老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

トランプ革命の序章

2017-02-02 09:33:53 | アメリカ
今や、日本のメディアは、トランプ大統領に占領されているといって過言ではない。今日は何の大統領令だ、今日のツイッターではこう呟いていた。トランプでなければ夜も日も明けない状態。どうやらこれは日本だけではなく、米国は当然だが欧州も中東もそうらしい。世界中がトランプに振り回されている。

この情況、トランプ大統領本人から見ると、きわめて気持ちが良いと思う。『権力』とはこういうものか、と酔いしれているのかも知れない。小沢一郎が「権力者は、権力行使を抑制的にしなければならない」と述べていたが、トランプの権力行使のありようを見れば、小沢の言の正しさが理解できる。

同時に、トランプが矢継ぎばやに出す大統領令は、日本でいう官僚機構による細部にわたる精緻な検討なしに出されているため、きわめて杜撰な一面がある。その代表格が世界中の批判を招いた中東7ケ国の入国禁止令であろう。

TVに出ている学者・評論家などの連中はこの杜撰さは批判するが、『権力行使を抑制的に行うことこそが、民主主義の要諦』など誰も語らない。彼らはトランプの権力行使にただただ唖然としているだけである。トランプ大統領の派手な権力行使は、民主主義という制度のもろさ・危うさを身を持って教えてくれている。

TVを占拠している御用学者・御用評論家などの電波芸者たちには全く見えていないだろうが、日本の安倍晋三とその取り巻きどもの『節度のない権力行使』もトランプと同じである。トランプほどの派手さはないけれど、その影響力は甚大である。『節度のない権力行使』は民主主義という制度を根底から揺るがし、危機的状況に陥れる、というのは同じである。トランプ劇場を報じる価値は、そこにしかない。

では、トランプ大統領の歴史的意味とは何なのだろうか。現在展開されているトランプ劇場を冷静に眺めていると、世界史の大きな【パラダイム チエンジ】が行われつつあると感ぜざるを得ない。

加藤哲郎氏は以下のように述べている。

「20世紀パクス・アメリカーナ、現存社会主義・冷戦崩壊とは何であったのか、グローバル自由主義経済とカジノ資本主義のもとでの「成長」が、本当に唯一の選択肢なのか。日本国内でも、本当に天皇制は必要なのか、日米安保と自衛隊と日本国憲法は本当に両立可能なのか、過労死まで生み出す私達の働き方が「国民性」などではなく福祉とセーフティネットの欠如により追い込まれた生活様式ではないか、アメリカとの「和解」で築かれる「同盟」とは所詮は「軍事同盟」であり、周辺諸国との「和解」も「固有の領土」の主張も困難にするものではないか、と。もう一度、この100年の歴史を、見直す必要があるのではないか、と。 」・・加藤哲郎(ネチズンカレッジ)http://members.jcom.home.ne.jp/tekato/home.html

このように、自らを省みるこの視点のない政治評論、トランプ評論など糞の役にも立たない。

トランプの大統領就任演説で注目しなければならないのは、

・・「ずっと前から、ワシントンDCの小集団・エスタブリッシュメントだけが儲け、あなたたち米国民は失業や貧困にあえいでいる。だが今日からは違う。米政府はあなたたち米国民のものだ。(トランプが主導する)この運動は、米国の国家を(エスタブ小集団の支配から解放し)、米国民のための存在に変えるためにある」・・
という一節である。

この一節を、トランプの米エスタブリッシュメントに対する『革命宣言』と読まなければ、トランプの歴史的意味を理解できない。

よくよく考えれば、米国大統領は、ワシントンDCの小集団に属するエスタブリッシュメントそのものである。彼は、そのエスタブリッシュメントをぶっ壊し、国民の手に取り戻すと言っている。自らの立脚する足場(権力基盤)をぶっ壊すというのである。これを『革命』と呼ばずして何を『革命』と呼ぼうか。このトランプ演説を聞いて、「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎と酷似していると感じた人も多いかもしれない。

自己中心主義で自己顕示欲の塊のようなトランプの強烈な個性と相まって世界中が連日繰り出される『大統領令』に振り回されるのも無理はない。ワシントンDCの支配体制存続を自明の前提として存在している米メディアや日本メディア連中に全く理解できないのも無理はない。彼らの『常識』が全く通用しない『エイリアン』がトランプという人物なのである。

米国でも日本でもそうだが、権力をつかむまでは過激な事を言っていたが、権力を持つと、エスタブリッシュメントと適当な所で手を打ち、落とし所を見つけ、権力保持を最優先するのが人の常。多くの人がトランプもそうであろうと期待したが、どうやら、トランプ大統領はそうではなさそうである。このあたりが、小泉純一郎との違いのような気がするが、まだ明確には分からない。

そうは言っても、トランプ大統領はかなり直情径行のきらいがあり、今回の入国禁止令のように、彼の打つ手はかなり乱暴で矛盾に満ちている。だから、彼が成功するためには、きちんとしたグランドデザイン(絵図)を描ける人物を必要とする。

トランプ大統領の背後に、キッシンジャー元国務長官がいるのではないか、という噂が絶えない。

キッシンジャー自身の中国訪問と習近平との会談。それに合わせて、中国が激怒し大慌てしたトランプの台湾の蔡英文総統への電話。米国が『一つの中国政策』を見直すのではないか、という構え。それと同時に、ロシア政府と太いパイプを持つ石油企業エクソン・モービルの会長兼最高経営責任者レックス・ティラーソン氏を国務長官に推薦したのも、キッシンジャーのアドバイスと言われている。

一体全体何が狙いなのか良く分からない複雑な外交駆け引き。これこそが、キッシンジャー流外交術だ。

おそらく、キッシンジャーの頭の中には、ロシア・中国・EUという大陸国家(ユーラシア大陸の大半を占める)がタッグを組む事への怖れがある。これらの国がタッグを組めば、米国の覇権は地に落ちる。大陸国家が完全にタッグを組む事は何としても阻止しなければならない。同時に、米国の一国覇権主義も捨てなければならない。

キッシンジャーの頭の中には、おそらく覇権の多極化がある。評論家田中宇のいう『多極主義者』である。覇権の多極化こそが、『世界戦争の惨禍』を免れる唯一の手段だと彼は考えている。

その為に、米・中・露の三国間をつかず離れずの関係に置くために、ロシアとは友好関係を結び、中国とは適度の緊張関係を置きながら、経済関係では良好な関係を維持する。EUに対しては、EUの内部対立を煽り、同時にEUとロシアとの適度な緊張関係も煽る。その事を通じてEU諸国に米国の袖を引かせる。こんな複雑な多元方程式を解けるのは、キッシンジャーのような卓越した頭脳と老練な外交手腕がいる。

今では、キッシンジャーの業績をきちんと認識している人も少なくなった。しかし、彼はニクソン政権の大統領補佐官としてベトナム戦争から脱するため、 米国の敵である旧ソ連と中国の間に楔を打ち込み、米中が手を組むことで旧ソ連を孤立させ、 同時に旧ソ連ともデタント(緊張緩和)を行って危機からの転換を図った。 それくらいベトナム戦争は、戦後米国が直面した大きな危機だった。

このような芸当は生半可の外交手腕で出来る事ではない。キッシンジャーはパパブッシュ政権時の湾岸戦争でも、旧ソ連の支持を取り付け、米国は国連軍の一員として行動した。戦争目的も、イラクのクウエート侵攻阻止に限定した。キッシンジャーは常に『大義名分』を大切にし、あらゆる手段を講じて、戦争を遂行するための環境作りを考えていた。

その後のクリントン政権は、コソボ紛争時『人道目的』で空爆を行い、国連の支持なしの有志連合で戦争を行った。問題は、『人道目的の戦争』にある。『人道』を正面に掲げる以上、米国は『人道の守護者』という『正義』の仮面をかぶらざるを得ない。当然ながら、『悪』のレッテルを貼られた敵は、非常に反発する。この種の戦争は、勝つても負けても、大きな恨みと亀裂を残す。米国の戦争は大きく変質したのである。

旧ソ連の軍事同盟ワルシャワ条約機構解体時、パパブッシュは 西側の軍事同盟NATOを旧ソ連の支配圏には拡大しないと約束した。しかし、クリントン大統領は『民主主義という正しい価値観』を広げるためNATOの東方拡大に着手した。現在問題になっているウクライナ問題、クリミア併合などの問題の淵源はここにある。また、安倍晋三が馬鹿の一つ覚えのように語る『価値観外交』という理論の原点もここにある。

このNATO拡大の政策は、ロシアの大きな反発を招き、プーチン大統領が誕生した。この結果、ロシアと中国の結束が強まった。また、フランスや欧州各国に米国は『世界の警察官』なのか=(正義・不正義を決めるのは米国なのか)という反発を招いた。

※ネオコンに影響されたブッシュ(子)政権はさらに強硬に民主主義を世界に拡大しようとして、アフガンニスタンとイラクでベトナム戦争以上の泥沼にはまり込んだ。

アフガン戦争やイラク戦争時のブッシュ政権の戦争目的を思い出せばすぐ理解できるが、【自由】【民主主義】【正義】などという言葉が数多く語られている。『価値観外交』の延長線上に米国の戦争目的が掲げられ、その独善性が強調されればされるほど、兵士の戦場における残虐行為が増幅される(イラク・ファルジャなどの行為)。その結果、敗者に深い恨みを増幅させ、それがテロ行為として表現されたのである。
※「ネオコン」 https://sites.google.com/site/uranenpyou/home/neo-conservatism

オバマ大統領は、中東から米軍を撤退させるのが公約の政権だった。強大化する中国をけん制するための『リバランス政策』を提唱。アジアに外交に重心を移そうとした。 しかし、ネオコン連中に足をすくわれ、シリア問題やクリミア併合などでロシアプーチン大統領との対立が先鋭化。その結果、中露の結束がさらに強まった。中国は軍事面では、上海機構を通じ、ロシアなどとの連携を深め、経済面では欧州との関係を深め、特にドイツとはきわめて親密な関係を構築している。

キッシンジャーの目的が何かは明確ではないが、クリントン政権以降のネオコンに牛耳られた米国の外交目的の変更が主要な一つである事は容易に想像がつく。わたしがいう大きな【パラダイム チエンジ】が行われようとしている。

このような【パラダイム チエンジ】を実行するには、上品で常識的な政治手法ではできない。トランプのような喧嘩を厭わない無茶苦茶なエネルギーが必要になる。私流に言うならば、『荒れた学校』を立て直すためには、多少の『緊急避難的手法』が必要になるのである。

ここで、もう一度、トランプ大統領の就任演説を想起してみる。
・・「ずっと前から、ワシントンDCの小集団・エスタブリッシュメントだけが儲け、あなたたち米国民は失業や貧困にあえいでいる。だが今日からは違う。米政府はあなたたち米国民のものだ。(トランプが主導する)この運動は、米国の国家を(エスタブ小集団の支配から解放し)、米国民のための存在に変えるためにある」・・

わたしは、案外、トランプは本気だと考えている。

こんな事を実行するためには、ワシントンDCのエスタブリッシュメントが納得するようなお上品で常識的な手法では不可能。彼らが眉をひそめるような乱暴で下品なやり方以外ない、とトランプは考えているのではないか、と思う。ヒラリー・クリントンには、逆立ちしても出来ない芸当である。

さはさりながら、トランプは乱暴すぎるきらいがある。彼が『権力行使』の心地よさに酔ってしまうと、足をすくわれる可能性が高い。ジョージ・ソロスが、トランプ打倒を公言していたようだが、ウクライナ旧政権打倒の陰にソロスがいたことは、公然の秘密だ。彼の資金が反トランプ運動に相当注ぎ込まれる事もあるだろう。どうやら、この半年ほどが、トランプ政権存続のカギになると思う。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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