すき家ゼンショー、告発した店員を告訴「飯5杯盗んだ」(朝日新聞)
店のご飯を無断で食べたなどとして、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショー(本社・東京都港区)が、残業代不払いで同社を刑事告訴した仙台市の女性店員(41)を、窃盗などの疑いで仙台地検に刑事告訴していたことが分かった。地検はすでに店員を不起訴としており、店員側は「こんな手段で威嚇、報復するのは許されない」と反発している。
店員側の弁護士らによると、ゼンショーは、商品用のご飯どんぶり5杯分を無断で食べたとする窃盗などの疑いで、店員を告訴した。店の監視カメラの映像が証拠だとしている。
店員は「ご飯に洗浄用ブラシの毛が入ったため商品に使わず、まかない用のおにぎりにした」などと反論。地検は今年3月、嫌疑不十分で店員を不起訴とした。
なんとも見苦しい会社です。ご飯5杯分を無断で食べたとして、あろう事か窃盗容疑で告訴したとか。ふむ、過去には米飯900g(産経新聞独自の尺貫法によると5合)で懲戒処分に走った自治体もあったようですが(参考)、ゼンショーも器の小ささでは負けていません。
もちろん、この程度の容疑で刑事告訴する会社の姿勢も大いに問題なのですが、さらに重大なのはこれが雇用側の報復行為として行われたことです。店員側が不払いとなっている残業代の支払いを求めた民事訴訟が続いている最中に、「損害額」<<<(越えられない壁)<<<「法的手続きのコスト」となる行為に踏み切ったのは、窃盗容疑云々とは別の動機があったからでしょう。すなわち、会社を訴えた「不届き者」を対象とした見せしめであろうと思われるわけです。
飲食店で食材を賄いに回す程度が窃盗と呼ばれるなら、瞬く間に日本は犯罪大国になってしまいそうですが、そうでなくともゼンショーの主張には矛盾した点ばかりです。元より団体交渉を拒否したりと悪名高い会社であり、残業代の割増分の不払いで訴えられている最中でもあるわけですが、そうした不法行為を正当化するための口実として会社が用意したのは「労働契約ではなく請負契約である」とするものでした。
「『アルバイト』と称する者らの業務実態を精査した結果、『アルバイト』の業務遂行状況は、およそ労働契約と評価することはできないことが判明した」「会社とアルバイトとの関係は、労働契約関係ではなく、請負契約に類似する業務委託契約である」――。つまり「すき家」のアルバイトは会社に雇用されているのではなく、個人事業主として業務委託契約を結んだ個人請負だというのだ。
こんな主張はさすがに最高裁ですら認められないでしょうけれど、しかるに労働問題に関することとなると、企業の無法を取り締まる機能をこの社会は有していません。消費者と企業ならまだしも、労働者と雇用主となると、何でも企業の言うがままです。どう見ても無理のある屁理屈でも構わないのでしょう。
しかし、仮にゼンショー社のいうことが正しいとしたらどうでしょうか? つまり、「アルバイト」は「労働契約」を結んだ間柄ではなく「請負契約」であると。事実に反する仮定に意味はないというのはさておき、これが本当に「業務委託」であったなら? 業務委託であり、店員は請負事業者であるのなら、店舗運営に関しては店員側の裁量も認められねばなりません。直接の雇用主ならまだしも、業務を委託する間柄であれば、自ずと指揮命令権も限られてきます。請負事業者であったなら、自店舗の食材をどう扱うか、請負事業者が判断することが許されるはずです。当然、店の食材を賄いに回すくらいは裁量の範囲であり、雇用主でもない事業者から指図される謂われはないのです。
細切れ雇用100回の末、雇い止め 元期間工がホンダ提訴(朝日新聞)
細切れの雇用契約を長期間繰り返した末の雇い止めは無効だとして、ホンダ栃木製作所(栃木県真岡市)の元期間従業員の男性(40)が17日、ホンダを相手取って、雇用継続や300万円の慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状などによると、男性は97年から、1~3カ月の雇用契約を約100回にわたり更新。1年間働くといったん退職させられ、5~31日の空白期間を置いた上で、また次の契約を結んでいたという。減産を理由に、08年末に雇い止めを通告された。
男性側は、「実態は社員と同じ無期限の雇用契約だった」とし、雇い止めには社員の解雇と同じ手続きが必要で、今回は解雇の要件を満たしていないと主張。また、空白期間は、最高裁判例で認められた「雇用継続の期待権」を会社が免れるための脱法行為だと訴えている。
有名税ではないでしょうけれど、自動車業界、製造業の問題となると真っ先に矢面に立たされるのがトヨタです。まぁ規模からしてトヨタが一番手には違いないのですが、ろくでなしはトヨタだけかと言えば残念ながらそうではありません。トヨタならずともダメな会社は多々あるもので、ホンダもまた強く非難されるべきですし、ここに名前が挙がらない他社でも似たようなケースは見られることでしょう。
……で、形式上は期間限定の雇用であったとしても、実質的に無期限の雇用関係にあると認められれば、正社員と同様に無闇な解雇は出来ない、少なくとも法律上はそうなっているわけです(ですから、一部の御用学者が繰り返す「正社員だけが守られている~」は全くの嘘です)。しかるに雇用側としては将来のクビキリに備え、できるだけ有期雇用に「見える」ように偽装を施します。この場合は1年働く毎に僅かな空白期間を挟むことで、あくまで期間限定の雇用、それが繰り返されただけという体裁を取っていたようです。いくらなんでも10年以上働いてそれは無理があるだろうと言いたくもなりますが、果たして裁判所の判断は???
まぁ、何とか迂回路を設けることで、形だけでも合法化すれば済むと考えている人は多いのでしょう。本当に権力があれば取り締まる側も大目に見てくれるもの、実質上は明らかな不法行為であっても、形式だけでも合法化しておけばスルーされるだろうと、そうした算段が働く環境が出来ているのだと思います。昨今では偉い人だけではなく、一部の民主党支持層までそうした考え方に同調する有様ですから本当にどうしようもありません。
今日はゼンショーとホンダが「働く人をいかに蔑ろにしているか」を雄弁に物語るニュースを取り上げました。明日はこうした報道が「どう受け止められるのか」に、ちょっと触れてみたいと思います。月曜日の憂鬱さに心が折れなければ、ですが。
>月曜日の憂鬱さに心が折れなければ、ですが。
折れませんように!(祈)!
これはさすがにひどいですね。顧問弁護士は恥ずかしくないのかな。
しかしそれにしても、ご飯5杯で窃盗による刑事告訴ですか。さすがにこんなものを検察が相手にするとは期待していないでしょうが、正気の沙汰ではありませんね。
しかし、毎度のことながら、労働者の人権など、雇用者側から見たらないも同然ですね。個人事業主として契約を結んだならば、いや、いかなる形式でも労働者と雇用者の関係は平等でなければならないはずですが、再就職の難しさや働いていないことへの白眼視が、自然と雇用者の権力を絶対的なものにしてしまうのでしょう。きっと、これらの会社側の主張も「正当」でしょう。新規採用者を減らしているところも多いですし、真面目に働いて生きることすらどんどん難しくなってきていますね。まあ、本当に無理になった時はその人の自己責任にして、自殺でも野垂れ死にでもしてくれれば、問題ないでしょうから、世の中うまくできてます。
牛丼チェーン系なら、私は松屋のビビン丼が好き~という話はさておき、すき家の株を下げるには十分なニュースです。ところが……という方向に明日は話を持っていく予定です。なんかまとまらなくなりそうですけれど。
>Bill McCrearyさん
こんな言い訳をしては弁護士としての評価も下がりそうですが、むしろ無理を通すのが仕事みたいに思ってしまっているのかも知れません。サラ金の弁護士を務めていた頃の橋下も、きっとこんな感じだったのでしょうか。
>GXさん
コンビニやスーパーの売れ残りも、持ち帰りが厳しく禁じられる店舗が増えているみたいですね。そこまで規制される謂われはないはずですが、雇う側の立場は強い。だからこそセーフティネットを用意することで労働者側が対等の立場に近づけるようにしなければならないのですが、それにはほど遠いですし。
>なんとも見苦しい会社です。ご飯5杯分を無断で食べたとして、あろう事か窃盗容疑で告訴したとか。ふむ、過去には米飯900g(産経新聞独自の尺貫法によると5合)で懲戒処分に走った自治体もあったようですが(参考)、ゼンショーも器の小ささでは負けていません。
ええやんええやん、ご飯5杯分くらい残業代に含めてもらってしまいなはれ(笑)
「本来支払われるべき賃金」を会社が不当に支払わないわけですから、その分を前借りするくらいは、当然の権利ですよねぇ。
その手の人の頭の中では日本の労働者は守られていることになっているようですが、他の国の事例を見ると甚だ疑問ですよね。解雇自由と誤って伝えられているアメリカでさえも、日本よりは……ですから。