life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「ケプラー予想 四百年の難問が解けるまで」(著:ジョージ G.スピーロ/訳:青木 薫)

2011-08-23 21:55:11 | 【書物】1点集中型
 「宇宙創成」でも出てきた、ドイツの天文学者ケプラーの球充填問題(最密充填構造=面心立方格子=74.04%)に関する予想が、約400年を経て証明されるまで。ってタイトル通りか。
 「付録」のようなより数学的な内容を(確かに、すっ飛ばしても読めるようにはなってるんだけど)、ちゃんと理解できた方がより面白かったのではないかなーとは感じた。そういう意味では、典型的文系(=自分)には、もう一声! なところもあることはある。

 同じ青木薫氏の訳であり数学界ものでもあるので、「フェルマーの最終定理」的な流れを予想して取り組んでみたら、実際は違うタイプのアプローチだった。作者が違うから当たり前といえば当たり前の話なんだけど(笑)
 いちばん違いを感じるのは、「ケプラー予想」を証明したヘールズの証明が、コンピュータによる「力業」を駆使した証明でもあるということ。そういう意味では、「エレガント」な証明とは確かに言いがたいとは思う(肝心の論文も、なんだかあんまりまとまりがないような言われ方しちゃってるし)。なんせ、「フェルマーの最終定理」のエレガントさを見せつけられたあとだから余計。

 結局のところ、「ケプラー予想」そのものは、ヘールズの手法によって9割9分9厘くらいまでは正しいと言っていいという段階まで証明はされているけど、厳密な意味では100%の証明ではない。これは現在、ケプラー予想に対してのれっきとした事実ではある。
 そもそも、数学における証明に「曖昧さ」などというものは基本的に存在しないはずである。しかしそれがこういった証明である程度許容されるにあたり、コンピュータによる証明という手法自体は避けては通れない時代にきているということなのかなとも思う。ただそれが「美しくない」と言えばやっぱりそうだなとも思うし、その是非についてはちょっと考えさせられる。そしておそらく、そこがこの本のひとつの「肝」でもあるかなと。