声に包まれました。
勝利の瞬間は、デュランがムーアを下したMSGの光景に、重なって見えもしました。


しかし、試合後、今後の試合について、何一つインタビュアーに言質を与えなかったように、
往時のデュランのように、飽くなき頂点への渇望を抱えて闘っているわけでもない、
現状のパッキャオがゆく「路線」の延長線上にある試合だった。それもまた事実です。

デュランがムーア戦の後、帝王マービン・ハグラーや、強打トミー・ハーンズ戦へと突き進んだように、
パッキャオがエロール・スペンスやテレンス・クロフォードとの闘いに、
自らの栄光の全てを賭けて挑むようなことになれば、それはもう、結果や内容以前に、
ボクシングの歴史上、繰り返されてきた「王位」の継承劇となるのか否か、という観点から、
誰もが勝敗を超越した、崇高なる闘いとして、その試合を見つめることでしょう。

しかし、昨今のボクシング界は、そのような「宿命」の「然るべき闘い」から、
チャンピオンやスター選手を遠ざける理屈や事情、手管には事欠かない世界でもあります。
ここ最近のパッキャオとて、その世界の中において、自身が設定した「枠」の中で闘っている、
そう言わざるを得ない面がありました。

今日の試合内容と結果が、パッキャオの今後を、そのような現状とは違うものに変えるのか。
もしそうなるなら、今日の試合を後に振り返ったときに、違う心境を抱くこともあることでしょう。


しかし、彼の現状、国会議員としての責任、39歳という年齢、英雄として護らねばならぬ名声、
その他諸々を考えれば、単にひとりのボクサーとして彼を見て、思うことだけで、
全てを語りきるには無理があるのも確かです。それは重々、わかってはいるのですが...。


改めて、今日の試合は、予想以上に良い内容での勝利でした。
それだからこそ、試合前には思っていなかったことを、あれこれと思いもしました。
今後がどうであれ、マニー・パッキャオは、稀代の英雄であるが故に、
その存在そのものが、さまざまな思いを抱かせます。それだけは変わりない事実、ですね。



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名王者「晩年」の取りこぼし、その雛形 パッキャオ、白昼の豪州で陥落

2017-07-03 04:14:45 | マニー・パッキャオ



昨日は当然、お昼の生中継を見ておりました。
正直、大層に生中継するほどの試合でもないか、これよりブルックvsスペンス戦なんかをやってほしかったなぁ、
とか思っていたりしたんですが。

いざ放送が始まると、その「のんびり」な気分が、だんだん重くなっていきました。

練習や会見、両選手や陣営のインタビューがあれこれ流れているのを見ると、
パッキャオが、政治活動の合間に、非常に厳しいスケジュールでの調整をしていて、
それを陣営の誰もが、口では「大丈夫」と言いつつ、表情が悉く曇っている。

解説の浜さんや、現地にいたブラドリーの言葉もまた、
普通ならパッキャオが勝つに決まっているが「間違い」もありうる、という示唆が込められている。


紹介されたジェフ・ホーン過去試合の映像からは、さほど伝わるものはなかったですが、
いざ、雲一つ無い快晴の下、白昼のスタジアムに両者が現れて対峙すると、
そのあまりの体格差に、不安は頂点に達しました。

「状況」は多少違えど、会場の「絵」としては、ホセ・ナポレスがストレイシーに負けた時に似ているなぁ、と
試合直前にちらっと思ったりもしました。


序盤から、大柄なホーンが先手。ジャブも右も遠くから飛ぶ。
パッキャオは当然下がるなり回るなりして外し、かいくぐって打ち返すはずが、
どうも思うに任せない風。
ホーンは打ちながら左に移動して、右に戻って、という繰り返しも見せる。

小柄な方のパッキャオが、動きの量、質で劣り、スピードも切れもベストに遠い。
本来、まさっていなければいけない部分で、ホーンに先行されている。

白昼のスタジアム、大観衆の声援にも後押しされ、ホーンは健闘。
ガードを絞って足を止めるパッキャオの「休憩ガード」の真ん中を
アッパーで狙うなど、単にパワフル、ラフなだけでない、研究の跡も見える。

対するパッキャオの攻めは、それなりに精度はあるが散発的でもあり、中盤までは微妙。

そして、徐々にバッティングが目に付きはじめる。
ホーンは、三発四発と手を出し、それが全て外されると、頭から突進し、ロープに押し込む。
そしてさらにアウトサイドから左右フックで追撃。懐かしのジェフ・フェネック戦法。

確かに汚いやり口なれど、パッキャオもこんなことやらせている時点で駄目だなぁ、と
思っていると、6回、パッキャオが自分からアタマを持って行く。
露骨なお返しやなと思った直後、不幸なことにそれで自分が切ってしまいました。

この辺はもう、パッキャオの「コンディション」が、肉体のみならず精神的にも
「出来」てないところを、モロに見てしまったような気がしました。

8回でしたか、もうひとつ頭部を切り、終盤、パッキャオは血まみれ。
瞼を切ったわけではないから、影響は最小限だったと言えるかもしれませんが、
微妙な採点になっている?以上、ジャッジに与える印象、「絵面」の悪さを考えると、
どうにもよろしくない。

9回の猛攻も、好機にヘッドハンターになるパッキャオの悪癖が災いした...
というよりは、攻めの迫力が明らかに不足。
終盤、追い打ちをかけられず、微妙な感じで終了。


採点については、あの会場の雰囲気で採点していれば、こういう数字もありうるか、という感じ。
厳密にヒットの精度を見ればパッキャオかと思いますが、それも7対5くらいか。
逆もあり得る内容、というか「絵」を作ったホーンの健闘でもあり、
ホーン程度の相手にそれを作られたパッキャオの「取りこぼし」でもあった、のでしょう。



かつて、誰の手も届かない、天空高くを飛翔する鷹のようだったパッキャオも、
今はこの程度の「雑兵」の弓矢や槍、剣が届くところで闘っている。

かつて見せた英雄としての輝き故に、晩年になっても様々な宿命を背負い...
というか、絡め取られて、というべきか、ボクシングのみに専念出来ない状況で、
格下のラフな行為も「果敢さ」と見なす、敵地の大観衆の中、白昼の会場での苦闘。

その末に、完全に討ち取られたわけではないが、かつてなら負わなかった傷を負い、敗れた。
その姿は、やはり悲しいものでした。

かつて数多の名王者もまた、晩年には、このような悲しい姿を見せたものです。
パッキャオもまた、名王者であったが故に、その落差は大きいものでしょう。


試合後、前向きに再起、再戦への意欲を語ったパッキャオでしたが、ファンの勝手を言えば、
心身共に、こういう「出来」でしかリングに上がれないなら、もう止めといた方がいい、と思います。

しかし、もう、そういうことではなくなってしまっている、その現実も容易に想像はつきます。
その宿命を背負った、かつての英雄、名王者の姿を見ることもまた、ボクシングを見ること、なのでしょう。

見て楽しかったり、爽快感のある試合ではまったくなかったですが、
やっぱり、ある意味では、生中継で見られて良かったのかな、という試合ではありました。


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ジェルウィン・アンカハス対帝里木下戦は、アンカハスの7回TKO勝ちでした。

実力的にはやはりアンカハスが上だろうから、帝里が序盤から相手に合わさず、
どれだけ動き、仕掛け、それこそラフにでもいいから「暴れ」て、アンカハスにやりにくさを与えられるか。

そこが勝負だ、と思っていましたが、立ち上がりから、割と普段どおりの構え。
左狙いはともかく、アンカハスが持つ攻防の「枠」の中に、すっぽり収まり、捉えられる感じで、
これではまずいなぁと思っていたら、早々に古傷の瞼を切ったことも含め、劣勢に。

敵地での調整、高温の屋外での試合など、難しいこともあったのでしょうが、
パンチの精度をはじめ、実力では上回る相手と、力関係がそのまま全部出てしまう展開では、
いかにも苦しい、という印象でした。

帝里はせっかくの長身を曲げて、覗くように構える傾向がありますが、
右ジャブを出しているときは、それを矯正したバランスになりもするので、
正対して構えて闘うなら、もっとジャブから攻めてほしかった。

何より、長身で大柄、サウスポーという部分を、相手から見たやりにくさとして生かす発想が
ほとんど見られず、まともにやりあってしまったのが、残念に思えました。
策を弄して闘うことに意味を見出さない、という考え方も、当然あるのかもしれませんが。

しかし、強い王者に敵地で挑んだ結果ですから、仕方ないことでもあります。
こういう「挑戦」を、どんどん見たいし、やっていくべきだとも思いはします。
その内容が、結果が厳しいものであれ、それを踏まえて、次につなげることの積み重ね、
それこそが「挑戦」そのものであろう、とも。


アンカハスは攻防共に、高いレベルでまとまっていて、なかなか強いところを見せました。
あれでけっこう爆発力もあったりするんですから、今後が楽しみではありますね。
日本の選手との対戦も、さらにあるのでしょうか。
もっとも、今回改めて、強いとこを見せて「しまった」ことが、どう影響するか、という見方もありましょうが。



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「復帰戦」としては上々、されど今後は? パッキャオ、まずは破綻なく勝利

2016-11-06 15:20:21 | マニー・パッキャオ



ということでWOWOWの生中継を見終えました。
タイトルマッチ三試合、ひょっとしたら飛ばされるのかな?と「邪推」していた
大沢の試合含め生中継、ありがたいことです。

今後もオンデマンド含め、生中継があるようですので、楽しく拝見したいと思います。
まずはとりとめも無く今日の感想文を。


マニー・パッキャオは、7ヶ月ぶりの「復帰戦」でした。
計量の映像を見ると、ちょっと身体に張りが無い、筋肉量が少し減ったか?という感じ。
実際、試合始まってしばらくは、動きが切れないなあと見えました。

ジェシー・バルガスは、セミセミでノニト・ドネアに勝ったジェシー・マグダレノ同様、
広めのスタンスで踏ん張って迎え打ち、後ろの足をこまめに動かして後退、
困ったらクリンチ、という流れを作ろうとしていました。
しかし2回、パッキャオの右足の上に、自分の左足が乗ってしまった瞬間に打たれ、
実質片足でしか踏ん張れない、不運な状況で喫したダウンがあり、
そこから少しずつリズムを失い、目論見が狂った感がありました。

4、5回あたりは、待ちの展開で、リズムやテンポを落とす試合運びが出来ていましたが
6回くらいになると、見るからにスタンスが狭まり、踏ん張りが利かず、迎え打ちの威力を落としてしまう。
このあたりから、パッキャオがそれまでよりも踏み込んで打つ頻度が高まり、
終盤は再三にわたって攻め込まれてしまいました。

パッキャオは若干幸運な?感じもありましたが、序盤のダウン奪取から、
徐々に調子を上げ、中盤以降もペースを落とさず、終盤はさらに好打を重ねる「復調」ぶり。
爆発的な追い上げはなかったものの、左ストレートの速さと右回り、右リードジャブの切れなど
往年の片鱗をちりばめつつ、きっちり差を付けて勝ちました。
中に一つ、何ソレ採点が混じっていたのには驚きましたが。

もし、練習不足の影響が出るようなら、途中まで好調でも、突然の失速というような事態が
いつ起こっても不思議は無いと思って見ていましたが、そのような心配は無用でした。
パッキャオはやはり、このあたりの相手なら、順当に勝つ力を普通に持っている、
その事実を改めて見た、復帰戦としてはまずまず、上々の試合だったと思います。

しかし、今後の試合について、名前の挙がっているテレンス・クロフォードや、
ウェルターの他団体王者との対戦などがあるのだとすると、この試合の出来では不安でもあります。
まずまず良かった、破綻は無かった、というレベルでは、これらの相手に勝てはしないでしょう。

かつて当たり前のように、試合の度に見せていた「驚異」のマニー・パッキャオを取り戻せるか否か。
そこが成否を分けることでしょうね。

もっとも、彼がそのような彼自身を取り戻して闘い続けることを、本当に心底から希求しているのか、
それが若干、疑問だったりもするのですが...。
もしそこまでの覚悟があるのなら、議員との両立状態のまま再起することはないんじゃないかなぁ、という。
まあ凡百の身に、これほどの巨大な「星」の心情など、計り知れようはずもないですが。



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セミファイナルのオスカル・バルデスvs大沢宏晋戦は、ワンサイドの展開で進み、終わりました。
内容は、事前の想像通りだった部分と、そうでなかった部分とがありましたが。

まず、王者バルデスの様子が、開始早々から奇異に見えました。
動き自体は前見た通りかな、と見えたのですが、顔色が何だか悪く見える。
スピードの差でリードしている展開なのに、気づけば2回にはもう口が開きっぱなし。
動きも、コンビを打つ動作は滑らかなのに、全体的にはブツ切り、細切れの印象。
その止まっている間に、大沢のジャブを出させてしまい、攻勢を切られる場面も。

対する大沢は、序盤から勝負を、と言っていたそうですが、スピードの差、
それも手足や身体の運びというより、いつどこ打つか、の「判断のスピード」で大きく劣り、
打つ決意をする間が見つからず、後手に回っては打たれ、の悪い回りに追いやられてしまいました。

元々はライト級でキャリアをスタートさせた大沢が、体格の利を生かせる場面は
残念ながらほとんどなし。優勢なのに苦しそうな表情をさらして闘うバルデスに、
何とか押し込んで攻められないか、と思って見ていましたが...。

4回にダウンを奪われ、7回に左フックで効かされて詰められ、ストップ。
心情的な部分で、地方の小さなジムからベガスの大舞台に立った事実を称えたい気持ちもありますが、
試合自体は善戦健闘とはいえない、厳しい評がなされて然るべきものでした。残念です。


試合後の報道などを見ていないのでわかりませんが、バルデスは何か重篤な負傷か、
体調不良の状態にあったのではないか、と見えました。
もしこの状態のバルデスに、細野や下田、天笠あたりが挑んでいたら...と
言うても詮無いことを思ってしまうほどでした。


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ノニト・ドネアの敗戦は、いよいよ彼の身体的限界が来てしまったのかな、という印象でした。
ドネアよりも分厚い上体のサウスポー、マグダレノは、広いスタンスで踏ん張り、
左(アッパー含む)と右フックの迎え打ちに専念し、クリンチやホールドで接近戦を抑えて、
後ろ足から小さく後退のステップを刻み、懐を深く使う、迎撃ボクシングでドネアの切れ味を封じました。

メインのバルガスは、体力不足とダウンの影響から、早々にこの構えを崩してしまいましたが、
マグダレノはバッティングによる出血にも動じず、終盤まで持ちこたえました。
10回くらいになって、すこしスタンスが狭くなり、迎え打ちの威力が落ちたところを攻められましたが、
最後まで踏ん張って、中差の勝利を収めました。

以前なら、相手が来れば鋭い「合わせ」のカウンターがあり、相手が引けば旋回してサイドから崩す、
自在な攻撃ボクシングを見せてきたドネアですが、相手の体格や懐の深さに苦しんだせいもあり、
どうにも攻め口が直線的で単純でした。これではいくら個々のパンチが切れても勝てん、という感じでした。


軽量級の歴史において、これだけ攻撃指向が強く、なおかつ技巧の冴えを見せ、
多くの強敵と闘い、勝ちまくってきたチャンピオンは、そうそういるものではありません。
ジョフレやゴメスに匹敵する戦慄的な強打を持ち、原田同様に大幅な階級間移動をこなし、
過去に類例なきほど、数多くのスペクタクルな勝利を重ねてきたノニト・ドネアの
偉大なキャリアにも、とうとう終焉の時が来たということなのかもしれません。
敗れた相手がリゴンドーのような驚異的な強豪でも何でも無い選手だったこともまた、
そのような思いを強くする一因ではあるのでしょうが。



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過不足なき引退試合 パッキャオ、難敵ブラドリーをクリアに下す

2016-04-10 16:15:07 | マニー・パッキャオ



ということで生中継を見ました。

過去二試合では、懸命に動いては打つティモシー・ブラドリーに、好打はあれど強打は決まらず、
時に手こずり、持てあまし、という風だったマニー・パッキャオでしたが、
結果は判定でも、三試合目ではこれまでよりも相手を捉え、攻めきった印象でした。

初回はこんな感じがまた続くのかと思ったのですが、2回から、パッキャオが距離を目に見えて詰め、
狭い空間での攻防がスタートラインになって、そこから踏み込み、打って外す展開。
ブラドリーの速い動きで外され、速い連打を浴びたら、悪い流れになってしまうリスクもありながら、
敢えて遠くから見て闘うのでなく、自らリスクを取って出たように見えました。

ブラドリーも当然ながら、これまで通りに抵抗しましたが、距離が詰まって密度の濃い攻防になれば
パッキャオとの根本的な質の差が徐々に露わになります。

パッキャオの警戒を誘うために高く掲げて振りかざす右も、懸命なボディーワークの繰り返しも、
パッキャオの設定した密な攻防ライン、速いテンポ、狭いスペースでは、余裕を持って展開出来ず、
どうしても隙間が出来、漏れ落ちが見えました。7回のスリップは気の毒ながら、9回の左被弾、
直後の軽い左アッパーでのダウンは、結局は全体敵な質の差が、形になって表れたものでしょう。

ブラドリーはそれでも次の10回に反撃したように、全力を出し切って闘いました。
しかし、選手としての質、格という部分で、明確にパッキャオが差を示した、そういう試合でした。


パッキャオについては、晩年というべき今でもなお、これだけのレベルを示した、流石だと思います。
しかし彼が過去の試合で見せた、階級の壁を破壊し続けた常識外れの爆発力、技術面での質の高さは
それぞれ、確実に一定程度は目減りしてしまっている。それもまた同時に見えた試合でした。


これで引退と本人が改めて明言しましたが、メイウェザー級ならともかく、他の選手となら
誰とやってもまだまだ、興味深い新旧対決が見られるのでは、という気はします。

純正ウェルターの強打、ブルックやサーマン、またはクロフォードのような完成度の高い技巧、
いずれもパッキャオにとり脅威であり、それが敗北へと繋がるのかもしれません。
それでもなお、ボクシングの歴史を彩ってきた、新旧交代なるか否か、というテーマの試合に臨むのは
スーパースターたる者こそが果たすべき、ひとつの責務なのではないか、と思います。賛否あるでしょうが。

しかし、あまり言いたくないことですが、パッキャオ本人がそれを望まず、そういうつもりで
再起してきたわけでもない、というのが現実であり、今日の試合はあくまで、それ以上の意味はない試合でした。
そういうものだ、と思うしかないのでしょう。
その意味では、過不足ない内容であり、引退試合としてはきれいに収まりがついた試合でした。



改めて、過去に彼が見せてくれた数々の驚異的な試合ぶりには、賞賛と感謝しかありません。

そもそも、フライ級時代の大柄な強打者ぶり、タイでの王座強奪、比国での感動的な王座防衛だけで
彼は充分「東洋のヒーロー」だったわけです。
ですから、その後の「労働者」としての渡米を経て、代打出場でのスーパーバンタム級王座奪取は、
それだけで充分「アジアの枠を越えた快挙」でした。

ところがさらに勝ち続け、バレラ、モラレス、マルケスらとのライバル対決に勝ち越す頃になると、
彼は真にワールドワイドなスーパースターとなりました。
東洋の選手が米国のリングで、王国メキシコのフェザー、ライト近辺のトップ選手3人を総なめにするなど、
あの頃(というか、パッキャオを除けば今でも)には、とても思いつかないレベルの「夢」だったのです。

そしてその先、デラホーヤ戦以降のウェルター級進出になると、もはや妄想の域でした。
本当に、振り返れば現実味を感じられない出来事の数々でした。
感動、興奮というものを越えた衝撃的な勝利の数々は、おそらく今後、二度と見られるものではないでしょう。


今後の活動については、報じられているとおりのものになるのでしょうが、
どのような道であれ、つつがなく第二の人生を生きてほしいものだと、それだけを切に願います。
偉大な英雄が、その余生を、幸福なまま生き抜くことは、それもまた、ひとつの闘いかもしれません。
彼がそこでもまた、勝利者であることを信じたい気持ちです。彼への感謝と敬意故に。


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6度倒れてなお足を使う不思議 パッキャオ完勝なれど、アルジェリ・ワールド全開

2014-11-23 18:51:48 | マニー・パッキャオ


本日の生中継はちょうど正午から判定三連発。
しかも、早い試合終了があり得たはずものが終わってみれば...というのが三つ揃って、
見終えたあと、何だか不思議な感じが残りました。


マニー・パッキャオは、今時珍しい徹底したフットワーカーのクリス・アルジェリを
6度倒して大差の勝利。しかし最初のみっつのうち、ふたつはレフェリーの判断次第、というか
はっきり言えばミスだったと覚しきものでした。

長身のクリス・アルジェリは、足は使うが、動きの中で必ず左足を軸に、パンチを打てる「壁」を
身体の左側に維持しながら動ける、腰が無駄に引けていない、上質なアウトボクシングが出来る選手で、
今日の試合でも、序盤はその良さが出ていました。パッキャオが簡単に打っていけないのは、
速くて遠いだけじゃなく、反撃の脅威を感じていたからだったはずです。

しかし、それでもパッキャオ相手にフルラウンド捌ききれる道理もなく、徐々に打たれ、
不運なのも込みでダウンを重ね、6回と9回にはホントのダウンと追撃を受け、
ストップされても不思議の無い劣勢でしたが、最終回まで生き延びました。

パッキャオは久々に強打が火を噴き、快勝と言える試合だったと思いますが、
そのパッキャオ復調云々以前に、大差でリードされていることを承知の上で、自分の型を崩さず、
懸命に足を使って動き、ジャブで距離を取って、サイドに回って...と真顔でやっているアルジェリが
どうにも不思議で、理解不能でした。君、それは競った試合の最終回にやることやで、と
思わずTV画面に向かって語りかけそうになりました。

まあ、ちょっと変わったキャリアの選手ですし、我々が普通に思い描くのとは違う情緒で、
ここまでの試合と、今日の試合を闘ってきた選手なのかもしれませんが。
単に判定まで生き延びたい、という女々しさとも多少違う、彼なりのこだわりのようなものなのか、と
見ていて不思議ながらも、何だか貴重なものを見ているのかなあ、という気もしました。

今後、この選手の試合をどの程度見ることがあるかはわかりませんが、妙に気になる存在ではありますね。


パッキャオは試合後、明るい表情でメイウェザー戦の希望を語っていましたけど、
もう少し爆発的な踏み込みが頻繁に出るようでないと、苦しい展開が待っていそうですね。
まあそれ以前に実現するかどうかが不明なんですが...今後さらなる復調があると仮定すれば、
今日の時点ではこのくらいの出来に留めておいた方が、試合実現へのプラス材料だったりするのかも知れませんね。
メイウェザーって、ビジネス云々の話を取り払ってしまえば、結局はそういう人だ、と私は見ております。
どうでしょうかね。


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セミファイナルはゾウ・シミンが、WBO3位のクワンピチットというタイの選手に判定勝ち。
何でもIBF王者アムナット挑戦が内定してるとかで、その前哨戦という位置づけの試合だったそうですが、
相変わらず締めた構えが長続きせず、さりとて手を下げる割に目で外せる率が意外に低くて打たれるという、
いつも通りのゾウさんワールドでした。

どうもこの人、プロでの試合ぶり限定ですが、あちらを立てればこちらが立たず、という印象です。
ハンドスピードはあるが腰高なのでパンチ力に欠け、カウンターのタイミングは良いが手を下げないと打てない。
構えを締めて重心を落として打つと遅くなり、手を下げると速いが、相手の反撃を外しきれるほどには目が良くもなく、
さりとて距離で外しきれるほどに足も速くなく、結局は腰高のまま打ち合い、速さで打ち勝つが倒しきれない。
従って相手が一定以上粘れる力がある選手だと、結局はけっこう苦戦する。いつもこんな感じですね。

けっして弱いわけじゃなく、普通の選手にはない強みと特色を持っていますが、今の状態でアムナットとやるというのは...
アマチュアの強豪対決といえば聞こえはいいですけど...アムナットのジャブやアッパーによる距離構築に対し、
ゾウが目で外す防御と、速いパンチの「合わせ」で切り込めるのかどうか、という、まともな攻防が繰り広げられるのは
結局は序盤だけかせいぜい中盤までで、それ以降は互いの弱み、アムナットの失速とクリンチ増加、ゾウの被弾増加が相まって、
あまり見映えのしない展開に、という、あまり楽しくない想像をしてしまいます。

きついようですが、この試合が実現しても、せいぜい野次馬根性で見るくらいの感じかもしれません。
ゾウがもっと自分の良さだけを試合に出すために、最低限考えないといけないことをしっかり考えて
冷静に闘えるようになれば、話は違ってくると思うのですが...。


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セミセミの好カード、ワシル・ロマチェンコvsチョンラターン・ピリャピニョは、ロマチェンコの大差勝利でしたが、
これもまた、ロマチェンコの左手負傷?の影響で、どう見ても中盤くらいでKOかTKOかと見えた試合が、判定になりました。

7回に露骨に左手を痛そうに振ったロマチェンコの、プロとしての甘さが指摘されましょうが、それ以前に、
あの序盤の展開で、いかにチョンラターンがタフだとはいえ、もう一押しの攻撃が無かったことも責められるべきでしょうね。
ジャブの正確さ、サイドステップの速さ、常に死角から打てるアングルの確保と、その位置への適切な移動の連続、
いずれもなるほど世界最高峰、と感嘆させられるロマチェンコが、あんなに甘い試合運びと、危機管理の欠如をさらけ出すとは、
正直言って驚き、というよりも奇異にすら感じました。アマチュアはラウンドが少ないから、怪我を相手に悟られても
何とか乗り切れてきた、とでもいうのでしょうかね。まあ今後に向け、良い教訓になったのでしょうが。

しかし2勝1敗の世界王者と、52勝1敗の挑戦者による世界タイトルマッチ、というのも実に珍しいですね。
面白いものを見せて貰いました。

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大竹秀典は英国リバプールで、スコット・クイグに3-0の判定負けとのこと。
映像を見ていませんが、最近華々しくノックアウトを重ねている王者相手に、健闘したのでしょうか。
結果は残念でしたけど、広い世界に打って出ての闘いは、それ自体がまず貴重だと思います。
大竹の今後に期待します。

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「最強の格下」に手こずる パッキャオ、雪辱果たすが「復活」は先送り

2014-04-13 23:41:02 | マニー・パッキャオ

今日の生中継、メインについて簡単に。


けっして弱い選手だとも思いません。かなり速くて巧くて強い、と言える部類の選手です。
でも、やはりティモシー・ブラドリーは、この手の試合に出る「顔」ではない。それを改めて見た試合でした。

もちろん、勝つために必死なことを責めるつもりはありません。
しかし、世界注目のビッグマッチ、と分類される試合において、
相手の左を食いたくないから、目線を切ってまで下を向き、頭を嫌がらせに振りかざして打つ、
ごまかしの手数で優勢を演出し、攻めて、引いて、印象点を取りに行く、とやっているのを見ると、
そのあまりの「格下」ぶりに驚き、節操の無さに呆れもします。
こんな風に闘わねばならないほど、力のない選手だとは思わないだけに、余計に。

途中で足の具合が悪くなったか、と西岡利晃が指摘していましたけど、
そうであったとて、あの闘いぶりというか、やり口では、
結果が残らなかったら、それ以外何もなし、それこそ手ぶらでリングを降りねばならない。
プロボクサーとして、そのことが怖くないのかな、考えが及ばないのかな、と不思議でさえありました。

試合後、同時通訳を困らせるペースであれこれつべこべくちゃくちゃと話してましたが、
今後二度と、彼をWOWOWの生中継で見ることはないでしょう。あ、前座ならあるか...。


で、そういう相手をひたすらもてあまし、手こずっていた。
それが今日のパッキャオに抱いた印象の全てです。

試合始まった時点で、まあこちらの目玉の勝手なんでしょうが、以前よりずいぶん小さく見えました。
あの思い切りの良い踏み込みから放つ左ストレートは、下を向くブラドリーに当たる角度がなく、不発。
ブランドン・リオス戦のように、左から右と当てての右回りを試みるも、
その身のこなし以上に大きく上体を振られてしまう。
そもそも相手に、強く攻めようという気がないのに、何故「捌き」にかかるのか、
パッキャオらしくもない弱気というか、その発想が納得できません。

とにかく、攻めるのも捌くもの中途半端で、どうにも煮え切らない感じのまま、試合は終わりました。

この試合を見て、勝ちは問題ないにせよ、今後に明るい展望はとてもじゃないが見えないでしょう。
相手の「なりふり構わず」が一定の次元を越えたものだったことは考慮するにしても、
そんなものは問答無用で叩き落としてしまうだけの速さや、踏み込みの思い切り、
そして精度があったはずのパッキャオの攻撃は、最後まで影を潜めたままでした。

これ、次の相手選びが、かなり難しくなりそうな感じもありますね。
少なくとも、我々がいまだに捨てきれない、メイウェザー戦実現という夢に関しては、
近づいたとか遠のいたとかいう以前に「それどころじゃない」という印象が残りました。
ちょっと残念な試合でした。

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堅調、復調、違和感と様々な想いと パッキャオ、マカオで大差の勝利

2013-11-25 14:38:10 | マニー・パッキャオ

昨日の試合の感想文です。

ブランドン・リオスは、思いの外、堅牢なガードを用いて立ち上がりました。
2連敗からの再起を期すマニー・パッキャオを苛立たせる展開を作り、
全体重を乗せて踏み込んで打つ左ストレートの強打を誘って、その前後に勝負を賭ける、
そんな、普通なら無茶な企図が見えて、序盤は緊張感を持って試合を見ていました。

しかしパッキャオは、意外というべきかどうかはわかりませんけど、
こちらが勝手に思い描く悲壮感や力みをほとんど見せず、右回りのステップと
左ストレートの軽打で試合をコントロールしました。
リオスが狙う強打を、出す前の時点でほぼ無力化してしまうレベルのアウトボクシングでした。

また、左右のコンビではなく、左、または右のダブル、トリプルにボディ打ちを交える攻撃を多用したのも、
一発強打を狙うリオスの射程に、自分の体の軸を置きたくなかったからでしょう。
もちろん、スピードで勝るという確信を持っていないと出来ないことでしょうが、
この日のパッキャオは、中盤以降、見てるこちらが少々退屈に思うほど、
完璧なリスク管理を見せて、大差の勝利を得ました。


この闘い方と内容を、どう見るかはそれこそ議論百出でしょう。
まずは堅調、復調を示した、と見るのが基本なのでしょうけど、
普通のボクサーならそれで済む話ですが、やはり歴史的強豪たるパッキャオの
過去の試合ぶり、試合の度に新たな歴史を作ってきた驚異の男の姿を思い出すと、
そう簡単に得心がいかない部分もあったりします。


やはり、再起初戦とはいえ、あれだけ優勢に進めた試合の中で、
弾丸のように飛び込んで打つ左ストレートなどによって「打倒」の意志を撒き散らし、
果敢に攻め込む場面が無かったことは、仕方が無いことなのか。

もちろん普通のボクサーならそれでいいのですが、パッキャオを見る物差しとして
その普通の見方は正しいのか。

今回は無難だったが、次回以降はもう一歩踏み込んだ攻撃もあるだろうから、
今からとやかく言う必要はないのか。

或いは、この攻め急ぎを抑制した闘い方は、ブラドリー、マルケス戦で見せた
それぞれに形の違うペース配分の失敗を教訓とした「新生パッキャオ」のスタイルであり、
さらに踏み込んで言えば、強打を狙う相手の意志を最大限に「活用」する天才、
フロイド・メイウェザーを攻略するための第一歩なのかもしれないのか?
かつて彼を「序盤限定」の高速ボクシングで苦しめたザブ・ジュダーの「速さ勝ち」を
もっと多くのラウンドで実現しようという、壮大な構想の序章を、我々は見たのか?


...ちょっと(かなり?)飛躍や脱線が過ぎましたが(^^;)
とにもかくにも、再起初戦として、基本的には良い内容と結果だった、とは思います。
今回見られなかった、今後に期待する部分について語れば、上記のような疑問を抱く試合でもありました。

しかし、やはり我々は、再び起った英雄の姿を見て、勝手なものごとも含めて大きな期待をし、
あれやこれやと想いを巡らせる楽しい時間を得られるわけです。
今後の展開がどういうものになるかはわかりませんが、とにかく次の試合が楽しみです。それだけは確かです。
パッキャオの今後から、やはり我々は目を離すことなど出来ません。
後に振り返って、この試合の位置づけ、意味がどのようなものになろうとも。



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意外で残念な失速

2012-06-11 14:37:10 | マニー・パッキャオ

またしてもひさびさの更新であります。どうもすみません。
昨日の試合は色々思うところのある試合となりましたので、あれこれと。


まずあの判定について、自分の感想から言えば、解説のジョーさんとほぼ同じです。
あの12ラウンズのうち、7つをブラドリーが取ったようには見えませんでした。

それでも、思いきりブラドリーに甘くつければ、6対6、ドローまではあるか。
それ以上はどうしても、オマケできるラウンドの数がない、というところです。

しかし同時に、割れる、逆もありうる、そういう判定が出る可能性が皆無とは言い切れない、
自分の見解とは違うが、そう見る人、ジャッジがいてもおかしくはないだろう、とも思いました。

議論の余地がないのは10~12の3ラウンズでしょう。
私はこれを全てブラドリーに振りました。
その上で、それまでの9ラウンズが、5対4でパッキャオという、小差の内容ではなかったと思うのですが、
そういうジャッジがありうる内容だった、というのが現実だったわけですね。


試合内容はパッキャオがいつものワンツー、左ストレートを狙う展開。
ブラドリーはファン・マヌエル・マルケスと同じく、その左を外し、威力を削ぐために
左斜め後方への移動をベースに、右ガードを高く掲げてパッキャオを威圧する構え。
そしてパッキャオの出鼻、或いは打ち終わりに、ガードの上でも構わず手数を出す。

全てはパッキャオへの「対応」に基づいた、格下が番狂わせをかすめ取るための闘い方でした。
体格面で、過去のパッキャオの相手のようなアドバンテージがない代わりに、
そういう小回りの効く闘い方を貫いて、パッキャオの、自分の左足が浮くほどにパワーを乗せた
強烈な左ストレートを決定打とさせず、中盤打たれてバランスを崩しても懸命に立て直しました。

パッキャオはこれまでの相手と違って、体格ではそう変わらないが小回りが利く相手に、
左ストレートを好打はしても強打は出来ず、多少いらついた部分はあったのでしょう。
しかし上記の通り9Rまでは、問題なく勝てる流れでした。
あのラスト3つの失速は、さすがに予想できませんでした。

判定についてはさまざまな議論があるでしょうが、そもそもあの終盤の失速がなく、
普通に取ったり取られたりという展開でさえあれば、そんな議論の余地などない、
パッキャオにとり普通の勝利となっていた試合です。
判定云々以前に、この失速こそが、論議を呼ぶべきものではないか、と思っています。


彼の周辺の環境、練習の密度、年齢、歴戦の疲弊など、色んなことが語られるでしょうが、
もう何年もの間、上のクラスの相手との激戦を見事な内容で勝ち続け、
過去にはなかったさまざまなものを背負って生き、闘っているマニー・パッキャオの強さが
永遠に続くわけではないことは、誰もがわかっていることです。
いずれ彼も、誰かに敗れ、或いは時の流れに抗えずに、リングを去る日が来るわけです、が...。

ただ、それにしてもあの終盤は、きつく言えばひどかった。
そこまで疲労していたようにも見えなかったのですが、出鼻を打たれ、打ち終わりを打たれ、
打てば外され、追えばはぐらかされ、無策を絵に描いたような失点を重ねたパッキャオの姿は
ちょっと信じられないものでした。仮に判定が彼を支持していても、これは無いな、と思っていたでしょう。
ムショの中でPPVの生中継が見られるのかどうか知りませんが(見られるワケないですか...)
これを見たらフロイド・メイウェザーはさっそく対戦したがるんではないか、というほどに。


なんか、片務的な再戦契約があるんだそうで、11月にもということだそうですが、
正直言って、別に名勝負という内容でもないし、そもそも勝ったブラドリーが、
パッキャオに取って代わって、ボクシング界の新たな英雄になった、ということでも全然無いこの試合、
やれ因縁の再戦だ、返り討ちか雪辱か、とか煽られても、もうひとつ乗り切れない感じではあります。
ブラドリーは、試合後のコメントを聞いても、良い試合をする責任が自分にあるとは全く考えていない風でした。
おそらく、次もそれは全く変わらないでしょう。もしそこが変わるのなら、彼を待つのは敗北...の、はずです。

いずれにせよ、誰もが待ちわびているはずの、あの試合への道のりが、またしても遠くなってしまいましたね。
どのみち年内は無理なのだから、再戦興行で盛り上がるならそれで良し、などとプロモーター連中は考えていそうですが。


昨日の試合は、色々なことを考えて、そして何を考えても、何か煮え切らない思いばかりが残る、残念な試合内容と結果でした。
マニー・パッキャオの試合を見て、ただただ感服し、感動してばかりいた日々は、残念ながらもう過去なのかもしれません。


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三度目も僅差

2011-11-13 20:39:08 | マニー・パッキャオ


今日はちょっと体調を崩してしまいまして、横になりながらのTV観戦でした。
簡単に雑感を。

最初に採点ですが、さうぽん採点は115-113でマルケス。
迷った回がふたつあったので、それが逆ならドローか、同じ数字でパッキャオでも納得ですが。
ただ、WOWOW解説陣の、ほいほいパッキャオに振っていく採点は、それはどうすかね、という感じ。


マルケスは距離を厳しく維持し、パッキャオの左を、左斜め後方へのバックステップで外し、
来たら右カウンター、アッパーを混ぜた右左右のスリーパンチで叩くというボクシングでしたが、
過去二試合でも同じことはやってました。今回はより集中して、一度もミスも絶対にしない、と
自分に言い聞かせているかのようでした。

こういうボクシングをマルケスにやられてしまうとパッキャオは過去二戦と同じく、
どこかで爆発的な攻撃を仕掛けて、いわゆる「ひと山」を作らないと、厳しいわけです。
しかし今回のパッキャオは、そういうひと山、ビッグラウンドは作れなかった代わりに、
過去の二戦ではなかった、振りの小さい右フック、左アッパーなどでマルケスを脅かし、
足りない分のポイントを稼いでいました。

マルケスの堅陣を、パッキャオが懸命に崩そうとする展開だったわけですが、
繰り返しますが以前のパッキャオだったら、おそらく明白に判定負けを喫していたでしょう。
初戦は初回の三度ダウン奪取、二戦目の3回ダウン奪取があって、それでもドローと僅差だった
両者の技量力量の関係で言えば、パッキャオがその後の試合で見せた技術的成長がなくば、
今日の試合はそういう結果になっていたはずです。

そういう意味で、今日の試合は、38歳になってなお、自身の集大成を見せたマルケス、
自身の成長ぶりを発揮して、過去二試合よりもマルケスの堅陣に迫ったパッキャオ、
両者の激しい攻防が存分に見られて、判定とはいえ、大いに興奮されられました。

結果はパッキャオの勝利となりましたが、どちらにも拍手という試合でした。
判定に関する論議はさまざまでしょうが、本当に良い試合を見せてくれたことに感謝ですね。



さて、両者の今後ですが、パッキャオが誰かとの試合で明白に弱みを見せでもしない限り、
対戦には応じるまい、というところまで評判を落としているフロイド・メイウェザーが、
今日の試合内容を見て、どういう意思表示をするかに、ちょっと興味があります。
マルケスが見せた、右リード、カウンターと左旋回のステップワーク中心のボクシングが、
思いの外パッキャオの力のベクトルを外せたこと、これは彼にとって示唆に富むものだったでしょう。
もっとも、単純に同じような発想でパッキャオと対峙して、メイウェザーがハンドスピードと
右リードでパッキャオを抑えられるかというと、また別の話なのでしょうが。


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前々日の雑感

2011-11-11 10:53:12 | マニー・パッキャオ
いよいよこの週末は、毎年好例、11月第二土曜日(日本時間日曜日)のビッグファイトの日ですね。
5月第一土曜日と、この日に米国のビッグファイトでメインを張る人が、その時々における
ボクシング界ナンバーワンのボクサーであると言えましょうが、ここ数年その地位を独占している
マニー・パッキャオ大先生がやはり今回も登場です。

相手は、パッキャオが米国進出後、最も彼を苦しめた男、ファン・マヌエル・マルケス。
初戦フェザー級でドロー、二戦目スーパーフェザー級で僅差パッキャオ、という結果を受けての第三戦です。


さてこの試合、よく言われているのが、ウェルター級で強豪相手に圧勝続きのパッキャオに比べ、
マルケスはウェルター級ではパワーが足りない、従ってパッキャオ有利、という見方です。

確かにその通りなんですけど、マルケスがウェルター級で闘った試合は、メイウェザー戦だけであり、
あの選手は言ってみれば異次元の世界の人で、あれに完敗したからマルケスはウェルターでは駄目、と
言い切れるものかどうか、私は疑問に思ったりもします。

メイウェザーは傍目に見る以上に、差し向かいで闘うボクサーの能力を削ってしまう巧さがあり、
仮にパッキャオがメイウェザーと闘ったとして、今までの試合のように滑り足よく攻めていけるかどうかは
何とも言えないでしょう。
マルケスがメイウェザーに完敗したことをもって、ウェルターでのマルケスを軽く見ていいのかどうか。
私は、そんな簡単にはいかんでしょうあのお方は、という見方をしています。


むしろ、体格やパワーよりも、マルケスから見て脅威なのは、パッキャオの技術面の成長ではないでしょうか。

過去二試合、パッキャオは瞬発的な攻撃の凄さでマルケスを脅かしましたが、
防御を含む総合的な力量では、どちらの試合でもマルケスが上、という印象を持ちました。
初戦はパッキャオが初回三度のダウンを奪いながら巻き返しを許し、
二戦目はマルケスがサウスポーの左強打を受けずに済む位置取りをしているところを、
常識外れの肩のひねりを効かせた左でダウンを奪っておきながら、
またも巻き返しを許して僅差の判定に持ち込まれています。

ところがこの二戦目の次、ライト級に転じてデビッド・ディアスに圧勝した試合から、
パッキャオは目に見えて防御技術が向上し、右リードも多彩になり、
総合的に一段上のボクサーになりました。
頭の位置を立体的に変え、細かいステップによる繊細な位置取りをし、右リードが多彩になり、
コンビネーションパンチの緩急、強弱のつけ方が抜群に巧くなりました。
それまでのややもすると左強打に頼りがちだった彼とは別人のような、
それまでのスピードとパワーだけでなく、決め手を持ちながら布石の部分が充実した、
時代の最先端を行く、質の高い攻防一体のボクサーになりました。

今回の試合は、この技術面で成長したパッキャオが、かつて自分を苦しめたマルケスとぶつかった時、
以前の二試合とはまた違った形での激しいせめぎ合いが見られるのではないか、という期待があります。
大袈裟に言えば師匠と弟子のようだった両者の技術的な面で、弟子が師と肩を並べるのか、越えるのか。
或いは師が、まだまだ劣らぬというところを見せるのか。見所の多い試合になりそうです。



後は、この一戦に賭ける、マルケスの闘志にも注目でしょうね。

過去二試合の、いずれも僅差で勝利を逃した結果に、マルケスは納得していない旨を
再三語っているようですが、彼には、自分自身のボクシングに対する揺るぎない誇りがあり、
それが現在の彼を支えているのでしょう。
年齢的に、もう若くはなく、メイウェザー戦ではひたすら苦境に耐え続け、
カツディス戦でも激闘を繰り広げ、この二試合で続けてダウンしている現状は、
けっして明るいとは言えません。

それでもなお、このパッキャオ戦に賭ける意気込みがあるからこそ、
彼は闘い続けていられるのでしょう。
この一戦において、ここまで彼を支えてきた誇り、闘志がどのような形で表現されるのか。
そして、どのような結末が待っているのか。

ひとつだけ確かなことは、この試合の内容と結果がどうあろうと、この試合は真に世界の頂点を争う
数少ない真の王者、英雄同士の激突であり、闘われずには済まない、
闘われなければならないものである、ということです。
過去の二試合の内容を見るだけでそれは充分に証されている、と私は思っています。

現在、ライト級最強と目されるメキシカンと、
米大陸のボクシングマーケット史上初のアジア人スーパースター。
126ポンド、130ポンドで闘ったこの両者の、3度目の対決。
過去に類例無き、比較する事例の無いマッチアップです。



こういう試合をまたまた生中継で見られる、毎度同じことを繰り返しますが
有り難いことであります(^^)日曜日が楽しみですね。




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