ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

グリゴリー・ソコロフ

2017年03月20日 | レッスンメモ
ロンドンの『ザ・インデペンデント』紙が、「ほとんどの人たちはじつに単純に彼のことを現存するもっとも偉大なピアニストとみなしている」と評するグリゴリー・ソコロフは、1950年、旧ソ連のレニングラード(現サンクトペテルブルク)に生まれました。そして弱冠16歳という若さで第三回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で優勝し、今日なお世界的に活躍しているピアニストです。現存するロシアの他の有名ピアニストたちの中にソコロフを位置づけてみると次のようになります。

アシュケナージ、1937年生まれ、第二回チャイコフスキー国際コンクール優勝。
ソコロフ、1950年生まれ、第三回チャイコフスキー国際コンクール優勝。
プレトニョフ、1957年生まれ、第六回チャイコフスキー国際コンクール優勝。
ブーニン、1966年生まれ、第11回ショパンコンクール優勝。
キーシン、1971年生まれ。

なんとまあ錚々たる顔ぶれでしょう。でも私にとってこの中で一番なじみが少ないのはソコロフです。生で観たこともなければ、CDも持ってない。YouTube 動画で幾つかの演奏を聴いて、これはすごい!と感動して以来、要チェックピアニストの一人として頭の片隅に入れてはいましたが、そのままになっていました。ロシアだけでもこれだけの名ピアニストを差し置いて、「現存するもっとも偉大なピアニスト」と称されるソコロフですから、これはやはり聴いてみたくなりますよね。そこでついに先日、遅まきながら、ソコロフのCD買いました。

今回買ったCDはソコロフが2008年にザルツブルグで行ったリサイタルのライブレコーディングです。曲目はモーツァルトのソナタとショパンの24のプレリュード、そしてアンコールではスクリャービンやラモーなどの小品を6曲でした。ソコロフのモーツアルトは、なんて上品なんでしょう! この人はどんなにこの曲を愛してるのだろうと思ってしまいます。聴いていると、彼のこの曲への愛情がひしひしと伝わってくるのです。本当に隅々まで細かなところまで、細心の注意を払って慈しむように一つ一つの音を出してくるんですね。弾むような音、透明感のある音、丸みを帯びて転がるような音、色々な音色がきらめきます。ときおりジョークも交えた上品な言い回しでおしゃれな会話をしているような気分にさせてくれます。そして悲しいくらい美しい・・・。

あれこれとこれ以上私のつたない言葉を並べてもこのCDに収められたソコロフの演奏による音楽の素晴らしさを言い尽せるものではありません。とにかく全編を通じてソコロフの音楽に自分が包まれて守られているような安堵感を覚えました。この感覚こそが人間が昔々から音楽を愛し、また必要としてきた理由だと思います。

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ピアノが弾きたくてたまらない!

2017年03月13日 | レッスンメモ
「この子が、ピアノが弾きたくて弾きたくて、早く学校から帰りたいと言うんです」 と、あるお母さんが嬉しそうに教えてくれました。これまで、ピアノの練習のことで親子けんかがあったりとか聞いていただけに、私もお母さんと一緒にとても嬉しくなりました。生徒たちが「ピアノを弾きたくてたまらない」ということを言葉に出したり、行動で示してくれたりすることは、ピアノの先生としては一番嬉しいことです。こういう言葉や態度に出会った時、私は自分の中のテンションがぐっと上がって、お腹に力が入って、勇気が湧いてきます。

ピアノの練習というのは例えて言えば、長い長い道のりです。その長い長い道のりをコツコツと前へ進んでいくと、見晴らしのいい、一里塚にたどり着きます。自分で仕上げた曲の美しさ、自分の力でたどり着いたからこそ味わえる喜びを、しっかり味わう事ができるのです。この喜びを経験すれば、そこから先の新たな道のりに一歩を踏み出すことが楽しみになります。道のりは決して平坦ではないし、いつも先が見通せているものでもありません。回り道したり、霧が晴れるのを待ったり、行けると思えば全力で駆け抜けてみたり、色んな工夫をこらして前へ進みます。そうして苦労して何とか前へ進むことができると、今度はその事自体が喜びになります。できなかったことができるようになるのですから、当然です。こうして毎日毎日、コツコツと前へ進む。これがピアノの練習です。こうやって紆余曲折しながら前へ進もうとしている生徒さんたちを、私はどれだけピアノの奥深さや楽しみを知ってもらえるように導くことができるか、責任の重さを噛み締めながら、今日もまた、生徒に向き合いたいと思っています。

月に1~2回のペースで開いているソルフェージュクラスの様子。みんなと一緒にお勉強。仲間がいるということも大切ですよね。


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バランス

2017年03月06日 | レッスンメモ
先週、ピティナピアノコンペティションの課題曲講習会に参加するため上京しました。二日間にわたってたくさんの課題曲のレクチャーを聴きながら、それぞれの先生の奏でる演奏に癒やされたり、励まされたりしながら帰ってきました。いつも思うことなのですが、素晴らしい演奏というのは、最初の一音から素晴らしい。ハッとするような、思わず引き込まれるような、そんな音。どうしたらそんな音が出せるようになるかしら。そして子どもたちがそんな音を出せるように指導するにはどうしたらいいかしら?いつもいつもこのことが頭から離れません。

バランス、それは縦のバランスと横の流れのバランスと二つあると思うのですが。今日は縦のバランス「重音の中のバランス」について。重音を構成する音の中の、どの音に重きをおくか、あるいは、キチンと同じに揃えるか、右と左のバランスはどうするか・・・。同時に二つの音をあるいは三つ、四つと縦に鳴らしていってどれが一番魅力的なのか、順列組み合わせで試してみます。これをよーく聴き分けて、弾き分けて、比べてみて、求める音を追求していく。こういう作業を納得行くまで突き詰めていくのが大事かなと思います。もちろんニつ以上の音のバランス以前に、そもそも一つの音がどうなのかということが重要なのですけど、一音一音の音の追求というのは際限がないので、重音の中の一音の変化を工夫することの方が、まずは分かりやすくて効果的だと思います。

音の追求ということになると、当然タッチの工夫ということが出てきます。タッチの問題はとても奥が深くて、それぞれ一人ひとりの手によってタッチ自体も人それぞれ。だから指導はそれぞれの生徒に応じて変わるものです。「タッチはこうあるべき」と初めから意固地に考える必要はないと思っています。それでもいくつかのパターンはあるでしょうからそれはそれで研究しながら、出てくる音のバランスの問題の方にもっと目を向けてみましょう。この曲のここはどんなバランス?一番最初の音はどんなバランス?こんなことを考えながら弾き分けて、楽しんで、一番良いと思うバランスを選んで進めていくと良いと思います。音と音のバランスに神経を注いで、目指す音を探し出す練習をする。そしてその音を出すのに最もスムーズで効率的なタッチの仕方を工夫する。こうすれば少しでもいい音がだせる可能性は大きくなると思います。


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