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老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

1年に亘り過去の基準温度より1.5℃を毎月継続して上回るという年を我々は経験した

2024-02-23 13:45:13 | 環境問題
『1年に亘り過去の基準温度より1.5℃を毎月継続して上回るという年を我々は経験した』
AlJazeera、2024年2月8日

表題の報道が欧州のコペルニクス気候変動サービス(Copernicus Climate Change Service、C3Sと略称される)から発表され、一方NASAは、海洋と大気に関する情報を従来を量的・質的に大幅に上回り供給することが期待される気象衛星を、発射している。

記録を取り始めて以降で初めて、地球の気温が12カ月間(2023年2月から2024年1月の1年間)に亘り継続的に1.5℃を超えて上昇した、とコペルニクス気候変動サービス(C3S)が発表している。人類への警告と受け止めるべきと科学者らは述べている。

気候変動につれて暴風・日照りや山火事が世界各地を襲い、エルニーニョにより太平洋東部海域の海洋表面温度を温めている。その結果、1850年以降の記録の中で2023年が最も暑い年だった、と記録されることとなっている。

C3Sは2023年の1年間が19世紀の基準温度に比して1.52℃温暖だったとした上で、2024年もこの極端な気象状況は続いているとしている。

ただし、科学者らは、約200カ国の政府が署名した2015年のパリ合意で設定した温暖化の上限値1.5℃を永続的に上回っている訳ではない、としている。

パリ合意において各国は2050年までに化石燃料の使用を段階的に廃止の方向に進め、代わりに再生可能エネルギー利用を進めるとしているが、実態としては、世界は温暖化を1.5℃以内に抑制することを含めて合意目標に向かっての軌道には達していないと国連は見ている。そして科学者の中にもパリ合意の目標達成は最早現実的には無理だとする意見があり、彼らは少なくとも目標値の上振れを最小限にすべく温室効果ガスの排出削減の努力を迅速に進めるべきと強調している。因みに2024年1月の気温は2020年に記録した過去最高を更新している。

米国宇宙局(US Space Agency)NASAが木曜日に最新人工衛星を発射している。目的は、従来得られていた以上に詳細な世界の海洋及び大気の観測情報を得ることである。

9億4800万ドルをかけ打ち上げられた人工衛星は、少なくとも3年の期間、地上676kmの高さから地表を毎日スキャンすることを使命としている。観測項目はプランクトン(Plankton,P)、エアゾール(Aerosol,A)、雲(Cloud,C)及び海洋生態系(ocean Ecosystem,E)。頭文字を取ってこの人工衛星はPACEと呼ばれる。

この人工衛星プロジェクトの科学者Jeremy Werdellさんは、「我々地球に住む者にとって今まで見たことのない光景をもたらしてくれるだろう」と話している。

今までの地表観測衛星では、7から8種類の色の情報が送られて来ていた。今回の新しい衛星では200種類の色の情報が送られてくることになり、科学者らは海洋中の藻類(Algae)の種類や大気中の粒子の種類が特定できることになると期待している。

新人工衛星からの情報は1~2カ月で始まる予定とされ、ハリケーンやその他の異常気象予報の精度向上に繋がることや、地表温度上昇のような気候変動の詳細情報や、有害藻類の繁殖の予測精度の向上に繋がることが期待されている。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

2024年の元旦の朝にフト思ったこと。今夜初夢として見たい夢のこと。

2024-01-01 20:06:15 | 環境問題

皆さん、あけましておめでとうございます。
2024年の年明けの今年最初の食事をしながら、フト思ったことを簡単に記しておきます。
正にこうなったら、うれしいな、の夢の話になります。

昨年年末のCOP28に関する話題の提供を現在進めており、年末もいろいろと材料集めを行っております。

その過程で、世界のエネルギー調達課題において、極めて大きな二つの潮流の激突が我々の現前に明瞭に立ち現われたのが、今回のCOP28の一つの見方だと思っております。

世界各国が自己申告で設定した目標の棚卸しとか、ロス&ダメージの資金調達の問題とか、いろいろな観点が今回のCOP28で討議され、進展を見てきているとは思います。

新年の朝の話題として、ここでは、一方では100数十カ国が署名した2030年までに再生可能エネルギー発電量を3倍化するという宣言案がCOP28の場で提示されたのに対して、片や米国やフランス・英国・日本・韓国等22カ国が署名宣言した、2050年までに原子力エネルギー発電量を3倍にする案が、同じくCOP28の場に提供されている、という話に限定して見たいと思います。

両方の宣言の目標は全く同じで、現在世界が苦しみの中に入り込んでいる気候変動問題・異常気象にどのように順応していくか、GHG排出を如何に緩和していくか、そしてその資金的裏付けをどう担保していくか、という我々世界が抱えている課題への対策作りになります。

一方は風力やソーラー等の再生可能エネルギーで、もう一方は原子力エネルギーでその実現を推進していこうとしています。正にこの2つが、我々が現在目にしている大きな潮流と言えます。

この辺りの話の詳細な紹介は、次回の世界沸騰時代の記事に譲るとして、ここでは簡単に端折った形、夢の話の形で論を進めたいと思います。

この二つの大潮流の状況を、極めて大づかみに捉えてみると、次のようになるのでは、と思っております。

22カ国の支持・署名という数の上では劣っているが、GDP的には世界の半分程は占める有力国が、原子力3倍化案の後ろ盾になっている。
一方の再生エネルギー3倍化案には、100数十カ国という数の上では世界の半数以上を占める後ろ盾を持つものの、GDP的には極めて劣勢な状況が見て取れる。

ここで興味深い情報を一つ提供すると、既に2022年1月時点でEU域内の有力者が今回のCOP28の原発3倍化案を先取りする形で、2050年までの期間、毎年200億ユーロの資金調達が原発促進の為に必要だと発言している(Thierry Breton氏、Guardian TV、2022.1.10)。
正に2050年までという期間設定も同じで、既にほぼ2年前には今回のCOP28での宣言がスケジュール化されていたのではないか、と思う位の手際の良さを原発推進派に対して感じる所です。

一方の再生エネルギー推進により異常気象を乗り越えていこうとする再生エネルギー3倍化案の方は、チェルノブイリや福島の事案を拠り所に極めて大きな潮流を形成してきていることは事実です。

しかしながら、原発推進派は“人もの金”の3つを持っている一方で再生可能エネルギー派は"人“はさておき、“ものと金”は原発派に比べて劣り、しかも今回のCOP28を契機として、原発3倍化が彼らの思惑通りに動き始めて行けば、この“ものと金”における両者の格差は更に極めて大きな差へと開いていく恐れを、実は持っております。

即ち、権力を持ち資金調達の権限をもつ各国の支配層のかなりの部分は、原発業界の意向になびいていくのではないかと予想しております。

そこで、夢の話です。

世界には、権限や権力はないが普通に暮らしている市民が、80億人は存在しているのです。
正に原発3倍化の22カ国に対して、再生エネルギー派は100カ国をはるかに超えている状況と同じ構造が、“人の数”の点として、ここに存在しているのです。

市民が再生エネルギーの推進を力に異常気象を乗り越えていこう、その為に我々市民は再生エネルギー推進のための資金調達の一翼を担おうではないか。こんな運動を世界に巻き起こすことが出来ないものか。とこんな夢です。

例えば、「我々市民の、我々市民の為の再生エネルギー推進で異常気象に打ち勝とう」
こんなキャッチフレーズでしょうか。

80億人が、例えば年100円を寄付すれば8000億円。この一人100円という金額でもEU有力者の希望資金の年3兆円の1/4強に達するのです。

こんな夢を今夜の初夢で見てみたいものです。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

世界沸騰時代に対処するキーワード(3)COPとMultistakeholderism

2023-12-25 20:40:29 | 環境問題
今月13日までUnited Arab Emirate(UAE)のDubaiにおいてCOP28が開催された。
COP28の成果を伝えることを念頭に、妥当な記事を調べていたが、一つの記事だけでは全貌を伝えること・その成果の是非を伝えることが難しそうだと考えている。
従って、幾つかの記事を何回かに分けて紹介していく予定です。

先ずはAlJazeeraからの記事を紹介致します。
この記事はCarola Rackete氏が見たCOP28の総括であり評価ですが、氏の総括と評価には現代国際社会の統治(ガバナンス)が抱えている大きな課題であるMultistakeholderism(多利害主体主義)が各所に見え隠れしており、そういう視点で極めて興味深い読み物になっていると考えます。
Rackete氏の記事をCOP28の紹介の最初に持ってきた由縁です。

このMultistakeholderismというキーワードが、今回のCOPを考えていく上で重要な背景思想の一つであると思っており、そしてこの背景思想が、COPだけに限らず現代の国際社会が抱える一国だけでは解決が困難な諸課題を国際社会が対応していく際、ある特定の有力勢力がこの思想を拠り所にし、国際社会の統治(ガバナンス)が事実この思想に沿って左右されている、と考えると現在の国際社会の流れが良く見えてくる節がある、と思っております。

という訳で、これから何回かに分けてCOP28の総括と評価を紹介していくことと、合わせてMultistakeholderismの是非や問題点をも考えていきたいと思っております。

ではRackete氏の記事を紹介します。

タイトル:気候危機から抜け出す方策・道はある。だがそれはCOPを通じて、ではない。
AlJazeera、2023年12月19日 Carola Rackete氏記す
***
世界最大規模の気候課題サミットが開催されたが、それは一種のマヤカシであり、我々に役立つものではありえない。

気候危機に対する国連締約国会議(UN Conference of Parties:COP)は今回で28回目の開催となる。そして今回の最新のCOP28の会議の最終合意文書に初めて「化石燃料の終結」という文言が載せられた。

確かにCOP28では「化石燃料への依存状態から移行していくこと」を各国に約束させることに成功はしたけれども、気候危機を真に解決できる策が設定できたかどうか、という視点からみると、COP27やそれ以前の合意内容以上の進展はほとんどなかった、と言えるのである。
即ち、2015年のパリ合意の目標である2030年までにGHG(Green House Gas)排出を43%削減すること、に対しては今回の会合出席者間で合意に至らなかった。
そしてCOP27で設立した損失と損害基金(Loss and Damage Fund:この基金は気候危機に最も脆弱な諸国に対して財政支援を行うことを目的とする)の課題に関して言うと、富裕諸国側はいかなる有効な貢献策も打ち出すことはなかったのである。
例えば、ドイツはこの基金に1億ドルの拠出を約束しているが、この額はベルリンのA100高速道路のわずか430mの距離分の建設費用と同等なのである。そしてこの金額は気候変動の結果全世界が被った損失と損害金額に全く見合う額ではないのである。事実2022年のパキスタンで発生した洪水では1739人が死亡し、200万人が避難を強いられたが、この洪水災害損害額は300~400億ドルに達したと見られている。

一方、ウクライナ戦争の結果、化石燃料生産者らは記録的な利益を得ており、そして彼らは更に生産拡大を目論んでいる。今回のCOP28には数千人の化石燃料生産者サイドのロビーストらが会合に参加している。
化石燃料生産者サイドの動向が地球の未来に大いに懸念される所であるとの我々の認識に対して、ロビーストらは化石燃料生産者サイドの動向は人類の賢明な進歩であるかのような認識を植え付ける偽装工作活動を展開していたのである。

そして今回、議長役を務めたUAE国営石油会社社長のスルタン・アル・ジャベル氏の文書が流出するという事態が発生し、その文書においてジャベル氏は化石燃料ビジネスの推進を今回の会合の中で計画していると指摘されているのである。

化石燃料生産者側は、会議の交渉の中心に公正さと正義という思想を据えるのではなく、彼らは誤った方向の解決策を推進しようとしているのである。即ち欧州全域において、企業は炭素捕捉と貯蔵技術(carbon capture and storage:CCS、CO2をその発生源で捕捉し、適切な場所に移送し埋蔵するという方式)の開発を推進しており、この推進の狙いが異常気象が進行する状況下においてさえ、化石燃料の利用を継続し続けたい、ということなのである。
しかしながら、CCS技術の有効性・効率性は不充分なものであり、コスト的にも見合わないと見られている。そして現在の実験室レベルの再現性・有効性を充分大きなスケールまで同等の性能で規模拡大させるにはかなりの時間が掛かるとも見られている技術なのである。

即ちCCSの技術開発の推進は、単に化石燃料の利用を延長し、継続したいが為の方便であり、化石燃料利用の延長による化石燃料の漏出や流失、採掘地の崩壊等の破壊的危険性が継続し続けることになり、そしてその上に権力者らが正しい判断の下でより望ましい対策を採用し、実施していくことを単に遅らせるだけの働きをするものだと言える。CCS技術への過剰な期待と依存は、地球環境を劣化させ続けることに繋がるのである。

CCS技術の推進は、ドイツの緑の党のプログラムにも見られ、Wintershall社のようなドイツ化石燃料企業もがCCS技術を推進している状況がある。
そしてCCS技術は、COP28の最終合意文書中にも組み込まれているのである。

この理由は何なのだろうか?
考えられることは、資本主義を機能し続けるために、そして欧州のGDP成長を継続させるために、化石燃料を燃やし続けることが必要だという思想であり、その思想には多くの人の生命や他の地域に住む人々の生活は含まれていない、無視されているのである。

もう一つ別の企業側の遅延戦略が炭素オフセット(carbon offsets:現在はnature-based solutions、自然に基づく解決策とも呼ばれているようだ)に対して市場を更に拡大しようとする動きである。例えば炭素オフセットの認証を発行したとしても、その80~90%はCO2排出削減に結び付いていない、とされている。かかる状況下において、オーストラリアやUKの様な諸国は、炭素市場を世界に既に拡大している。一方ECは、生物多様性クレジットと水質汚染との取引きを計画中である。

COPは一種のマヤカシであり、年が経過するほど腐敗が進行していると言える。

誰もが考える真の解決策というものは、化石燃料使用の終結であり、企業による政治支配の停止であり、化石燃料依存体質を脱却した産業構造の広範な構築である。
幾つかの国は既にこの方向への道をたどり始めており、化石燃料不拡散条約(a fossil fuel non-proliferation treaty)推進運動を画策することで代替え策を創造している。12カ国、2000以上の団体、そして60万人以上の人々が、このキャンペーンを後押ししている。これら12カ国とは、気候変動の悪影響を最も受けている国々なのである。
ヨーロッパでのこの条約の意味する所は、化石燃料に関する新規インフラへのこれ以上の投資を行わないこと、時代遅れの内燃エンジン自動車の迅速な停止、そして生態系に合致した農業(ecological agriculture)に向けて工業生産型肥料の代わりに天然素材を利用する肥料への転換ということである。
この方向に展開していくには、グローバルノースの各組織や団体や人々が立ちあがり、各国政府が行動に参加するよう圧力をかけていくことが必要とされるのである。

EUは、明らかにその富を共有化することには関心を持ってはいないが、しかしEUは国連が到達した合意よりも先進的な政策パッケージの一つであるグリーンディール政策を少なくとも実行しているのである。ただしこのグリーンパッケージ政策は間違った目標を設定しており、即ち持続可能な方向に発展していくのでなく、経済を発展させていく目的の為に、グリーン化へ転換を図っていくという構図になっている。そして近年、EUの政策は「悪い」状態から「更により悪い」状態へと悪化する方向になって来ている。

最近の数カ月間、欧州では保守勢力と極右勢力が協同してグリーンディールの最も重要な法律(自然保全法と殺虫剤使用削減の為の持続可能な利用規制)のいくつかを葬り去ろうとしている。
この保守と極右勢力の協同体制が強化されたり、6月予定の次期議会選挙の結果、協同体制が多数派となれば、EUの各組織が化石燃料終結に向かう動きを維持することは、ほとんど期待できないものとなるだろう。次期EU議会選挙の結果が最も懸念されるところであり、EUの決定の重要性を人々が深く認識して、投票行動に結びつける必要がある。

結局のところ、変化を推進していくのはCOPやEU委員会からもたらされてくるのではない、ということである。変化というものは下からわき上がって来るものである。

我々は企業による乗っ取り(corporate takeover)に対し、抗議活動に参加が望まれる。そして極右勢力の台頭に対しても抗議活動に加わることが望まれる。我々は、人間中心の生態系に合致したシステムに移行するため、下からの動きを加速化していくことが望まれ、そのための共同行動を構築していく必要がある。
我々はCOPで提示される誤った解決策には慎重に対応していく必要があり、そして化石燃料を終結させるためグローバルサウスの行動の先頭に加わることが求められている。-
***

以上がCarola Rackete氏から見た今回のCOP28の総括議論です。

表題の地球沸騰化時代を考える際、重要なキーワードとしてCOPとMultistakeholderismの二つを挙げました。
COPについては更に説明の必要は無いと思いますが、Multistakeholderismについては最後に少々説明を加えておきます。この言葉の説明も簡単に纏めることが困難なものであるということを、先ずはことわっておく必要があります。
これから数回に分けて今回のCOP28の説明を行いますが、その中の情報等も参考にこのキーワードの存在を意識して考えてもらえれば、と思います。

Multistakeholderismの最初の説明として、京大の久野秀二氏の「持続可能な食農システムへの転換:グローバルヘゲモニーと対抗的実践との相克(農業経済研究94巻91-105、2022年)」中にある部分を引用させていただきます。
***
マルチステークホルダー主義は、1980年代以降に強まった新自由主義的グローバリゼーションの産物である。加盟国からの拠出金に依存する国連システム等の多国間機関が財政難に陥り、多国籍企業の資本力、とりわけBMGF(Bill & Melinda Gates Foundation)等の民間財団の資本力に依存せざるをえない状況が背景にある。更に世界経済フォーラム(World Economy Forum)の影響力が増し、彼らが多国間主義(Multilateralism)から多(利害関係)主体間主義(Multistakeholderism)への転換を構想した「Global Redesign Initiative」が着実に実行に移されてきたという点も重要だ。
マルチステークホルダー主義の問題点としては、
1. 多様なステークホルダーが水平的な関係においてグローバルガバナンスに参加するとはいえ、それが包括的・民主的である保証はなく、むしろ現実に存在するステークホルダー間の構造的な権力格差が曖昧にされてしまう。政府・国際機関を除いてガバナンスのプロセスに積極的・恒常的に参加できるステークホルダーは自ずと多国籍企業・産業団体や主流の国際NGOに限られる。規制する側(政府)とされる側(企業)、権利保持者(人々)と義務履行者(政府)と潜在的権利侵害者(企業)の立場上の違いも、同じカテゴリーに括られることによって曖昧にされてしまう。
2. コンセンサスが前提されており、熟議の末に採決が行われるような意思決定の手続きを要しないガバナンス手法であるため、「すべてのステークホルダーが合意できる合理的な解決策」という名目で、課題解決の方向性や手段を技術的・脱政治的に限定し、より構造的・根本的な転換を要求するような反対意見や少数意見は最初から排除される傾向にある。
3. 総じてグローバルガバナンスの断片化が生じ、透明性と説明責任の欠如も相まって、実際に何が議論され、何が行われているのかが外からは見えづらい、いわばガバナンスの迷宮が出現している。
***

前回のキーワードのAGRAとAFSAに合わせて更に説明すると、マルチステークホルダー主義の具現体組織がAGRAといえる。AGRAの訴求するグローバルガバナンスにおいては、国連機関(そもそも元国連事務総長のアナン氏がAGRA初代代表)や政府間組織、農業研究機関(矮生小麦や矮生コメの開発化とその実践)、国際NGO、農業団体、民間財団(BMGFやロックフェラー財団)、民間企業(多国籍肥料企業や農薬企業そして国際的種苗企業等)などの広範な関係団体を構成員に加えたマルチステークホルダー型のガバナンスプラットフォーム(即ちAGRA)が設置され、特定の考え方や規範に基づく農業改革等の構造化・制度化が進められる、のである。

Multistakeholderismの考え方は、現実の国際社会の諸々の課題に対するガバナンスに既に深く広く浸透しているのが実態と言える。

Rackete氏が危惧するCOPの現状においても、アフリカの食と農のシステムにおいても(充分な「人もの金」に裏付けられたAGRAの考え方が優先的に実態化される一方で、AFSAの動きはやはり鈍いと言える)、そしてSDGsの実態においても(上位に位置している筈の人々や市民ら権利保持者が建前としてはSDGsを主導していくのが、望ましい姿であると考えたいが、やはり実態は大手建設企業らが勝手に主張する論理のもとSDGsが実態化され、推進されているのが現実と感じている)、現代の諸課題のガバナンスはマルチステークホルダー主義の考え方に浸食されている、という見方を意識することが大切ではないかと思っている。

「護憲+BBS」「 新聞記事などの紹介」より
yo-chan

世界沸騰時代に対処するキーワード(2)AGRA対AFSA

2023-12-05 09:34:48 | 環境問題
食と農(食糧問題及び農業問題を全体として捉える場合に食農という言い方がある。以降可能な限り食農を使ってみたい)のシステムに関する世界の潮流をまず捉えてみたい。そして、その潮流が世界沸騰時代という今の状況に合致した適切な流れなのかどうかを考えてみたい、と思い調べております。

そんな考えで、前回はC3植物とC4植物というキーワードを取り出し、現在の世界の食農システムの潮流が妥当かどうかを判断するキーワードの1つを提示しました。

今回はアフリカの食農システムに興味があり調べていく過程で、興味深い別のキーワードの存在が出てきましたので紹介したいと思います。「AGRA」と「AFSA」になります。

AGRAとAFSAはいずれもアフリカ大陸における、それぞれの食農システムの普及を目指している組織になります。ただし、AGRAは世界のアグリビジネス業界の提供する科学技術を採用し、そして推進することでアグリビジネスの巨大企業からの支援と後援を受けており、その運用資金は世界の慈善団体(例えばロックフェラー財団やビル・メリンダゲーツ財団)から受けており、その技術力と資金力からアフリカ各国の政府にAGRAの食農システムを採用させる力を持っており、一方のAFSAはこうした支援や後援を現在はほぼ受けることが出来ていない、世界の潮流の脇に置かれた組織だというのが今の現実の状況と思われます。

しかしながら、AGRA とAFSAという2つの組織の活動を調べていくと、2つの組織の動向が、単にアフリカ大陸に留まらない、世界の食農システムの現在と今後の行方を考えていく上で非常に参考になる思想がそれぞれに含まれている、と感じております。

前回のC3植物とC4植物と同様に、今回もAGRAとAFSAという二つの組織を観察していくことで、世界が目指すべき食農システムと、その流れが世界沸騰時代に適っているのかを考える上での参考材料になればと思っております。

結論的にいうと、種子ビジネス・合成肥料・合成農薬販売等の多国籍巨大アグリビジネス事業体の利益が優先的に確保され、そして単一品種栽培の効率化を追求し、規模の拡大を目指すAGRA型システムだけが繁栄している現状を肯定するのでなく、家族労働も含めた小規模事業者のその土地その土地に合わせた自主性・自律性が尊重されるAFSAシステムもが共存する食農システムが構築され、世界から支持を受けるようなことが望ましく、その方向が我々の取るべき道だと考えております。即ち、いずれか一方に偏った食農システムの採用は正解ではない、という考えであります。

私自身は主流になり得ていないAFSA側に身を置きたい気持ちがあるものの、出来る限り、バランスをとりながら話を進めてみたい。

まずAGRAを紹介する。

AGRAの正式名称は、緑の革命アフリカ同盟(Alliance for a Green Revolution in Africa)。
彼らのホームページ中の「我々について」に記載されている内容は次のとおりである。

AGRAはアフリカが主導する組織であり、小規模農家の収入が増え、生活が改善され、そして食料の安全確保の向上に役立つ農業の革新化を図ることに焦点を合わせている組織です。
アフリカの農民らが、直面する環境上のそして農業上の課題に関してアフリカに特有の解決策を求めていることをAGRAは心得ています。AGRAが提供する解決策により、生産拡大が持続可能な形で達成され、そして急激に拡張している農業市場への接続性が向上されることが期待できます。簡単に言うと、AGRAの使命というものは、小規模農家の生活を、そして生存をかけた孤独な戦いの状況から繁栄発展するビジネスへと転換させることであります。
2006年以降、AGRAはパートナーら、各国政府、非政府組織、民間企業体やその他多くの組織機関と連携し活動してきています。そして小規模農家や先住アフリカ農業事業体に対して有効性が実証されている一連の解決策を提供してきています。AGRAは小規模農家を第一に考えており、農業の革新なしには如何なる国も低収入状況から中程度収入状況の国への発展はあり得ないと考えています。

以上が、AGRAのホームページにおける自己紹介です。表面上はAFSAの理念を意識し、取り入れながら存在感の確保を試みているが、利益関与団体の意向を底流では保持した文言と見えます。

繰り返すが、AGRAは、多国籍化学肥料・農薬企業・種子ビジネス企業等からの後援を受け、国際的慈善団体からは資金支援を受け、そしてAGRAの農業システムは行政から優先的に採用され、世界的に主流と認知されている組織であるということが大きな特徴であり、その推進するシステムは、以前に紹介したメキシコの研究所の矮生コムギ(背たけが低い)の品種とフィリピンの研究所の矮生コメの品種という新しい多収量品種の単一栽培をアジアと中米に広めた1960~1980年代の所謂「緑の革命Green Revolution(GR)」システムを、前回のGR拡大路線に乗り損ねたと見られるアフリカに、2006年以降から適用・推進することを念頭に置いた組織だ、ということである。

自身が美辞麗句で飾るAGRAのホームページの情報とは異なる、別の立場の人々が見るAGRAについての情報を次に紹介してみたい。

Tufts大学のTimothy A.Wise氏による「間違った約束:緑の革命アフリカ同盟(False Promises:The Alliance for a Green Revolution in Africa)」の記事がそれである。この記事は題名からわかる通りAGRAに批判的な立場からの見かた・歴史観になります。
更に興味のある方はWise氏の論文「Failing Africa's Farmers:An Impact Assessment of the Alliance for a Green Revolution in Africa」2020年を参照することをお勧めします。

以下に簡単にWise氏の論旨を拾って紹介します。

ビルとメリンダ・ゲーツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation:以下BMGFと略す)及びロックフェラー財団が2006年にAGRAの設立に着手。
多国籍種子企業が販売する高収量(矮生)種子や合成肥料及び合成殺虫剤等農薬を用い、そして灌漑-多水農耕が必要な米・小麦等の単一品種栽培を特徴とする緑の革命(GR)型農耕システムをアフリカ大陸に導入することを目的とする組織の設立である。
そしてAGRAが推進するシステムが、アフリカに存在する飢餓と貧困の削減達成に貢献できる、と主張している。

AGRAは様々なプロジェクトに投資を行っており、そしてアフリカ各国政府にロビー活動(多国籍巨大アグリビジネス団体の力を背景とする)を行い各国政府がAGRA型GR技術を採用することを推進し、アフリカ大陸各国家の食農政策の推進と市場の構造改善を達成する手助けを行っている。
AGRAは発足以来、10億ドルに近い出資・寄付金を主にBMGFから受けており、BMGF以外にはアメリカ、英国、ドイツ等もある。

AGRAは5億ドル以上の助成金をアフリカ農業の現代化を目指して行っている。
そしてアフリカ各国政府は主として、「作物栽培向け投入資材(農薬や肥料や種子に相当する)購入資金助成金プログラム(the form of input subsidy programmes, FISPs)」という形で獲得した助成金を使用している。即ち、農家はハイブリット種子を購入し、合成肥料や合成農薬の力を借りて緑の革命型農業システムを行い、それにより農家の収入と生活の改善及び生産性の向上を図ろうというわけである。

AGRAの初代代表には前国連事務総長のアナン氏が就任しており、その主導のもとAGRAは重点対象国を13カ国に設定して、その内10カ国が事実FISPsを採用している。
AGRAが当初目標としたミッションが2008年年次報告書(2008 annual report)に記されており、2020年までにアフリカの2000万の小規模農家の収入の倍増とアフリカ20カ国の食料不安・栄養不足を半減させることとしていた。

AGRAが主導するシステムの実績は次のようである。
・栄養不足の改善:3ヶ国は15年にわたり改善がみられる。ザンビア(2%改善)、エチオピア(8%改善)ガーナ(36%改善)。反対にケニア(44%の悪化)、ナイジェリア(247%の悪化)。
即ち、過去15年のAGRA型システムの取り組みで全体としては、栄養不足は逆に50%悪化したという。AGRAの目標は完全に破たんしていると言える結果なのである。
・2000万の小規模農家の収入アップ目標:この目標も達成されていない。巨大アグリビジネス企業の利益は常に確保される(それが保証されるシステムであるが故である)ものの小規模農家の収入アップに繋がらない理由は、一つにAGRA型のシステムでは時間と共に土壌の劣化が起こり、生産性の悪化が付随することによるとされている。
よってAGRAは2020年6月に説明なしでこれら目標をホームページから削除しているのが実態である。

このWise氏の提供している情報の中でAGRAの本質を示すものは次の点だろう。
1.2006年ビルとメリンダ・ゲーツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation,BMGF)とロックフェラー財団がAGRAの設立を主導。そして10億ドルに近い出資・寄付金が主にBMGFからのものだったこと。
2.AGRAは5億ドル以上の助成金を、アフリカ農業の現代化達成を目指して行っている。
アフリカ各国政府は獲得した助成金を使用して「作物栽培向け投入資材購入向けの助成金プログラム」を提示。農家がGR型農業のハイブリット種子や合成肥料の購入をするよう誘導する。各国政府に対する多国籍アグロビジネス事業体からのロビー活動により、13カ国中10カ国でFISPsが採用されているというのが実態である。
3.各国政府にFISPsを採用させて、GR型農業行政を行うよう誘導したのが前国連総長だった人物でありAGRA初代代表だったという点も重要なことである。
4.BMGFやロックフェラー財団がバックアップし、種子企業や大手合成肥料会社・農薬企業・農業機械企業といった多国籍企業の資本力・事業化力の後援があり、地元各国政府の思惑が重なった形で、アフリカ大陸の食と農業のガバナンスはAGRAが思い描く方向に進んでいるという実態が厳然と存在している。

即ち、アフリカに留まらずに世界の食農システムのガバナンスを支配しているのはAGRA的工業型農業システムであり、これが現在の主流の体制と間違いなく言える状況である、とも言えるのではないかと見ている。

次にAFSAについて、説明する。

AFSAとは、食料主権アフリカ同盟(Alliance for Food Sovereignty in Africa、AFSA)を指す。
同様に先ずはAFSAホームページの「我々について」を見てみたい。

AFSAはアフリカの小規模農家・牧畜民・漁民・先住民・信仰共同体・消費者・女性そして若者らを統合し、統一して食料主権を声高に訴えることを目指している。

そしてFAO(世界食糧農業機関)がホームページでAFSAを紹介している。それによると、AFSAは2008年に趣旨を共有する関係者らが構想を持ち、2011年の南ア・ダーバンにおける国連気候変動に関する枠組み会合(the UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)のCOP17において発足している。発足時の報告において、食料主権主義が地球を冷却する力があり、世界の食を改善し、そして地球環境を再生する力を持つと主張されている。
即ち、AFSAはアフリカにおける食料主権とアグロエコロジー(agroecology)確立のため闘っている様々な市民活動家らの広範な同盟である。同盟に加わっているのは、農民組織団体・NGOネットワーク・専門家NGO団体・消費者運動団体・AFSAの考えに共鳴する国際組織団体及び個人らであり、小規模農家・牧畜民・狩猟採集者ら・先住民の人々らを代表するものである。
AFSAの重要な目標は国の政策に影響を及ぼすこと、そして食料主権に向けてのアフリカが提示する解決策を推進することであるとしている。

アフリカの農民を組織化しネットワーク化するための汎アフリカプラットホームである。
そして共同体の権利・家族型農業・伝統として継承されている農業知識体系の推進そして環境及び天然資源の管理運営等をアフリカ農業政策へと昇華していくように声を強めていくことがAFSAの目標だとしている。

しかし、その実態及び実績は、やはり主流からは脇に置かれた存在という面はぬぐいきれない状況であろう。AGRAの背後の多国籍アグリビジネス巨大企業体組織・国際慈善団体のバックアップとそれになびく地元各国政府の存在という総合力は侮ることはできない力である。

ここにおいて前国連総長がアフリカの食農システムの改善向上を目指す考えを持った時に、多国籍アグリビジネス巨大企業体組織のGR型システムだけを念頭に置く構想だけでなく、AFSA型のシステムの構築と確立も重要だとする構想を持てなかった判断力と見識の不足が残念である。多面的な視野を持って動けば、例えばBMGF等の国際慈善団体基金の投入もバランスの取れたものになっていたのではないかと思う。

かかる現状の課題からAFSAはBMGFも含むAGRAへの出資団体に公開書簡を送っている。その内容を記しておきたい。

AFSAの35の組織ならびに40カ国174に及ぶ団体からの後援を背景に、AFSAはAGRAを支援する団体に対し支援の停止を要望する。そしてアフリカ人が主導するAgroecologyやその他の低い投入物量(合成肥料や合成農業薬剤の使用量の削減化を目指す)を特徴とする農耕システムを支援するように要請する。
アフリカ大陸最大の市民社会団体ネットワークであるAFSAは、2021年5月にAGRA支援団体に対し、AGRAが15年にわたり実施した工業型農業システムが数100万の小規模農家の収入拡大と食糧安全保障に貢献した、という確かな証拠があれば提示して欲しい旨の書簡を送っている。
これに対しわずかな回答はあるものの、信頼できる証拠の情報は提示されていない(2021年9月7日時点)。
AGRAの掲げる使命(生産性と収入を向上し、食料安全保障を改善するという使命)は明らかに破たんし実際にはアフリカ農民に対し広範な悪影響を及ぼしている。
約15年にわたり、10億ドル以上を推奨種子・化学肥料・農薬購入に費やすシステムを13のアフリカ諸国で展開し、その上、毎年10億ドルに及ぶ補助金制度をアフリカ諸国政府が提供するシステムをAGRAが展開したが、持続可能な形で収穫量・農家収入そして食料安全保障を改善するというAGRAの目標が達成されたという明確な証明は為されていない。
AGRAシステムに取りくんだ13カ国では栄養不足の割合が30%拡大し、主食作物の生産量が拡大した国においてさえ田園地域の貧困と飢餓状況の削減にはほとんど効果は出ていない。反対にAGRA推奨の品種の大量採用により、元々かかる地域の食料安全保障に役だっていた気候変動に強い作物が脇に追いやられるという弊害のみが残ったといえる。

AGRAが果たした悪影響に対する理由を挙げると、
1. 持続可能な生活システム、長期にわたる土壌肥沃性や気象等を犠牲にして、良策とは言えない化学的投入物(肥料と農薬)に高度に依存する単一品種栽培を追求している。
2. 高収量種子・肥料・農薬依存へと農民を誘導する戦略は、多国籍アグリビジネス事業体の提供する生産システムへの依存性を農家に植え付けることになる。しかもこのシステムは環境に悪影響を与えることで、気候変動に対する回復性を悪化させ、そして小規模農家の負債リスクを高進させる恐れがある。
3. AGRAはその財政力を梃子にしてアフリカ諸国の農業政策に介入している。そこではアフリカの飢餓と貧困対策は置き去りにされ、アフリカ農民と資源が収奪されるシステムが働いている。

AGRA現代表のKalibata博士が、開催が予定される国連食糧サミット(UN Food Systems Summit、UNFSS)に国連特別代表として参加し、AGRAのシステムを世界に提案し、世界を間違った方向に誘導する可能性が出てきている。このことが現在の我々が抱えている課題の一つであると捉えている。
世界の数百の組織・団体が、開催予定のUNFSSが多国籍企業の主導する工業型農業を世界に拡散する機会になるのでは、という懸念を表明している。
2021年6月500人に近い数のアフリカの各種団体の長がBMGFに書簡を送り、悪影響のある工業型農業への支援停止を要請している。そしてBMGFおよびその他の支援団体は、小規模農家の声を聞くよう求めている。
AFSAはこれらの書簡の内容を支持し、慈善団体が支援を決定する段階で、アフリカ人の声を聞くよう要望する。
世界は人道的に、環境的に、そして異常気象という危機に直面している。従って発展モデルを迅速に転換する必要がある。
アフリカの全ての農民は、それぞれの知識を共有し、科学者らと連携して低い投入量に基づく農業モデルを確立することが更なる望ましい結果を生むということを理解している。即ち農業生産の権利はアフリカ農民の手にあるべきだ、と考えている。
AFSAはBMGF及び他のAGRA支援団体がアフリカ全域にわたる農民の声(健全であり、持続可能であり、公正な食農を目指すシステムの構築、即ちAgroecologyに基づく食農システムの構築)に耳を傾けるよう要請する。

***

世界は主流側、体制側がアドバルーン的に方向を指し示し、その持てる資金力と技術開発力とそして腕力を用いて、その方向への動きを実態化させていくことで、動いていくものだ、とも言える。

まさしく進行中のCOP28で、温暖効果ガス排出削減の手段として、100カ国以上の支持を受け当然ながら再生可能エネルギーの拡大が上程されようとしている。そして20程の国(日本はこちらにも顔を出している)が、原発の3倍化の方針を上程する気配が感じられる。

このCOP28での突然の原発の動向は今後興味深い問題ですが、現時点ではあくまでこういう考え方もある位の受け取り方をする必要が我々市民側には求められると思っております。
事実、DeutcheWelleやAlJazeeraやPakistanDawnらの記事には、20程の国による原発の3倍化方針の情報は取り立ててスポットライトは当てられていない。例え紹介されている場合でも100カ国以上の支持の再生可能エネルギーの3倍化拡大策が強調され、そして原発の動きもある位の報道が現状です。
ここでも日本の報道の突出性がある意味興味深く、また気にかかる所です。

わき道にそれてしまいましたが、今回のテーマの底流として存在していると感じる資金力や腕力による世の潮流作りの功罪ということについて、今後焦点を当てていきたいと思っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

ドバイCOP28開催直前に流れているニュース

2023-11-23 16:38:49 | 環境問題
今月末からUAEドバイでCOP28が開催される。
我々が現在抱えている気候変動課題に対してCOP28が、そして国際社会がどのような討論を行い、どのような解決策を提示していくのか、を見定める際の参考になれば、との思いから直前に報道されている幾つかのニュースを紹介してみたい。

取り上げたニュースは以下である。
1. DeutscheWelle,2023年11月17日 “Who pays for climate damage and where does the money go?” Jeannette Cwienk記す
2. PakistanDawn,2023年11月18日 ”Climate action" Aisha Khan記す
3. AlJazeera,2023年11月18日 “COP28 must not repeat the mistakes of the African Climate Summit” Sydney Chisi記す

まず、DeutscheWelleの記事(誰が被害の請求書の支払者で、その資金は何処にむかうのか)から始めます。

一つは気候変動を止めるという目的(mitigation)で、もう一つは気候変動の結果として生じる被害に適応する目的(adaption)で、一連の気候変動基金(climate fund)が貧困国向けに約束され用意されている。しかしこれらの用意されている基金が実際には何をカバーしているのか、そして何ゆえにどの基金の運用もが物議を醸すことになっているのか、という疑問がある。

歴史的に見て、化石燃料を産業革命の動力源として利用し、温室効果ガスを大量に発生させ、結果として地球温暖化を引き起こしてきた米国や欧州の様な国が気候変動向けの請求書の支払者になるべきだとの議論がある。しかしながらその意味する所は正確にはどのようなものであろうか?以下順を追って見ていく。

(気候変動融資climate financeとは何か?)
気候変動融資の背後にある考え方の一つに、発展途上国が化石燃料に頼らない経済発展のかじ取りが出来る様に支援することがある。
もう一つの考え方に、気候変動の影響を最も受けている貧困国が気候の変化に適応できるよう、裕福な国々は支援すべきということがある。
これらの考え方は1992年のリオデジャネイロ世界気候サミット以降、世界の気候交渉の中心議題となって来ていた。
気候変動への資金提供というと一般的に連想されるのは、2009年のコペンハーゲン国連気候サミットで先進国が2020年までに年間1000億ドルを調達するという公約をしたことである。2015年のパリにおいて、参加者らはこの金額を2025年まで毎年支払い続けることで合意し、そしてその後新たな金額を設定するとした。

(気候変動融資はどのように実践されるのか?)
公約の1000億ドルの実施の点で、先進国側は当初公的資金(public fund)を想定していた。
しかし先進国側は徐々に民間投資(private investment)を通じての金額を上昇させようとしている。

資金の流れとしては、約50%は供与国から受領国に向けて2国間で流れており、主として開発援助の形式がとられている。
残りの流れは、多国間資金(multilateral money)の形式を取っており、複数の国家が資金を供出し、そして複数の受領国家が受領することを意味している。この資金は世界銀行やアフリカとアジアのそれぞれの開発銀行のような多国籍銀行を経由して運営されている気候変動プログラムから提供されるか、あるいは多国間気候変動基金(multilateral climate funds)を通じて割り当てられる。

(緑の気候基金、Green Climate Fund)
多国間の基金プールの中で最も著名なのは緑の気候基金GCFだろう。この基金は、再生可能エネルギーの拡大などの気候変動を遅らせるための対策向けと、異常気象やその他の温暖化の影響への適応向けの両方を目的とする。
これまでに富裕国側は約200億ドルの提供を約束している。その内128億ドル分のプロジェクトが承認され、これまでに36億ドルが特定のプログラムに既に供給されている。大半がアフリカとアジア向けだが、ラテンアメリカ・カリブ海諸国・東ヨーロッパ向けのプロジェクトもいくらかある。
4年ごとに供出国は基金を補充することが求められている。資金の半分弱は有利な融資の形(favorable loans)で供給され、残りは返済の必要のない直接補助金(direct grants)として提供されている。

(適応基金、Adaptation Fund)
富裕国側が公約する1000億ドルの資金を受け取るもう一つの別の基金(Fund)が適応基金。これは比較的規模の小さい基金であり、基金を補充するシステムはなく、富裕国側は可能な時に、あるいは希望する時に供出するやり方が取られている。
この基金の目的は、異常気象による影響に適応できるように各国の手助けになるプロジェクトを支援することである。これらの異常気象による影響としては、例えば洪水への対策や暑さに強い作物の栽培などの対策が挙げられる。
途上国は、融資の形でなく、補助金の形で受け取る。該当プロジェクトは通常、利益を生むことが無いような適応行動へ資金を提供するということが特徴である。故に売電可能な風力発電やソーラー発電のプロジェクトへの拠出は対象外となる。

(開発程度が最低の国家向け基金、Least Developed Countries Fund、LDCF)
この開発程度が最低の国家向け基金(LDCF)は、最貧国46カ国をカバーしている。
返済の必要のない助成金のみで運営されており、緊急の気候適応資金を提供することを目的としている。これまでにLDCFは360以上のプロジェクトに資金を提供しており、約17億ドルが支払われている。

(1000億ドルの気候変動資金の公約は果たされているか?)
結論としては、果たされてはいない。
OECDのデータによれば、2020年に国際気候変動融資に支払われた総額は約830億ドル。
Oxfamドイツの気候変動・政策責任者のJanKowalzig氏は、「830億ドルという額は大きく聞こえるかも知れないが、グローバルサウスの貧困国が必要としている額はもっと大きい」と指摘している。そして、「我々の調査によれば、適応対策向け費用だけでも、2030年までの期間、毎年3000億ドルを超えるものとなっている。そしてこの数字には気候緩和対策向け費用は含まれていない」とも指摘している。
また、国際開発機関(international development organization)によると、OECDが言う830億ドルは粉飾されている、という。Oxfamの計算では2020年の実際の気候変動支援金額としては最大約245億ドルだったとしている。OECDが公式にリスト化しているプロジェクトの多くは、気候への影響が殆どないものだ、とOxfamは見ている。
「その上、先進国は公約の1000億ドルの支払い方として、多くは融資の形で貸し出している」。従って途上国側はこれらの融資を返済する必要があり、ドイツの支援団体「Bread for the World」のMinninger氏は「このやり方は、ごまかしだ」と主張している。

(損失,Loss,と被害,Damage:気候変動対策資金調達のネックポイント)
世界は何十年もの間、熱波や干ばつによる作物の被害や地域の居住不能化など気候危機により引き起こされている損失(Loss)や被害(Damage)を誰が支払うべきか、について議論を重ねてきている。更に発展途上国はこの目的の為の追加資金を望んでいる。
先進国側は気候変動融資の範囲を超える損害賠償で訴えられることを懸念しており、また彼らは世界最大のCO2排出国の中国など経済的に強い新興国にも同様にドナー国としての支払いを望んでいる。
損失と被害については多くの疑問が未解決のまま残っている状況である。

(気候リスクに対するグローバルなシールド、Global Shield against Climate Risks)
気候リスクに対するグローバルなシールドは、2022年のCOP27においてG7とV20(気候変動リスクを特に大きく受けている約70カ国のグループ)により立ち上げられた。
壊滅的な異常気象に迅速に応えられるように、このシールド(絆創膏といった意味合いか)基金にはあらかじめ決められた金額が割り当てられている。
これまでに2.28億ドル以上が提供されており、その約80%はドイツ拠出となっている。

次いで、PakistanDawnの記事(気候変動への行動)を紹介する。

NASAの代表的科学者のJames Hansen氏は「産業革命以前に比べて世界の平均気温を1.5℃以内に抑えることは、ほぼ絶望的であり、2℃以内に抑えることも、もし我々が迅速かつ適切な行動を取らない限り、非常に困難な状況だ」と指摘している。

この終末論的シナリオ及び気候変動問題の議論に何ら進展が見られないという背景から、国際司法裁判所(International Court of Justice ,ICJ)は諮問手続きを開始している。
手続きには書面及び口頭諮問が含まれ、これにより気候変動に関する各国の義務についての指導基準が与えられることになる。
勧告的意見が下されるのは、2024年後半から2025年初めと見られる。

この動きは国連の下記の動向が引き金になっている。
国連総会(UNGA)はバヌアツ政府からのリクエストを支持する決議を採択した後、ICJに対して気候変動に対する国家の責務に関する勧告的意見を求めることを正式に決定し、ICJ に要請している。

これにより、気候正義の解釈に極めて大きな変化がもたらされ、気候変動対策の将来を形作る上で、またとない機会が提供されることになるだろうとみられる。
地球上から消滅の危険にさらされている国々や、生命を脅かす課題に直面している国々にとって、ICJが今後発表する勧告的意見は、国際法に基づく法的責任を大規模排出国に問う上で役立つ可能性がある。
この勧告的意見は、また現在および将来の世代で最も弱い立場にある人々に損害を与える気候変動に関する行為や不作為に対し政府の責任を追及しようとしている世界中の法域での気候変動に関する訴訟や裁判を強化する可能性がある。
これは気候変動対策の方針を変える画期的な機会を提供することになる。

ICJへの第一回目の書面提出の期限は2024年1月22日まで延長されている。気候危機の前面に立つ国々にとっては、この期間延長は気候正義について、より幅広く議論に取り組むことが出来る機会を提供するものと言える。

気候変動危機に最も責任を負う国々が、脆弱な国々に対する被害を抑制するために、今何を為すべきか、ということをICJ判事らに理解させるには、各国が人権・環境権や気候に関する国際法規的に確固たる証拠と先進的見解を持って、それぞれの訴訟ケースを如何に数多く提供するか、に掛かっている。
このことは、損失と被害を今後の気候変動交渉の最前線に据え、気候危機を管理するには道義的責任を超えて、拘束力を伴う法的義務をも国際社会に認識させることが必要ということである。

ICJの勧告的意見には、諸国が単に慈善的に脆弱国に対し援助を提供するという意識から脱却して、気候変動による被害と損傷に対する公正であり、法的に健全な賠償(reparations)という考えへの移行を促す面もある。被害のみを大きく受けている国々がこの機会を使いタイムリーにそして強力に主張すべきことを展開することが求められる所である。

地球が沸騰する時代、そして暴力が支配する世界にあって、この展開により多国間主義ならびに世界正義に新たな希望が注入される可能性がある。
自主性に任せて排出を削減するという考え方・システムは機能することはなかった。
この自主的削減の考え方は「解決策の計画」を策定する装置にはなったが、公正な将来への希望に関しては、反対に減退させていく方向に働いたと言える。
ICJの勧告的意見により、国家及び非国家主体(多国籍企業体をさすか)は、各国の法的責務を明確にして、履行に対する責任を負うプロセスに参加する機会を得ることになる。

ある国の開発と発展によって、世界の他の地域に暮らす人々の生活や生存が脅かされるのであれば、その開発と発展を推し進める権利は如何なる国であっても持っていない、という当然のことを世界に広める機会に、今回のCOP28がなるべきと考える。

壊滅的な猛暑と洪水が世界の半分に襲いかかるまでに、残されている猶予期間はもう7年だけだ、と言われている。

時を同じくしてネパールでICIMOD主催の初の極間会議(inter-polar conference)とフランスでの極地サミット(Polar Summit)が開催されており、地球の平衡感覚が危機に瀕していることを示す状況が生まれていると思われる。
「地球全体を想定するアプローチ」という視点を欠いては、今後は管理できないことが示されている。
現在人類に課せられた課題は、気候正義というレンズのみを通して判断すべきでなく、地球全体の生命システムの生き残りという全体的見方から判断すべきと、今回の国連総会のICJへの要請決定を捉えるべきである。
そして地球全体の生命システムのなかで、絶滅に向かうスピードを加速させているのが人類だけなのだ。

最後はAlJazeeraの記事(アフリカ気候サミットの間違いを、COP28は繰り返してはならない)になります。

グローバルノースのロビイストらがCOP28で誤った解決策を押し付けてくること、それを許してはならない。

11月末にドバイで開催されるCOP28。しかし会議に先立ち、気候変動政策へのアプローチに大きな変更が無い限り、有意義な進展はないだろうとの指摘が活動家や市民社会から既に打ち出されている。
グローバルサウス諸国側には、富裕国や多国籍企業が通常通りの事業を継続する施策が推進されており、貧困国は単に気候変動の矢面に立たされているのみではないか、という懸念が強くある。

この9月初めにナイロビで開催されたアフリカ気候サミットでも、この懸念は出されており、政府・企業・国際機関・市民団体から数千人の代表が集まったCOP28に先立つアフリカサミットで、アフリカの人々が損失(loss)と被害(damage)の補償、気候緩和、気候変動資金などの問題について共通の立場で合意を得る機会になると見られていた。

しかし発表された最終文書(ナイロビ宣言)ではアフリカ諸国間の一致事項やアフリカ諸国内にある最善の利益を反映するものには適っていなかったと言える。

グローバルノース諸国や多国籍企業のロビイストらには、彼らの誤った解決策を表明する為のスペースが与えられており、そして高いレベルでの会議アクセス権も彼らには与えられていた。
一方アフリカ大陸を支援する目的で透明性ある解決策を要求する活動家や市民社会代表らは、議事進行中のアクセスが困難な状況に置かれ、脇に据え置かれているのではないか、という状況であった。かかる会議の進行を考えるとサミット最終文書の結果は驚くべきことでもないだろう。

結果として、9月のアフリカ気候サミットでは主たる排出国のグローバルノースがアフリカ諸国を補償する政策を推進する一方で、サミットとしてはグローバルノースがアフリカ諸国に被害を与えることを継続するという政策を受け入れさせるものであった。

このサミット宣言では、炭素クレジット・炭素オフセットや炭素取り引きといった問題を含んでいる実践案に重点が置かれ、そしてそれを合法化したものであった。
これらは誤った解決策であり、アフリカ諸国が必要としているものとは言えない。
これらはグローバルノースがアフリカの土地と人々の支配を継続し、そしてアフリカ大陸の排出削減分に見合うクレジットを購入する一方で、グローバルノース側は温室効果ガスの排出を継続することが出来るシステムをアフリカの人々に認めさせたという、新植民地主義の戦術に他ならない。

炭素取り引き(carbon trading)という方策は排出国側が排出を継続することを目指して、その排出分に見合う炭素捕捉活動(アフリカにおける新規植林活動や森林保全活動等)をグローバルサウス側の国で行うというものであるが、ここで問題になるのは、これらの炭素捕捉活動を考えている地域には、そこに存在する森林や土地を生活手段として必要としている地元の人々が現に生活しているということである。
即ち、炭素取り引きの構図には、炭素捕捉という名目および自然保全という名目のもとで、地域に住む人々の生活権・生存権を脅かすという部分が含まれている。
このような計画では炭素排出量の増大に対処はできず、排出量の削減を拒否する富裕企業や先進国のグリーンウォッシングが可能となる構図を助長するということが良く知られている。
炭素取り引きのやり方が解決策でないならば、アフリカ諸国の損失と被害、適応と緩和への資金提供についてグローバルノース側はどういう形で支援を進めていくことが出来るのであろうか?

ここで「キャップとシェア(cap and share)」という考え方が対案となりえる、と気候活動家や市民社会が見なし始めている。
このシステムは世界規模の炭素税(international carbon tax)を中心に据えて、その税金の支払者はグローバルノースの化石燃料採掘組織であり、その主要な消費者だというものである。

この税は、世界規模のグリーンニューディール基金(global Green New Deal fund)向けに年間数兆ドルが見込まれ、その資金で再生可能エネルギー社会への移行や世界の全ての人へのエネルギー供給が可能となると考えられている。またこの資金により、損失と被害向けの助成金、グローバルサウスの適応と緩和活動、そして一般の人々を支援するための現金給付にも提供可能とみられる。

キャップとシェアは国民国家を超えて機能する税制を確立することになる。このことは気候正義の鍵となる考え方であり、永い間待ち望まれていたものである。

モデル化によると、世界規模の炭素税の経済効果は革命的であり、アフリカの全ての極貧状況からの脱却など、大きな利益が得られることが示唆されている。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

世界沸騰時代に対処するキーワード(1)「C3植物」対「C4植物」

2023-11-08 16:08:02 | 環境問題
「地球温暖化」危機というステージを飛び越え、次のステージ「地球沸騰化」時代に入ったとする話題が、今夏始まった。いよいよ「我々」は追い詰められたといえる。

ここで言う「我々」には、人だけが含まれる訳ではない。話題のクマも、その他すべての動物も含まれるし、蚊や蝶らの昆虫も、そして全ての植物も全ての微生物も含まれる。

即ち、地球沸騰化時代に突入するまで環境悪化を推し進め、放置してきた人の愚かさを、理不尽にも被害のみを受けている全ての動植物と全ての環境をも「おもんばかる」意識を、人が持つことが大切な姿勢と思う。

かかる観点から、「地球沸騰化」時代に対処する際に心得ておきたいキーワードを取り上げ、どちらの道を選ぶのが賢明かの選択に役立つ情報を提供してみたいと思う。

先ず、今回は「C3植物」と「C4植物」という言葉を通して、「地球沸騰化」時代における賢い農業政策選択の一視点を提供してみたい。

植物が光合成を行い、大気中の炭酸ガスを吸収し酸素を吐き出し、糖・脂肪・蛋白質等の様々な栄養素を作りだし、人を含め全ての光合成機能を持たない生物に対する食料を提供していることは、周知のことである。そして植物の持っているこの炭酸ガス吸収機能が、産業革命以降、主としてグローバルノースが化石燃料に依存する経済を拡大し世界支配を目指したことで過大に発生させた炭酸ガスの極めて有効な吸収装置になっていると捉えられていることも、周知のことである。

簡単に光合成のことをおさらいしてみる。

光合成の解明はカルビンとベンソンらの研究(1950年)から始まる。カルビン-ベンソン回路として知られる回路の存在を彼らは突き止め、光合成の機構が解明された。この回路は炭酸ガスCO2の同化吸収機構(植物の持つ炭酸同化作用とも言う)であり、グルコースやでんぷん、そして有機酸・脂肪やたんぱく質等が作りだされる出発の回路である。

このカルビン-ベンソン回路は植物の葉の維管束鞘細胞に存在しており、この回路の最初の段階を触媒する酵素(RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、Rubiscoと呼ぶ)がそこに存在し、取り込んだ炭酸ガスCO2を、5つの炭素を持つ化合物のリブロース1,5-2リン酸(RuBPと略す)に結合させる働きを行っている。

そして一旦6つの炭素を持つ中間体を経由し、3つの炭素を持つ化合物のグリセロアルデヒド-3リン酸(3PGと略す)2分子へと変わる。この3PGと略される3つの炭素を持つ化合物が回路の最初の段階で作られることから、この回路をC3回路と呼び、この回路を持つ植物群を「C3植物」と呼ぶ。

米や小麦そして大豆などの主要な農作物と陸上植物の大半がこの「C3植物」である。

カルビンとベンソンらの研究によりC3回路とC3植物の存在が発見され、植物の持つ炭酸同化作用は明らかになったが、その後彼らの研究に触発される形で、世界各国でいろいろな植物の光合成の追試確認研究が行なわれた。その過程でC3回路とは別種の回路、C3植物とは異なる植物の存在が明らかになった。

それが、ハワイにおけるサトウキビを用いた研究であり、「C4植物」と言われる一群の植物の存在が明らかにされ、注目されるきっかけとなった。

「C3植物」との違いであるが、まずその「C4植物」の持つ「C4回路」の活動場所が「C3回路」の場所と異なる点が第一の特徴である。

即ち「C3植物」の「C3回路」は葉の維管束鞘細胞に存在すると述べたが、「C4植物」の「C4回路」の活動する場所は、葉の維管束鞘細胞に囲まれる形で存在している葉肉細胞においてである。

そして第二の違いは、葉肉細胞中に存在する酵素の働きにより、3つの炭素からなる化合物のホスホエノールピルビン酸が炭酸ガスCO2と結合し、4つの炭素からなる化合物オキサロサクサンが出来ることが異なる点である。即ち3炭素化合物が炭酸ガスを吸収して4炭素化合物に替わることでサイクルが始まることから、この一群の植物が「C4植物」と名付けられた謂れ、なのである。

4つの炭素を持つオキサロサクサンはリンゴ酸に変換され、その後、変換されたリンゴ酸は葉肉細胞から維管束鞘細胞に送られる。維管束鞘細胞でリンゴ酸(4炭素)はピルビン酸(3炭素)に戻され、その際生じる炭酸ガスCO2は既に説明した維管束鞘細胞に存在する「C3回路」に取り込まれ、以降「C3植物」で起こるのと同じ工程で各種有用栄養成分が作られていくことになる。

即ち、この葉肉細胞に存在する「C4回路」は、「C3植物」には存在していない別ルートの炭酸ガス吸収装置・濃縮装置とも言えるシステムであり、何らかの状況により炭酸ガスの利用が困難になった場合、2つのルートの炭酸ガス吸収装置を持つ「C4植物」の方が1つのルートしか持たない「C3植物」より有利になるとの予測が出てくる。この点が地球「沸騰化」時代の農業施策を考える際のポイントになる「C3植物」と「C4植物」との違いである。

以下「C3植物」と「C4 植物」の違いについて焦点を当てている文献を基に説明を進めていく。
  参考文献:植物生理学II 第9回講義(光呼吸とC4光合成)
       北海道大学農学部 環境ストレスと植物の反応
    他にも多くの文献がネット上で見ることが出来ます。

1. 炭酸ガスの有効利用性については「C4植物」の方が、「C3植物」と同じ機構がある上に、加えて炭酸ガス濃縮装置C4回路という特別装置を持っていることから優秀と言える。但し、C4回路を回転させるためには高エネルギー物質のアデノシン3リン酸ATPが余計に必要とされ、エネルギーを余分に必要とするという欠点が存在している。

2. C3植物の説明で、酵素Rubiscoが炭酸ガスCO2をC3回路に取り込む反応を触媒することから回路のサイクルがはじまると説明した。この酵素Rubiscoは炭酸ガスだけでなく、大気中のO2とも親和性があることが知られており、O2が酵素Rubiscoにより取り込まれると「光呼吸」と呼ばれる反応がスタートすることになり、植物組織内の有機化合物が酸化燃焼されエネルギーが発生利用されるとともに、炭酸ガスCO2が逆に発生することになる。いわばCO2とO2とのいずれが酵素Rubiscoに取り込まれるかは植物の置かれている環境に左右されることになる。よって現在の炭酸ガスCO2が過大に存在している地球沸騰化の局面では、C3植物は有利な環境とも言える。
 しかし炭酸ガスが過大な環境では必然的に気温が高くなっているわけで、この様な環境ではC3植物の光合成活動は抑制される、ということも知られている。それが次の3.の項目である。

3.「C3植物」と「C4植物」との決定的な違いが紹介されている。それによると
  -「C3植物」が有利な環境:湿潤・低温・日射が弱い方が好ましい
  -「C4植物」が有利な環境:乾燥・高温・日射が強くても良い
ここで日射が強く、高温で乾燥した環境が、「C3植物」に不利になる理由が説明されている。
 高温・乾燥(必然的に日射も強い)になると、植物は「葉の気孔」からの水分の蒸散を防ぐために「気孔」を閉じる方向になり、従って炭酸ガスを取り込むことが困難な方向になる。よって「C3植物」は光合成能力が低下し、高温乾燥条件下で萎れていくことになる。一方、「C4植物」は気孔の閉鎖傾向による炭酸ガス摂取力が低下するものの、それに打ち勝つC4回路という特別炭酸ガス濃縮装置を持っていることから生育が妨げられないという特徴を持っていることになる。

結論として、現在の地球「沸騰化」時代に賢く対処するには、米や小麦といった乾燥・高温・干ばつといった環境に弱い「C3植物」に偏った農業施策だけの遂行では、世界の食料安全保障は不安定な状況に導かれていく恐れが高いと言え、従って合わせてアワ・ヒエ・ソルガムといった「C4植物」の栽培を推進する農業政策が強く望まれることになる、との考えが出てくる訳です。今年も残す所2カ月を切ったが、2023年度が国際Millets年と国連が唱道している理由は、この辺りにあると言えます。

代表的な「C4植物」であるMilletsにはアワやヒエ・キビがあり、ほかにトウモロコシ・ソルガム・サトウキビ・ハトムギ等がある。

アワ・ヒエ・キビの世界の生産量は3,000から4,000万トンと言われ、国祭Millets年に関わらずそれほど拡大は起こっていないように見える。但しアフリカでは緑の革命(Green Revolution:GR)型の種子企業・穀物メジャー・肥料企業・農薬企業が先導する工業型農業が主流の状況下にあるが、その弊害が指摘され、それに代わる農業(Agroecologyという)が復興しつつある状況にあり、Milletsの生産量がアフリカで拡大する兆候が指摘されている。※Agroecologyについては次回に触れる予定。

ソルガムの世界生産量はもう少し多く6,000万トン程という。但し利用のされ方はどちらも家畜の飼料が大半で、最近バイオエネルギー関連での利用が注目されているという。人が食する場面では、美容にこだわる人や健康を重視する人が少し存在して食べているのが現状と思われる。

いずれにしてもMilletsとソルガム合わせても1億トン程度で、米・小麦・トウモロコシという主要穀物の生産量の27億トン程と比べると4%にも満たない、少ない状況である。

日本ではアワ・ヒエ・キビは現在年に200トンが流通しているだけでほぼ全てが飼料利用である。しかし文明開化以前の日本ではコメと共に主食の地位を占めていたという歴史がある。

今回「C3植物」対「C4植物」というテーマで「C4植物」の優秀性を示してきた。ことに地球「沸騰化」と言われる時代には、この「C4植物」の優秀性ということに着目することは、時代に対処していく上で重要なモノサシになると思う。

大気中の炭酸ガス量は産業革命前の250ppm程度だったのが、今や400ppmを越え、更に高まっていくことが強く予測され、そして今年が世界Millets年ということの重みに思いをはせ、賢明な対処策を世界が・国がそして個人個人が考えていくことが望まれると思う。

因みにここ数カ月アワと押し麦を主体に米は4分の1位に減らした食生活に替えて暮らしている。結構、ヨサげな感じで暮らせています。そして「エゴマ」の粒を毎朝7g程度すりつぶして食しています。こちらはDHAやEPAと同等の不飽和必須脂肪酸の摂取を狙っての食生活の智恵です。

更に、大豆は納豆(納豆は大切な食品です)の形で日に一個、それ以外の豆の摂取目的で「ひよこ豆」の煮たものを100g程度毎日食べています。大豆には大豆油が多く含まれており、農水省推奨の一日100gの豆をすべて大豆の形で食べると油分を多く取りすぎることになり、それを気にしての油分の少ない「ひよこ豆」を採用しているわけです。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

気候変動への挑戦-小さな島嶼国Barbadosの事例

2023-08-28 16:07:50 | 環境問題
「気候変動への挑戦-小さな島嶼国Barbadosの事例:
 グローバルサウスが、国際金融構造を変革して、サウス・サウス間協調の強化を目指す」

「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクト(The Global South in the World Order Project)という機関があり、毎月グローバルサウスの専門家を集めて会議を開いている。

グローバルサウスの立場から見た国際関係の話題を議論すること、現在の西欧が主流の考え方に対して異論を提示すること、そして非西欧的な視点をワシントンの政策立案サークルに投げかけること、を目的としているという。

先週開かれていたBRICSの会合についてネット情報を見ている過程で、この存在を知る機会があった。そもそもBRICSが向かう方向の一つは、グローバルサウスという存在を如何に世界に認知させていくか、そして現実に存在しているが故に当然持っていてしかるべき彼らの発言権を如何に確保し保証していくか、ということであろう。その流れから今回BRICSはエジプト・エチオピア・イラン・サウジアラビア・UAEそしてアルゼンチンを新たにメンバーに迎え入れたのであろう。BRICSの動向も今後注目すべき対象である。

そしてグローバルサウスの問題は何もアフリカ・アジア・中南米に限った話ではないと常々思っている。グローバルサウスの国の中にもグローバルノース部分は存在しており、またグローバルノースの中にもサウス部分が存在しているということが、現代社会の困った状況をピッタリと表現していると思っています。

原因は、ここ数十年にわたりグローバルに蔓延した新自由主義・経済拡張市場至上主義だったことは言うまでもなく、故に世界の格差拡大は止まることを知らずに進み、同じく日本国内にもグローバルサウス部分の拡大化が進んでいるのが実態です。

今までもグローバルサウスの視点を一つの物差しに世界状況を見てきております。この世界の現況情報が日本国内の状況を考えていく際にも極めて示唆的なものを提供するとの思いから、そんな過程で見つけた「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクトの発信する情報の存在を先ずは紹介したいと思います。
世界の格差矛盾の問題を考えるだけでない、日本の中の格差矛盾をも考えていく上で意義あるものと思います。
今後折に触れて紹介していきたいと思いますが、先ずは8月25日付けの記事から取り上げてみます。

***
「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクトはこの7月28日、グローバル金融構造変革に関するBarbadosの2022年Bridgetownイニシアティブ構想について討論を行っている。この構想は、島嶼国BarbadosのMia Mottley首相がグローバルサウスへ向けての気候変動対策資金の利用の上で障害となっているものを取り除くことを目指して積極的に主張している提案のことです。

専門家らはこの会議でこれらの諸国の負債の重圧を軽減するための具体的方策を検討し、そしてグローバルサウス全体を支援する上ではBridgetownイニシアティブ構想を推進することが如何に重要であるかを議論している。そして国際金融機関の協力ならびに国際金融機関の効果的な改革を確保し、進めていくのに西欧諸国が中国と協調することの重要性も議論しています。

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「グローバルサウスの気候問題向け資金調達の挑戦」
Veronica Gutman氏(ブエノスアイレス大学・アルゼンチンTorcuato Di Tella財団研究員)

グローバルサウスは今、先例のない絡み合った課題に直面している。生活費危機・負債危機・予算と財政上の課題・政治的および制度的困乱状態そして緊急事態の異常気候危機。これらの課題には緩和(Mitigation)と適応・順応(Adaptation)の為の投資資金として数兆ドルが要り様とされている。

途上国が、回復能力を高め、そして低炭素型経済を促進展開するには、気候課題向けの資金を緊急に展開することが必要である。コロナパンデミック・ロシアとウクライナとの戦争および異常気象が悪化を辿るという厳しい制約を経済的・社会的に受けているとはいえ、途上国は適切な緩和措置努力を講じる必要がある。必要となる財源は今起こっている異常気候の損失と損害(Losses and Damages)の両方を手当てするとともに、今後に必要とされる適応・順応措置努力にも手当する必要がある。

しかし、国際的な気候変動向けの融資構造は、通常短期的金融投資に適用されるモノサシを使って各国を評価しており、基本とすべき長期的な低炭素社会構築向けのインフラは視野に入っていない。広く行きわたっている金融投資の根拠として考慮に入れられているのは、国際的な主要投資家らの見方や好みであって、温室効果ガス(GHG)排出を世界規模で削減するという責務や途上国の明確な責務といったものは無視されることになる。

途上国のGHG対策動向を修正する上で緊急に必要なこと、そして避けることのできない気候変動の打撃に直面している地球を緩和化し順応化し助ける上で緊急に必要なことは、金融の流れを支配している評価基準に革命的な改革を直ちに行うことである。
ことに途上国にとって利用可能な資金は3倍化すること、損失と損害に対する交付金・補助金(grants)は利用しやすくすることが必要であり、低コストの長期譲許的融資が提供されるべきである。

更に、革新的な金融商品を開発することが重要である。例えば負債-気候スワップ(Debt-for-climate swaps)は途上国の負債負担を軽減することに役立ち、気候変動に関連する要請に応える資金を提供するのに役立つ。持続可能性に繋がる融資は、これらの融資が金利の低減を通じて気候目標を達成した国に報いることが出来ることから、もう一つの方策になる。

簡単に言うと、現在の経済的および社会的危機の状況の中、気候変動危機により途上国に課せられている挑戦の為の資金ニーズは緊急性があるとともに複雑さもあると言える。これらの諸国は経済の下降および不安定な社会状況に直面している中で、持続可能な開発の達成に努力しており、気候変動対策向け行動への適切な財源を確保することは最も重要な課題となっている。

気候変動への順応・適応策ならびに緩和策の取り組みに対する資金不足を埋め合わせるためには、資金メカニズムの革新化・協調的パートナーシップの構築やグローバルな各課題の優先順位付けの再設定を行うことが大切となる。資源を有効に動かすことで、負債軽減が促進され、そして資金的支援の平等な分配がなされることから、国際共同体組織がこれら諸国の回復力拡大と環境上のリスク緩和に役立つことになる。これらの諸国が直面する多方面の課題が存在するものの、この様な行動を取りいれることによってこれら諸国はより持続可能であり、如何なる国も漏れなく全て包み込まれることになるという、より包括的な将来へと続く道を切り開いていけることになるだろう。

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「ブリッジタウンイニシアティブ(Bridgetown Initiative)が如何に世界秩序の再考に役立つか」
Brurce M,Mecca氏(Climateworkセンター上級アナリスト)

インドネシアおよび東南アジアの気候変動に永らく携わった経験から、西欧ではしごく普通と思われる西欧の思考様式が如何にグローバルサウスとの間の気候問題の国際間交渉において彼らが公平公正さを欠き、そして愛他心を欠く姿勢を取ることになるのかが、想像ができるのである。

例えば、気候変動事象に基因する損失と損害(Losses and damages)に関わる基金の創設の希望は1991年小さな島国のバヌアツが提起したが、この最も気候変動に脆弱な国々のための基金設立に国連気候変動枠組み条約の締約国が合意したのは、昨年のCOP27の最中であった。実に32年後に実現したことになる。

そもそも損失と損害基金構想の背景は、これまでのGHGの92%分の排出に関わっている西欧が、世界からかき集めた資産を使って自身らは取り得る最大の緩和化策(mitigation)と順応化策(adaptation)で見を守ることを行いつつ、一方ほとんど排出に責任の無いバヌアツやバルバドスのような島嶼国がただただ被害のみを被っており、適切な緩和化策や順応化策を取ろうにも彼らに使い勝手の良い公正公平な世界金融システムがないという、構造の欠陥に注意を払うことが重要な視点である。そして今現在も続く世界金融システムが先進国によって優先的に独占的に支配され続けているという欠陥構造なのである。

かかる背景のもと、昨年のCOP27においてMia Mottleyバルバドス首相が、気候異常事象により良く対応がとれるように世界金融構造を改革するべく2022 Bridgetownイニシアティブを提案した。事実、グローバルサウス諸国の気候変動資金に対する必要性は今後数年中に更に高まっていく情勢である。

ここではグローバルサウス諸国に向かう資金の流れの障害となっているものを取り除いていくことに加えて、グローバルサウス諸国がそれぞれの国の市民の生活水準向上努力を犠牲にしたやり方で気候異常事象の対策を行うことのないよう、国際社会は配慮して保証していくことが重要である。

提言されたイニシアティブは、国際通貨基金(IMF)に対し、利用可能な緊急流動性を拡大するよう促しており、多国間開発銀行(multilateral development banks)に対して1兆ドルの融資手段(lending instruments)を追加するよう求め、多国間機関の支援による気候変動強靭性の為の民間投資を奨励している。

このイニシアティブが、基本としているのは、気候変動事象に大きく打撃を受けており、そして高い利子(先進国の数%に対してグローバルサウスは14%の利息とも言われる)の負債返済に今現在苦しんでいる途上国に対して、気候変動向けの資金が、常時利用可能だということを保証する具体的な方策を提供することである。

Bridgetownイニシアティブの訴えかけの核心部分は、地球温暖化を1.5℃未満に抑えるという2030年の気候目標の達成のためには、少なくとも35兆ドルの利用に障害となるものを取り除くことが出来るよう世界金融システムを改革することを希求することである。

このイニシアティブは必要に迫られて生れたものであり、現在存在し、提示されている多くの解決策は全く持って不充分だと明確に指摘することは大切なことである。現状の解決策が不充分ということは、インドネシアを含めて全てのグローバルサウス諸国にとって当てはまることであり、これらの国々は異常気象に対する緩和化(mitigation)措置、順応化(adaptation)措置、強靭化(resilience)措置に要する資金援助の利用しやすさに関する難題に直面しているのである。

視野を広げて見ると、Bridgetownイニシアティブは、国際金融構造を我々が理解する上で役立つといえる。公正であり、バランスのとれた気候についての国際的統治が如何なるものであるべきか、が今や理解できるといえる。世界は気候変動と闘うためにBridgetownイニシアティブのような現実的な解決策を必要としているが、世界の気候統治を再構築するにはまだまだ多くの作業が残されている状況である。これら残されている作業には、気候変動に対する責任と権利をどのように線引きするか、などが含まれている。

今日、グローバルサウス諸国の気候変動向け資金利用の権利が大きく合意されているのであれば、西欧富裕諸国もまた、現在のGHGの90%以上という過去の排出の責任を負わなければならない。換言すれば、西欧富裕諸国の責任は、グローバルサウス諸国の気候変動向け資金利用を提供することに留まるものではない。手遅れになる前に大気中からGHGを意図的に除去(carbon capture)するというマイナスの排出に相当する努力を西欧富裕諸国は行う必要がある。

ブータンは炭素排出がマイナスという世界でも稀な国の一つである。ブータンでは年間700万トン程のCO2が吸収され、一方で排出は200万トン程という。ブータンの実態を全て西欧富裕諸国にそのまま当てはめるのは妥当でないものの、彼の国の成功実態を検討することは必要なのではないか?

ということで少し、ブータンのことを調べてみました。
国土面積:38,332km2(3,833,200ha)内72%が森林      
人口:80万人程 
1972年以降有名なGross National Happiness (GNH)を、GDPの代わりに政策指標とする。
2009年に国土の森林カバー率が60%を下回ることのないように憲法を改正している。
そして輸出用森林伐採を禁止。
2010年に新森林政策が制定され、それまでの保全重視の政策から森林の持続的利用と保全のバランスを図る政策へと変更している。これにより政策の優先度は生産林の持続的管理、自然保全、流域管理、住民林業と民間林業を含む社会林業、木材産業に重点を置く方向になっている。
河川での水力発電を優先して、農村地域での煮炊き用薪の利用削減を目指して電力無料化を進めているという。
水力発電能力は最大で30,000MW。この内の5%分程の1500MWが開発済みで、その70%分はインド向け電力。2020年までに更に10,000MW分を追加してインドへ輸出する契約をしており、新たに10基のダムを建設中。
2020年までに100%オーガニック食品の生産化を目指し、2030年までに廃棄物ゼロ化とGHG排出をネットゼロに、を目標としている。
観光ビジネスには慎重な姿勢を取っており、観光客に1日200から250ドルの開発手数料を徴収してエコツーリズムと環境保護の両立を図っている。

因みに日本は、国土面積:373,100km2(37,310,000ha)ブータンのほぼ10倍、内森林面積は25,000,000haで森林カバー率は67%。
降水量の豊富さ等、地勢的には極めて類似点の多い国であると思います。
人口密度は平均値として15倍程大きいという違いはあるものの、限界集落やそれに近ずいている地域のことを思うと、事態はそれほど違わず、大いに真似られるというか真似なければいけない部分も大いにあると思うのですが?

***
今回は「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクト(The Global South in the World Order Project)という機関の存在を示すことと、それがグローバルサウスの声を聞く良い媒体ということを紹介することを第一にしております。

BRICSも一面グローバルサウスの声の拡大化を重要目標に据えているグループといえます。BRICSの今回の会議については別の機会に取り上げてみます。

11月末のCOP28を見据えて、9月のインドで開催されるG20にModi首相はアフリカ連合を取りこむ発言が既に打ち出されており、アフリカを始めとするグローバルサウスを取り巻いての駆け引きが活発化する様相が出ております。

大切なことはグローバルサウスの使い勝手を中心に据えた金融構造の改革の話の方向が進展していくのか、西欧先進国が従来のGHG排出分の償いを意識した拠出金拡大を自律的に進めていくのか、そしてグローバルサウスの声が高まることを当然とする世界の方向になっていくのか、がポイントと思っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

2023年7月28日に終了したインド開催のG20環境・気候変動相会合の報道に関する雑感

2023-08-01 15:18:19 | 環境問題
上記会合がインドのチェンナイで開催されていました。

この会合が気候変動に対するものであり、G20のこの課題に対する現在の状況を見定めるという視点から、その成果がどうであったかは興味があり、幾つかの報道機関の報道をもとに紹介する次第です。

また我がNHKがどう報じているのかも比較が出来る格好の機会でもあることから、かかる観点から、NHKがどこまで日本の市民のことを思って活動してくれているかの紹介もしたいと思っております。

では入手可能なネット情報を見ていきます。

1. ロイター配信
表題:G20環境相会合、排出削減で見解に溝 共同声明見送り

 G20は28日まで3日間の日程で、インド南部チェンナイで環境・気候相会合を開き、気候変動問題などについて協議したが、先進国と途上国との間の見解の相違が埋まらず、温暖化ガス排出削減の目標を巡り合意に至らなかった。インド政府当局者が明らかにした。
 当局者によると、先進国側は地球温暖化を抑制し、熱波・山火事・洪水の悪化を食い止めるために、2025年までにGHG排出量のピークを実現し、2030年までに排出量の絶対量を43%削減することを提案した。
 これに対し、途上国側はインフラ整備や成長能力が制限されるとして、この双方に反対した。2015年のCOP21パリ合意を順守するよう求めた。パリ合意は、各国がそれぞれの状況に応じた方法で、地球温暖化対策を進めることを認めている。
 欧州の代表団によると、中国とサウジアラビアはG20協議を通したコミットメントを拒否。
 欧州連合(EU)のシンケビチュウス欧州委員(環境・海洋・漁業担当)は、一部の国がこれまでの気候変動に関する公約を撤回しようとしていると非難し、「狭い国益に基づいて動いてはならない。最も動きの鈍い国により変化のペースが決められることがあってはならない」と述べた。
 G20議長国インドのブペンダル・ヤダブ環境・森林・気候変動相によると、全ての問題に関する加盟国の完全な合意が必要な共同コミュニケの代わりに、協議の成果をまとめた声明と議長総括が発表される。
 G20は先週インドのゴアでエネルギー相会合を開いたが、一部の国の反対により化石燃料の段階的削減で合意に至らず、4日間にわたった会合の最後に共同声明ではなく、成果声明と議長総括が発表された。

2. 共同通信2023年7月28日
表題:G20環境・気候相会合が閉幕

インドで開かれたG20環境・気候持続可能性相会合が閉幕した。
共同声明は採択できず、代わりに議長総括などを公表した。

3.Climate Home News  2023年7月28日
表題:G20気候変動協議は指導者の嘆願にもかかわらず排出削減を達成できず

 COP28議長のスルタン・アル・ジャベール氏と国連気候変動責任者のサイモン・スティエル氏は、G20各国に対し、リーダーシップを発揮し、野心的な排出削減を実現するよう呼び掛けた。
 インドのチェンナイの首脳会議で、先進国は地球温暖化を抑制するため、2025年までに排出量のピークを達成し、2035年までに排出量を、2019年の水準から60%削減するという約束を求めた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、これは地球温暖化を臨界値の1.5℃に抑えるためには必要とされる条件である。
 しかし途上国側はこの要求に反対し、各国はその置かれている状況により、それぞれ異なった方法で地球温暖化に対する対策を講じるというパリ合意に基づく方式の堅持を主張した、とロイターは報道している。
 この結果はCOP28議長のスルタン・アル・ジャベール氏と国連気候変動責任者のサイモン・スティエル氏とがG20に参加する各閣僚に対し求めていた要請、即ち的確な道筋を構築し、そして気候変動への対抗意志を明確に示した上で各閣僚はチェンナイから帰国してほしい、とすることに矛盾したものである。
 今回のG20会合は国連気候サミット(COP28)に先立ち、各目標に対するコンセンサスを得る重要なフォーラムの位置付けと見られている。G20各国は世界のGDPの85%と排出量の80%を占めている。「世界は各国の指導者らの団結と行動と救助活動を要請している。そしてその出発点がG20であって欲しい」とジャベール氏とスティエル氏は主張している。
 しかし数日の激しい討論の後、今回の会合も、先週のG20エネルギー相会合の結果と同様に合意には至らず、分裂状態で終えることになった。
 一部の欧州当局者は、少数の国が以前の気候公約に逆行する行動をしていると糾弾している。「我々は大胆な選択を求められており、そして勇気と実行約束とリーダーシップを発揮するよう求められている。我々は狭小な国益によって突き動かされるべきではないし、そして最も歩みの遅い国が規定する変革スピードに合わせるべきではない」と欧州環境委員のバージニジュス・シンケヴィチュウス氏は述べている。
 意見の相違により、会議終了時に共同文書を作成することが出来ず、代わりに結果発表と議長による要約が発表された。
 要約では、各国はエネルギー転換の問題とそれをこの文書にどのように反映するかについて異なる見解を持っていると述べている。
 チェンナイでの会談は、化石燃料の使用削減と再生可能エネルギーの目標設定の公約をめぐってG20のエネルギー相が先週土曜日に意見交換をした際の意見相違の再現だった。
 COP28の議長ジャベール氏の描く計画の柱は、今世紀半ばまでに化石燃料を段階的に削減し、2030年までに再生可能エネルギーを3倍化することである。
 オブザーバーらは、これまで幅広い合意が得られていたように思われた再生可能エネルギーの目標に関して、意見の対立が存在することに驚いているという。
 会談に詳しい2人の関係筋によると、先週の会合で各国政府は3つの陣営に分かれていたという。
 EUとドイツに支援を受けているG20議長国のインドは、再生可能エネルギーを3倍化するというより高い達成目標を支持していた。
 フランス・アメリカ・韓国を含むグループは、この公約の骨抜き化を目論み、再生可能という言葉を限定したり、焦点を絞りこむという考えを嫌って、原子力発電や二酸化炭素回収技術をも含む低炭素解決策を含める様な文言に拡張するよう求めている。
 ロシア、サウジアラビア、中国、南アフリカなどの強硬派は、いかなる形の再生可能エネルギーの目標を導入することにも反対していた。
 現在、アル・ジャベール氏率いるCOP28チームに注目が集まっている。11月のドバイ首脳会議に先立ち、ジャベール氏には意見の隔たりを解消し、何らかの合意形成を図る圧力が高まっている。
 「COP28議長国はあらゆる機会を通じて野心的であり、達成可能な目標を明確に約束するよう引き続きすべての関係者に呼び掛ける」と広報担当者は語っている。
 9月のG20首脳会談は、その目標達成に向けた進展を示す最後の機会の一つになるだろう。

4.The Indian Express 2023年7月29日
表題:G20気候変動会議、強化された行動に関する合意なく終了

 先進国が全員に緩和目標の強化を求める一方、途上国のグループは金融と技術に関する未だ実行されていない約束の履行を強調し、先進国に対し、更なる努力を要求した。
 G20環境・気候大臣会合では、気候変動対策の強化を示す如何なる文言についても合意に達することが出来ず、気候変動対策の強化を求める主要経済国の期待は空回りしたままだった。
 G20の環境・気候持続可能性作業部会の作業を終えた閣僚会合では、排出削減目標の引き上げや2025年までの世界排出量ピークの達成など、最も重要な問題について意見が分かれたままだった。
 先進国が全員に緩和目標の強化を求める一方、途上国グループは金融と技術に関する執行されていない約束の履行を強調し、先進国に対し更なる取り組みを求めた。これらの良く知られた溝は、気候変動会議でも野心的な意思決定を妨げてきていた。
 G20で採択された決定は気候変動会議で到達した合意に代わるものではないが、グループ内の国々の経済的・政治的影響力の故に、グローバルレベルで変動を誘因する可能性がある。
 チェンナイ会合では、一部の国が世界の排出量のピークを2025年までに達成するという約束にG20各国が合意することを望んだが、これは途上国にとっては同意できない内容だった。2035年までに世界全体で2019年の基準値から60%の排出量削減に取り組むという提案もあった。現時点での科学的なコンセンサスは、各国が1.5℃目標の達成に期待を持ち続けるためには、2030年までに2019年のレベルから排出量を約45%削減する必要があるということだ。
 G20の途上国グループは先進国に対し、ネットゼロ目標を10年前倒しし2040年までにカーボンニュートラルを達成することを約束するよう要求したが、これもまた全員が同意するものではなかった。
 世界の再生可能エネルギーの3倍化、化石燃料の継続的な段階的削減計画、メタンなどの非二酸化炭素温室効果ガス排出量の削減などが、合意が出来なかった他の問題の諸点であった。インドなどの途上国も、欧州で今年から施行される炭素国境調整メカニズムについて、偽装貿易障壁に当たるとして懸念を表明した。

5.Kuwait Times 2023年7月30日
表題:G20で気候危機に関する合意出来ず 2025年までに排出量のピーク化の合意ならず

 G20の環境大臣らは金曜日、インドで開かれた会合で、世界の排出量を2025年までにピークに達させること、再生可能エネルギー利用の3倍化等、世界の気候危機に対処するためのその他重要な問題について合意出来なかったと述べた。フランスの環境大臣クリストフ・べシュ氏は「特に石炭の段階的廃止や削減についても合意出来ず残念だ」と語った。そして、中国・サウジアラビアとの協議、ロシアとの協議は複雑だったと、べシュ氏は付け加えている。
 会議の議長を務めたインドのブーペンダ―・ヤダブ気候変動大臣は、「エネルギーに関するいくつかの問題といくつかの目標を定めている課題が存在していた」ことを認めている。
 今回のチェンナイでの会合は、世界のGDPならびにCO2排出量のそれぞれ80%以上と影響力の大きい国々のエネルギー担当相らがインドのゴアにおいて、世界の現在のエネルギーの各源泉から化石燃料を削減していくという工程作りに失敗した数日後に開催されたものであった。気候専門家らが洪水・暴風雨・熱波を引き起こしている要因が記録的な高温にあると指摘する中での、今回の合意作りの失敗は緩和努力に水を差すと見られる。
 石油産油国らは、厳しい緩和措置を講じることによる彼らの経済への影響を心配している。そしてゴアでの進展が無かった原因として、ロシアとサウジアラビアを非難した。
 運動家らは度重なる合意の失敗に落胆している。気候変動シンクタンクE3Gのアレックス・スコット氏は「欧州・北米は炎上中で、アジアは洪水に見舞われている。こんな中、G20気候大臣らは日に日に高進する気候危機を抑制する共通の方向性についての合意に失敗している」と述べ、サウジアラビアと中国の抵抗は、彼らが途上国の利害を擁護しているとする主張に反する、とも付け加えている。
 今年のCOP28気候変動会合の最高責任者のアドナン・アミン氏は「この金曜日の会合に参加した全員が、世界が直面している危機の重大性を理解している。だが、一種の政治的了解が働いていると思う。全ての国が先ず自国に直接に関わる利害をおもんばかる所から始めるのは明白なことだ」と指摘している。
 大半の参加国の代表は環境ならびに気候変動担当大臣で、一方米国はジョン・ケリー気候担当大統領特使が代表団を率いていた。そして11月下旬から始まるCOP28会議を主導する石油トップのスルタン・アル・ジャベール氏も出席していた。ジャベール氏は、彼がアブダビ国営石油会社のトップであり、地球温暖化の主要な原因と目されていることから、厳しい批判にさらされてきている。
 欧州連合環境委員のヴィルジニジュス・シンケヴィシウス氏は「壊滅的な気候事象の証拠が増えている。そして人々の暮らしが破壊されている。交渉の歩みは遅く、G20はウクライナ戦争で分極化し、重要な課題に対して明らかな意見の対立が起こっている。エネルギー調達等の望ましいシステム移行を資金面で支援する観点や、短期的に発生する打撃による影響を改善する観点の課題は、永らく途上国と富裕国との間で論争されてきている」と言う。
 インド等の主な途上国は、従来から主要排出国だった諸国が、貧困国側における緩和努力の費用をより多く負担する必要性を論じている。「先進国はどんなことを公約しようとも、それらは実行されなければならない」とヤダブ氏は言う。そして土地の劣化問題や海洋資源の持続可能な利用法等の幾つかの課題については合意に達したと付け加えている。

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7月28日まで行われていたG20チェンナイ会合の状況を紹介する新聞や論説を紹介しました。チェンナイ会合の模様とその数日前に同じくインドのゴアで開催されていたエネルギー問題会合についても、ある程度の現状認識は得られるものと思います。

現在の気候危機の大半の原因を作り、そして今はその蓄積した資金力と技術力を背景に自国の気候危機への対応は充分に行っている状況にある先進国の優越的立場が一方にあり、そしてもう一方では責任を問われる必要のない国々でありながら、気候危機の惨状を甚大に被っている資金力に乏しい途上国が存在しているという構図を、先ずは絶えず議論の前提に置いておくべきでしょう。

そのような視点を意識した報道を我々は求めたいものです。そういう観点でG20チェンナイ及びゴアに対する世界の報道は全体を通して見ると、視野を広く取りバランスを考慮しており、一定の評価は出来るのではと思います。

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では最後にNHKがチェンナイ会談をどう報じているかを見てみます。

6.NHK NEWS WEB 2023年7月29日
表題:G20環境と気候変動問題の閣僚会合 共同声明まとまらず

 インドで開かれたG20=主要20カ国の環境と気候変動問題の閣僚会合は、ロシアのウクライナ進攻をめぐる記述などで折り合えず、共同声明をまとめることができませんでした。
 インド南部のチェンナイで28日開かれたG20の環境と気候変動問題の閣僚会合では、気候変動への対応や海洋資源の保全などについて議論が交わされました。
 閉幕後の記者会見で議長国のインドは「持続可能で強じんな未来の実現のために、G20の閣僚は一致した立場を示した」と述べ、成果を強調しました。
 一方で、声明への具体的な記述をめぐり各国の立場に隔たりがあったとして、共同声明を見送ったことを明らかにしました。
 閉幕後に発表された議長総括によりますと、会合でロシアがウクライナ情勢や経済制裁などに関して、ほかの国とは異なる立場を表明したほか、中国は地政学的な内容を声明に盛り込むことに反対したとしていて、ウクライナ進攻などをめぐり、折り合いがつかなかったものとみられます。
 ことしインドで開かれているG20の閣僚会合では、欧米とロシアの対立が続くなか、共同声明がまとまらない事態が相次いでいます。

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欧米とロシアの対立と言う記載やロシアのウクライナ進攻と言う文言を計4か所で使っていたり、中国が反対したことが折り合いをつけられなかった要因だとしている等、共同声明がまとまらない事態が相次いでいる原因はすべてロシアと中国のせいだと言っているようにうけとれるG20の紹介記事に仕上げております。

異常気象と言う困った課題の存在は認めるものの、極めて健全な国際社会の中での困った国、ロシア・中国、という構図を際だたせようとする悪意とも思える論説と言えます。そして日本を含めた健全な先進的欧米社会が提示する改革プログラムがベストとの意識が見え隠れしているようにも感じます。

今回G20の会合で目指した合意が達成できなかった根本理由は、次の点における先進国側と途上国側との間に大きな溝があり、今回も埋められなかったことが最大の要因でしょう。

即ち、「先進国は全員に緩和目標の強化を求める一方、途上国のグループは金融と技術に関する未だ実行されていない約束の履行を強調し、先進国に対し、更なる努力を要求している。」そして「エネルギー調達等の望ましいシステム移行を資金面で支援する観点や、短期的に発生する打撃による影響を緩和し改善する観点の課題は、永らく途上国と富裕国との間で論争されてきている。インド等の主な途上国は、従来から主要排出国だった諸国が、貧困国側における緩和努力の費用をより多く負担する必要性を論じている。」

NHKの報道姿勢には、現在の気候危機の大半の原因を作った日本も含まれる先進諸国の責任意識の希薄さが、そして自国の気候危機の軽減策もそのグローバルサウスから奪い取り蓄積した資金力と技術力を背景に講じることさえ整えればそれで良しとする、優越的な傲慢さが現れていると思います。

責任を問われる必要のない、ただただ気候危機の惨状に疲弊している途上国のことをおもんばかる眼差しの欠如を感じてしまう、極めて残念な報道姿勢と考えます。

そして先進国対途上国という構造に存在する格差問題を思わず、前提にして考える癖がついてしまい勝ちですが、先進国の中にも、そして途上国の中にも同じ格差問題がそれぞれ潜んでいるということも、議論の大前提に加えておく習慣を持つことも重要と思っております。

我々のまなざしを向けるべき先は非常に多く、そして見た目は極めて自然に見えてしまうものの、それでいて極めて力強く格差を強要する勢力が存在することに注意し続ける必要を感じます。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

命の危険すら感じる暑さを考える

2023-07-30 16:08:40 | 環境問題
ここ数日、異常気象やそれに関連する報道記事が、それこそ矢継ぎ早の様相で紹介されている。

Guterres国連事務総長からは「地球が温暖化の局面をすぎ、沸騰化の新局面に突入した」とする発言さえ、一昨日飛び出している。7月4日、Washington Postは、この暑さを125,000年間で最高に暑い日と形容している。

熱帯の暖かい表層海洋水がメキシコ湾流にそって大西洋北部へ運ばれ、そこで冷却されて深海へと沈みこみ、そして反転して南へと向かっていく極めて大きな海流循環システムが存在している。
北極圏に存在する永久凍土は、大気中の約3倍の二酸化炭素を、そして200倍のメタンガスを閉じ込めている一種の装置とも言える。
人の体には、あるレベルまでは熱気に良く順応して体温を一定に維持する一種の超能力と言っても良い内部システムが存在している。

地球や人を含む自然界には、このような装置やシステムが他にも数多く存在しており、そのお陰で自然界の恒常性や安定性が保持されている。

いま我々が日々目撃している光景は、地球が我々に与えてくれているそのような装置やシステムにも、許容限界、即ちシキイ値(tipping point、thresholds、yield value)が厳然と存在しているということ、そして我々は厳然と存在しているシキイ値を強く意識することの重要性を学び、我々が取るべき迅速で、そして効果的な対策にそれを活かしていくことが求められているのだろう。

良く言われる、一旦シキイ値(tipping point、thresholds、yield value)を越えると、人間の力では到底制御不能の次から次への悪循環が始まり、例えば気温の制御で言えばParis合意目標の1.5や2℃以内に抑制どころか4℃にも及ぶ加速的上振れも、指摘されている。

我々はまだ虎の尾を踏んでしまっていないのであればよいのだが。

そんなことを、思わざるを得ないここ数日の報道記事を以下に紹介したい。

1.命の危険すら感じる暑さを考える。研究者らがボランティアの協力のもと調べている。
    NBC NEWS 2023年7月6日 Aria Bendix氏記す

身の危険を感じる熱波がアメリカを覆い続けている。そんな中、外気温が華氏104~122度(40~50℃)になると人の体は外界に順応して正しく働くことが出来なくなる可能性がある、との証拠が新たに出されている。

スコットランドのエジンバラで開催されていた実験生物学会年次大会において木曜日に発表された研究によると、外気温が上記の範囲になり、高い外気温にさらされると、人の安息時の代謝率に比べて、人の代謝率は上昇するという。ここで人の安息時の代謝率とは、人が休息している時に必要とされるエネルギー量のことを言う。

そして一旦人の代謝率が上昇し始めると、人の呼吸は荒くなり、脈拍は上がっていき、そして外界からの過剰な熱(熱ストレス又は暑熱ストレスとも訳されるheat stress)を体外に逃がすことが最早出来なくなると、人の体幹の温度が上がり始め、その結果として混乱(confusion)、はきけ(nausea)、ねむけ(dizziness)、頭痛(headache)や失神(fainting)が誘発される。

「人は、ある点までは通常、熱気にとても良く順応する」と、この研究を行ったRoehampton大学のLewis Halsey教授が語っている。

Lewis Halsey教授は数年にわたり関連する一連の研究を行っており、2021年の最初の研究においては60才以下の13人のボランティアの協力のもと、幾つかの温度と湿度の環境に1時間人がおかれた際の代謝率・体幹温度・血圧・心拍数と呼吸数を測定し、それらの値と安息時の値との比較を行い、華氏104度(40℃)以上の気温になると人の代謝率が上がること(気温40℃湿度25%の場合35%の増加、気温50℃湿度50%の場合56%の増加)を認めていた。体幹温度については気温40℃湿度25%の場合は、上昇は見られないが、気温50℃湿度50%の場合には体幹温度が1℃上昇し、心拍数は64%上昇した、としていた。

Halsey教授もボランティアとして実験に参加し、過酷な環境を体験した印象を次のように語っている。「汗をかいて体温をさげることは、人間にとって一種の超能力といっても良いものであるが、しかし気温が50℃、湿度50%の環境では、かいた汗の行き場がなくなり、発汗-体温冷却システムが正常には働かない“かなり厳しい” 環境だと言える。」

そしてHalsey教授は気温50℃湿度50%の環境のもとにボランティアの人々が長時間おかれた場合には、生存できなかった可能性があったと推定している。

2.チュニジアの異常気温、サハラ砂漠以南の国からの避難移民らが「もう耐えられない」状況に置かれている。
    AlJazeera 2023年7月24日 Simon Speakman Cordall氏記す

国際移民機関(International Organization for Migration、IOM)事務所の外に用意された仮設テントは焼ける大地の上で、灼熱の太陽に照らされ、誰もいないも同然に立っている。

100人ほどの正規な手続きを踏んでいないIOM事務所の外に寝起きする避難移民の1人Kellyさんは、「もう耐えられない。からだを休め、安らかに過ごすという気分にはなれない。ストレスがたまる毎日だ。」と語る。

チュニジアの首都チュニスは月曜に50℃に達し、日曜は45℃だった。そして7月のこれまでの平均気温は33℃。チュニスの日常は限りなく緩慢になっている。蛇口からの水道水は熱く、食べ物は簡単に腐り、野良犬と野良猫が日陰を争い、夕暮れが来ても安息はほとんどない。連日の猛暑から体が回復する機会がほとんどなく、チュニジアでは都会でも田舎でも厳しい状況で暮らす多くの人々に熱中症や脳卒中のリスクが高まっている。

ナイジェリアから一年半以上をかけてはるばる地中海を望むチュニスにやってきたKellyさんのような人々に対して、Kais Saied大統領はこの2月、サハラ以南の人々がチュニジアに暴力・犯罪や容認できない慣行を持ちこんだ、と非難する差別発言を行って、以来、多く避難移民らは暴徒からの迫害を受ける厳しい生活をおくっている。

昨年の夏、欧州全域をおそった熱波は61,000人の死者を出したと見積られ、特に地中海沿岸で多かったという。チュニジアやアフリカ北部における死者数の発表は特になく、この問題を難しくしている原因が、死者数すら発表できない地域の現状だと、目されている。

首都チュニスや他の主要都市にはエアコンは行き渡っているが、都市部以外には数は少ない。都市部以外にエアコンが普及していないのは、一つは高額であること、そしてそれとは別にエアコンに対する不信感、即ちエアコンは健康に良くない、と思いこんでいる人の存在もあるという。

英国Roehampton大学のLewis Halsey教授が、人の体に及ぼす外気温の影響・効果に関する研究報告を発表しており、その中で「外気温が一旦あるレベルを超えると、人の体にある体温を維持する内部システムが働かなくなる」と述べている。「ただし、心理的要素もあり、猛暑のなかにあっても、例えば家に戻ればエアコンがあるとなれば、猛暑の中厳しくはあろうが、耐えられるだろう。もし、そうでないとすると、猛暑から逃れる場所のない厳しいストレスがたまる毎日が待ち構えていることになる。」

今月初旬にチュニジアは国境警備を強化する内容の条約をEUと結んでいる。既に72,000人程が危険な国境越えでイタリアに入っている。その大部分は極度の貧困と戦乱を逃れての行動だが、気候変動が深刻化するにつれ、更に多くの人が極端な気候変動から逃れるためにヨーロッパに目を向けることになるだろう。

3.大西洋の海流が、もうすぐ流れを止めるという。それによる重篤な気候変動にどう対処するか?
    USA TODAY 2023年7月25日 Doyle Rice氏記す

大西洋子午線逆転循環(Atlantic Meridional Overturning Circulation, AMOC)とは、地球に存在する重要な海流システムであり、熱帯地域の暖かい塩分を含んだ表層海洋水がメキシコ湾流にそって米国東海岸沿いに大西洋北部へ向かい、大西洋北部で冷却されて深海へと沈みこみ、そしてそこから逆転して南へと向かっていく極めて大きな海流循環システムである。この循環システムはヨーロッパ北部を数℃分温める効果があり、そしてより冷たい海洋水を米国北部海岸へ持ち込む役割も果たしている。

この大西洋子午線逆転循環AMOCが、今世紀の半ば、多分2025年から2095年までの間に崩壊し、停止する可能性がある、とする新しい研究論文が、この火曜日、英国のNature Communicationsに発表された。

AMOCが崩壊し、停止すると、米国やヨーロッパそしてその他の地域に急激な気候変動が引き起こされ、ヨーロッパでは氷河期様の状況が起こり、ボストンやニューヨークでは海面上昇が起こり、米国の東海岸沿いでは巨大な嵐やハリケーンの発生の可能性が生じるという。また、降雨量や降雪量の著しい減少が米国中部や西部で起こるだろう、ともされている。

今週新たに発表された研究論文は、コペンハーゲン大学の2人の研究者(Peter DitlevsenさんとSusanne Ditlevsenさん)が行ったもので、2人の研究者は先端的統計手法を考案の上、直近150年間の海洋温度のデータをこの先端的統計手法に適用して計算している。かれらの採用した先端的統計手法は、従来の統計手法では到達することが難しかった、より確実精度を高めた推定を行うことが出来るという。

その結果、かれらは今回、95%の精度でAMOCが2025年から2095年までの間に崩壊し、停止する可能性がある、そして現在の温室効果ガスの排出傾向に変化がなく継続するとすれば、最も高い確率で2057年頃AMOCの崩壊・停止が起こる可能性がある、としている。

彼らの主張するAMOCの予測崩壊・停止時期は、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)が以前のデータをもとに提示している予測(AMOCの急激な変化は、今世紀中はあり得ないとした結論)と矛盾するものである。

今回のかれらの研究論文に対し、他の専門家がどう見ているかについて紹介すると、ペンシルバニア大学のMichael Mannさんは、
「研究を発表した研究者らが、思い付きの華やかな統計手法以上のものを数多くテーブルの上に持ち込んでいるのかどうかは判断できないが、歴史的には思い付きの華やかな統計手法に基づく欠陥のある予測というものが散乱しているものである。時にそうしたものは派手すぎるのである」と語っている。

一方、ドイツのPotsdam Institute for Climate Impact researchの気候学者のStefan Rahmstorfさんは、
「一つの研究からは限られた証拠しか得られないが、数多くのいろいろなアプローチを行った後に、同様な結論に達するのであれば、その到達した結果は重大に受け止める必要があると言える。殊に99.9%の精度をもって我々が排除したいと希望するリスクの課題について議論する際には、そういうことであろう。
 今回の科学的事実は今後10年から20年のうちに臨界点・転換点を早くも通過することを排除さえ出来ないという事である。AMOCの臨界点・転換点が正確にどこにあるのかは、不明であるが、数年前に我々が想定していた時期よりも、より近くになっているという証拠を付け加えているとは言える」と語っている。

今回の研究により到達した結果をもとに、研究者らの「我々の結果は、可能なかぎりGHG排出を削減することの重要性を強調するものである」とする主張を載せておく。

4.気候事象のシキイ値(ClimateThresholds臨界点・限界点)の無視
    AlJazeera 2023年7月27日  Ali Tanqeer Sheikh氏記す

パキスタンの気候異常緊急事態が眼前に明らかに現れてきている。われわれは今や絶えずある災害から次の災害へと移っていき、打ち続く災害がわれわれの社会や経済とどう関連しているかを、じっくり考える時間を持てずにいる状況である。

最近の12週間から18週間を見ても、一連の異常が起こっている。3月と4月の熱波、6月の熱帯性暴風雨と6月と7月の都市部の洪水。これだけでは不充分とばかりに、新たな波が面前に現れてきている。インドとアフガニスタンからの国境を越えた洪水がPunjabとKPを襲っている。BalochistanとSindhの山沿いの猛烈な雨、Gilgit-Baltistanを襲う地すべりと氷河の決壊。これらの異常気象事態(Extreme Weather Events,EWEs)は3つの相互に関連する流れの存在を浮かび上がらせている。

一つは気温上昇を1.5から2℃に抑えるという2015年Paris合意の内容が、化石燃料を緊急に退場させる活動を著しく過小評価(弱めた)していた、ということである。

二つ目は、パキスタンの災害が相互に関連しており、個々の異常気象事態が次から次へと連鎖的に次の事態を発生させているという、パキスタンの脆弱性に対する新たなシキイ値(臨界点・限界点)の規定である。

三つ目は、気候に関連する損失(losses)と損傷(damage)の大きさが、気候管理力の弱さに大きく関係している。パキスタンの政策立案者らは気候災害の事後処理的対応を続けている。政策立案者らは新たなシキイ値(臨界点・限界点)の規定を深く考察して、政策に反映させ、行動に移していくことを今だに始めていない。

パキスタンだけが気候災害を受けているわけではない。隣国の中国・インド・アフガニスタンも熱波や洪水の新たな記録を立てており、世界各地もまた異常気象に見舞われている。熱波がヨーロッパ南部を覆い、カリフォルニア・カナダ・シベリアの山火事、Horn of Africa(インド洋と紅海に接するアフリカ東部の地域、エチオピア・エリトリア・ジプチ・ソマリアがある)の記録破りの干ばつ等である。

自然はParis合意が打ち出した時間の猶予を、我々に与える気はないようだ。パキスタンは、連鎖化する異常気象から身を守るために必須な政策決定を行う分岐点に立っているといえる。

気温上昇・降雨量の傾向がどのように関連し合っているのか、そしてパキスタンが気候管理力を強化する上で、どんな実質的な行動を取ることが出来るかをみていきたい。

パキスタン気象庁によると、新たな気温記録と新たな降雨記録が、6月に36都市で打ち立てられたという。
うだるような気候により、Benazir収入支援プログラムは現金支給を停止している。列車は線路の融解により運行が止まっている。そして、電力供給システムも多くの地域で破断している。
パキスタンの熱波は、公共サービスを混乱させ、学校や医療機関も混乱している。
労働生産性も低下し、農業分野へも悪影響が出ている証拠がある。
Sindh州とBalochistan州の各地は生存ぎりぎりになってきており、JacobabadからTurbatにいたる各都市が、人間が生活するのに適していない状況になってきている。
そして具合の悪いことに熱波関連のデータを記録する機関は無いし、各地域の住民を守る地域行政機関も存在していない。しかし、地方行政機関は労働時間や学校暦を再考する責任は負っている。夏季の労働条件を規制する権限も与えられている。予知出来るリスクを低減する強力な気候管理策を実行することが出来る。

長期化する熱波への対策として、スペインの小都市が気温と湿度のレベルをモニターして熱波をランク付けするシステムを、正に開発したところである。Adrienne Arsht-Rockefeller財団リジリエンスセンター(resilience center)(Arsht-Rockと略して呼ばれるようです)の支援の下、熱波を1から3のスケールで分類化する方式を開発している。カテゴリー3が最も甚大な熱波で、それぞれアルファベット順と逆にZoe(ゾーイ)Yago(ヤゴ)とXenia(ゼニア)と名付けられている。

10年前に開発したカラチの熱波管理計画では、新たに設置した市当局の実態のある活動をもとめているが、パキスタンは、スペインのSeville市と同様に、国としての熱波の命名化と分類化を採用して、市民の生命を守るシステムを作る必要がある。

アラビア海上の熱帯性暴風雨の事例が増大している。Biparjoyがこの6月新しい記録を打ち立てている。これはカテゴリー3にランク付けされた非常に甚大なサイクロンとされていた。時速160から180kmという強風を維持していた。12日間強さを保持し、アラビア海サイクロンの最長命記録となった。パキスタンではリアルタイムでサイクロンを追跡し、早期警戒体制が機能したことで、80万人に及ぶ退避・救出作業も成功裏に実施出来た。

Biparjoyはカラチ及びsindh州の各地に厳しい熱波状況を数日にわたり引き起こし、砂嵐と広範囲の豪雨をSindh州南部に引き起こした。そして続く数週間続いた熱波に拍車をかけることになった。パキスタン気象庁はモンスーンの先触れとなる豪雨が各地で引き起こされていたと指摘し、明らかにシステムの混乱があったといえる。

幸いにもBiparjoyはパキスタンを直撃しなかったことから、重大な被害は回避出来たが、食料や飲料水、医薬品、トイレや仮設住居支援の供給体制能力をテストする機会とはならなかった。しかし、市行政当局は崩壊し、軍隊が避難支援や物資の供給に協力するよう要請された。

あらゆる気候災害の防衛の最前線に立つのは、地方行政機関と共同体支援グループにほかならない。そして地方の行政当局は情報を与えられておらず、機能もしていない。地域の災害管理当局は、未だに地域行政府を支援する能力をもっていない。

パキスタンは目標を持たずに無闇にさまようのではなく、気象事象に基盤をもつシキイ値を活用して、行動を活発化させて我々および次の世代をまもっていくことに注力する必要がある。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

海図なき海原に向かって:海洋温度が記録的高温に

2023-07-13 12:43:33 | 環境問題
「海図なき海原に向かって:海洋温度が記録的高温に」
The Guardian 2023年4月8日  Graham Readfearn氏記す

現在、世界各地で異常気象が報道され、そして私達自身も体温を超える気温の中での暮らしを強いられています。かかる状況の中、見た目の事象の根っこの部分の要因を捉える姿勢が、今現在およびこれから我々が生活していく上での大切な指針を与えてくれるものと思い、若干古い記事ではありますが、人新世の加速化時代に伴う海水温の異常についての記事を紹介します。この4月ごろに他にも多くの同種の記事が出ております。敢えてここではThe Guardianを取り上げましたが特に選択に意図はありません。

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科学者らが更なる海洋熱波を警告している。これにより極端な気象事象の増大につながる恐れを指摘している。

世界の海洋表面温度はサテライトを利用して観測されているが、記録を取り始めて以降で最高となる海水温を記録した、と米国政府機関が報告し、海洋熱波につながる恐れを指摘している。
国家海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration;NOAA)からの先行データによると、海洋表面の平均温度が、4月のスタートとともに2016年に記録していた過去の最高温度21℃を超えて21.1℃になった、と気候科学者らが語っている。
「現在進行している道筋の方向は、予測が出来ない状況であり、過去の記録を塗り替えつつある」とNew South wales大学のMatthew England教授が語っている。

3年にわたる太平洋のラニーニャが温度上昇抑制に役立っており、増大する温室効果ガス(GHG)の作用を弱めてくれていた。
しかし科学者らは今や海洋表面は熱で暖められ始めているとし、今年後半に発生が予想されるエルニーニョ(6月9日気象庁はエルニーニョ現象が既に発生していると発表している)を指摘して極端な異常気象のリスク拡大と更なる地球温暖化記録更新拡大を警告している。
NOAAのMike McPhaden博士は「三段底を記録した最近のラニーニャは収束を迎えている。この長く続いた寒冷期は、大気中のGHG増加にもかかわらず地球表面温度上昇を押し止めていた。ラニーニャが今や去り気候変動の兆候が強くそしてハッキリと現れてきている」と語っている。

熱帯の太平洋の中央部そして東部の冷却と強い貿易風とで特徴付けられるラニーニャの時期は地球に冷却の影響が出る。一方エルニーニョの時期は海洋温度が通常より上昇し、地球温度を上げることになる。

観測データは大半がサテライトからの観測値だが、船やブイを使っての観測データからも裏付けられている。そしてデータには極地のデータは含まれていない。

化石燃料を燃やすことや森林伐採推進の結果発生する新たに追加されるGHG排出分に基因する過剰熱エネルギーの90%以上が海洋に吸収されている。
昨年発表された一つの研究によると、海洋中に吸収され蓄積される熱エネルギー総量が加速度的に増大しており、そしてより深い所まで侵入しているとし、結果として極端な気象事象の火に油を注ぐ形になっているとしている。
この研究の共同研究者のEnglandさんは「我々は今、海洋表面温度が最高記録を達成している状況を目撃している。このことは我々にとって緊急警報がなっていることであり、我々が世界の気候システムに人間の活動の足跡を拡大しているということを示す極めて明らかな証しである」と語っている。

海洋表面から2kmの層の観測データは、この海洋の上層部に急速に熱エネルギーが蓄積されていること、そしてそれが1980年代以降、特にその速度が上昇していることを示している。

米国国立大気研究センター(US National Center for Atmospheric Research)の著名な研究者のKevin Trenberth博士は観測データが、熱帯地帯の太平洋の熱エネルギーが100m以上の深くまで拡大していることを示していると語り、そしてこの熱エネルギーが海洋上の大気に効果を波及して、より大きな熱エネルギーを大気の気象事象に供給して海洋熱波を形成する原因となっているとも主張する。

UNSW気候変動研究センターの助教授のAlex Sen Gupta博士は、サテライト観測データによると海洋表面の温度上昇が1980年代以降ほぼ直線的に生じていると語っている。
「ラニーニャ現象が発生していたにもかかわらず、最近の3年間が暑かったということは極めて驚くべきことで、そして現在も暑さ記録が更新されている」と語っている。

少なくとも5日続けて、温度がその時期の年間記録の上位10%範囲に入る海域を海洋熱波発生域としているが、現在の観測データによると「中等程度~強度の海洋熱波」がいくつかの地域で見られるとし、それらがインド洋南部、大西洋南部、アフリカ北西部沖、ニュージーランド周辺、オーストラリア北東部沖、中央アメリカ西部であるという。Sen Gupta博士によると、同じ時期にこの様に多くの地域に海洋熱波が観測されるのは極めて異常だとしている。

海洋熱波は局地的な気象条件に左右される部分がある一方で、研究によると海洋が暖められるにつれて海洋熱波はその頻度と強度を増大させることが認められており、人間の活動を基因とする地球温暖化の予測される進行状況につれて海洋熱波の問題が悪化していくことが見込まれる。
より暖かい海洋が、大気中により多くの熱エネルギーを風雨に供給することで暴風雨化し、併せて氷床の融解の促進を行うことにより、海面の上昇をも促すことになる。そして海水の温度上昇はそれ自体、海水の熱膨張を引き起こすもので、この点からの海面上昇も加わることになる。

海洋熱波は海洋野生生物に壊滅的な影響を与え、熱帯のサンゴ礁・サンゴの白化を引き起こす可能性がある。実験によると海洋温暖化により食物連鎖に根本的な変化が起こり、藻類(algae)の成長が促進される一方で、人間が食べる種類は減少する可能性があると指摘されている。

Monash大学の気候科学者のDietmar Dommenget教授は人間が引き起こす地球温暖化の兆候は海洋中では、よりハッキリと姿を現すと語っている。
「明らかに我々は迅速に進行する温暖気象の中におり、そして類例を見ない新しい記録を観察している。我々の大半はエルニーニョの発生を予測している。エルニーニョが発生すれば、我々は新しい記録を海洋でも陸上でも観測することになるだろう。そして我々は現在既に記録が達成されているのを見ているし、今年後半には更に多くの記録が生まれるだろう」とDommenget教授は語っている。
***

海洋温暖化が大気の異常気象を誘発する側面の最近の話題を紹介しましたが、コインの裏側に海洋の酸性化という大きな問題も隠れて存在しています。海洋の温暖化も海洋の酸性化も海洋野生生物の生態系に大きく影響する事柄になります。

いろいろな視点から人新世の加速化時代に伴う異常事象の根っこの要因を紹介していきたいと思います。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan