ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

基本に戻る

2017年09月29日 | レッスンメモ
秋になって、空気がからりと乾燥してきました。ピアノにとってはこれからが本調子の出せるシーズンです。先週コンサートが終わって、次のコンサートが来月13日なので、この合間を縫って久しぶりにピアノの調律をお願いしました。湿気の多い夏の間に除湿器をフル回転してピアノに苦労をかけたので、しっかりケアしなければいけません。仕上がったピアノを鳴らしてみると、やっぱりすっきり気持ちよくて、ピアノに向かうこちらの気持ちまでリフレッシュされます。

音の鳴りがいいか悪いかというのは、もちろんピアノの状態も関係しますけど、その前に、まずはピアノを鳴らす自分の技術がどうなのかということを真摯に見つめることが求められます。小さな音だけどスーッとどこまでも通っていく音、会場いっぱいに広がる大きな力強い音。丸い音、美しい音、張りのある音、暖かい音、透明感のある音など、求め出したらキリがありません。でもそんなに幾種類もの音を簡単に弾き分けられるようになるなんてことは、まずありません。そんなとき、どうするか。私の場合は、求めている音が出なくて出なくて、壁にぶつかったら、とにかく「基本」に帰ることにしています。具体的に言うと、とりあえず、一音から。ぽ~んと一つの音を出して、こんな音?あんな音?と自問自答してたしかめていく作業。これは結構根気がいることですけど、一音だけでも求める音が出せたらもうけもの。その次は、スケールをします。スケールは私にとってそれこそ基本中の基本。メカニックな準備運動の一つとして毎日欠かさずやっています。その日の始めに行うスケールでは、その日の調子がそれでわかるときもあります。自分の出す音と、その時の身体や腕や指の調子にも耳を傾けていく。こんな一連の「基本動作」はどうしても内向的になりますが、ピアノと自分が向き合うとても大切な時間だと思っています。

生徒さんたちも同じ。ある程度弾けてきて、次の段階にステップアップする時に時折やってくる壁。八方塞がりのような壁を感じたら、基本に戻る。スケールを弾き、自分の調子に耳を傾ける。楽しく弾けていた曲を弾いてみたり、自分を慰める音を出してみたりする。そうしたけど、何にも変わらない!と感じるかもしれません。それでも、淡々と基本をやる。やり続けているうちに、いつか、ふと抜けていたり、いい音で弾けることがあります。壁にぶつかったときは、自分自身と向き合うこと。それには基本練習が一番。そこで何かを自分自身で見つけて、感じて、そうしてトンネルを抜けていくものだと思います。

話変わって、陸上競技の桐生選手のエピソードをご紹介します。桐生選手は今年の日本選手権では4位と惨敗して失意のどん底にありました。その結果にものすごくショックを受けて、しばらくは練習場に足が向かなかったそうです。でもその後、何とか気を取り直して練習を再開したときの様子が次のように報道されていました。
「7月に入った、ある日だった。真夏の日差しが照り付けるグラウンド。ひたすらに走る桐生がいた。午後1時から3時間半。ひたすら50メートルを走っていた。その数は70本に及んだ。『何も考えずに走っていた』とフォームも体への負担も関係ない。がむしゃらに走ったのは京都・洛南高の時以来だった。気持ちは原点に返った。」記事
その後、この桐生選手が日本初の9秒台という大記録をたたき出したのはご存知の通りです。

壁にぶつかったら、基本に戻る。これ、鉄則ですね。

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ラン・ラン、右手で連弾!

2017年09月27日 | レッスンメモ
今、世界で最も売れているピアニストの一人、ラン・ラン。左手の故障でドクターストップがかかって、4月から演奏活動を休んでいました。その後初めて、今月16日に行われたフィラデルフィア管弦楽団のガーラコンサートに出演しました。左手が完治したのかなと思ったら、そうではなくて、ラン・ランは右手だけ、そしてもう一人が左手で弾くという、ちょっと変わった連弾で演奏したとのことです。そしてその連弾のパートナーが、ラン・ランが創設したラン・ラン・インターナショナル・ミュージック・ファンデーションで学ぶ神童、14歳のピアニスト、マキシム・ランド(Maxim Lando)です。この日二人が演奏した曲は、チャイコフスキーのくるみ割り人形から「金平糖の精の踊り」、サン・サーンスの動物の謝肉祭から「水族館」、そしてガーシュインのウエストサイド物語から「アメリカ」など、楽しそうな曲ばかり。年に一度のガーラコンサートということですから、会場の雰囲気も大いに盛り上がったことでしょう。

Concert review
それにしてもラン・ランの、次世代を担う若手を育てようという様々な活動、そして、若い人たちに少しでも多くの機会を与えようという姿勢、これは本当に素晴らしいですね。ピアノの世界にはどちらかというと取っつきにくい「巨匠」タイプの人は多いのですが、子供たちが一目で「カッコイイ!」とあこがれるようなスター性の高い人は決して多くありません。ラン・ランの魅力は超絶技巧に裏打ちされた、全身からほとばしる音楽のエネルギー、そして音楽の分かりやすさ、一言でいえば「カッコ良さ」にあると思います。特にピアノを学ぶ若い人たちにはもっともっと注目して欲しいピアニストです。というわけで、ラン・ランの左手、まだ完治してないようですが、一日でも早くよくなることを祈らずにはいられません。

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生徒も先生も本番で頑張る!

2017年09月24日 | レッスンメモ
ここのところ教室の生徒たちのコンクールと私のコンサートの本番が立て続けにあって、大忙しでした。生徒たちは大分県音楽コンクールや全日本学生音楽コンクールの予選に挑戦しました。結果はもちろん人それぞれですが、私がいつも言っているように、こうして「本番」の場数を踏むということ、それ自体が一番の勉強になります。これは生徒だけではなくて、私にも言えること。いくつになっても本番に向けての追い込みはきついけど、いざ舞台に立つとテンションが上がって気合が入ります。今回は気合が入りすぎたのか、ピアノ演奏だけではなくて私もフラメンコの踊りをご披露しました。終わった後は、力を出し切ったという達成感と、応援してくださる皆さんへの感謝の気持ち、がこみあげてきました。もちろんミスがあったり、ああすれば良かったもっとこうすれば良かったなんて、反省することはいつも必ずたくさんあります。本番の終わった次の日からまた新たな本番に向けて練習の日々が続きます。つまり私も舞台に立つ限りは生徒の皆さんと全く同じってことですね。来月はいよいよ教室の発表会、みんな一緒に頑張りましょう

「ジプシー音楽に魅せられて」in ホルトホール大分。大勢の皆様にお越しいただきました。本当にありがとうございました!

応援に来てくれた生徒たちと。楽しんでくれたかな?

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札幌交響楽団が地元にもたらしたこと

2017年09月05日 | レッスンメモ
最近ピアノの先生仲間で時々話題になるのが、北海道の生徒さんたちの活躍ぶりです。言われてみれば色んなコンペの全国大会で北海道の子供たちの活躍が目につきます。私たち九州組は「やっぱりクラシックは寒いところの方が向いてるのかしら」とか、「ピアノの場合は家の広さとか騒音問題とかが関係するから、北海道って有利なんじゃないの?」などと、ピーチク、パーチク、井戸端会議に花が咲きます。

そんなある日、ある人が「こういうことも影響してるかもね」と言ってあるインタビュー記事の一節を紹介してくれました。記事は1年前のものだし、演出家の平田オリザ氏と舞踊家の金森穣氏の対談で、クラシック音楽についての対談ではないのですが、その中で平田オリザ氏が、地方都市における芸術文化の振興という文脈の中で、札幌交響楽団の例をあげて、さらっとこういうことをおっしゃっているのです。

「札幌交響楽団がプロ化したときに、ガチで団員のオーディションをしたら、東京から受けに来た人ばかり合格になって、市議会で問題になったそうなんです。『なんで自分たちの税金を使ったのに、地元の演奏家が入らないんだ』と。ところが20年経ったら、札幌からの東京藝術大学への進学率が5倍ぐらいになった。要するに、クラシックの演奏家は個人で弟子を取って教えるから、札幌に移住してきた団員が教えた、優秀で若い子が育った。それでも成果が出るまでに20年かかったんです。」

へー、なるほど! と感心しました。そのまま鵜呑みにしていいお話なのかどうか実際のところは私は知りません。もっと他の要因がたくさんあるのかもしれません。だけど、話しとしてはとても合点がいくし、私など、これこそ地方に芸術文化を根付かせる最良の方策じゃないかと思ったりします。地元に、若くて優秀なプロの演奏家が目指す、魅力的な職場があるのとないのとでは大違いでしょうから。冒頭に書いた北海道のピアノキッズたちの活躍も、もしかしたら札響の活躍によるクラシック熱の高まりが、その遠因としてあるのかも知れないなあ、と思った次第です。


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季節は変われど・・・

2017年09月01日 | レッスンメモ
さあ、いよいよ今日から9月。今年の夏は暑くて熱い、怒涛のような日々を過ごしました。それもようやく峠を越して、今朝は乾燥した風がカーテンをゆらし、秋の気配が感じられました。

昨日は大分市内のホールを2つ掛け持ちでした。最初はiichiko 総合文化センターの練習室を使って、9月22日本番のコンサート「ジプシー音楽に魅せられて」の合わせ練習です。フラメンコダンサーとソプラノ歌手とのコラボですから、これは楽しいです。いつもとは違う新鮮な刺激を受けて(年を忘れて)ノリノリで弾きまくりたいと思っていますからお楽しみに! 

合わせ練習を終えたあとはホルトホールに移動して、秋のコンクール対策です。教室の生徒を集めてホール練習をやりました。
 
10月には教室の発表会もあるし、季節はめぐっても、やることたくさんということは変わりません。要するに何だかんだいいながら、結局、一年中ピアノ漬けの日々が続くのですが、これがまた、ちっとも苦にならないどころか、益々楽しくなってきているというのは、本当にありがたいことです。身体の続く限り、この道を真っ直ぐに進んでいきたいと心の底から思っています

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