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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「ナチの亡霊(上)(下)」(著:ジェームズ・ロリンズ/訳:桑田 健)

2012-08-28 22:53:01 | 【書物】1点集中型
 当時最先端だったナチの科学技術のうち、謎のまま痕跡を残す「釣鐘」。その歴史的事実を題材に描かれた物語であるという点に惹かれて読み始めてみた。ヒマラヤ、ドイツ、南アフリカのできごとが少しずつ繋がっていく中で、生と死の境目を危なく綱渡りしていく登場人物たち。特にグレイの周りでは、シグマフォースの面目躍如か、一層緊迫感あり。科学者たちの議論も興味深く読める。
 ペインターがどうなるのか、モンクとキャットは幸せになれるのかとか(笑)気になることをたくさん抱えたまま、本格的な謎解きを期待して下巻へ進む。

 ……と、主要人物たちが南アフリカに集結したところで、敵の姿もいよいよ鮮明になるんだけど、はっきりしたらしたでまぁものすごく悪役らしい悪役たちではあった。この、敵対する側に対してどちらも葛藤を抱く必要がないくらいかっちり線が引けるのが、アメリカっぽい(笑)。けっこうなアクションがあるので、映像化したら面白いのかも。

 最後、ペインターに施した釣鐘の「治療」はちょっとしたファンタジーにも見えて、若干拍子抜けしたところもあるが、なるほど量子論をそう解釈するか~って感じでもあった。これまで、わからないなりにも量子論の本を多少読みかじったりしたおかげか、この作品で少し易しく解説しなおしてもらったような気にもなったりして。
 グレイはちょっと傷心することになりそうだけど、ひとまず落ち着けそうなモンクは指輪を取り返しに行くのかなぁ(笑)。そういう人間ドラマ的な点は気になるので、そういう意味で続きを読んでみるのもいいかなーとは思った。