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22日23日にパリで開催されていた「新しい世界金融協定」に向けたサミットについて

2023-06-26 10:15:08 | 環境問題
2日間にわたり、40人の国家元首と1500人にのぼる参加者が集まり「新たな世界金融協定に向けたサミット」が金曜日にパリで終了した。

閉幕記者会見で、サミットを主催したマクロン大統領は「この2日間で、我々は地球の為の新たな合意を構築することが出来た。我々は国際金融構造とガバナンスの抜本的な改革に向けた道筋を構築する、共通の政治的見解を詳述する文書を作成した」と述べ、不平等との戦い、そして気候変動への対応という我々が直面している二重の課題に対し、大きな転換点になったと主張している。

先日の記事「今年11月末からドバイで開催のCOP28会議の意義について」の直後に早速マクロン大統領がドイツのボン会合を引き継ぐようにパリで開催した2日間にわたる会合の要点を紹介したい。

出典はDeutsche Welle;Pakistan Dawn; Capital News Kenya。

今回のサミットの成果だ、と主張されている部分を中心に、そして指摘される問題点も紹介したいと思います。
そして普段彼らの意見を読む機会がすくないと思い、ケニアのWilliam Ruto大統領の話を最後につけています。

〔成果と主張されている部分と指摘される問題点〕
1. 1000億ドル規模の特別引き出し権(Special Drawing Rights, SDR)を途上国へ移転
SDRとは、IMFが保有する通貨へのアクセスを途上国に提供し、通貨と交換ができる権利のこと。途上国にこの権利の移転が可能となる状況が生まれたことを、パリに本拠をおく気候ベンチャーキャピタルのIsabelle Albertさんは、今回のサミットの具体的な成果の一つと指摘している。

2. サミットの参加者らは、途上国の気候変動対策を支援する1000億ドルを拠出する2015年設定の目標が今年達成される可能性が高いことを予測している。

3. 多国間開発銀行(Multilateral Development Banks, MDB)の融資能力の拡大
今後10年間で、バランスシートが最適化され、より多くのリスクが取られることが予想されることから、多国間開発銀行(MDB)の融資能力が全体的に増加し、2000億ドル規模になるとの予測が為されている。今後の改革が実施されるとMDBはより多くの資本が必要と見込まれ、より多くの資金を注入する必要性のあることを富裕国が初めて認めている。

4. ジャストエネルギー移行パートナーシップ(Just Energy Transition Partnership, JETP)
これまで大半の資金提供は特定のプロジェクトに向けられてきた。より大きい効果を資金提供に持たせるにはより体系的なアプローチが望ましいと考えられ、ジャストエネルギー移行パートナーシップ(Just Energy Transition Partnership, JETP)の取り組みがその第一歩だった、と捉えられている。
 このJETP投資スキームでは、富裕国は化石燃料に依存する途上国を支援してクリーンエネルギーへの転換を図り、そして転換過程で生じる社会的影響に対して手当てするというものである。2021年11月以降、南アフリカ・インドネシア・ベトナムの3つのJETPが締結され、セネガルが今回のパリサミットで4番目のJETP国となった。

5.2020年に債務不履行となっていたザンビアの63億ドルの債務の再編についての合意
この件でアメリカと中国とが、長らく対立していた。この件で大半の債権をもつ中国は世界銀行やIMFなどの金融機関に対し、損出の一部を吸収するように求めているが、金融機関や西側諸国はこれに反対している。

6.今回のパリサミットの大きな成果として、富裕国側が、途上国も意思決定プロセスに加わることが重要であることに理解を示したことだと、気候経済委員会委員長のロレーヌ大学Damette教授が言っている。

7.Damette教授を始めとして多くの人が、特にアメリカとG7が主導している世界銀行とIMFが現在の差し迫った課題に取り組む組織としては不適格になっているとして、広範な改革が必要だとしている。殊にトップダウンアプローチ手法の両組織の体質が問題視されており、パリに本拠地を置くシンクタンク気候経済研究所のClaireI Eschelierさんもボトムアップの手法が合理的としている。

8.今後10年間で、多国間開発銀行(MDB)の融資能力が全体的に増加し、2000億ドル規模になるとの予測が為されており、したがって富裕国がより多くの資金をMDBに注入すると見込まれている。この件に関し一部の気候変動活動家にはこの構図に批判的な人もいる。例えば気候アクションネットワークインターナショナルのHarjeet Singhさんは「気候変動対策を強化するには多額の財源が緊急に要求されることは理解できるが、現在の構図は民間投資に偏りすぎている」と指摘している。

9.Wind CapitalのAlbertさんは、パリサミットは正しい方向への第一歩ではあるが今後我々が公正な移行を確実に達成できるかどうかは、今後の数カ月、数年の行方を注視する必要があるとしている。今回の合意が今年末のドバイCOP28の成功につながるよう期待したいと述べている。

次いでパリサミットにも参加したケニアのWilliam Ruto大統領の話を紹介する。出典はCapital News Kenyaからです。

Ruto大統領は先ず世界的な融資システムが不公平であり、懲罰的なものであり、全ての人に公平なチャンスを与えるものでないと、主張する。現在、貧困国はリスクの大きい借り手と位置付けられ、富裕国より8倍高い金利を設定されている、という。

それでも彼は「ケニアは施しの資金援助は望まない」とした上で、次のように語る。
「人は平等な存在だとする構図・絵柄を好まない人々も居る。そういう人は得てして我々アフリカ人は絶えず支援が欲しいと言い続ける状況の続くことを願うものである。だが我々は“気候変動の被害者だ”や“施しを”といった不平をいう話には飽きあきしているのだ。」 「我々アフリカ人は支援を望むのではなく、気候変動を含めて現在の課題解決に関与したい。」
 
またRutoさんは、ケニアが開発援助よりも民間投資を呼び込むことを望み、そしてIMFと世界銀行の改革を要求している。そして途上国の債務管理の再考を支持し、海上輸送と航空輸送及び金融取引に対する国際税の導入を支持している。
 
ケニアは債務返済に年間100億ドルを支払っている。もしもこれを国の発展に使えるならば、これは迅速に利用可能な、とても大きい国の資源となり、莫大な効果を発揮するものになるだろう、とした上で、世界銀行やIMFを含む国際金融機関に借りている借金が20年間猶予付き50年ローンに変換されさえすれば、この我々の希望する構図は実現可能なのである、とRutoさんは主張している。ケニアの希望する構図は、借金から逃げ出すのではなく、返済スケジュールの変更を指摘しているのである。

アフリカの人々の中にはロシア進攻後、ただちにウクライナに数10億ドル規模の支援が実施される一方で気候変動問題に対する富裕国側の鈍さに苛立ちをしめす動きも見られる。Rutoさんも「ウクライナは我々が直面している気候変動という問題に比して大きいものではなく、我々は他の全ての問題を脇においてでも気候変動に一致して対処すべき」としている。
 
Rutoさんはアフリカの気候変動問題に関して強力な姿勢をもっていて、9月初旬にケニアでアフリカ気候サミットを主催する意向である。
  
Rutoさんは、気候変動対策の請求書の支払いは富裕国だけとする考えには同調しない。我々全員で支払いたいとしている。その理由は、我々は現在の気候変動問題に緊張感を持ち続けていたいし、炎上する世界に常に目を向けていたし、そして関与し続けていたいからである。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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