老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

刑法の歴史から見た共謀罪の意味

2007-01-21 16:01:09 | 共謀罪
共謀罪については批判が強いと言っても、30年前とは大分状況が変わっている。1974年政府の法制審議会は刑法改正草案を作成したが、弁護士会を中心とした反対運動が巻き起こり、改正草案は国会への提出も出来なかった。

その内容が憲法に適合的な刑法改正などではなく、今回の共謀罪にも通じる犯罪の予備罪などが盛り込まれ市民運動や労働運動の取り締まりに使用される惧れが懸念され、全体として現行刑法(明治年間に成立したものでけして近代法として標準的ではないし、古い思想が残っていた)よりも抑圧的であった。それでこの法制は見送られたのである。

今回の共謀罪は包括的な総合的なものであり、現行の刑法体系を破壊し、共謀という犯罪の相談だけで罪に問うという、現在の法体系(近代法の原理)を根底から動揺させる内容の刑法である。

日本法の歴史を視野に入れて再考すれば、刑法における「学派の争い」にまで遡ることができる。つまり、主観主義刑法と客観主義刑法の対立である。現行刑法は客観主義的だと言われているが、刑法の解釈においては主観主義的な解釈も可能であり、この学派によれば、犯罪の成立は行為者の主観が犯罪行為に現れれば犯罪が成立する、と考える。この主観主義刑法を徹底させれば共謀があっただけで犯罪が成立すると考えてもいいわけである。

戦前の日本はドイツの強い影響下にあり、刑法思想は特にそうだった。主観主義は少数意見であり、学会は客観主義が多数であった。判例も客観主義が主流だった。しかし、客観主義の内部でも対立は存在していた。刑法の解釈、つまり事案の解決では、国家的道義を中心に考えるのか、それとも自由主義的に解釈して、なるべく犯罪の成否を国家的な道義を基準にせず市民の自由を中心に置くのか、という対立である。

この自由主義的刑法の唱道者が滝川幸辰博士であり、この刑法思想が当時の政府や官僚から危険視され多くの人々を巻き込む滝川事件へと発展したのである。滝川事件(ウィキペディア)

こうした歴史を再考するとき、現在の政府・官僚がどういう方向へ国家をもって行こうとしているのか明瞭であろう。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
名無しの探偵

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