life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「幸せはいつもちょっと先にある 期待と妄想の心理学」(著:ダニエル・ギルバート/訳:熊谷 淳子)

2014-02-16 22:39:52 | 【書物】1点集中型
 「明日の幸せを科学する」というタイトルの文庫版を見かけて、装丁も好みだったので興味を惹かれ、図書館で探してみたら単行本のみ所蔵があったので借りてみる。「人間の脳が事故の未来を想像したり、どの未来が最も喜ばしいかを予測したりするしくみと精度を、科学で説明」するのがこの本の目的だそうだ。
 前頭葉に損傷を負うと、未来について考えることができなくなる場合があるという症例が興味深かった。それ以外のことは全く普通の人と変わらないのに、自分が明日、何をしようとするだろうかということが考えられない。予測ができないから不安がない。冒頭からこんな話を持ってこられたら、惹き付けられざるを得ないところである。

 想像の3つの欠点――脳は勝手に記憶や近くの穴埋めや放置をしがちである。現在を未来に投影しがちである。物事がいったん起こると、思っていたのと違って見えるようになるのに、前もってそれに気づかない。想像とは、自分ではどんなに慎重に行っているように見えても、実は客観性は皆無に近いようだ。「人は見たいものだけを見る」とはよく言うけれど、結局「経験」と「希望」を元手に導き出そうとしているのだから、そうならざるを得ないのかもしれない。たとえば、宝くじを買ってから当選番号の発表日を待つまでの間、「当たったら何をしようか、何を買おうか」と、(信じないふりをしつつも)わくわくする日々のように。
 誰もが他人と自分が違うことを信じているし、事実そうではある。が、自他の差は実は自分が思っているほど大きなものではない。ついつい口コミを重要視してしまうあたり、「代理体験が有効」なのを身をもって実証しているのと同じことなんだなぁと思った次第である。