老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

カタログハウスの学校「昭和史・日本国憲法こぼれ話」

2007-01-21 21:28:48 | 憲法
昨日(1/20)行われた表題の講演会に行ってきました。講師は、作家・昭和史研究家の半藤一利さん。ベストセラーとなった著書「日本のいちばん長い日」は映画にもなり、ご存知の方も多いと思います。

敗戦からポツダム宣言受諾と新憲法誕生に関して、GHQ、天皇、当時の政府関係者や法学者たちがいつ、何を考え、どういう行動をとり、どんな役割を果たしたかについて、いくつものエピソードを挙げながらのお話で、とても興味深いものでした。特に印象に残ったエピソードを、いくつかご紹介します。
***
連合国は、戦争終結にあたっては、ポツダム宣言第六条にいう「この国の国柄(国体)を変える」ことを絶対条件としたが、その目的として「軍国主義を根絶すること」「自由主義的傾向をおおいに奨励すること」を主たる方針とした。

一方、天皇の扱いについて、連合国から天皇の戦争責任を問う声が高まったときに、マッカーサーはアイゼンハワーに「天皇を戦争責任で告発すれば、日本人の間に激しい動揺が起きる。天皇は日本のシンボルであり、天皇を裁けば日本は崩壊する」との書簡を送り、以後連合国において天皇の責任問題は霧消した。

それに対し、日本側は、幣原内閣によって任命された松本烝治ら憲法問題調査委員会のメンバーたちが、GHQからの新憲法草案の至急提出要請にもかかわらず、従来の基本を変えない草案作りを「慎重に、慎重に」行っていた。結果GHQ内部でホイットニーらによって憲法草案が作られることになった。 ☆この辺りの経緯については、気が進まないことは先延ばしにして、できればうやむやにすまそうとする体質はこの時代にもあったのかと、興味深いような情け無いような気持で聞きました。

マッカーサーは、ホイットニーらが作った草案を提示する際に、「この憲法草案を受け入れれば天皇の身柄は安泰」「占領終結も早くなるだろう」と日本政府にとってのメリットを伝えると共に、「これをもとに討議しなければこちらはこのまま国民に示し、国民の判断をあおぐ」とも言ったとのこと。「もし直接判断を仰いだなら、当時の国民は大歓迎しただろう」と半藤さんはおっしゃっていました。

結局、GHQから提示された草案をもとに国会では充分な議論がつくされ、その議論を経て投票。結果は賛成429票、反対8票(共産党)で新憲法草案は採択された。

確かに憲法はGHQから提示されたものだが、「当時国民の中に、大歓迎したに違いないと思わせる空気があった」という点、国会で審議を尽くしたという点から、「押しつけ論」は適切ではないというのが、半藤さんの見解でした。

***
講演の前に、半藤さんから、「この63年間に日本と戦争したことがない国は?」他10の問題が出されました。その中の、「太平洋戦争の戦闘員の戦死者は、陸軍165万人、海軍47万人とされる。このうち広義の飢餓による死者の比率は?」の答えは、なんと「70%」とのことです。「いかに戦略を持たない無謀な戦争であったかがこれでもわかる」と半藤さんはおっしゃっていました。

また「日本本土以外の外地での戦死者のうち、現在まだ遺骨が日本に戻ってきていない数は?」の答えは「100万人以上」。「政府は靖国に行く前に、遺骨収集に力をつくすべきではないか」というのが半藤さんの指摘でした。

***
カタログハウスの社長、斉藤駿さんは「戦略的護憲運動論」を展開していますが、その一環と思われる今回の講演会は、多分社員と思われる若い人たちが受付や議事進行をしていて、明るく穏やかな雰囲気のとても良い感じの会でした。

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 刑法の歴史から見た共謀罪の意味 | トップ | 「イラク開戦判断は誤り」久... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

憲法」カテゴリの最新記事