ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

指先の先に

2013年10月31日 | レッスンメモ
タッチの問題は、私にとって一生の課題です。脱力、脱力と小さな頃から言われてきて・・・。しかし、脱力しながらピアノを自由自在に弾くって一体どういうことなんでしょう? 単に力を抜いて弾くと音が死ぬし、第一、指は動かない・・・この疑問を抱きながらピアノを弾いている方は多いと思います。

私の教室の生徒たちの中には、音楽の感受性が豊かで、歌うように音楽を表現しながらピアノを弾こうとする生徒がいます。だけど、つい余計なところに力が入り過ぎて指が自由に動いてくれないのですね。内面的にとても素晴らしいものをもっているのに、それを表現する技術がまだともなっていないのです。これはとてももったいないし、本人も悔しい思いをしています。

多くの場合、指の支えが弱いのが原因です。まだ子どもだから基本的に力が弱いのは仕方ないとして、問題はその指の支えの力が足りないことをカバーしようとして、手首やひじに力が入ることです。指が弱いので、つい、手首やひじ、時には肩まで使って何とかしようとしてしまうのですね。速いパっセージの時などに特にそうなりやすくて、手首が痛くなるというのは、よくあることです。でもこれではいけません。手首やひじに余計な力を入れる癖をつけてしまっては大変です。指先をしっかりしながら手首や肘の力を抜く感覚をできるだけ小さい頃から体得することは、とても大切です。そのためのグッズも色々作られているようです。それらのものを利用するのもいいと思います。

この辺のところを小さな子どもたちに分かりやすく教えるのは簡単なことではありません。どんなに丁寧に説明して聞かせても、つぶらなひとみをぱちくりさせながら「先生、何言ってるんだか、わかんなーい!」という顔をしています。そうねえ、無理もないわね。

そこで心がけているのが、言葉よりもイメージを大切にすることです。子どもたちにとって、なるべく具体的なイメージを描きやすいような表現を選んでこちらの言いたいことを伝えるのです。例えば「指先に意識を集中して弾いて」というかわりに、「一本一本の指先の爪のところに一人づつ小人がいると思って弾いてみて」とか、「あなたは指先の小人のご主人さまよ。どう弾けばいいか教えてあげて、うまく弾けてるか気をつけてあげてね。実際に弾くのは指先の小人たちよ」などと言って分かってもらおうとしています。指の先端がピアノの鍵盤に接して初めてピアノの音が鳴るのですから、指先の先のタッチの重要性についての意識を何とか早い時期から身につけさせたいと思っています。

とは言ってもこの問題は意識だけで解決できるものではありません。指が弱ければ思うよにいきません。そもそも指が強ければ脱力も出来やすいのです(この点男の子の方が有利だなあと思うことがあります)。なので指が弱い生徒の場合は地道に指の力を鍛える努力もしなければいけないと思います。

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家族の絆を音楽で!

2013年10月30日 | レッスンメモ
私の教室に通うFファミリー。関東からお引っ越しをしてわが教室に一番上のお姉ちゃんが来てくれたのはもう二年半前になります。それからしばらくして、妹さんが、そしてまたその後に続いて一番下の妹さんも、という風に一年の間に次々と三人姉妹がピアノを始めました。一番上のお姉ちゃんは、それまでにも何年かピアノを習っていたそうですが下の妹さん二人にとっては初めてのピアノ教室です。

この三姉妹、三人とも本当によく練習してくれる姉妹で次々と自分で先を見てきます。おうちでは一台のピアノを夕方から奪い合いのようにして練習をするんだそうです。わが子にどうやって練習させようかと頭を悩ませている保護者の方が多い中、なんとも羨ましい話ですよね。

ここの親子の面白いところはレッスンの時の反応にも表れています。お子さんだけではなくて、後ろで待って聴いていらっしゃるお母さんが、実はとても音楽に反応して、楽しそうにしているんですね。もちろんお子さんの方も敏感に反応します。上手く弾けた時、かっこいいフレーズに出会った時、レッスンの途中でそんな個所に出会うと、ほんとに嬉しそうに反応して、そのたんびに後ろを振り返ってお母さんと顔をあわせて、にこ~っとするのです。「お母さん、できたよ!」とか、「ここんとこ大好き!」とか、「すご~いね」そんな気持ちを伝えているのがよくわかります。そのたんびにお母さんの方も言葉には出さないものの、にっこり笑顔で「よかったわね、えらいよ!」「ほんとね、素敵だわ」と返します。この笑顔のやりとりを見ていると、まあ、本当に親子で一緒に音楽が大好きなんだなと思います。ピアノの楽しさを親子で一緒に、ちゃんと分かち合っているのです。だからお子さんは、もっと弾きたい、もっと色んな曲を弾けるようになりたい、練習するのが楽しくてしょうがないと素直に思うのでしょう。素晴らしい~!

さて、お母さんと三姉妹のそんな様子を目の当たりにして、関東の方に単身赴任しているお父さんまで、ピアノに関心を持つようになってきたそうです。たまに帰省して家族の様子を見るたびに、お子さんたちがどんどんピアノに熱心になっている。その姿を見て、なんと、ご自分もピアノを弾きたくなってきたというのです。それで、簡単な曲をお嬢さんと連弾してみることをお勧めしました。独学でやってらしたお父さん、ついに一念発起して赴任先でピアノを最近習い始めたのだそうです。

今回、教室の発表会の連弾組曲にお嬢さんといっしょに連弾で出演していただくことになりました。ピアノ初心者のお父さんにとっては初舞台です。しかもお嬢さんと一緒にステージで連弾するという、夢のような?初舞台。しばらく前までは想像もしていなかったことかもしれません。




先日お父さんも一緒に家族全員で連弾のレッスンにみえました。後ろで聴いているお母さんは、いつものように私の発する一言一句も聞きもらすまいと耳を澄ましてたくさんメモをとっています。きっと家に帰るとみんなの先生役をなさるんですね。お父さんはいつもは単身赴任で一緒に住めないけど、こうやってピアノで繋がって、家族のきずなが一層強く固く結ばれているようです。ピアノの力、音楽の力というのは素晴らしいなと本当に嬉しくなりました。

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昨日はダブルで連弾総練習と大人の弾き合い会

2013年10月28日 | レッスンメモ
昨日は、iichiko総合文化センターで連弾組曲の総練習2回目を行いました。夕方から大人の弾き合い会をし、ダブルで会をしました。

連弾会では、流れを確認したり、自分の位置を確認したり。昨日は、ナレーションの生徒も入り、リハーサル同様。保護者の方々も朝早くからお集まり下さり、感謝しています。

何とか、楽しいものにしたいなあ。真面目な生徒が多いので、何となく硬い表情・・・。みんな元気だしていこう!

その後は、大人の生徒の弾き合い会。発表会直前なので、皆さんしっかり弾いていらっしゃいました。新しく入られた生徒さんも一緒に弾き合いをし、その後いつものお茶会。和気あいあい楽しくおしゃべりしました。緊張する時の攻略法、みんな関心のある話題でした。

さて、発表会まであと2週間を切りました。ラストスパート、ここから2週間でもう一歩、前進しましょう!

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行きつ戻りつ

2013年10月25日 | レッスンメモ
毎朝ピアノの部屋に入ったらまず、今やってる曲を一通り弾いてみます。その日の調子を測りながら、最後まで通してみます。前日にやったこと、前日に気になっていたことや修正したことなどに気をつけて、よく聴きながら弾いてみます。

「お、出来るようになった!」「あ、いい感じ~」と思うこともありますが、「ああ、またつっかかる」「うーん、やっぱりこの音冴えないなあ」「昨日あれだけやったのに」とがっかりすることもしばしばです。

たとえ牛歩のようにゆっくりでも、ほんの少しでも進めばいい、最低でもとにかく後退していなければいいと思うことにしています。こうやって、行きつ戻りつしながら、少しでも曲がよくなっていくことが楽しみなのです。楽しみでなければやってられないことですが、それができるのは曲が素晴らしいから。たくさんの曲を愛しているから出来ることです。そして、少しでも思い通りに弾けた時の高揚感や幸せな気持ち。これは、私にとって他では味わえない最高の喜びです。

音楽を愛して好きになること。これが原動力になって、毎日欠かさず音楽に触れたい、もっともっと深く音楽の世界を知りたいと思うようになるのです。

ということですから私たちピアノ教師の役割の一番大切なことは、生徒たちが音楽(ピアノ)を大好きになるように導いて行くことだということになります。最初はクラシック音楽など何の興味もなくて、ただ、親に言われて連れてこられただけかもしれません。練習の動機は「しないとお母さんにしかられるから」というのが一番多いかもしれません。たとえ最初はそうでも、そこから徐々に少しづつ時間をかけて、行きつ戻りつしながら、本当の音楽の魅力を感じられるように、そしてその喜びを一緒に分かち合えるように指導していきたいものです。

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フィナーレはノリノリで

2013年10月24日 | レッスンメモ
発表会当日のホール使用の段取りについて事前打ち合わせに行ってきました。この打ち合わせが入ると、いよいよ本番が近付いてきたなと気持ちがグッと締まります。プログラムも出来上がり、あとは生徒のみなさんがしっかり仕上げてくれるのみとなりました。今度の日曜日は午前中に子どもの生徒たちの連弾の総練習。午後は大人の生徒のリハーサル。あわただしくなってきました!

この一年、少しずつ成長してきた生徒たち。私はずっとその姿を見てきましたが、生徒たちやその保護者の皆さんにとっては教室のほかの生徒の成長ぶりを見るのは一年ぶりです。自分や自分の子どもの演奏はもちろんですが、ほかの生徒がどんな風に変化しているか、それを楽しみにしている人も少なくありません。教室のメンバー全員がそろうこの発表会の機会に、みんなの演奏を楽しみにしてよく聴いてほしいと思います。みんなそれぞれに変化し、成長しているはずです。それをじっくり聴いて、自分の次なる励みにして欲しいと思います。

今年のプログラムではまずはじめに、全員ソロの曲を順番にしっかり演奏してもらいます。これは生徒の皆さんにとってはがちがちに緊張する真剣勝負です。張り詰めた空気の中で全員がソロ曲を弾き終わった後は、やはりアンコールというかちょっと雰囲気を変えて、お楽しみが欲しいところ。そこでフィナーレに「お話連弾組曲」をもってきました。ここで子どもの生徒全員が順番に次々と再登場します。ナレーション部隊のお話に合わせて、順番に交代しながら連弾の演奏をするのです。弾き終わった生徒はそのままステージに残って並びます。最後は全員がステージに並んで整列。曲に合わせて華麗なステップと手拍子を決めて、フィナーレにふさわしいエンディングを迎える!!

と、こういう筋書きです。これはきっと盛り上がると思います。いや、盛り上がるに違いない!盛り上がって欲しい! みんな、ここはノリノリでやるところだからね。最後なんだから楽しくはじけましょう。

これ、一番楽しみにしているのは先生である私かな?!

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音階と調の勉強って大切

2013年10月23日 | レッスンメモ
楽典(音楽理論)というのは音楽の文法のようなものです。音楽を学ぶ上で決しておろそかにしてはいけない大切なことですけれども、文法の勉強というのはとっつきにくいし、退屈なものです。外国語を初めて勉強する時にまず文法から始めるというのを想像してみてください。これではすぐにその外国語のことを嫌いになってしまいそうです。大人になって覚悟して勉強するのならそれでもいいかもしれませんけど、子どもに教えるときはまずは簡単な実践会話から。ピアノの場合も、まずは簡単な曲を弾けるように練習することから始めます。楽典のお勉強は進度に合わせて必要に応じて指導していくことになります。

中学生や高校生になると、楽典の知識を踏まえた上で曲の分析、理解そして解釈も少しずつ自分で出来るようにならなくてはいけないので、その頃には一通り楽典の基礎を学ばせるようにしています。楽典の中でも私は特に音階と調のお勉強がとても重要だと思っています。音階(スケール)およびその断片は特に古典派音楽の中でとても頻繁に登場するので練習も理解も必要です。

曲の中で転調は、何度も繰り返されることが多いので、その部分が何調で書かれているのかを把握することは重要です。それぞれの調が決定したら曲の中にあるハーモニーがどういう流れになっているか、そしてその調に関連する和音がどんな機能を持っているか(トニック、ドミナンテなど)を知ることが演奏表現の大事な手がかりになります。ここは何調だからこの和音はこんな機能という風にとらえながら曲を分析していくと、曲の理解を深めることになります。また暗譜の手助けにもなると思います。

ということで教室では「スケール、アルペジオ検定会」なども取り入れながらなるべく早い時期から音階と調の関係について慣れさせようとしています。「ミを属音にもつ調の短調の平行調は何?」という質問に間髪いれずに即答するくらいまで、頑張って欲しいですね。そして即答することそれ自体が目的なのではなくて、その知識をピアノ演奏に役立たせることができるようになってほしいのです。


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決めつけない

2013年10月22日 | レッスンメモ
毎日毎日、私たちは変化しています。心と身体は日々変化。ゆっくり変化する時もあれば、ある日急に変わることも。私はもうそんなに若くないので、身体の方は衰える方向での変化が主になっていると思いますが、心の方はまだまだ進化するぞと自分で自分を励ましています。

それに比べて小さな子どもや若い人は、心も身体も急速にどんどん変わっていきます。「成長」という前向きでプラスの変化ですね。どんどん成長して向上していく教室の生徒たちの姿を見るのは、それはそれは楽しみなことです。どんなきっかけでどんな風に変化するか成長するかは一人ひとり様々に違っていて、あらかじめ予想できるものではありません。こちらの思い込みや予想は多くの場合、いとも簡単に(良い意味で)裏切られてしまいます。

数年間なんとなく淡々と可もなし不可もなしという感じで教室に通っていた生徒が、急に見違えるように熱心にピアノに取り組むようになったり、何かのきっかけで心が開いたのか、それまでただ黙ってうなづいていた生徒が、自分から明るくお話するようになったり。こういう変化が現れた時は嬉しいですね。

こちらとしてもそれまでの生徒の様子をふまえて「○○ちゃんはおとなしいからあんまりつっついて質問攻めにしたりするといけないかしらね」と遠慮するとか、「△△君は今日もまた練習さぼってくるんだろな~」なんて思いながらレッスンに臨んだりすることがあります。でも、「子どもは変わる」ということを忘れてはいけないですね。

お子さんのことを一番よくご存じのはずの保護者の方でも、ピアノのレッスンを通じて自分のお子さんが見せる新たな一面に驚くことがあります。あるお母さんはお子さんのことを「この子はのんびり屋さんで、どちらかというとポワ~ンとしてるんです」と説明してくれました。ところが実際はものすごい頑張り屋さんで、内に秘めた負けん気は相当なものがあると分かったのです。これには私よりもお母さんの方が驚いていました。私の方はレッスンを重ねる中で、確かにおとなしいけど、すごい頑張り屋さんで芯のしっかりした子だなあと早くから気づいていたのでお母さんほどには驚かなかったのです。

ということですから、なにごとにつけても相手のことを決めつけない。先入観を捨てて、いつでもまっさらな眼で相手を見るということが大事だと思っています。人は変化する。だから可能性を信じる。そして、それは子どもたちにだけ当てはまるのではなくて、私たち大人にも大切なこと。人は変わる、変われる! 自分を信じて希望を持って生きていきたいですよね。小さなことでもいいんです。ちょっとお腹をひっこめるとか(笑)。

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ピアノの楽しみ方

2013年10月21日 | レッスンメモ
金曜日に突然風邪をひいてしまいました。昼間、外出して、その帰りの車の中で、ぞくぞく悪寒が襲ってきて、夕方のレッスン途中から熱が出てきました。これはいかん、と思って残りのレッスンをキャンセルして、倒れるようにベッドへもぐりこみ、体温を測ると38.8度! あせりましたけど、土曜日朝一番でお医者さんに行ってあとは一日中寝て寝て寝て・・・。そして日曜日には完全復活。もう治りました。発表会が近づいているのでやること満載。少し焦りましたけどもう大丈夫。

さて、発表会へ向けて生徒たちも着実に前へ進んでいます。少々不安な生徒もいないわけではありませんが、本番ではとにかくみんな楽しくやって欲しいと思っています。私はいつも、音楽って楽しいんだよということを教えたい、伝えたいと思っています。ここに通ってくる生徒の親御さんたちも皆さん、「子どもにピアノを楽しんでもらいたい」「音楽の楽しさを味わわせたい」というご希望をお持ちです。

でも、ピアノというのは魔法みたいにささっと出来るもんじゃないでしょう? ピアノを弾けるようになって自分の好きな曲が思い通りに弾けるようになると、それは楽しいものです。でもそこへ至るまでの練習は結構大変です。ピアノは何にもしないでも簡単に楽しめる道具だと思っていたらそこは違うんですよね。

そこのところ、教室で習えばなぜか魔法使いみたいにサッとピアノが弾けるようになれると勘違いしている親子に出会ったことがあります。その生徒は、最初は調子よく楽しく通っていました。そのうちだんだん進んで曲が難しくなってくると、当然それ相応の練習量が必要になってきます。ところがちっとも練習してこないので、なかなか合格がもらえなくなってきました。少し上達するともっと難しい曲に挑戦して、それに応じてきちんと練習してくる必要があるということを親子とも理解してくれなかったのです。「以前ほど合格しなくなって、楽しくないと言ってる」「練習しないでも上手く弾ける曲にしてください」「楽しむためにピアノを習わせてます」などの注文を頂くようになりました。色々頭をひねりましたが、結局全然家で練習しなくてもできるような曲には限りがあります。何か興味をそそる曲に出会う事を願ってあれこれ曲を考えたりもしますが、週に一度のレッスンだけで練習も兼ねて行くには合格のペースは当然落ちることになります。

ピアノとの接し方、学び方というのは生徒に応じて色んなパターンがあっていいと思います。曲の選び方、進行速度など、ピアノのレッスンはマンツーマンで行うものなので、その生徒に合った教え方を工夫することはもちろん可能です。それでもやはり最低限、練習を頭から否定するようなことでは教え甲斐がないというものです。

ピアノというのは練習とセットです。そこのところを攻略しながら進んで行くのが醍醐味です。この醍醐味を味わって、練習を習慣化できると本当に曲が仕上がっていくのを楽しむことができるようになります。ピアノは魔法でも使わない限り、練習しないと上手くなりません。上手くならないと楽しくない。でも上手くなったら楽しいし、その達成感はすごいものがあるはずです。大きな自信にもつながります。練習すればするほど上手くなる、そしたらもっともっと楽しくなる、という法則さえ学んでくれたら後は大丈夫です。

その意味で、「ピアノの楽しみは練習にあり」ですよ

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iPad で譜めくり?

2013年10月18日 | レッスンメモ
暗譜というのはピアニストを苦しめる永遠の課題です。もちろん中には暗譜で苦労したことはないとサラッとおっしゃる方もあるようですが、そんな人は例外です。普通は苦労するものです。特に歳をとってくるとこの苦労は益々大変になってきます。他の多くの楽器と比べてもピアノは暗譜でなければならないというプレッシャーは特別に大きいと思います。

自分のプライドを賭けて暗譜に取り組んで、演奏中にスコーンと吹っ飛んで一瞬真っ白になって、これだけは年の功でうまくなった超絶瞬間作曲技法で乗り切って、何食わぬ顔で(←ここ大事)元に戻って演奏を続ける・・・。つらいものがありますよね。これが原因でやめていく人も多いと思います。でもここでやめてはもったいないじゃないですか。本番で暗譜に失敗するのが怖くて尻込みするくらいなら、本番でも楽譜を見ながら演奏する方が絶対いいと思います。

楽譜を見ながらピアノを弾く時に困るのが譜めくりです。譜めくりにほかの人の力を借りるのは多分ピアニストだけでしょう。ピアニストは調律も自分でできないし、譜めくりも自分でできないなんてと笑われそうですがこれが現実。演奏中は両手両足使いますし。それだけすべてを「演奏」に注ぎ込んでいるのだとご理解ください。

というわけで、今、とても気になっているのが、「手を使わず譜めくりできる iPad 楽譜アプリ」です。ピアノの譜面台に iPad を載せて楽譜を表示する。それを見ながらピアノを弾いて、譜めくりのタイミングのときに自分の首をちょこっと動かすとさっと次ページへ移るというものです。iPad がこちらの身体の動きをキャッチして反応する仕組み(モーションキャプチャー)だということです。


最近ほかの楽器では iPad を譜面台に置いて演奏する人が増えてきているようです。ピアノではどうでしょうか?私はまだピアノで iPad を使っている人を見たことはありません。私自身はiPadを 持っていないので試してみたこともありません。でも本当にこれが便利で使えるとなると、あの重い楽譜を持ち歩く苦労からも解放されるし、譜めくりを人に頼らなくてもいいし、とてもいいことだと思います。だいたい譜めくりの苦手な私。練習中の譜めくりにストレスさえ感じます。でも、楽譜の譜面ヅラから醸し出す雰囲気というのも捨てがたいのです。そこで知りたいのが実際の使い勝手です。どうなんでしょう? 本当に便利に使えるのかしら? 興味津津なのでどなたか教えてくれないかしら?

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聴くことと弾くこと

2013年10月17日 | レッスンメモ
「自分の出す音をもっと良く聴きながら弾いて!」というのは、もう決まり文句のようにレッスンで繰り返し言うことですが、初心者の人にとってはピアノの音を「よく聴く」ということが一体どんなことなのか、ピンとこないかもしれません。

音というのは、雨の音も風の音も雑踏の音も何の音でも自然に耳に入ってきて、聞こえてくるものです。ところが「聞こえる」ということと「聴く」ということは違うのです。「聞こえる」というのは耳の機能のレベルの問題であって、健全な耳を持っていればそれで十分でしょう。一方、「聴く」というレベルではそこから先の認識、分析能力が問われます。それぞれの音の微妙な音色を聴き分けて評価するという情報処理能力に関わる問題です。これは目的に応じた訓練と経験によって鍛えることが可能です。調律師さんが調律をしている姿を見ればこのことは一目瞭然ですね。

ピアノを練習する際に、鍵盤の上で間違いなく指を動かすということにとらわれ過ぎて、自分の出している音に無頓着な生徒がいます。手指の訓練にはなっていると思いますが、それではよい音楽にはなりません。100メートル競走に向けて脚力をしっかり鍛えて、いざレースに臨んだら、みんなと違うゴールに向かって駆けだしてしまうようなものです。いくら速くてもそれでは意味がありません。

ゴールはあくまで魅力ある音楽をつくること。そのために「弾く力」と「聴く力」の両方が必要なのです。

聴く力を養うためには、まずは、コンサートやリサイタルなど、生の演奏を実際に聴きに行くことです。素晴らしいコンサートもあれば退屈なコンサートもありますが、素晴らしい演奏のときは、向こうの方からギュッとつかんで耳をぐいと引っ張ってくれるので、いやでも集中して聴くことになるでしょう。そういうコンサートに一回でも多く巡り会えるように、小さな時からできるだけ数をこなすことが大切です。どのコンサートでも自分が審査員や評論家になったつもりで聴いてみると、だんだん集中して聴けるような気がします。

また、自分でピアノを練習ているときには、意識して同じ個所を違う音色で弾き比べてみるとよいでしょう。その中に自分の求める音色があるかどうか、満足がいかなくて、何度も何度も耳を凝らしてチェックするために集中して弾いて聴く、また弾いて聴く。これを繰り返していくと自然に耳と脳が鍛えられて「聴く力」が身につくようになると思います。一つ一つの音がどんな音かを深く深く掘り下げて聴き分ける精神力とでもいいましょうか?

ピアノの場合、たくさんの練習を要しますが、指を動かす運動能力とは別に耳を鍛える事が大事です。ここはバランス良く、聴くことと弾くことを一緒に進めていければいいなと思います。

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練習3点セット

2013年10月16日 | レッスンメモ
最近、自分のピアノについて思うのは、なかなか時間的に余裕のない中、コンサートやリサイタルなど本番へ向けての練習ばかりやっていると、いわゆる基本的なお稽古をする余裕がなくなるということです。でもやはり基本的な練習の積み重ねは、経験や年齢に関係なく、とても大切なことだと痛感しています。

そこで最近始めたのが、バッハの平均律とショパンのエチュードのやり直しの取り組みです。私が小さい頃からずっと、私の師事した先生のほとんどが、バッハとエチュード、そしてその時々の課題とする曲という3点セットのレッスンでした。高校の途中まではその3点セットに加えて、ハノンやピシュナなどのいわゆる指の訓練用の教材も使いました。

その後は、色々な練習法を試したり、チェルニーまでさかのぼってやっていた時期もありますが、中心は自分の弾きたい曲、弾くことになっている曲の練習でした。そうした曲の中から色んなテクニックの習得は可能ですし、練習のための練習ではなく、「この曲」を「いつまでに」もっと上手く弾きこなせるようになるための練習ということですから、当然必死にやるわけです。すべての練習は曲を弾くためにあるのですからこうなるのはむしろ当然だとさえ思っていました。こうして少しづつレパートリーを増やして行き、その時目の前にある曲の練習に打ち込んでいるうちに、いつのまにか平均律やショパンのエチュードはほったらかしになってしまいました。

でも最近になって考えが変わったのです。昔のようにあの3点セットをもう一度自分にも課してみようと思ったのです。なぜかというと、長年色々な生徒をレッスンしながら、やはり、この3点セットの勉強の仕方がベストだという思いに至っているからです。平均律は何もその曲に限る必要はなくて、とにかくポリフォニーの音楽を。エチュードはもちろんショパンのものに限らず、効率の良いテクニック的な練習のためのものを。そしてそれにプラスして生徒の進度や個性、好みなどにあった曲を選んで与えて行く。ポリフォニー、エチュード、課題曲、この3点セットです。

ピアノをずっとやっていると、古典派・ロマン派を好む(得意とする)タイプと、ポリフォニーを好む(得意とする)タイプとに分かれることが多いように思います。とっつきやすいのはどうしても前者なので、後者は苦手という人も少なくありません。かく言う私もその一人です。でも、クラシック音楽の成り立ちから言えば、まずバロックが先です。その上に古典派やロマン派がくるわけです。その逆ではありません。この当たり前の事実をもう一度私なりに捉え直して、ポリフォニー音楽を勉強し直したいと思っています。

生徒に対して「この方法が一番いい!」と信念をもって教えている練習のやり方を自分がやらない手はないですよね。ということで、このブログで宣言しないとなかなかきっちりやらないかもという気がするので、宣言してみます

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ピアノをやめる理由

2013年10月15日 | レッスンメモ
私の教室に通っている大人の生徒さんたちの中には、それまで本当にまったくピアノ未経験という方もいますが、でも、ほとんどの方は子どもの頃に多少なりともピアノを習っていたことがあるという経験者の皆さんです。小学生の頃に習い始めて中学生や高校生になる頃、ピアノを辞めたという人が多いようです。そこからピアノとは無縁の生活を10年、20年、人によっては30年も送った後に、「もう一度ピアノを始めよう!」と思い立って教室にやってくるのです。

そうした生徒さんの中には、ピアノをやめた理由と再開する理由を問わず語りに話してくれる方もいます。ピアノを再開する理由については、皆さん同じです。「やっぱりピアノが大好き」ということ。そしてレッスンに通える生活環境が整ったということ。大人の場合、この二つがそろわないとレッスンを再開しようということにはなりません。

一方、子どもの頃にピアノをやめた理由は人によって様々です。ピアノの専門の道に進むわけではないのでどこかでやめる、というのは同じでも、そこに至る理由は人それぞれです。「思うようにうまくならないから」、「ほかにやりたいことがあるから」等々。たとえ専門の道を目指さなくても、それならそれで趣味として負担にならない程度に楽しみながら続ければいいのにと私などは思いますが、なかなかそういうわけにはいかない場合もあるようです。

私が驚いたのは、ピアノをやめた理由として、「先生が怖かったから」という人が少なからずいるということです。教室のある生徒さんは、子どもの頃からピアノが大好きで、とても熱心に教室に通っていたそうです。親御さんも一生懸命にサポートしていてグランドピアノまで購入してくれました。将来はピアニストに、というまわりの期待もあったそうです。ところがそのピアノの先生の指導があまりにも厳しくて怖くて教室に通うのが嫌になってしまったそうです。せっかくその気になって応援してくれている親には「医学部目指して勉強するから」と宣言してピアノの道を絶ったのだそうです。

この方、そうして本当にお医者さんになったわけですからすごいと思います。今ではハードなお仕事の合間を縫って、お子さんたちと一緒に教室に通って練習に励んでいます。いったんやめたとはいえ、小さな頃からピアノをやっていたことがとても良かった。我慢強さ、集中力、続ける精神力を養ってくれた。そして頑張った後の爽快感と喜びを教えてくれたし、身の回りのありとあらゆるものごとについて繊細に感じる感受性を育むことができた、と言います。大人になってつくづくそう思うとの事でした。だから自分の子どもたちにも、できるだけ長くピアノを続けさせたいということでした。

ピアノ教師の立場からいえば、「厳しい」ということと「怖い」ということは必ずしも一致しません。私自身はどちらかというと(生徒の皆さんが言うには)優しい先生らしいのですが、曲の指導については甘やかしているつもりはありません。むしろ厳しく、なかなか合格させなかったり、妥協しなかったり、できるまでしつこくやらせたりします。そう言う意味で、自分では、厳しめの先生だと思っています。しかしだからと言って、生徒に恐怖を感じさせたり委縮させてしまうような言葉遣いや、叱り方、感情表現などをすることはしません。この辺は亀の甲より年の功かもしれませんね。色んな経験を経てこの歳になると少々のことではカッカしなくなるものです。

様々な理由でピアノを習うことをやめるお子さんがこれからも出てくるかもしれませんが、そういう中で、私たちピアノ教師は少なくとも「先生が怖いから」ピアノをやめるという生徒さんが出ないように、気をつけたいものですね。

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爽やかな空気

2013年10月13日 | レッスンメモ
今朝は、秋でも一番爽やかさを感じる朝でした。ひんやりとした空気だけど寒さを感じるほどでもなく、すんだ青空が気持ちよく広がっています。

こんなときは、外に出て花をみて海や山が見られれば最高ですね。私の住んでいる別府市は、海と山が接近している地形でその気になればどちらも観ることが可能なのです。

今日は午前中仕事、午後は少し家の片づけをする予定ですがあまりにも天気がいいのでちょっとであるこうと思います。3連休の中日。私も今日の午後だけはお休みです。

さて、午後からの事を楽しみにお仕事開始。

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発表会まであと何日?

2013年10月12日 | レッスンメモ
11月9日の発表会が近づいてきて、生徒が益々真剣に練習に取り組むようになってきました。今回は大人の部と子どもの部に分けて、午前・午後の二部構成で開催します。なかなか練習時間のとれない大人の生徒さんたちも、年に一度のこの日に向けて、いつも以上に張り切っています。会場の「音の泉ホール」は本当に素敵なホールですから、一度ここで弾くとみんな大好きになります。「先生、来年の発表会も、音の泉がいいです!」というリクエストがたくさんあって、それにお応えしました(予約取るの大変なのが玉にキズ)。

さてピアノの先生なら誰でも頭を悩ますのが生徒に渡す発表会の選曲ですが、さらにもう一つ、発表会用の曲をいつ渡すのかというタイミングを考えるのも重要です。生徒によって、一つの曲を仕上げるのに必要な時間が大きく違うからです。譜読みの速い生徒、遅い生徒。練習時間のとれる生徒、なかなかとれない生徒。一人ひとりの生徒によって違います。お忙しい大人の生徒さんの場合、半年くらいかけてじっくりあせらず一つの曲を仕上げて、それを発表会で弾くということもあります。また、積極的にコンクールに挑戦するような伸び盛りの生徒の場合は、あまり長く一つの曲に関わるのではなくて、なるべく色んな曲を次から次へと練習させたいので、どうしても発表会の曲は直前に渡すことになります。先週コンクールを終えたばかりのある生徒には、一度譜読みだけ以前にみて以来、今週、初めて発表会の曲をレッスンしました。

というわけで、発表会の曲の練習に取り組むスタートのタイミングは各生徒によってバラバラでしたが、ゴールはみんな同じ日、11月9日です。最近は教室に来る生徒がみんな、大人も子供も保護者の方も、「あと、何日!」を連発しています。もちろん私も、遅れ気味の生徒の姿にハラハラドキドキしながら「あと、何日!!」と声かけしています。

さあ、この最後の追い込みが大事。生徒も私も、ここでぐぐっと踏ん張って、立派に仕上げたいなあと思いつつ、今日もレッスンに励みます。

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ベートーヴェン、ピアノソナタ第1番

2013年10月11日 | レッスンメモ
私がベートーヴェンのピアノソナタ第1番を初めて練習したのは遥か昔のことですが、その時の衝撃を忘れることはできません。私にとっては二つ目のベートーヴェンソナタでした。最初に先生からいただいたベートーヴェンのソナタは10番(それが妥当な選択だったかは別にして)でした。そしてその次にいただいたのが1番です。私はいっぺんにこの曲の虜になってしまいました。これまで自分が弾いてきた曲たちとは大違い。何と言えばいいのかしら、不気味さと不安と情熱そして優しさ、ありとあらゆる情念が入り混じったこの曲に心を揺さぶられ、夢中になってしまったのです。

このソナタをベートーヴェンが完成させたのは1795年、若干25歳の頃でした。ピアノという楽器の持つ可能性を大きく展開して見せてくれた画期的な作品であり、彼が生涯を通じて書きあげた32曲のピアノソナタの第一番を飾るにふさわしい名曲です。

私にとってはしばらくご無沙汰していた曲ですが、最近この曲を生徒に渡して指導を始めました。そうすると改めてこの曲の奥深さが新鮮に感じられて、自分でも弾きたくなってきます。

第1楽章の冒頭のアウフタクト。もうここからベートーヴェンのこだわりが感じられます。これを加えることによって主題が1オクターヴ上まで駆け上がるのです。ここの疾走感はものすごい! そしてそれに続いて動機の頂点だけにアフタクトのドの音を前打音の形でくっつける。そこへさらにたたみかける形で上り詰める。上り詰めたと思ったら、突然弛緩して縮む。その後、左手に主題が移ったと思うと、不安定な変イ長調ととれる調に転調し、陰影を持った副主題に移る。そしてすぐさま反復進行。

ベートヴェンのこの上り詰めて落ちるという手法は、彼の人生そのものを暗示しているような気がします。色々な事に翻弄されていったベートーヴェンの人生。それでも不屈の精神で生き抜いた人。いつもいつも不安を抱きながら、それでも前に向かって取り組んでいく。それなのに人生のいたずらは繰り返され、また悲痛な事態を受け入れざるをえなくなる。この人のその後の人生航路が、このピアノソナタの第1番に示されているという予感がするのです。

さらに、展開部は変イ長調で始まります。ここでもすぐさま反復進行と転調がたたみかけるように現れ、それが緊張や不安、焦りなどを生み出しているように感じます。展開部が進むにつれて、どんどん音域が拡大されて、右手と左手交互の掛け合いが始まります。この右手と左手の音をどう弾くか、どのように色を変えていくか。転調を繰り返しながら緊張を高めていくという、ベートーヴェン作品の多くによく見られる手法をここで学びたいと思います。シンコペーションを含む1拍分(2分の2の曲なので1小節の半分を使う)、かなり長いと感じる音符がリズムを強調しながらクライマックスに到達します。そして、だんだん音符の長さを半分にしながらdim.していき、遠ざかって静かになります。そして、再現部へと誘います。

時代的に言えば、ハイドンやモーツァルトのすぐ後に、それまでの音楽とは違って、その当時としては大げさとも荒々しいとも感じられたかもしれないこの曲。しかしそこにはものすごく計算された構成が備わっていて、弾けば弾くほど全体から細部にわたるその構成力に驚かされます。それが偉大な作品として評価され続けている理由の一つでしょう。

久しぶりに生徒にこの曲を教えながら、懐かしさとベートヴェンの素晴らしさを再認識しています。

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