今回の集団的自衛権容認に伴う安全保障法制の大変革は、強引な手法だが、かなり綿密に練られた工程表で行われている。
①特定秘密保護法制定
②武器輸出禁止要件の緩和
③集団的自衛権の行使容認
④日本版NSC設置
⑤日米ガイドライン決定
⑥安保法制の大変革
※提出された戦争法案
○<国際平和支援法>(新法)
○<平和安全法整備法案>(現行法の改定)
○武力攻撃事態法
○重要影響事態法(現行・周辺事態法)
○国連平和維持活動協力法
○自衛隊法
○船舶検査活動法
・国際平和支援法新設、周辺事態法改定にともなうもの
現行では、周辺事態時の外国船舶への臨検を規定している。
○米軍行動関連特別措置法
・武力攻撃事態法改定にともなうもの
○特定公共施設利用法
・武力攻撃事態法改定にともなうもの
現行では、武力攻撃事態での、港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域及び電波の利用や規制について定めている。
○海上輸送規制法
・武力攻撃事態法改定にともなうもの
現行では、武力攻撃事態での日本の領海と周辺の公海において、日本に対する武力攻撃を行っている外国軍などの軍用品の海上輸送の規制について定めている。
○捕虜取り扱い法
・武力攻撃事態法改定にともなうもの
現行では、武力攻撃事態における捕虜等の拘束、抑留その他の取扱いに関し必要な事項を定めている。
○国家安全保障会議(NSC)設置法
・上記の各戦争法制の新設・改定にともなうもの。
この工程表の作成は、日本の官僚の得意技。かなり、綿密に練られている。しかし、【集団的自衛権】容認を閣議決定して、憲法を形骸化し、何が何でも米軍の戦争に徹底的にコミットしようというのは、日本の政治の発想にはない。こういう大胆な荒技を考えるのは、米国の戦争屋(ネオコン)の得意技。そう考えて、探すと、やはりあった。
第3次アーミテージ・ナイレポートである。以下、
「海上自衛隊幹部学校」公式HPにアップされた文章を引用する。
http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-033.html
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・日本への提言(9項目)
(1)原子力発電の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩である。原発の再稼動は、温室効果ガスを2020年までに25%削減するという日本の国際公約5を実現する唯一の策であり、円高傾向の最中での燃料費高騰によって、エネルギーに依存している企業の国外流出を防ぐ懸命な方策でもある。福島の教訓をもとに、東京は安全な原子炉の設計や健全な規制を促進する上でリーダー的役割を果たすべきである。
(2)日本は、海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護、さらにイランの核開発プログラムのような地域の平和への脅威に対する多国間での努力に、積極的かつ継続的に関与すべきである。
(3)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に加え、経済・エネルギー・安全保障包括的協定(CEESA)など、より野心的かつ包括的な(枠組み)交渉への参加も考慮すべきである。
(4)日本は、韓国との関係を複雑にしている「歴史問題」を直視すべきである。日本は長期的戦略見通しに基づき、韓国との繋がりについて考察し、不当な政治声明を出さないようにするべきである。また、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた協議を継続し、日米韓3か国の軍事的関与を継続すべきである。
(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等の民主主義のパートナーとともに、地域フォーラムへの関与を継続すべきである。
(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。
(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は「航行の自由」を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである。
(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。
(9)国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである。
~後略~
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どうでしょうか。現在、安倍内閣がしゃにむに実行している内容そのままである。ジャパン・ハンドラーと呼ばれるヨセフ・ナイやアーミテージたちのご指南の通りの政策を実行している。特に(1)の原子力発電を再開しろなどとよく言えたものだが、彼らの背後にいる産軍複合体や大企業などの存在を考えれば、納得がいく。安倍首相のホルムズ海峡での機雷除去へのこだわり方も尋常ではなかったが、(7)の提言を読めば、なるほどと合点がいく。
アーミテージレポートは一言でいえば、日本は米軍の手助けを本気でしなさい、という事。これが、「海上自衛隊幹部学校」のHPに堂々と掲載され、安倍政権は血眼になって、安保法制の改訂に挑んでいる。日本の属国化、隷属化は、一目瞭然だ。
今回の労働者派遣法の改正も、TPPの先取りだと考えれば、腑に落ちる。 企業がカネ儲けやすいようにし、労働者の働く環境をさらに劣悪化させようというわけである。以前にも書いたが、TPPの本質は、私的な組織である巨大資本が政府、議会、司法の上に置かれるという所にある。一言で言うと、国家統治と民主主義を破壊する協定である。この協定が発効しないうちに、国内法制を整備しておき、TPPの本質をばれないようにするというのが狙い。だから、何が何でも強行採決するだろう。
安倍政権が戦後最悪の米国隷従政権であることは、上記で明らかだが、さらに安倍政権の危険な本質は、以前にも指摘したが、彼らの大半が【日本会議】に属している所にある。
※HP:
http://www.nipponkaigi.org/
※安倍内閣を支配する日本会議の実態
http://hbol.jp/25122
今回の「集団的自衛権」容認の安保法制を『違憲』と断じた3人の憲法学者たちが、図らずも明らかにしたのが、安倍内閣のブレーンたちの多くが日本会議に所属しているという事だ。
・・・「日本会議はそのフロント団体『美しい日本の憲法をつくる国民の会』を通じて、目下、1000万筆を目指して全国的な署名活動を展開している。また、連載の番外編2でお伝えしたように、各地の地方議会で「早期の憲法改正を求める意見書」を採択させる運動も展開している。
また、もう一つのフロント団体『「二十一世紀の日本と憲法」有識者懇談会』(通称・民間臨調)(公式サイト)を通じては、各界の識者や政治家を招聘して、「憲法フォーラム」と題するパネルディスカッションを全国各地で展開中。今年の憲法記念日には、砂防会館に約900人の聴衆を集めたシンポジウムを開催し、一刻も早い憲法改正を訴えた。
そして驚くべきことに、菅官房長官が挙げた三名の憲法学者――長尾一紘・中央大名誉教授 百地章・日本大教授 西修・駒沢大名誉教授――は、みな、この2団体の役員なのだ。
その関係性を図表にまとめてみた。
⇒【資料】はコチラ
http://hbol.jp/?attachment_id=45062
憲法学者 見事に、三人揃って、日本会議フロント団体の役員であることがおわかりいただけるだろう。 」・・・・
http://hbol.jp/45061
「集団的自衛権を合憲とする」憲法学者は全員、日本会議関係者――シリーズ【草の根保守の蠢動 第9回】・・・
ここから読み取れるのは、ジャパン・ハンドラーに指導される米国隷属と民族派右翼団体「日本会議」の支持との二本柱で支えられているのが安倍政権である、という事実だ。
この事実から想像できるのは、権力維持のためには、米国戦争屋の要求に徹底的に応える【売国政策】を行い、国内的には1%の要求に応える新自由主義的格差拡大政策と、メディア支配、復古主義的教育支配を通じて国民の抵抗の意志を奪い取る愚民化政策を強行する。一言でいえば、伝統的右翼政治家でもなんでもない、信念も理念もない、骨の髄から腐敗した独裁政治を志向している。安倍首相自身が、日本の存立危機事態になっているということだ。
「護憲+BBS」「政権ウォッチング」より
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