田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

空蝉の術・依り代・里忍/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-20 06:25:11 | Weblog
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駅前の広場まで……どうにか逃げのびてきた。
殺気は感じる。
それも妖気とすらおもえる。
不気味な殺気なのだ。
それでいて――いない。
だあーれもいない。
むわっとするヒトイキレさえ皮膚感覚でとらえているのに。

さっと身をかわす。
髪の毛が何本ももっていかれた。
かわしきれなかったら、カラダガ血をふいていただろう。

「こんなのって、戦いきれないよ、百子」
「翔子、弱音吐かないで。簡単なことよ。them(ヤッラ)は空蝉の術で攻撃してきているのよ。依り代に、紙の人型でなく、透明な極薄型のプラスチックのフイルムでも使っているの。吸血鬼の本体はモニタールームで血のカクテルでも飲みながら、観戦しているのよ」
「そうか。百子ってスゴイ」
敵の正体がわかった。
怖さがうすれた。

「百子さん?  百地組の統領の血をひく百々百子(どどももこ)さん……?」

駅前の噴水の影がエプロン姿の少女を突きだした。

百子はコクンとウナヅク。
ロリータールックに反応して幼い動きをみせている。
「これかけてみて」
3Dメガネのようだ。
「うわぁ。立体的に見える」
「もうひとつあります。これで戦って」
翔子は攻撃を仕掛けてきたものを斬り捨てた。

敵の姿がよく見える。
おびただしい敵にとりかこまれている。
いままで無傷で逃亡してこられたことが、奇跡だ。

「平和を願う気持ちには伊賀も甲賀もありません。ワタシは甲賀のタカ。これで地上に逃げてください。里忍(その土地に住み情報を収集する)の使命は、この携帯にすべて記録しました」

「いっしょにタカさんもいこう」
「ありがとうございます。百子さん。この敵をくいとめるのは下忍のつとめですから」
タカはふたりを改札から送りだすと、群がる敵陣にもどっていった。
「火焔車!!」
じぶんの体に火をつけた。
両腕を車のようにふりまわしていた。
プラスチックの依り代のなかにとびこんでいった。

「会えて、光栄でした」という言葉を百子に残して。

百子はタカとは、どう書くのか、ききはぐっていた。



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