老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

サッカー狂騒曲の終焉

2014-06-25 14:09:35 | 社会問題
ワールドカップで日本サッカーが惨敗。予選敗退が決まった。メディア挙げてのワールドカップサッカー狂騒曲が終わった。

今回の敗戦。日本国内でも心あるサッカー解説者は予測していた。辛口で知られるセルジオ越後などは、昨年のコンフェデ杯の当時から、ザッケローニ監督の采配に対する批判、チーム作りのコンセプト批判を繰り返していた。海外サッカーでは、メディアの厳しい監督批判・采配批判・選手批判は当たり前。それを乗り越えて初めて一人前。メディアも批判するだけでは駄目で、批判するだけの知識・見識を厳しく問われる。選手・監督・協会・メディア・サポーター相互の批判力が、サッカーのレベルを向上させている。

わたしは、今回の敗戦は、ザッケローニ監督の日本や日本人の気質や文化に対する理解力の浅さにあると考えている。前回までの日本チームは、きわめて守備的なコンセプトで戦ってきた。相手チームの攻撃を最少失点に抑えて、少ない得点機会を生かす、という戦術で戦ってきた。ザッケローニ監督は、多少の失点は覚悟の上で、それ以上の得点を取る、という攻撃的チーム作りをしてきた。このコンセプト自体は間違っていないが、攻撃力というのは相対的なものだという認識が浅すぎた。つまり、相手チームによって、攻撃力はかなり減殺されるという点について認識が浅すぎた。

これは、ラグビーの日本チームHCエディ―・ジョンーズと比較すると良く分かる。ラグビーという競技、相手と真正面からぶつかり合う格闘技の要素が強く、彼我の体格差が勝敗を決める重要な要素になる。日本人はこの点で決定的なハンデを背負っている。この差は、サッカーの比ではない。エディー・ジョンズHCは、この点を深く認識して、【日本人の特性を生かしたラグビー】というコンセプトで、チーム作りをした。

では、【日本人の特性】とは何か。以下の四つの標語に凝縮されている。【速く】【激しく】【低く】【走り勝つ】。それぞれのローマ字の頭文字をとって、四Hと呼ばれる。

【速く】とは、日本人の特性である素早さ、小回りが利く、器用を徹底的に鍛え、生かすという発想。
【激しく】は、タックル・ブレイクダウンなどのコンタクトプレーで負けない、気後れしない、相手を圧倒する気迫を持つという精神面での強化。
【低く】は、スクラム・タックルで相手より低く組み、低くタックル(相手の膝より下)する事。外人コーチから言わせれば、日本人は足が短いから、スクラムに向いているという。
【走り勝つ】とは、日本人の筋肉繊維は、速筋繊維が少なく、遅筋繊維が多いという特性(マラソンなど長距離に向いている)を生かして、試合後半まで走りぬく。そうすれば、後半にスタミナを消耗した外国人チームに勝利できる。

言葉にすれば簡単だが、この特性を選手に意識させ、徹底的に鍛え上げているのが、エディー・ジョンズの凄さだ。

たとえば、スクラム。先日・イタリア代表とのテストマッチで、ヨーロッパ一・二の強さを誇るイタリア代表をスクラムで圧倒していた。スクラムの技術もさることながら、技術を支えるフィットネスを徹底的に鍛え上げた事が要因。代表選手は、合宿中毎日朝5時ごろからフィットネストレーニングをこなしていたといわれている。そして、このトレーニングは、国内のラグビーチーム全てで行われている。それだけ、エディ・ジョーンズの方針が、国内チームに浸透しているという証拠だ。

わたしはラグビーが大好きで国内の試合を何年も見ているが、エディー・ジョーンズがHC(ヘッドコーチ)に就任して以来、日本のラグビーが大きく変わった。どの試合も選手の動きが物凄く速くなり、激しさが半端でなくなった。ラグビーの質が変わった、と言っても過言ではない。ワールドカップ・ベスト8に進出するために、ラグビー界挙げて日本ラグビーの質向上に一丸となって取り組んでいるという証左なのである。

これがワールドカップの本当の意義だと思う。ラグビーの競技レベルを国際基準(グローバルスタンダード)まで引き上げるために何をどうしたら良いかを徹底的に考え、それをラグビー界挙げて取り組む。この姿勢が、ここ数年の日本ラグビーの質の向上を支えている。

ここで特筆すべきは、グローバルスタンダードに達するためには、【日本や日本人の特質を知り、磨きあげる】という発想を外人であるエディー・ジョーンズがとったという事である。わたしは、数年前、国際化とは、自らの足場を掘り続ける事によって初めて得られる、という趣旨の文を書いた事があるが、エディ・ジョーンズHCの方針は、まさに【自らの足場】を認識し、それを磨きあげるという王道を歩んでいると思う。

それに引き換え、ザッケローニ監督の方針は、【自らの特質を認識し磨きあげる】という強い意志とそれを実行するという強さが足りない。選手たちにもその自覚が足りない。ラグビー代表選手のようなひたむきな努力が足りない。

さらに最大の問題点は、メディアの狂騒曲。特に、NHKなどは、まるでサッカーチャンネル。ただただ、「日本が勝つ」という幻想をふりまくだけであった。その間に、日本の運命を変える大問題(集団的自衛権)が浮上しているにも関わらずである。いまや、巨大ビジネスに成長したサッカーとそれを取り込もうとするメディアの思惑が、【日本勝利】という幻想をふくらましたと言ってよい。

全ての事に共通して言えるのだが、【産業的なものに過剰に取り込まれたもの】は、全て腐敗堕落の誘惑にさらされる。今回のサッカーの敗北は、メディアの寵児として取り込まれた「協会・監督・選手・サッカー関係者」が本当の意味での地道な強化を怠り、世界のレベル(グローバルスタンダード)を見誤った結果である。

同時に、これは、東京都議会のセクハラ発言に象徴されるように、日本国内での身内の認識が、世界基準(グローバルスタンダード)に照らすと、そのあまりの落差に愕然とするという現実と通低している。

今回のサッカーの敗退は、その意味で日本や日本人が置かれている世界の位置を再認識・再確認させてくれた貴重な経験だと思う。

「護憲BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

コメント (2)
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