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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「ふしぎ盆栽ホンノンボ 」(著:宮田 珠己)

2016-11-13 00:54:49 | 【書物】1点集中型
 タマキング本である。ジェットコースター本もシュノーケリング本も読んでおきながら、ホンノンボ本には今頃やっと手を出した。
 どこにでもありそうで、でもいざ探すと全然見つからないホンノンボの不思議。盆栽といってもそれは正確な訳ではなく、植物よりも岩を中心とした一種の風景そのものである。水を張った鉢の中に作られる小さな島のようなもの。そこに人や東屋のミニチュアが置かれ、ちょっとしたジオラマのよう。ベトナムで思いがけず出会ったこの世界を探検したい、という発想はタマキングらしいが、全体的には思ったほど笑いの要素は多くはない。ゆるいミニチュアに笑うことはあったけども、「ホンノンボと盆栽論」とでも言うべき、意外と真面目な感じ。あれっ? これタマキング? みたいな(笑)。

 「かっこいい言葉で“見立て”ともいうが、つまりこじつけ」とタマキングは言うが、要するに想像力である。想像力だけで楽しくなれるのならば、まあある側面からすると「妄想」とも言われるのかもしれないが(笑)、これ以上安上がりな娯楽はないのであって。ホンノンボの中を探検したい! という思いには共感できるし。
 結果として、定義らしい定義を確実にはできないまま、旅は終わる。しかし人の主観や感覚が他の誰とも全く同じにはならないのと同じで、最終的には「どんなホンノンボがいいと思うか」に収斂していく。ホンノンボの正体を探究しながら、タマキングはまさにその風景の中を探検していたのだな。言ってみれば、自身の内面を旅していたようなものなのかもしれない。