秋になって、空気がからりと乾燥してきました。ピアノにとってはこれからが本調子の出せるシーズンです。先週コンサートが終わって、次のコンサートが来月13日なので、この合間を縫って久しぶりにピアノの調律をお願いしました。湿気の多い夏の間に除湿器をフル回転してピアノに苦労をかけたので、しっかりケアしなければいけません。仕上がったピアノを鳴らしてみると、やっぱりすっきり気持ちよくて、ピアノに向かうこちらの気持ちまでリフレッシュされます。
音の鳴りがいいか悪いかというのは、もちろんピアノの状態も関係しますけど、その前に、まずはピアノを鳴らす自分の技術がどうなのかということを真摯に見つめることが求められます。小さな音だけどスーッとどこまでも通っていく音、会場いっぱいに広がる大きな力強い音。丸い音、美しい音、張りのある音、暖かい音、透明感のある音など、求め出したらキリがありません。でもそんなに幾種類もの音を簡単に弾き分けられるようになるなんてことは、まずありません。そんなとき、どうするか。私の場合は、求めている音が出なくて出なくて、壁にぶつかったら、とにかく「基本」に帰ることにしています。具体的に言うと、とりあえず、一音から。ぽ~んと一つの音を出して、こんな音?あんな音?と自問自答してたしかめていく作業。これは結構根気がいることですけど、一音だけでも求める音が出せたらもうけもの。その次は、スケールをします。スケールは私にとってそれこそ基本中の基本。メカニックな準備運動の一つとして毎日欠かさずやっています。その日の始めに行うスケールでは、その日の調子がそれでわかるときもあります。自分の出す音と、その時の身体や腕や指の調子にも耳を傾けていく。こんな一連の「基本動作」はどうしても内向的になりますが、ピアノと自分が向き合うとても大切な時間だと思っています。
生徒さんたちも同じ。ある程度弾けてきて、次の段階にステップアップする時に時折やってくる壁。八方塞がりのような壁を感じたら、基本に戻る。スケールを弾き、自分の調子に耳を傾ける。楽しく弾けていた曲を弾いてみたり、自分を慰める音を出してみたりする。そうしたけど、何にも変わらない!と感じるかもしれません。それでも、淡々と基本をやる。やり続けているうちに、いつか、ふと抜けていたり、いい音で弾けることがあります。壁にぶつかったときは、自分自身と向き合うこと。それには基本練習が一番。そこで何かを自分自身で見つけて、感じて、そうしてトンネルを抜けていくものだと思います。
話変わって、陸上競技の桐生選手のエピソードをご紹介します。桐生選手は今年の日本選手権では4位と惨敗して失意のどん底にありました。その結果にものすごくショックを受けて、しばらくは練習場に足が向かなかったそうです。でもその後、何とか気を取り直して練習を再開したときの様子が次のように報道されていました。
「7月に入った、ある日だった。真夏の日差しが照り付けるグラウンド。ひたすらに走る桐生がいた。午後1時から3時間半。ひたすら50メートルを走っていた。その数は70本に及んだ。『何も考えずに走っていた』とフォームも体への負担も関係ない。がむしゃらに走ったのは京都・洛南高の時以来だった。気持ちは原点に返った。」記事
その後、この桐生選手が日本初の9秒台という大記録をたたき出したのはご存知の通りです。
壁にぶつかったら、基本に戻る。これ、鉄則ですね。
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音の鳴りがいいか悪いかというのは、もちろんピアノの状態も関係しますけど、その前に、まずはピアノを鳴らす自分の技術がどうなのかということを真摯に見つめることが求められます。小さな音だけどスーッとどこまでも通っていく音、会場いっぱいに広がる大きな力強い音。丸い音、美しい音、張りのある音、暖かい音、透明感のある音など、求め出したらキリがありません。でもそんなに幾種類もの音を簡単に弾き分けられるようになるなんてことは、まずありません。そんなとき、どうするか。私の場合は、求めている音が出なくて出なくて、壁にぶつかったら、とにかく「基本」に帰ることにしています。具体的に言うと、とりあえず、一音から。ぽ~んと一つの音を出して、こんな音?あんな音?と自問自答してたしかめていく作業。これは結構根気がいることですけど、一音だけでも求める音が出せたらもうけもの。その次は、スケールをします。スケールは私にとってそれこそ基本中の基本。メカニックな準備運動の一つとして毎日欠かさずやっています。その日の始めに行うスケールでは、その日の調子がそれでわかるときもあります。自分の出す音と、その時の身体や腕や指の調子にも耳を傾けていく。こんな一連の「基本動作」はどうしても内向的になりますが、ピアノと自分が向き合うとても大切な時間だと思っています。
生徒さんたちも同じ。ある程度弾けてきて、次の段階にステップアップする時に時折やってくる壁。八方塞がりのような壁を感じたら、基本に戻る。スケールを弾き、自分の調子に耳を傾ける。楽しく弾けていた曲を弾いてみたり、自分を慰める音を出してみたりする。そうしたけど、何にも変わらない!と感じるかもしれません。それでも、淡々と基本をやる。やり続けているうちに、いつか、ふと抜けていたり、いい音で弾けることがあります。壁にぶつかったときは、自分自身と向き合うこと。それには基本練習が一番。そこで何かを自分自身で見つけて、感じて、そうしてトンネルを抜けていくものだと思います。
話変わって、陸上競技の桐生選手のエピソードをご紹介します。桐生選手は今年の日本選手権では4位と惨敗して失意のどん底にありました。その結果にものすごくショックを受けて、しばらくは練習場に足が向かなかったそうです。でもその後、何とか気を取り直して練習を再開したときの様子が次のように報道されていました。
「7月に入った、ある日だった。真夏の日差しが照り付けるグラウンド。ひたすらに走る桐生がいた。午後1時から3時間半。ひたすら50メートルを走っていた。その数は70本に及んだ。『何も考えずに走っていた』とフォームも体への負担も関係ない。がむしゃらに走ったのは京都・洛南高の時以来だった。気持ちは原点に返った。」記事
その後、この桐生選手が日本初の9秒台という大記録をたたき出したのはご存知の通りです。
壁にぶつかったら、基本に戻る。これ、鉄則ですね。
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