自分が次のステージでご披露するための曲選び。それに、次の課題として教室の生徒に渡すための曲選び。これがとても大変だけど楽しいです。「どれがいいかな、これかな、あれかな、それともやっぱりこっちが先かな」星の数ほどたくさんある名曲の数々を思い浮かべながら苦心して、でもワクワクして選んでいきます。
自分の弾く曲を選ぶときは、過去にやったことのある曲の中から再度挑戦してみたい曲と、自分にとっての新曲の中から選ぶことになります。過去にやったことがあって再挑戦してみたい曲というのは、やはり自分にとって大好きな曲であり、しかも前よりもっと、ああしたい、こうしたい、そうすればきっと前の時よりもっともっと良くなる、というイメージが頭の中に自然と湧き上がってくるような曲です。過去に本番にあげた曲が全部こうだといいのですが、長くやってると中にはせっかく一生懸命練習して弾いたのに、もうこの曲は聴くだけにしようという曲もあります。
それでもそうした過去のストックの中からだけ出し入れしていてはマンネリになるので、常にレパートリーを広げる努力を続けています。それが自分にとっての新曲への挑戦ということです。自分にとっての新曲選びは楽しいです。あれも弾いてみたい、これも弾いてみたい。人さまの弾いているのを聴いているとほんとにそれが実際にはどんなに大変なことかをしばし忘れて、つい、やってみよう、と思ってしまいます。
まずは楽譜とにらめっこして譜読みから。新曲に取り組む時は教室の生徒とまるで同じです。コンサートのプログラム用に仕込む曲と、それとは別に、苦手だけど勉強しなきゃいけない曲とがあります。それらを組み合わせて譜読みに取り組みます。
自分の得意なものや好きなものを大きな柱にしますが、それだけだとやっぱりかたよりが出てくるので、お客様が退屈しないようにあれこれ色んな嗜好のものを取り入れようとします。それでもやはり苦手なものはちょっとプログラム用には避けてしまうことがあります。そういう曲の中でそれでもいつかやってみたいという大好きな曲は家の中の練習用として、あきらめずに取り組みます。そうすればいつの日かそれが苦手でなくなるような日がやってくると信じて・・・。
生徒に曲を選んで渡すときは、ここがちょっと弱いから、これを学んでほしいから、という観点を加えて曲を渡す場合が多いです。そしてコンクールの時には、その子のよさが出るように、その子の得意なことが輝くような曲選びをしています。
先生が生徒に渡す曲というのはその生徒のピアノ人生にとって実はとても重要なんですね。私自身の経験からいっても、たとえば大学のときにラフマニノフを渡されて、まさかこんなに手の小さい私が?と驚いたのですが、さすが先生!私のことを見抜き、ラフマニノフを選んでくださいました。今や、大好きで生涯離せない曲の一つで、大きな財産となりました。自分で好きな曲ばかりを選んで弾いていたら、きっとラフマニノフには手を出さなかったと思います。先生が曲を選んでくれてそれを必死で練習したおかげでその音楽の魅力を知り、圧倒されてラフマニノフが大好きになったのです。
「好きこそものの上手なれ」ピアノは自分の好きな曲こそ上手になるものです。しかし、どの曲が本当に好きか、それはとことん自分でやってみないと分かりません。ただ人が弾くのを耳で聴いてこの曲大好きというのと、自分で弾きこんでこの曲が大好きというのでは全然次元が違います。やってみて初めて自分が何が好きか、もっと深いところで分かるようになるとも言えます。というわけで自分も生徒も、食わず嫌いにならないように、色んな曲に挑戦していくことが大切だと思っています。
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