金正日は、金日成の死後四年あまり経って、やっと全権を掌握した。当時のマスコミはこれを、金正日の儒教的謙譲からくるものと説明していた。朝日だったか、NHKだったか忘れたが、父親への深い敬意を表す喪に服し、露骨な権力欲を見せないのだという論調だったと記憶する。
しかし加瀬氏の著書で、真相が分かった。
「金正日は父親の死後四年三ヶ月に渡って、亡父の側近グループと権力闘争を戦った上で、」「推戴という、超法規的な手法によってようやく独裁者としての地位を確立した。」「推戴というのは、本来は皇帝や皇族に対してのみ用いられる言葉だが、」「これは、軍を拠り所としたからできたことだった。」
「金日成の時、北朝鮮は党の国家だった。」「金正日の北朝鮮は、軍が支配する国家となった。」「共産主義国家として異例なことに、軍を党の上に置いた。」「金正日の時代となって、軍こそ人民であり、国家であり、党であると、」「軍の指導的役割が強調されている。」
いわば中国より危険な軍主体の国となったわけで、そのまま今の金正恩に継承されている。継承されているだけでなく、ノドン・テポドンの発射はおろか、度重なる核実験をし、軍事優位の政治がさらに進められている。中国ですら嫌悪する傍若無人な国家となり、自分の叔父や軍の将軍まで、従わない者は容赦なく処刑し、そのやり方は、死体が跡をとどめないほどの残酷さだった、と言われている。
北朝鮮の軍事力を過大評価するなと言い、ことを荒立ててはならないと、世論をミスリードした当時の専門家二人の名前を、氏が明らかにしている。
一人は、毎日新聞社の重村智計(としみつ)論説委員だ。氏は北朝鮮に関する専門家として知られているらしい。自社の新聞だけでなく、中央公論等の雑誌でも自説を展開した。今一人は、時々NHKに顔を出す、軍事評論家と言われる江畑謙介氏だ。「弾道ミサイルに搭載できる、核弾頭を持っている可能性が、」「非常に低いから、不必要に恐怖を煽らないことが鍵だ。」というのが、氏の主張だ。
「ミサイルの命中度が低いから、日本に届く可能性は低い。」「原発が破壊される可能性は、低い。」江畑氏は、何でもかんでも可能性が低いと主張し、メディアが不正確、不必要な恐怖を煽らないようにと、繰り返し論じた。もちろん反日・亡国の朝日が早速呼応し、「力でなく、対話による交渉を。」と政府に要求したというのは、言うまでもないこと。
だから私は、重村氏や江畑氏のような小物を無視し、朝日新聞を批判している氏の姿勢に、心から賛同する。
「朝日新聞は、アメリカ軍の基地問題や、核搭載艦が寄港することに対しては、」「いつでも不安をいっぱいにまで煽ってきたのに、北朝鮮のミサイルがもたらした不安は、」「懸命に鎮めようとしているのは、どういうわけだろうか。」「これは全く、合理性を欠いている。」
「国民の安全を守ることより、朝日関係だけを慮ってきたと言われても、仕方あるまい。」「やはり朝日新聞は、チョウニチ新聞と発音するのが、正しいのだろうか。」
安倍内閣になり、やっと有事関連法制が整えられたが、昭和52年当時の空恐ろしいまでの状況を、氏が分かりやすく叙述している。文字通り、国の安全保障対策法制がゼロだった時の話だ。
「来栖弘臣統幕議長が、日本に有事法制が必要であると発言したところ、」「政府の怒りを買って、金丸信防衛庁長官によって罷免されたことがあった。」「来栖統幕議長は、このままでは超法規で戦わざるを得ない。」「1日も早く、法の制定が必要であると、述べただけだった。」
「制服自衛官の長としては、当然すぎる発言だった。」「その直後に、丸山防衛事務次官が記者会見で、」「敵の部隊が、自衛隊の駐屯地のすぐ近くに現れた場合は、どうするのかと質問された時、」「丸山次官は、逃げるしかないと述べた。」「これは有名な発言である。」
「有事法制が整備されていないもとで、有事が発生した場合、」「自衛隊は、任務を果たすことができないのである。」
有事関連法案を政府が国会に提出した時、なぜあんなにも野党が騒ぎ、マスコミが同調したのか、これでやっと理解できた。有事法案を、野党が「戦争法案」と言って攻撃したのは、正しかった。有事とはすなわち戦争の意味だから、それで良かったのだ。政府のやるべきことは、「戦争法案だから、それがどうした。」と居直り、あれを好機に「戦争関連法案」と名前を変えれば良かったのだ。
自衛隊員の生命と安全を守るため、法案を廃止しようなどと、今から思えばとんでもないペテン師の理屈を、野党とマスコミが国内に拡散していたということだった。有事関連法案が整備されなければ、敵に攻撃されても自衛隊は対処できず、冗談でなく「逃げ出す」しかなかった。反日・亡国の野党とマスコミは、自衛隊員を見殺しにするため、有事法制案に反対していたのだ。
ここまで説明されると、いかに鈍感な私でも事の重大さが理解できる。理解できないのは、反日朝日新聞の読者であるお花畑の平和主義者や、薄っぺらな人道主義者だけだろう。
平和憲法下での自衛隊は軍隊でないと、そうした亡国の嘘で日本は戦後を誤魔化してきた。米国の軍事力に守られ、今でもアメリカの属国でしかない実態なのに、日本は独立国だと大多数の国民が思い込んでいる。如何ともしがたい虚構の日本を、怒りと悲しみで今日まで眺めてきたが、それ以上の虚構と大嘘で固められた北朝鮮の姿を、氏が教えてくれた。
北朝鮮の保護者みたいな中国の虚構についても、明確な言葉で語っている。
「もともと全体主義国家は、偽りの土台の上に築かれているため、言葉を歪める。」「中国はいまだに毛沢東の肖像画を飾り、共産主義を看板として掲げているが、」「中身はもはや共産主義国ではない。」「中国はマルクス主義を捨てることによって、資本主義国家になった。」「ファシズムの定義は、一党独裁の行われている資本主義国家のことだから、」「中国は、ファシズム国家である。」
更に氏は言う。
「李登輝政権になってから、台湾の国土を、」「実質的に統治が及んでいるところに限定するようになったが、」「中華民国憲法では今日でも、中国の国土のすべてを統治下に置いているということになっている。」
「しかし、中華人民共和国が全中国を支配しているというのも、」「台湾が中国全土の主人であると言うのと同じような、虚構である。」「中国全土を代表する一つの政権など、存在しないというのが、現実である。」
まして朝鮮半島では、北も南も独立戦争を戦った史実すらなく、北はロシア、南はアメリカが作った傀儡政権でしかない。しかるに両国は、国民統治の必要性のため、華々しい独立戦争の結果として建国したという虚構を作っている。
国の土台が大嘘の虚構しかない国から、「歴史認識がない。」とか、「戦前への反省がない。」とか言われ、反論もしない日本だったが、そろそろ正気に返る時だろう。そうでなければ、有史以来営々として国を守ってきたご先祖に対し、申し訳が立たない。日本を、きちんとした姿にして、次世代へ送り届ける責務が私たちにある。
怠け者の私を、こんな気持ちにさせてくれた氏に、衷心からの感謝を捧げたい。
( 蛇足 : 私も、思い込みの強い、独断と偏見の徒だが、それでも隣国三國の独断と偏見
にはかなわない。見え透いた大嘘を国全体で宣伝する厚顔さにも、負ける。)