ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

指揮者 広上淳一さん

2014年04月02日 | レッスンメモ
ここのところ毎晩のように「お家コンサート」と名付けてレイジーな格好で夕食を食べながら、録画していたコンサートをあれこれ楽しんでいます。昨夜観たのは京都市交響楽団の定期演奏会。あの広上淳一さんの指揮を初めて拝見(テレビですけど)しました。いやあ、素晴らしかったです。音楽家として、指揮者として、人間として、ものすごく面白いカラフルで魅力的な方ですね。ラフマニノフやマーラーをあんな風にキビキビと、分かりやすく、そして楽しそうに「振る」指揮者ってほかにいるかしら。夫は「全然明るい曲じゃないのにこんな風に元気に振るなんて、なんかおかしくないか」なんて最初は言っていたのですけど、段々ハマって行ったようです。そうです、広上さんはきっと曲想に合わせて自分の表情を作っているのではなくて、思い通りの音が出ているかどうか、オケとのコミュニケーションを大事にしているからこその、あの振り方だと思うのです。だから、例えば、うんと悲しい調子のところで悲しそうな顔をするというのではなくて、オケが思い通りに素晴らしく悲しい音を出すとそれが嬉しくて思わず笑顔になるし、親指を立ててグッドジョブ・サインまで出してしまうのです。

京都市交響楽団の定期演奏会でチケット完売記録を更新中という、今どきのクラシック界ではちょっと信じられないような熱い支持を集めている理由が少し分かったような気がしました。広上さん自身がとにかく、熱いのです。そしてその熱さがオケのメンバー一人ひとりに伝わって、オケ全体が熱くなる。そうするともうそのオケ全体の熱さが観客の皆さんに伝わらないわけがない! 

私が興味を持つのはその熱さをどうやって伝えるか、ということです。自分の熱い思いが、なかなか思い通りに相手に伝わらない、この悩みはオケの指揮者に限らず、あらゆる指導的立場にある人共通の悩みでしょう。もちろん私もピアノ教師としていつもこの悩みに直面しています。広上さんのインタビューを聞いていると、ああ、この人はオケのメンバー一人ひとりのハートをつかんで「その気」にさせるために、ものすごく考え抜いている人なんだなあと感じました。演奏する曲の解釈とか指揮法とか、そういった技術的な課題をすべてふまえた上で、彼が指揮者として一番心血を注いでいるのは、そのオケの最高の音を引き出すことなんだろうと思います。そのためにはメンバーをその気にさせなければいけません。そしてそれを可能にさせるために広上さんが重視しているのがコミュニケーションだと思います。相手のミスをあげつらって委縮させるのではなく、いかにリラックスさせて伸び伸びと大きな音を出してもらうか。そのための気配り、話法の工夫。うん、この姿勢はピアノのレッスンに即、応用可能です。考えて見れば指揮者というのは自分で楽器を演奏するわけではなく、他人に自分好みの(こうあるべきと思う)演奏をしてもらうのが仕事です。ピアノ教師の仕事もその点では同じですよね。広上さんのお話と指揮ぶりを見て、何だか指揮者という人種がこれまでと違ってずっと身近に感じられるようになりました。いつか是非生で観たいです。これからも益々ご活躍してください! 

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