前回の続きです。代表的な残りの3種Pfizer品、Moderna品、そしてJohnson&Johnson品を紹介します。
Pfizer-BioNTech COVID-19 ワクチン
mRNAを利用するワクチンであり、Oxford-アストラゼネカのアデノウィルスにスパイク蛋白質を組み込む方式とは異なる。
1. 独のBioNTech開発のワクチンを米Pfizerが臨床テスト、量産化研究等のその後の開発協力に参画している。中国の企業Fosunも協力関係にある。
Fosunから1.35億ドル(2020年3月)、Pfizerから1.85億ドル(2020年4月)、ECおよびヨーロッパ投資銀行から1億ユーロ(2020年9月)、独政府から3.75億ユーロの支援を受けている。
2. 新型コロナウイルス、SARS-CoV-2,のスパイク蛋白質の設計図になるmRNAをナノサイズで脂質内にカプセル化したワクチンである。接種で体内に入ったmRNAを基にウイルスのスパイク蛋白質が産生され、それを中和する抗体の産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで予防効果が出る仕組み。
2020年に開発されたmRNA型ワクチン2種の一つで、他はModernaワクチンである。
利点として感染性がない事、細胞成分等の混入がないこと、アジュバントが必要ない事、比較的簡便で安価であるとされる。
欠点としては安定性が低いこと、強い副反応、翻訳発現効率の問題が挙げられている。
3.臨床テストは2020年4月スタート、11月に4万人対象のPhaseIII、有効性は91.3%。
主な副作用は接種付近の痛み、疲労感、頭痛が挙げられている。アレルギーのような重篤な副作用は少ないとされる。
4.2020年12月英が緊急使用許可申請に対し最初に承認。米・EUおよび他の国が追随承認。
5.Pfizer-BioNTechは2021年中に20億回分の生産予定を25億回分に修正している。
6.中国ではFosunが製造販売。
7.Pfizerは約30億ドル投資して米・EU・英・日・カナダ・ペルー・シンガポール・メキシコへのライセンス獲得。
8.日本では2021年2月14日にPfizer-BioNTechワクチンが国内承認され、17日から接種開始。4月6日時点で128万人強が接種済みで、うち副作用症例は100万件当たり81例とされている。日本政府は年内に1億4400万回分(7720万人分)の供給予定の契約済。
MODERNAワクチン
1.米ケンブリッジに本拠の医薬探索及び開発、mRNAによるワクチン技術に特化する企業であるModerna Inc.が開発の修飾ヌクレオシド型mRNAを脂質でマイクロカプセル化したワクチン。
2.Modernaは候補ワクチン、mRNA-1273がPhaseIIIで流感冒様の副反応がわずかに見られるものの有効率94%との初期報告。
3.この初期結果に基づきヨーロッパ・米・カナダは緊急使用許可を認める方向性が出た。2020年12月18日に米FDAは緊急使用を許可し、23日にカナダ、翌2021年1月6日EUで、同8日英で緊急使用許可がなされた。
4.厚生労働省は2020年10月29日武田薬品・Modernaと3者契約を結び、開発成功の場合に2021年前半から計5000万回分(2500万人分)供給される予定。武田が国内の承認申請し輸入販売を行う。5月にも承認される予定。
5.Modernaは2022年の全生産量の目標を14億回分に増やすとしている。
6.武田は2021年3月5日厚労省にModernaワクチンの輸入販売の申請を行う。
Johnson&Johnsonワクチン
オランダ LeidenのJannsen製薬(米Johnson&Johnsonの子会社)が開発したワクチン。Oxford-アストラゼネカのワクチンと同じタイプ。SARS-CoV-2のスパイク蛋白質を誘導する遺伝子を組み込んだ人アデノウイルスをベースにしたウイルスベクターワクチン。
J&Jは同じ技法でエボラワクチンを作り実用化しており、EMA(EuropeanMedicinesAgency、新薬を検討するEUの組織)に実績を持っている。
1. 摂氏2~8℃の冷蔵保管でよく、凍結保管の必要がない、一回の接種でOKのワクチン。
PhaseIIIの臨床試験は2020年6月に始まり、Janssenは2021年1月29日症状発現を66%抑制、重症化を85%抑制、入院予防や死亡の抑制については有効性100%と発表。
主な副作用は接種場所の痛み、頭痛、疲労感、筋肉痛とむかつきで、接種後1~2日以内に起こる。
2.2021年2月、米FDAがJ&Jワクチンに対し緊急使用許可を与える。
条件付き使用許可がEMAから与えられている。
3.日本では、国内で治験を実施中。武田がまたJ&Jに対し武田の外注先の独医薬企業の生産施設の提供を申し入れている(2021年3月16日)。
4.ニューヨークタイムズは2021年4月1日J&Jの生産委託会社で人為ミスが発生し、これにより今後の生産出荷のスケジュールに影響が出るとの報道もあり、混乱が見られる場面もあるが、今後の予定ではJ&Jは6月末までに1億回分を国内向けに、そして年内10億回分の生産を予定。J&Jのオランダ工場での生産のほか、米製薬大手のメルクも生産支援を予定している。
5.インド国内の最近の感染拡大によりインドでワクチン不足が起こっている。この状況をかんがみ、J&JはJ&Jワクチンをインドで早急に使用できるようテストの依頼をインド政府に要請をした(2021年4月9日付けDAWN情報)と報道。
6.EMAはJ&Jワクチンの血栓との因果関係について検討を始めている、と報じられる。
JanssenのCovid-19ワクチン投与後に4例の重篤の異常血栓症状が見られたとの報告に基づく、とEMAが金曜日発表(By Deutsche Welle4月9日)。
緊急使用許可制度を採用せざるを得ない現在、安全性とパンデミック抑制のための緊急性との綱引きの現状から避けられない混乱がまた起こっていると言える。
アストラゼネカワクチンでも同様の指摘・混乱が見られている。
7.4月現在、J&Jワクチンは緊急使用許可のもと、米でのみ使われている。
EUは3月に使用認可しているが、メンバー国は実際の使用はまだで、あと数週は使用開始まで掛かりそうと見られている(By Deutsche Welle,4月9日)。
次回はロシア製ワクチンと中国製ワクチンについて調査し報告してみます。
専門家でない人間が、難解な上、かなりの量のニュースソースの中から勘を頼りにした情報を基にまとめたものですので、大きな間違いがあるかもしれません。なるべく当たり障りない正しそうな情報を系列化して分かりやすくしたつもりです。
普通の市民がこのコロナ禍で対面するだろう各種のニュースに接した時に少しでも理解に役立つように、良く出る組織名やその役割立場、そして世界がパンデミックの淵に脅えつつ安全性と緊急性のはざまで努力している現状を示すことが出来れば、と思ってのものです。
「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
yo-chan
Pfizer-BioNTech COVID-19 ワクチン
mRNAを利用するワクチンであり、Oxford-アストラゼネカのアデノウィルスにスパイク蛋白質を組み込む方式とは異なる。
1. 独のBioNTech開発のワクチンを米Pfizerが臨床テスト、量産化研究等のその後の開発協力に参画している。中国の企業Fosunも協力関係にある。
Fosunから1.35億ドル(2020年3月)、Pfizerから1.85億ドル(2020年4月)、ECおよびヨーロッパ投資銀行から1億ユーロ(2020年9月)、独政府から3.75億ユーロの支援を受けている。
2. 新型コロナウイルス、SARS-CoV-2,のスパイク蛋白質の設計図になるmRNAをナノサイズで脂質内にカプセル化したワクチンである。接種で体内に入ったmRNAを基にウイルスのスパイク蛋白質が産生され、それを中和する抗体の産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで予防効果が出る仕組み。
2020年に開発されたmRNA型ワクチン2種の一つで、他はModernaワクチンである。
利点として感染性がない事、細胞成分等の混入がないこと、アジュバントが必要ない事、比較的簡便で安価であるとされる。
欠点としては安定性が低いこと、強い副反応、翻訳発現効率の問題が挙げられている。
3.臨床テストは2020年4月スタート、11月に4万人対象のPhaseIII、有効性は91.3%。
主な副作用は接種付近の痛み、疲労感、頭痛が挙げられている。アレルギーのような重篤な副作用は少ないとされる。
4.2020年12月英が緊急使用許可申請に対し最初に承認。米・EUおよび他の国が追随承認。
5.Pfizer-BioNTechは2021年中に20億回分の生産予定を25億回分に修正している。
6.中国ではFosunが製造販売。
7.Pfizerは約30億ドル投資して米・EU・英・日・カナダ・ペルー・シンガポール・メキシコへのライセンス獲得。
8.日本では2021年2月14日にPfizer-BioNTechワクチンが国内承認され、17日から接種開始。4月6日時点で128万人強が接種済みで、うち副作用症例は100万件当たり81例とされている。日本政府は年内に1億4400万回分(7720万人分)の供給予定の契約済。
MODERNAワクチン
1.米ケンブリッジに本拠の医薬探索及び開発、mRNAによるワクチン技術に特化する企業であるModerna Inc.が開発の修飾ヌクレオシド型mRNAを脂質でマイクロカプセル化したワクチン。
2.Modernaは候補ワクチン、mRNA-1273がPhaseIIIで流感冒様の副反応がわずかに見られるものの有効率94%との初期報告。
3.この初期結果に基づきヨーロッパ・米・カナダは緊急使用許可を認める方向性が出た。2020年12月18日に米FDAは緊急使用を許可し、23日にカナダ、翌2021年1月6日EUで、同8日英で緊急使用許可がなされた。
4.厚生労働省は2020年10月29日武田薬品・Modernaと3者契約を結び、開発成功の場合に2021年前半から計5000万回分(2500万人分)供給される予定。武田が国内の承認申請し輸入販売を行う。5月にも承認される予定。
5.Modernaは2022年の全生産量の目標を14億回分に増やすとしている。
6.武田は2021年3月5日厚労省にModernaワクチンの輸入販売の申請を行う。
Johnson&Johnsonワクチン
オランダ LeidenのJannsen製薬(米Johnson&Johnsonの子会社)が開発したワクチン。Oxford-アストラゼネカのワクチンと同じタイプ。SARS-CoV-2のスパイク蛋白質を誘導する遺伝子を組み込んだ人アデノウイルスをベースにしたウイルスベクターワクチン。
J&Jは同じ技法でエボラワクチンを作り実用化しており、EMA(EuropeanMedicinesAgency、新薬を検討するEUの組織)に実績を持っている。
1. 摂氏2~8℃の冷蔵保管でよく、凍結保管の必要がない、一回の接種でOKのワクチン。
PhaseIIIの臨床試験は2020年6月に始まり、Janssenは2021年1月29日症状発現を66%抑制、重症化を85%抑制、入院予防や死亡の抑制については有効性100%と発表。
主な副作用は接種場所の痛み、頭痛、疲労感、筋肉痛とむかつきで、接種後1~2日以内に起こる。
2.2021年2月、米FDAがJ&Jワクチンに対し緊急使用許可を与える。
条件付き使用許可がEMAから与えられている。
3.日本では、国内で治験を実施中。武田がまたJ&Jに対し武田の外注先の独医薬企業の生産施設の提供を申し入れている(2021年3月16日)。
4.ニューヨークタイムズは2021年4月1日J&Jの生産委託会社で人為ミスが発生し、これにより今後の生産出荷のスケジュールに影響が出るとの報道もあり、混乱が見られる場面もあるが、今後の予定ではJ&Jは6月末までに1億回分を国内向けに、そして年内10億回分の生産を予定。J&Jのオランダ工場での生産のほか、米製薬大手のメルクも生産支援を予定している。
5.インド国内の最近の感染拡大によりインドでワクチン不足が起こっている。この状況をかんがみ、J&JはJ&Jワクチンをインドで早急に使用できるようテストの依頼をインド政府に要請をした(2021年4月9日付けDAWN情報)と報道。
6.EMAはJ&Jワクチンの血栓との因果関係について検討を始めている、と報じられる。
JanssenのCovid-19ワクチン投与後に4例の重篤の異常血栓症状が見られたとの報告に基づく、とEMAが金曜日発表(By Deutsche Welle4月9日)。
緊急使用許可制度を採用せざるを得ない現在、安全性とパンデミック抑制のための緊急性との綱引きの現状から避けられない混乱がまた起こっていると言える。
アストラゼネカワクチンでも同様の指摘・混乱が見られている。
7.4月現在、J&Jワクチンは緊急使用許可のもと、米でのみ使われている。
EUは3月に使用認可しているが、メンバー国は実際の使用はまだで、あと数週は使用開始まで掛かりそうと見られている(By Deutsche Welle,4月9日)。
次回はロシア製ワクチンと中国製ワクチンについて調査し報告してみます。
専門家でない人間が、難解な上、かなりの量のニュースソースの中から勘を頼りにした情報を基にまとめたものですので、大きな間違いがあるかもしれません。なるべく当たり障りない正しそうな情報を系列化して分かりやすくしたつもりです。
普通の市民がこのコロナ禍で対面するだろう各種のニュースに接した時に少しでも理解に役立つように、良く出る組織名やその役割立場、そして世界がパンデミックの淵に脅えつつ安全性と緊急性のはざまで努力している現状を示すことが出来れば、と思ってのものです。
「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
yo-chan