ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

憲法に関する世論調査 - 15 ( 青井未帆教授の意見 )

2024-05-22 14:35:53 | 徒然の記

 残るのはあと一件、5月6日の記事です。この記事の紹介が終わりましたら、シリーズが完了します。

 今まで紹介してきたのは、千葉日報新聞に配信された共同通信社の記事でしたが、今回は千葉日報社の独自取材です。「直言私論」「千葉最前線」「識者評論」と、三つのジャンルがあり、千葉出身の学者、政治家、有識者の意見を特集する誌面で『千葉オピニオン』と名前がつけられています。

 本日紹介するのはこの中の「識者評論」の記事です。見出しが3つ付いています。

   「憲法と人権・政治」「掘り崩す安保の正統性」

   「国会と平和的生存権を軽視」

 青井教授の略歴を紹介しておきます。

   ・昭和46年生まれ51才

   ・国際基督教大学教養学部社会科学科卒業

   ・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得満期退学

   ・信州大学経済学部准教授 成城大学法学部准教授

   ・学習院大学法務研究科教授

  青井未帆氏 ( 千葉県出身 ) の意見 〉

  ・令和4年12月16日に、いわゆる安全保障関連3文書が閣議決定により改定され、1年4ヶ月が経つ。

  ・この間、3文書により示された政策が着々と執行されている。

 これが氏の意見の始まりです。氏は同性婚や夫婦別姓婚という婚姻関係でなく、安全保障面から憲法問題を語る「護憲派」の学者です。東大法学部を出ると大抵の学生が左寄りとなりますが、氏の場合は皇族方の行かれる学習院大学で反政府・反日の教育をしていることが分かりました。

  ・中でも注目されるのは、英国・イタリアと共同開発する次期戦闘機の、日本から第三国への輸出解禁である。

  ・岸田首相による国会での説明はあったとは言え、実質的には密室での与党協議を経て、今年3月26日の閣議決定となった。

  ・この件を切り口に、人権や平和を考えてみたい。

 与党内での協議が全て密室であるような語り口ですが、「ねこ庭」も氏と共に人権・平和を考えてみたいと思います。紹介しながら、数行ずつ意見を読んでいますので、学徒の心が期待でふくらみます。

  ・まず国会での議論を回避することについて、平成26年の集団的自衛権行使容認も安全保障関連3文書改訂もそうであったが、閣議決定により安全保障政策を転換することが続いている。

  ・これは選挙によって選ばれた国民の代表を、政策決定過程から排除するにも等しい、悪しき慣行と批判されるべきである。

 「密室」の次は「排除」と来ました。自由民主党政府の批判をする時、反日左翼勢力の人々の多くがこの言葉を使います。政府は国民の代表である野党を排除し、自分たちだけでこっそりと話し合い、重要な政策を決めている、とんでもないでないかと素直に読めばこうなります。

 しかし大事なことは、なぜこういう状況になっているのかという下記の説明が、省かれているところにあります。

  ・憲法の「安全保障問題」は、敗戦後の日本に残された最大の課題の一つである。

  ・自由民主党と反日・左翼野党の対立が77年間続いている

     ・自由民主党 ・・・「憲法改正」をすべき

     ・反日左翼野党・・・「平和憲法」を死守する、何が何でも改悪に反対する

 これまでの新聞記事で紹介しました通り、野党は頭から反対し、議論の場に出席さえしようとしません。顔を出しても別の議題にすり替えて、時間稼ぎの妨害をします。

 政策協議ができませんから、国際情勢の剣呑な折、自由民主党中心の議論で進めて行くことになります。青井氏は野党議員を「国民の代表」と言いますが、自由民主党の議員も同様に「国民の代表」です。

 国民の多数から負託を受けた自由民主党の政府が、閣議決定をして不都合はありません。今の自由民主党のやり方をすべて肯定しているのではありませんが、現状説明を省略した氏の意見には疑問を感じます。

  ・私たちが忘れてならないのは、実力の統制に失敗した過去である。

  ・同憲法の立憲主義的な側面が不完全であったことに加え、扇動的な国民といった要因と相まって、「軍部の独走」を止めることができなかった。

  ・かかる統制不能な事態は、二度と起こしてはなるまい。

 「扇動的な国民」が何を意味しているのか、説明の必要がありますが、「明治憲法」の不完全さを指摘する氏の意見に反対しません。

 近衛内閣の書記官長 ( 官房長官 ) だった富田健治氏が、昭和37年に出版した『敗戦日本の内側』の中で次のように語っています。

  「昨今、現行日本国憲法の再検討が云々されており、その重要な点の一つに、再軍備の問題がある。」

  「再軍備問題は、今日のわが国内の国民感情、特に婦人層並びに青年層の考え方や、国家財政の上から、いろいろ問題があるけれど、独立国としていつの日にか、軍備を持たねばならぬと思う。」

  「その時、一番心しなければならないことは、軍の統帥を、絶対に国務から独立させてはならないと考えている。」

  「端的に言って、統帥の国務からの独立を許したことが、支那事変を拡大し、そして大東亜戦争に発展せしめ、これが敗戦を導いたと断じてよいと、私は信ずるものである。」

  氏が述べているのは、「天皇の大権」つまり「統帥権」のことです。陸・海軍の統帥権は天皇の大権なので、政府や帝国議会は介入できないとする考え方で、政府に反対する者たちが何でもこの理屈で攻撃をしました。倒された内閣や、暗殺された首相がいました。

 「ねこ庭」では今後「憲法改正」をする場合でも、「軍の統帥権」を天皇に結びつけない細心の注意が必要と考えていますが、青井教授はこうした富田氏の意見の存在を知らないようです。

 氏がどのような議論を展開するのか、次回も氏と一緒に考えます。

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2 コメント

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ご見解御礼 (HAKASE(jnkt32))
2024-05-22 15:49:36
此度も、拙記事へのご見解を有難うございます。

昔も今も難しい台湾情勢。頼新政権の「是々非々」的
現状維持路線を、拙者も静かに見守るつもりです。

素直にご就任を祝える状況では必ずしもないのが残念
な所ではありますが、叶えば前途も少しでも穏やかで
ある事を祈念したいものです。

難しくはありますが、久々に持たれた日中防衛交流
の席も、同国との激突を避ける為に利用し得る所は
あるでしょう。双方の国民、そして防衛関係各位の
知恵の出し所かも知れません。

そうした「健全な外交安保」実現の為にも、現憲法
の正しい見直しはやはり必要とするのが、拙者の今
までの学習成果です。

又もここまで一読レベルで恐縮ですが、国レベルの
同性婚可能化とか選択的夫婦別姓の件などは まだ
議論を要し、簡単に結論に至ってはならないは勿論
です。扱いを誤れば、我国の固有文化を脅かしかね
ないだけに、憲法改正議論に慎重を期せと言うなら
、同様に慎重な扱いとすべきでしょう。

今回は 富田元官房長官の「敗戦日本の内側」中、
再軍備に関する見方を学んだ気がする所です。

「独立国としていつの日にか、軍備を持たねばなら
ぬと思う」とする一方で「軍の統帥を、絶対に国務
から独立させるな」との厳しい見方が永く継承される
事が、これからの平和にとっても枢要と心得る所です。

やはりこの問題でも 健全な思考バランスが厳しく
要求される所だとの自覚が持て始めている所でして
、目を転じれば 護憲勢力に大きく欠け、かつその
改良改善への熱意に最も欠ける所にも思える者です。
まずは お礼まで。
返信する
健全な思考バランス (onecat01)
2024-05-22 19:22:33
HAKASEさん。

 「満州は清国の領土、日本が経営すると言う考えは筋違い。全て清国に任せるべし。」

 満州国を設立しようとする政府に対し、元勲伊藤博文公が言われましたが、軍部の独走がここから始まっています。

 軍部に反対する人間を、「統帥権干犯」と言って攻撃させたところに、「明治憲法」の不完全さがありました。

 財務省と経団連は金の力で政治家や学者、マスコミを黙らせますが、軍は武力で黙らせますから、さらに強力です。

 戦後利得の中にいる反日左翼勢力が、「憲法改正」を恐れる理由が「軍の再建」、つまり「軍の台頭」です。

 戦後の国民が一番注意しなければならない点を、富田健治氏が苦い経験の上に立って語っています。

 頑迷な保守と反日左翼の人々が無視しているのが、「健全な思考バランス」です。しかし戦後の日本で、国民に「思考バランス」があった証拠が今日です。反日左翼が狙っている内乱が、一度も生じていません。

 陛下を敵視した反日左翼勢力から皇室を守っているのは、「国民の思考バランス」です。一時は「武力放棄」に賛成しても、自国を守る軍の重要性を知り、「憲法改正」に方向転換しているのも、「国民の思考バランス」です。

 貴方も私も、「和をもって尊しとなす」日本国民の子孫ですから、雑音に惑わされず進みましょう。

 コメントに感謝いたします。
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