タウンミーティングをめぐるヤラセ、経費の水増し問題が連日、マスコミ報道でも報じられています。
タウンミーティングは小泉政権が誕生した2001年、首相就任直後の6月からスタートし、これまで延べ174ヶ所で開催されており、安倍政権へと引き継がれた後も、教育基本法改正を含む教育改革に関した内容で行われ続けてきたものです。
ところが質疑応答の中で、一般参加者による質問の多数が「さくら」を動員したヤラセによるものであることが発覚し、更にタウンミーティングに掛かった費用の項目に、通常あり得ない内容の経費が含まれていることも分かって、タウンミーティングの目的そのものが極めていかがわしいものであるのかが次第に明らかになりつつあります。
一言で言えば、「国民との対話」をスローガンに掲げ行なわれてきたタウンミーティングが、実は小泉改革と称する新自由主義政策を円滑に導入するための世論誘導のひとつの道具に過ぎなかったということです。
さすがに国会での政府に対する野党の追及を受けて国民の関心も高いため、マスコミ各社はこの問題を取り上げざるを得ないのか、新しい事実が明らかになる毎に一応の報道はしています。
しかしながら、これまでの報道では伝えられていない重要な問題があるのです。それは、政府がこのイベントの取り仕切りを依頼しているとされる広告代理店の存在です。これまでのマスコミ報道では政府がイベント開催にあたり広告代理店に依頼しているという点を報じているのみで、肝心の広告代理店の社名は一切報道されていないのです(注1)。
特に経費の水増し請求問題に関して言えば、政府がイベントの運営をほぼ丸投げしているという実態からすれば、その実行当事者である広告代理店に焦点が当てられるべきはずです。ところがこの点について、マスコミは当初報じていた広告代理店の存在すらまるでなかったかのように、この事実について無視(沈黙)を決め込み無理な報道を続けているのです。
本来、経費の水増し請求が行なわれていたのであれば、それを実際に行なっていた広告代理店へ取材攻勢をかけるのは当然のことです。ところが今回の件に関しては、野党から提供される情報を咀嚼して差しさわりのない部分のみを報道しているのがせいぜいといったところです。
イベントを指揮・監督していたのは役所・役人であり、この点については第一義的な責任の所在が政府にあることは当然のこととしても、実質的な運営を任されていた広告代理店との関係性を抜きにして、今回の問題の全体像を捉えることなど到底できないのです。
インターネット情報も含め一部では既に明らかになっていますが、小泉政権発足当初、タウンミーティングを仕切っていたのは日本最大の広告代理店、電通です。翌年から3年間は電通と朝日広告社が一般競争入札で、2社が交互に請け負っています。最近の3年間はなぜか朝日広告社のみが独占受注状態です。
注目すべきは最初のタウンミーティング受注で随意契約を交わした電通の介在でしょう。電通はタウンミーティング開催のみならず小泉内閣のメディア対策に深くかかわっており、当時社内にプロジェクトチームを作ってスピーチの仕方など細かなアドバイスをしたり、選挙でも相当な影響力を行使したと言われています。
タウンミーティングの経費水増し問題は、そうした政府自民党と密計・癒着の中で起こった事件であり、税金を食い物にした実態が隠されているのです。事実、タウンミーティング開催の発注がなぜ電通と朝日広告社の2社のみなのか、そこには他の例に漏れず談合が行なわれていたのではないかという疑惑も否定できません。
マスコミが電通の名を実名をあげて報道し、政府と広告代理店とが組んで密かに行ってきたメディア戦略の実態を明らかにしない限りは、この問題の本質に迫ることはできません。朝日広告社と密な系列関係にある朝日新聞社が躊躇するのは致し方ないとしても(それだけでも恥ずべきことなのですが)、マスコミ全般でそれが未だにできないでいるのは、やはり電通批判がマスコミ報道にとって最大のタブーのひとつであるからでしょうか。
(注1) 実に興味深い事例があります。
今日(12月2日)、産経新聞がウェブ速報(3時17分)で、タウンミーティングで事務局担当者である電通社員に最高で日当10万円が支払われていたと報じていたのです。社民党が内閣府に対して資料請求したことから明らかになったもので、産経新聞社の独自取材によるものではないにせよ、今回の問題で電通の社名を明らかにしたのはおそらくマスコミでは初めてではないかと思われます。
ところが2日の夕方には、記事そのものがなくなり1日に発信された「大手広告代理店」とした記事のみになっています。2日の記事自体が産経新聞社の公式ウェブ本体にはどこにも載っていないという実に不可思議な現象です。
まだ確認はしていませんが、おそらく2日の記事は新聞紙上に掲載されることもなく、幻の記事になってしまうでしょう。この間も他の新聞社では相変わらず「大手広告代理店」と社名を伏せるか、全く取り上げていないところがほとんどです。新聞社の今後の動向に注目したいと思います。
産経が電通の件を報じた記事がヤフー、グーなどのサイトで見ることができます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061202-00000001-san-pol
「護憲+BBS」「マスコミ報道を批評する」より
平和の鉄人