ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

向井さんのエッセー

2010-10-22 21:27:24 | 随筆

 こういう言い方を、本人はきっと喜ばないと思うが、向井万起男氏は、宇宙飛行士向井千秋さんの、夫である。

 慶応大学を卒業した、レッキとした医者なので、余分な言葉で修飾しなくていいのに、世間はどうしても、紹介したい人間を、少しでも著名な人物との関係で述べたがる。

 私も、彼にとっては無縁な他人で、いわば世間の一員なので、有名な女性宇宙飛行士の夫、として語ってしまう。が、これから書こうとしているのは、彼のエッセーが、私の文章と、とても違っていると言いたいだけなのである。

 しかも「きまぐれ手帳」に書くのだし、生真面目に、詳しく紹介する必要もないのだ。

・・・と、ここまで書いて中断し、およそひと月半が経過してしまった。

 確かに九月は、忙しかった。家内と一緒に、八日間の格安イタリア観光旅行に行き、OB会の案内状が来て、神戸まで足を伸ばし、更に病院の定期検診にも行った。

 中国が尖閣諸島で、自国船が拿捕されたことに異を唱え、無理難題をエスカレートさせるという、不愉快な出来事も起きた。だからもう、向井氏のエッセーにかまっておれなくなり、中国という国がますます嫌いになってしまった。

 中学や高校では、中国は礼節の国だとか、気宇宏大な民族であるとか、素晴らしい文明国として教えられたが、最近の中国は、嫌悪感が強まる面ばかり、目につくようになっている。

 北朝鮮も同じく厄介な国で、荒唐無稽としか思えない理屈を並べ立て、世界に向い我がままを主張するが、軍事大国、経済大国となりつつある中国となると、その影響力の点で、北朝鮮の数十倍も始末におえない。

 だが待てよと、いつものように反省する。このままでいったら、向井氏はどうなるのか。表題を向井氏のエッセーにして、中国のことなど書いていたら、向井氏に失礼ではないか。いやそれより、支離滅裂のまま終了したら、いくら「気まぐれ手帳」とは言え、自己嫌悪に陥りそうではないか。

 よし、ここで方向転換し、正しい軌道に戻り、向井氏のエッセーについて書こう。

 主題は、私の書く文章と、彼の文との違いだ。ひと言で言えば、「毒にも薬にもならない、お喋り」を、よくもこれだけ書けるものだ、と言う驚きだ。軽妙な笑いを誘うので、いくらでも楽しく読めるが、余韻が何も残らない。楽しく読めたのなら、それでいいじゃないか。ひと時の楽しみを提供したではないかと、氏は言いそうだけれど、せっかく本にして、世に出したというのに、もったいないでないかと思ってしまう。

 氏と違い、私の書くものには毒があり、読む相手に、楽しいひと時を提供していない。文章とは、エゴの主張なのだから、どこかに毒も無ければ、何のために書いているのかと、そんな疑問にとらわれてしまう・・と、こういうことが書きたかったのだ。

 向井氏にとっては、中断のままでよかったのか、という気がするが、自分が安堵するためには、こうするしかなかった。要するに、これが、エゴの主張ということなのだろう。

コメント
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