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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

小島朋之氏著『鄧小平のいない中国』

2015-09-30 08:11:40 | 徒然の記

  小島朋之氏著『鄧小平のいない中国』 ( 平成7年刊 日本経済新聞社 )を、読了。

 氏は昭和18年大分県に生まれ、現在慶應大学の教授である。平泉渉氏の動画を見た時と、同じくらいの衝撃を受けた。

 日本の生存を脅かす大国が隣にいるというのに、日本は中国を知らなさすぎる、危機意識が無いと、平泉氏が鳴らした警鐘をまた思い出した。

 毛沢東は「民族の解放」で中国のカリスマとなり、鄧小平は「経済の解放」でカリスマとなった。次にカリスマとなる指導者がやることは、「政治の解放」だと、小島氏が語る。江沢民氏も胡錦濤氏も、そして習近平氏にもとうとうそれがやれなかった。だから今の中国では「政治の解放」がアキレス腱であり、国を混乱させている根本原因だと言う。

 それはちょうど矛盾に満ちた日本の憲法が、国内の混乱の火種となっている状況に似ている。中国では建前としている「社会主義」、日本では建前の「平和憲法」が現実と乖離し、どんな工夫をこらしても矛盾が生じている。

 同病あい憐れむという状況にある隣国同士なのだが、日本は横暴な中国を嫌悪し、双方が憎しみの応酬をし合っている。

 37年前、鄧小平氏が 来日した時の熱狂的な歓迎と、マスコミの熱い報道を、私は昨日のことのように思い出す。そこから始まった日中の蜜月時代を、氏が説明している。( この本は平成7年、村山内閣の時の出版だ。)

  ・経済関係も順調で、今後も対中経済協力は拡大しそうである。

  ・1993 ( 平成5  )年以後、日本は、香港を追い抜いて、中国にとって最大の貿易相手国になっている。

  ・直接投資も、1994 ( 平成6 ) 年末の累積で、契約ベースでは香港、台湾、アメリカについで第4位であるが、実施ベースでは第2位である。

  ・政府の経済協力についても、これまで三回にわたり、円借款130億ドル  ( 1兆6109億円  ) を中国に供与してきた。

  ・内訳は

    第一次 (1979~1983 ) が、3309億円

    第ニ次 (1984~1989 ) が、4700億円

    第三次 (1990~1995 ) が、8100億円である。

  ・さらに三次にわたる、輸銀の資源開発ローンと輸出基地開発計画などが、別途供与された。

  ・日本の対中政府資金供与はいまや世界一であり、中国が得た公的な対外借款の40%近くを占める。

  私は具体的な数字を初めて知って驚いたが、氏の説明はさらに続く。

  ・日本はこうしたかたちで中国の経済の発展と、開放化に大きく貢献してきた。日本は今後もなお、こうした役割を果たすつもりである。

  ・1996 ( 平成7 ) 年から始まる、第四次円借款の供与は、その決意の表れである。

  ・中国側からはこの5年間に、上海・北京間の新幹線建設、上海国際空港の建設など、社会資本整備を中心に、1兆5000億円を非公式に要請していたらしい。

 中国はこうした日本からの援助について、国民には何も知らせていない。国民に報道されていれば、現在行われているような一方的な日本批判が、彼らは出来ただろうか。

 だが日本国民にも、このような事実が知らされていない。いくら戦争のお詫びだったと言え、日本政府はなぜ国内外に事実を公表しなかったのか。それができない事情があったのだろうか。

 小島氏が、次のように説明している。

  ・借款をめぐる交渉で日本が問題にすべきは、借款供与と軍事力の関係であった。

  ・中国は当時6年続きで、軍事費を増加させており、軍事力の増強を図っていた。しかるに1990 ( 平成2 ) 年に訪中した海部首相は、「ODAの原則を理解してほしい。」と述べただけで、軍事費の抑制には言及しなかった。

   ・東南アジア諸国の懸念も踏まえ、軍拡への注意を喚起すべきだったのに、懸念を言及するに留まった。

  ・1994 ( 平成6 ) 年には、日本政府の抗議にもかかわらず、中国は2度にわたって、核実験を強行した。

  ・ところが第四次円借款の交渉は、第三次に比較して、年間43%の増額になった。

  ・こうして中国はインドネシアを抜いて、日本の最大の援助対象国になった。

  ・1995 ( 平成6 ) 年1月に訪中した武村蔵相は、さらに20億ドルの、輸銀ローンの実施も約束したのである。

 氏の説明によると、中国との蜜月関係をダメにしたのは、李登輝総統の訪日問題であった。広島で主催されるアジア競技大会に、政府が来賓として李登輝氏を招待した。二つの中国を認める結果になるので、中国が激しい反発をし、江沢民氏の辛辣な批判につながった。

  「台湾の、政治的な独立は認めない。」

  「中国と国交のある国々が、台湾のハイレベルの指導者を受け入れることは歓迎しない。」

 と述べ江沢民氏は、日本の負い目を確認した上で、

  「日本はかって、中国に大きな災難をもたらした。」

  「歴史に対する反省を踏まえて、中国との友好関係を発展させなければならない。」

 と結んだ。

 日本と中国の激しい対立が、ここから始まっていた。「歴史認識」と言われるだけで萎縮した日本の政治家たちが、中国を慢心させた。水戸黄門の印籠のように、「歴史認識」の言葉に彼らは震え上がった。

 多額の金を取られ、礼も言われず、何の友好も育てられず、政治家は何をしていたのかと、聞いてみたくなる。自民党だけでなく細川内閣も、村山内閣も、首を揃えて平身低頭だったから、今日の中国のがあると分かった。

 鄧小平氏のいなくなった中国を、カリスマ性のない江沢民氏に統治できるのかと危惧されていた。その江沢民氏を、日本がバックアップした。日本から大金を引き出す力と、日本を震え上がらせる力を国民に見せつけ、江沢民氏は国内の政治的基盤を強固なものにした。

 氏の本には具体的に書かれていないが、過去と現在の中国、つまり「鄧小平氏の時代の中国」と「江沢民氏の中国」を見ていれば、それくらいの推測は私にもつく。経済発展するまでは日本を重要視していた江沢民氏が、今は従属国程度にしか見ていない。

 「シアターテレビ」で今泉氏が語っていた通りになった。

  ・現実問題として、今は日本と中国の差は歴然としています。彼らから見ると、日本はもう小さな存在なのです。

  ・中国のエリートは、もう日本を重要視していないと思います。

 東西冷戦の時代には大切にしたが、それ以後は、かって日本を統治した支配者に本家返りしているアメリカと、似た姿をしてきた中国ではないか。

 香港の中国返還に際し、江沢民氏の中国とバッテン総統の交渉が、どんなものであったかも、氏が説明している。イギリス側の主導で交渉がされたと、私は思っていたが、事実は逆だった。イギリスの意向も提案も無視し、中国は強引に自己主張をした。中国の利益を前面に出し、何も妥協しなかった。

 かっての大英帝国でさえ、鼻先であしらう大国に成長した中国は、こうして過去の歴史の報復と清算をしたのだ。日本の政治家が手玉に取られても、不思議はない。

 ここでも私は、平泉氏の言葉を思い出す。

  ・アメリカも中国も、国益のためならなんでもやる国です。

  ・いい時はいいんでしょうが、いったん対立すると怖い国ですし、危険な国です。大国の意思一つで、小国がどうにでもなる。これが国際社会ですね。

  ・だからヨーロッパでもアジアでも、大国に挟まれた小さな国は、必死なんです。国の生存がかかっているという、危機意識が、戦後の日本人には、無くなってしまいましたね。

  ・アメリカと中国という巨大な覇権国の間に挟まって、日本はどうすればいいのか、こんな危機意識が、政治家にも国民にも欠けています。

 日本がこうした状況にある現在、「平和憲法」さえ守れば外国は何もしないと、日本の独立を阻んでいる人々がいる。こうした人々を扇動する「反日マスコミ」がいる。反日左翼の政治家が、野党にも自民党にもいる。

 小島氏は、反日左翼勢力に扇動されている「お花畑の国民」に、具体的な数字で間違いを示してくれた。氏の言葉を広く伝えるためには、どうすれば良いのだろう。

 私は「みみずの戯言」で呟くしかない。

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私の提案「青年の日」

2015-09-26 19:17:53 | 徒然の記

 今年、自治会の役員になった。

 32名の班長の中から、くじ引きで会長と副会長といった役員が選ばれる。宝くじは当たらないのに、役員のくじ引きは当たり、副会長になった。

 昔は町内会と言っていたが、現在では自治会という。道路が傷んでいる、ゴミ置場のネットが破れている、近所の庭木が通行の邪魔をしているなど、班長を通じていろいろな要望が寄せられてくる。

 会長と手分けして処理するのだが、処理しても、ありがとうと言われたことがない。私も同じような礼儀知らずだったので、こんなものだろうと割り切っている。しかし、だんだんと割り切れないものが生じてきた。

 きっと良いことなのだとは思うけれど、日本が世界の長寿国となり、女性は連続3年間で世界一、男は世界第3位だ。

 世界でもそうなのか調べていないが、日本には「敬老の日」がある。当たり前の話なので、これまで特に何も考えず過ごしてきた。

 やることと言えば郷里に住む母に、感謝の気持ちとして、多少のお金を送るくらいのことだ。94歳の母はどこにも出かけないし、欲しい物もないし使うことがないから、送らないでと結構と言ってくる。けれども長年の習慣なので、やめるわけにいかない。感謝の気持もあるが、私の場合は、親不孝にふさわしくない惰性もある。

 72才の息子が、94才の母親の「敬老の日」を祝う ? 苦笑しながら、お祝いをしてきたが、副会長になった今年は当たり前だった「敬老の日」が、「これで良いのかと考える日」になった。

 毎年、地区の社会福祉協議会が中心となり、小学校の講堂で盛大な「敬老の日のお祝い」が催される。自治会が協力し案内状の配布や前日の会場作りや、当日の受付、案内などを担当する。祝賀行事は私の自治会を含め、複数の地区が共同で開催している。

 飾り付けられた会場では、市長や各種団体の会長や、学校長などが入れ替わり挨拶し、とても退屈な時間が空費される。退屈な団体の長の話が終わると、小学生の合唱や演技が行われ、食事の時間となる。

 決まり切った、例年の式次第だ。

 7、8年前まで、招待されるのは70才以上の老人だったが、世界の長寿国になった現在は、72才以上でないと老人に入れてもらえなくなった。

 私は72才と自称しているが、数え年の勘定なので、法に厳しい市役所は、私を71才と区分している。こんなことは、つまらない余計な話なので、本題に戻ろう。

 私が自治会の役員となり、ボランティアの世話役として式場に臨み、退屈な挨拶の間に考えたこと。これが本題なのだ。

 市長の挨拶も、参考になるので紹介したい。

 ・本日は、お元気な皆様のお姿を拝見し、ますますのご健勝を喜び、心からお祝いを申し上げます。

 ・わが市では、100才以上の方が、75名もいらっしゃいます。目出度いことです。

 ・これからも皆様が、いつまでも健康で過ごされますことを、お祈り申し上げます。

 市長の話を聞きながら、受付のテーブルに置かれた一覧表を眺めた。正確な数を知らないが、表を見ると、72才以上の住民が576名で、その中の出席者が186名となっていた。

 それほど広くない地域に、これだけの老人がいるのだから、確かに高齢化社会になっていると実感した。

 改めて周囲を見回すと、会場の世話をしている私たちのようなボランティアも、挨拶をしている来賓者たちも、みんな年寄りばかりだ。祝辞を述べている来賓者の方が、招待された老人より年配だったりしている。

 杖をついたり、車椅子に座ったりしている老人もいるが、概して皆健康で明るく談笑している。足腰が少し弱ったとはいえ、私も精神年齢は40代だ。老人だと自分で思っていないし、来年招待状が来ても、無意味な行事に参加するものかと決めている。

 つまり私の提案は、時代がここまで変わった今、「敬老の日」の行事は見直されるべきでないのか、ということだ。

 若者を凌駕する数の老人が増え、しかも元気で朗らかなのだとしたら、大事にすべき対象は変わるのではないか。むしろ、不安定なパートやアルバイトをし、ブラック企業に低賃金で酷使されている若者こそが、大切にされるべきでないのかと考えた。

 年金暮らしのやりくりとか倹しい暮らしだとか、贅沢な苦情をもらしているが、満足に結婚もできず、子供さえ作れない若者を大切にする日こそが、明日の日本のために必要でないのか。

 人生が50年だった昔なら、70才まで生きれば長寿だっただろうし、希少価値もあったのだろうが、ここまで老人があふれ、祝っている方も祝われる方も老人ばかりとなってしまった今、このままの「敬老の日」を続けては、若者に申し訳ない気がする。

 「元気な老人が、介護の必要な老人に手を貸す日」とか、「老人同士、みんなで生き生き介護の日」とか、老人が相互扶助する仕組みを考える時が来ていると思う。

 いっそのこと元気な老人が集まり、世知辛い世を生きる若者を励ます「青年の日」を作ったらどうなのだろう。

 老人もこうなれば、もっと元気が出てくる。社会への参画意識が生まれ、更に若返る。地区の若者を集め、地区の老人たちと語り合い、食事をし、その中から新しい何かが生まれると、そんな夢もふくらむ。

 新しい長寿社会を迎えるのだから、新しい試みが生まれて不思議はない。世界に先駆けて日本がやれば、すぐ隣で老人大国になろうとしている中国や韓国も、見習わずにおれないだろう。喧嘩をしている場合でなくなる。

 と、こんなことを考えた。素晴らしい着想と思っているが、一晩たったら気が変わるのかもしれない。気が変わらないうちに、ブログにしておこうと考えた。

 これぞ本当に、「みみずの戯言」だ。笑わば笑え。

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ライシャワー氏著『ライシャワーの日本史』 - 3

2015-09-24 14:59:44 | 徒然の記

 昨日とは打って変わった、曇天の日和だ。一面の薄雲が日の光を遮り、私の気持ちを暗くする。

 しかし予定通り、ライシャワー氏の著書を紹介する。

 今日は午前中に『ライシャワーの日本史』を読み終えた。最後まで読むと、参考になるところがあった。それは平泉氏と同じ意見を、発見したことだ。氏の卓見を再確認したことになるので、記録のため、ライシャワー氏とのおつき合いを決めた。

 先ずは昨日の続き憲法「第九条」について、氏の意見を紹介する。

  ・新憲法の中で最も注目すべきものは、第九条が掲げる、「戦争の放棄」という規定である。

  ・この規定は、日本を永久的に武装解除しようというアメリカの狙いとも、また、かって国中にはびこった、軍国主義に対する日本人の反感とも、合致するものであった。

 氏の著書は最初からそうだが、半分の事実と半分の虚構が混じっている。

  ・軍国主義者と、天皇中心論の保守主義者が、不名誉な敗北を喫した時、一般の日本国民は、社会主義者や共産主義者の批判が正しかったのだと考えた。

  ・アメリカの占領は思想界を、社会主義者と共産主義者の牛耳るままに任せ、その左翼思想が雑誌、新聞、大学教員、学生団体を席巻した。

  ・小中学校の強力な教職員組合は、おおむね極左勢力が支配するようになった。

  ・日本を軍事的に弱体化するには、政治制度の民主化が必要だという認識は、アメリカ人にとって、自明のことであろう。

  ・だがそれよりもアメリカ人が、民主的改革の基盤づくりのため、日本の経済と社会を、徹底的に変質させようと考えたことはむしろ驚きに値する。

  ・アメリカ人がおよそアメリカ人らしからぬ、革命的情熱を日本で燃やしたのは、なぜだろう。

  ・よく聞かされる説明は、日本社会は極めて悪質だから、荒療治で臨まなければ矯正できないという説であった。

  ・この弁明はある点では、無知がもたらした結果であり、ある点では、マルクス主義的な解釈によるものであった。

  ・しかし診断がいかに間違っていようとも、この薬は結果的になかなかの効き目を見せた。

  ・マッカーサーは、アメリカが生んだ最も過激な、社会主義的と呼んでもいいくらいの指導者と化し、目覚ましい成功者の一人となった。

  ・革命的変革というものは、どこかよその国が、有無を言わせぬ軍事力を背景とした方が、実現はたやすいのである。

 アメリカ人が、なぜ日本で革命的情熱を燃やしたのかと、氏は語るが、不思議でも何でもない。当時マッカーサーの側近の中には、多くの共産主義者たちがいて、民主化という名の下に、日本を共産化の実験場にしていたからだ。

 1950 ( 昭和25 ) 年代に、アメリカでマッカーシー旋風が吹き荒れた。レイモンド・マッカーシー議員が「国務省には250人の共産党員がいる。」と主張し、アメリカ国内が激しく揺れた事件だった。

 政府職員やマスコミ関係者や、著名な映画人など、アメリカ社会の全般にわたって赤狩りの嵐となった。自殺者や追放者や密告者などが、ニュースを賑わせ、国家反逆罪やスパイ容疑で共産主義者が徹底的に糾弾された。

 マッカーサーの統治下で日本への荒療治を断行したのは、ホイットニー准将の配下にいた共産主義者たちだった。自国では非情なまでに共産主義者の追放をしていながら、日本ではそのまましていたアメリカ・・と、これが氏が語っていない重要な事実だ。

 私が、氏の著作を評価しない理由の一つがここにある。

 おかげで、反日・左翼勢力が現在も日本の隅々に浸透し、社会分断の種を蒔き続けている。私が指摘する「獅子身中の虫」、「駆除すべき害虫」である。

 だがもう、こんなことはいくら述べてもキリがない。それより本日発見した「平泉氏との共通点」について語る。その方が、少しは前向きな話だ。

 ・日本人は自分の意見を世界に発信する道具として、英語を喋るようにすべし

 これが亡くった平泉氏の、国民への遺言の一つだった。ライシャワー氏の著書の中で、実例が語られている。

  ・当時の日本政府の最大の仕事と言えば、アメリカ側と折衝し、占領政策に影響を与えるよう、努めることであった。

  ・この任務を遂行するうえで、堪能な英語力がものをいったから、占領下の首相のうち一人を除いて、幣原、吉田、芦田と三人までが、外務省出身者であったのも偶然でない。」

 当時から、意思を伝える道具としての英語無しでは、政治家が務まらなかったという実例だ。 余計なことだが除かれた一人とは、英語の喋れなかった鳩山一郎氏で、ルーピー鳩山元総理の祖父である。

 本の最後に書かれた氏の意見を引用し、そろそろ終わりにしたい。

 長い文章なので、省略・割愛している。創作だと氏に抗議される可能性もあるが、虚実をない交ぜにした氏の著作の全体を思えば、これくらいのことは許されて良いような気がする。

  ・日本人が、みごとな組織化能力を発揮してきたことを思えば、日本が世界の中で、重要な役割を果たす可能性は大きかった。

  ・しかし日本人は、際立った独自性を持つ言語と、日本人独特の控えめな態度、あるいは対人関係にみせる特有の流儀に阻まれて、他国民と打ち解けた交際をするのが概して下手であった。

  ・日本が、指導的な役割を果たすうえではもちろんのこと、世界のもろもろの問題解決に参画し、役立っていくためには、これまで以上に意思疎通に熟達し、他国民との共同体意識を持つことが、求められている。

 私にはライシャワー氏の意見の向こう側から、平泉氏の言葉を聞く気がした。

 「今の日本は、時代の流れとして、国民が英語をやらねばならなくなっています。」

 「書物を理解するための英語でなく、日本人の意見を世界に発信するための、道具としての英語です。」

 これがライシャワー氏が実証した平泉氏の卓見だ。私は「60の手習い」の年を過ぎたので遠慮するが、息子と孫たちには大いに勧めようと思う。

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ライシャワー氏著『ライシャワーの日本史』 - 2

2015-09-23 23:03:05 | 徒然の記

 秋の日暮れはつるべ落としと言われるが、季節の巡る速さを実感させる。酷暑だった夏の日を思えば、ほっと一息つく朝夕の涼しさだ。

 涼しくても鳥は水浴が好きなのか、気持ちよさそうに、バードバスで羽を打ち振るわせている。毎日のように来ていたヒヨが姿を見せなくなり、シジュウカラとヤマガラが来ている。赤みを帯びた茶色の胸に、黒っぽい羽のヤマガラは、地味な猫庭ではとても目立つ。鈴なりに成ったエゴの実を求め、毎日つがいで訪れる可愛い鳥だ。

 ライシャワー氏の本に戻ろう。「敗戦後の日本」の章を読んでいる。氏の目から見た当時の日本人が、描かれている。

  ・日本の指導者が、国民を悲惨な袋小路に引っ張り込んでしまったことは、疑問の余地がなかった。

  ・国民感情の振り子は、伝統的な日本的価値の思考から一転し、正反対の西欧の影響を、熱心に受け入れる方向に変わった。国粋主義と愛国主義という言葉は、タブー同然となった。

  ・軍部の対外政策が完全な失敗に終わり、戦争に明け暮れた恐ろしい苦難を体験した結果、日本人のほとんどは、手のひらを返すように、軍部の指導体制に背を向けた。

  ・日本人はアジアの解放者として歓迎されるどころか、中国、朝鮮、フィリピンのいたるところで、激しく憎悪され、他のアジア諸国でも、徹底的に忌み嫌われたことを知って、今更ながら愕然とした。

  ・かつて、歓呼の声に送られて出征した将兵であったが、外地から悄然と引き上げてきたときには、恨みを抱く都会の群衆から、つばを吐きかけるような仕打ちで迎えられた。

 私がマーク・ゲインの『日本日記』を読んだのは、中学生の時だった。

 占領軍と共にやってきたアメリカの新聞記者が、敗戦後の日本を描いたものだ。ライシャワー氏の著書は、中学生だった自分が感じたと、同じ思いをさせてくれた。勝者として敗戦国の日本へ来て、日本の歴史と過去を酷評する心ない仕打ちの本だった。私はゲインの本を悔しさを堪えて読み、心を傷つけられた。

 あの頃は何も知らない子供だったので、異を述べる知識がなかった。しかし今は、少しはライシャワー氏に反論できる。

 軍国主義という言葉を世間に広め、愛国心を塵芥のように捨てさせたのは、アメリカではなかったのか。敗戦に打ちひしがれた国民を手玉に取り、過去の全てを悪業として新聞に宣伝させ、否定させ、憎むように仕向けたのは、占領軍の政策ではなかったのか。

 日本国内の反日政治家や活動家や、左翼思想に傾いた人間を手なづけ、戦前の日本を悪として糾弾させたのは、GHQの内部にいた共産主義者たちでなかったか。

 敵の敵は味方だと、獄中にいた共産党の委員長と幹部を釈放し、激しい反政府デモをさせたのは誰だったか。共産党の徳田委員長が、「マッカーサーは解放者だ。」と称賛したのではなかったのか。

 私は幼い頃、外地から引き上げる兵士たちを、町や村の人々がどのように迎えていたのかを覚えている。悄然として帰ってきたのかもしれないが、つばを吐き掛けるような仕打ちで迎えられた兵など見たことがない。

 アジア諸国で徹底的に忌み嫌われ、愕然とした日本人の存在は、反日の日本人の著作で最近知った。私は氏の著作に、「悪意の宣伝」を読んでいる苦々しさを覚えた。

 著書の前書きで、氏は次のように書いている。

 ・本書は日本人のためでなく、欧州とアメリカの読者へ向けて書いた。

 一部の事実を拡大し、全体であるように叙述する氏への不信感が強まる。このような内容なら、朝日新聞が報道した「慰安婦記事」と同じだ。朝日の記事がそうだったように、氏の意見は韓国の「反日プロパガンダ」に根拠を与えているのでないかと考えたくなる。

 反日護憲派の政治家や学者が、神のように信仰する「日本国憲法」について、氏は次のように説明する。

  ・GHQの政治改革の努力は、もっぱら新憲法の起草問題に集中した。

  ・1946 ( 昭和21 ) 年2月になって、日本政府の用意した憲法改正草案が、マッカーサーの意に満たないことがはっきりすると、マッカーサーは、急遽自らの幕僚に命じ、まったく新しい英文の憲法草案を起草させた。

 「日本国憲法」はアメリカが押しつけた憲法だと、氏が認めている。だが日本国内では、日本人の手による自主的な「平和憲法」だ反日左翼政治家とマスコミが主張している。

 中身に関する説明を、紹介する。

  ・新憲法は、二つの点で、日本の政治機構に根本的な変革をもたらした。

  ・つまり第1条の天皇と、9条の戦争放棄である。

  ・天皇の取り扱いは、占領軍の日本改革の中で最も議論を呼んだテーマであった。

  ・とりわけ海外では、天皇を裁判にかけて処罰すべきだという意見が多く、議論は厳しかった。

  ・もしそのような措置が取られたら、天皇が現実には実質的な権力を持っていなかったことや、個人的には戦争に反対する思想の持ち主であったことに照らして、極めて不当な扱いになったことであろう。

  ・そうなれば遅かれ早かれ、日本国内にて、憂慮すべき反発を招いたことと思われる。

 手のひらを返したように、軍部批判をする国民が現れていたとしても、もし天皇陛下が処罰されていたら日本は内乱になっていたに違いない。マッカーサーは、それを恐れていた。

  ・1946 ( 昭和21 ) 年の元日、天皇は自分が神でないことを国民に宣言し、自ら、新憲法への下準備を整えた。

  ・もっとも天皇は、それまでももちろん、西欧人の意識するような神格の持ち主とみなされてきたわけではない。

  ・マッカーサーは天皇が絶対君主でもなく、独裁者でもないことを知っていた。

 マッカーサー元帥が、陛下に「人間宣言」強要した理由を、氏が説明している。

  ・彼らは、天皇を一切の政治的権能を持たない存在とするため、国民の象徴として位置づけることを明文化した。

 もともと天皇のご存在は、日本人には国の真ん中にある尊崇の対象であり、象徴でもあったのだから、明文化する必要があったと私は思わない。

 と、ここまで書いて一息入れる。これ以上続けたら、今晩中に終わらない。九条の「戦争放棄」は、現在の日本で最大の問題であるから、明日ゆっくりと考えたい。

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ライシャワー氏著『ライシャワーの日本史』

2015-09-18 23:56:15 | 徒然の記

 エドウィン・ライシャワー氏著『ライシャワーの日本史』( 昭和61年刊 株式会社文芸春秋 )、を読んでいる。

 平泉氏の動画と合わせて読むと、結構面白いという発見をした。

 私の記憶にあるライシャワー氏は、日本大使をしていた壮年時の精悍な顔だ。動画の平泉氏氏が81歳なので、ついライシャワー氏の方が若いという錯覚をしてしまう。ネットで調べてみると、ライシャワー氏は明治45年生まれで、平泉氏より14才も年長だった。宣教師だった父君が、たまたま日本に住んでいたため、生まれも東京だった。

 「シアターテレビ」で、平泉氏が語っている。

  ・戦前の日本が間違ったのは、中国に対するアメリカの強い思い、執念とも言える思い込み。それに気づかなかったところですね。

  ・あるいは気づいていても、軽く考えていたのか。遅れて台頭した列強でしたから、アメリカは中国に対して、野心を燃やしていました。

  ・宗教的情熱の国でもありますから、自分の国のミッションは、神の国を地上に作ることだとも信じています。

  ・当時の列強が中国を勝手に分割していた時、国務長官名でアメリカが「門戸開放宣言」をしましたね。これは、どこの国にも、中国をこれ以上勝手にさせないぞという強い意思表示でした。

  ・今でこそ共産化していますが、当時の中国は、アメリカにとって花園のような認識でした。

  ・キリスト教を伝えるために渡っている宣教師の数は、アメリカが一番でしたし、彼らは中国を理解し、中国のために献身していました。

  ・宣教師たちのもたらす情報によって、アメリカの中国認識がますます深まっていきました。

 そんなに強い思い入れがあるとも知らず、満州を侵略した日本は、アメリカの虎の尾を踏んでしまった。

  ・アメリカという国の性格を簡単に言って仕舞えば、中国への野心と人種偏見なんです。

  ・白人でもない日本人が、どこまでいい気になるのかと、だから敗戦後アメリカから、徹底的にやられたのです。

 やはり満州事変と満州国の建設が、日本の分岐点だった。

   ・なぜ日本は中国からこんなに憎まれるのか。

   ・なぜアメリカは、日本に無理難題を言う中国を黙認しているのか。

 平泉氏の説明は、私の長年の疑問を解く鍵だった。ライシャワー氏の著作を読んでいると、平泉氏の説明に符合するものがある。ライシャワー氏の意識の底を流れるのは、米国人宣教師の思考だ。

 氏の文章が今泉氏に似て穏やかなので、深く考えずに読んでいると素通りしてしまう。著作の冒頭に、氏は日本人の気質の素晴らしさや勤勉さを語り、縄文時代から弥生、飛鳥と、日本の歴史を語る。

 しかし日本史の区切り方は、私たちが学校で習った区分ではない。古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、平安時代と教わったが、

 氏は、これを次の4つに分類する。 

   1.国土と民族

   2.中国の模倣時代

   3.国風文化の発展 

   4.封建社会の発展

 本の題名が『ライシャワーの日本史』だから、氏が好きにして良いという理屈もあるが、私には強い違和感がある。

 そして、この記述だ。

  「文化的には、日本は中国文明の娘の一人である。」

 遣隋使、遣唐使の頃から、日本は多くの文明、文物を中国から受け入れ、国づくりの基本にした。だからといって、「娘の一人」であるというこの表現 ?

 平泉氏の言葉が、私の中で重みをもって蘇る。

  ・渡っている宣教師の数はアメリカが一番でしたし、宣教師たちは中国を理解し、中国のために献身していました。

  ・彼らのもたらす情報によって、アメリカの中国認識がますます深まっていきました。

 ライシャワー氏の父君 ( ふくん  ) が、そうした宣教師の一人であったことと、氏が父を通じて中国と中国人に親しみを覚え、深く理解をしていることが伺えた。日本の歴史という著作なので、中国の記述は多くないが、素晴らしい文明国としての中国が常に背景に置かれている。

 以前の私なら、感心しながらぺージを追ったのだろうが、愛国に目覚めた今は素直に読めなくなっている。戦国、鎌倉、江戸、明治維新と、日本人の学者かと思うほど、詳しく歴史を語っていた氏が、今時大戦前の説明から、米国人の意見に変わる。

  ・日本の全体主義には、ヒトラーの『わが闘争 』 に匹敵するものが、なかった。

  ・「それに代わる、国家哲学を作り出そうとした結果生まれたのが、『 国体の本義 』という、書物である。

  ・古代神話を強調し、万世一系の天皇家のユニークさゆえに、日本は他の国家より優れているという思想である。

  ・天皇に関する記述もむろん多いが、儒教思想や、武士道についての言及も、少なくない。だがこれは時代遅れな思想の、奇妙きわまりない混合でしかなかった。

  ・知的内容はなく、提唱されている思想でさえ、曖昧模糊として中身がなかった。中には、八紘一宇という意味の、古代中国の哲学思想からの借用まであった。

  ・善意に解釈すれば世界の全民族が、一つに連帯することを表す言葉とも取れるが、悪意に解釈すれば、世界中に日本の支配が行き渡ることを表したとも取れる。

 完膚無きまでの悪評である。『国体の本義』は、本の名前しか知らないので、いつか自分で確かめたいと思う。

 氏の説明が、一気に第二次世界大戦の日本の敗北へと進む。

 これまでの冷静な文章が消え、日本の指導者層、特に軍部への、憎しみに近い感情が現れる。氏の意見は、

  「日本軍部の暴走」 「日本軍の邪悪な侵略」 

  「天皇制の間違い」 「日本の過ち」

 といった、いわゆる「東京裁判史観」の展開だった。知日派の大使として、日本では親しみをもって語られているが、事実はそうだったのだろうか。

 氏の意見を紹介する。

  ・日本軍部の対外政策には、根本的に間違っていた一つの思い込みがあった。

  ・日本軍部は、みずからが盲目的愛国心に身を委ねる一方で、近隣諸国からは、欧米の圧政からの解放者として歓迎されるばかりか、彼らが、日本を盟主とする東アジア支配におとなしく盲従して、何も不満を持たぬはずと、思い込んでいたのである。

  ・しかしナショナリズムの波は、急速に広がっていた。

  ・特に中国ではその勢いが激しく、朝鮮半島や満州での植民地支配の現実は、もはや日本人を、ヨーロッパ人やアメリカ人よりも、魅力ある主人とは思わせなくなっていた。

  ・日本帝国が大きくなっていくに従って、中国人の抵抗も激しいものとなっていった。

  ・東アジアに侵略し、一大帝国を築きあげようと野心にかられた日本は、歴史的にいささか遅きに失していた。

 だが現在のアジア諸国では、氏と異なる意見もあり、氏の一方的な断定が正しいのかどうか。私は自分で、もっと確かめてみたい。

 ハッキリしているのは、氏が述べている通り、日本を憎悪しているのは、今でも中国と韓国だ。侵略侵略と騒いでいるのも、この二国である。むしろ、こうした氏の著作が、中国や韓国に日本攻撃の口実を与え、アメリカが理解していると強気にさせたのではなかろうか。

 世間で言われているように、本当に彼は知日派なのだろうかと次第に疑問が生じてくる。

 明日から本の後半に入るが、面白いを通り越して忙しいことになった。平泉氏の動画とライシャワー氏の著作に、同時に向き合うなど、こんなことが続けられるのだろうか。気力体力以上に、私には両氏と議論する知識も知力もない。あるとしたら、日本を思う心、愛国心だけだ。

 ええままよ、どうせ「みみずの戯言」でないか。なるようになれ・・ということで、今晩はここで終わる。

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平泉渉氏の「シアターテレビ」ー4 ( 氏への感謝と疑問 )

2015-09-17 14:57:54 | 徒然の記

 九月の中旬というのに、今朝はぐっと冷え込んだ。

 先ほどチリで大地震があったらしく、日本の太平洋沿岸に津波が押し寄せる可能性が大とNHKが報道していた。桜島、箱根、阿蘇と各地で噴火があり、住民が避難している。自然が怒っているのか、警鐘を鳴らしているのか私には分からないが、異常気象が続いていることだけは確かだ。

 それでも今日は、平泉氏の動画の続きを紹介したい

 自然界の異変と同様、このところ中国経済の動きが世界を驚かせている。こんな状況を見ていると、確かに氏が言ったように、中国は大国になったのかと思う。中国政府の発表に、世界が一喜一憂している。

 だが私は氏の話に、今も素朴な疑問を抱いている。

  ・こんなに人権を無視する国が、果たして世界の大国になれるのだろうか。

  ・国民を虫けらのように蹴散らし、平然としている国がなぜ大国と呼べるのか。

 当分の間私の疑問は消えず、氏の意見と違いも残るに違いない。

 それでも日本の英語教育に関する意見には、納得させられるものがあった。文部省が小学校の低学年から英語教育を導入するという話に、私は無関心だったが、氏の意見で目が覚めた。

  ・先日、久しぶりに、東大の入学式に行って来ました。そこで小林教授の話を聞きまして、なるほどと思いました。

  ・日本の国際的地位が落ちた大きな原因の一つが、英語力の欠如にあるというのですね。

  ・日本のリーダーたちが、誰も英語が話せない。通訳を介してやればいいのだと言う政治家もいますが、今はもうそんな時代ではない。

  ・大事な国際会議の場では、当意即妙の対話が重要なのに、会話もできないリーダーが国際人と言えるのだろうか、と言う話でした。

  ・そんな話でしたが、とても大事な意見ですね。今の日本は、時代の流れとして、国民が英語をやらねばならなくなっています。

  ・書物を理解するための英語でなく、日本人の意見を世界に発信するための、道具としての英語なんです。

  ・TPPの場にしたって日本人の発言がないから、日本の意見というものが世界に伝わらない。

  ・中国や韓国は、世界から学ぶために英語をやっているのでなく、自分たちの考えを、世界に伝えるためやっています。

  ・だから日本人は世界で、中国人や韓国人にやられてしまうのです。

  ・日本語に安住するのでなく、世界の共通語を予備として持つことの重要性に、気づかなくてはなりません。

 こう言う説明をされると、私にも分かる。中国と韓国を引き合いに出されると、即座に納得できる。国際会議の様子をテレビで見たが、他国の首脳は気軽に談笑しているのに、日本の総理だけが孤立していた。

 そんなものだろうと思ってきたが、とんでもない間違いだった。

 国内では官僚を怒鳴り散らし威張っていた菅直人総理も、国際会議では仲間はずれの悪ガキみたいに小さくなっていた。話しかけられても、照れ隠しの笑いでしか応じられない首相だった。

 麻生元総理にしても、沢山英語を喋っていたが、ほとんど相手に通じない日本語英語だったという話がある。言っている私にしても、しどろもどろの英語しか話せず、外国旅行をした時はほとんど通じなかった。

 面倒臭いから居直って日本語で喋ったが、今にして思えば、恥を撒き散らしたようなものだった。イギリス、スペイン、オランダ、イタリア、ベトナム、台湾と、私の英語はまったく通じなかった。

 だから他人事でなく、私は真剣に氏の話を聴いた。

  ・英語が重要だというのは、喋っている国の多さと人口の多さなんです。

  ・欧米はもちろん英語が通じますね。ASEAN諸国だって、ほとんど英語圏ですよ。

  ・インドネシアが人口2億人、インドが13億人、中国が15億人、韓国が5千万人。ざっと数えても、これだけの人口が英語の習得に向かっています。

  ・韓国などは、防衛のための英語習得を国を挙げて目指しているのです。

 氏の話は人口がからむと大雑把になる嫌いがあるが、肝心なところでは、納得させられる。

  ・日本人は、英語を使って国を守るという気概を持たなくてはなりませんね。もっと言葉の大切さを認識すべきなのです。

 このシリーズの動画では、日本人が認識すべき大切なことが沢山語られるので、書き留めておかないと覚えきれない。

  ・学校の先生には、申し訳ないんですが、英語の教育を、日本人が教えるなんてところから間違っているんです。

  ・英語の授業は、英語を喋る人間から教わらないと無意味です。

  ・ジスイズ ア ペン。アイアム ア ボーイなんて、カタカナ英語を何年やったって外では通じませんよ。

 おっしゃる通りですと、反論の一つもできない私だった。

 中学校の3年、高校の3年、大学の2年間、会社員になってから3年間、通算10年間英語の勉強をしたが、無残な自分の足跡だった。海外旅行で、全く用をなさなかった。

 私が受けた英語教育は、目的もなく漫然としたものだったから、役に立たないままに終わった。政府に苦情を言うの前に、自分の自覚のなさを恥じなくてならない。政府が何を言っても、自分が目覚めていたら違っていたはずだ。

 もし氏の観点から英語教育が国民に説明され、生徒に教えられたら、日本が変化していくはずだ。政府は、氏のように赤裸に中国や韓国の実情が語れないのだから、代弁者としての氏の役割は大きい。

 惜しい人物に亡くなられたと思う一方で、氏がなぜ外務大臣ならなかったのかと不思議な気がした。立派な意見を聞くと、科学技術庁長官や経済企画庁長官でなく、総理大臣になってもおかしくない。

 これだけの正論を述べているのに、政府にいた時は政策に反映できず、英語教育も不変のままだった。私は氏の動画から、二つのことを学んだ。

   1.  氏の「正論」を阻む、大きな現実がある。

   2.  それでも氏は、今も現実を変える努力をしている。

 こうなると私も、2つのことを考えて元気になる。

   1.  氏でさえ現実を簡単に変えられなかったのだから、私が変えられなくても当然だ。

   2.  現実を変える努力なら、私にもできる。

 元気になったところで、「シアターテレビ」のシリーズを終わることにする。

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平泉渉氏の「シアターテレビ」 - 3 ( 氏の現実認識 )

2015-09-16 21:15:28 | 徒然の記

 平泉氏の話は、やはり面白い。政治、経済、文化、外交、民族、語学、選挙制度等々、独特の観点から私の知らない事を教えてくれる。

 その中でやはり一番気になったのが、中国問題だった。

  ・考えてもごらんなさい。中国の面積は日本の20倍、人口は10倍です。

  ・経済規模は、やがて日本の7、8倍になると言われています。

  ・昔は、国の大きさがそのまま国力とはなりませんでしたが、今はインターネットの時代ですから、瞬時に情報が伝わります。交通手段も、国土の広さを感じさせないほど発達しました。

  ・だからこれからの世界は、大国の時代なんですね。広い国土と、沢山の人口を持った大国が覇権を持つのです。

  ・そういう意味では、アメリカだって国力は日本の三倍しかありません。

  ・人口が日本の10倍で、経済力が7、8倍になるというのですから、中国は、今後とてつもない大国になりますね。

  ・ロシアも国土は広大ですが、人口が一億ですから、逆に中国を恐れています。シベリアの方では、中国人が何千万人も移住しているでしょう。

 私は今までも、今でも、人口の多寡が国力に比例するとは、考えたことがない。多すぎる人口は、国の発展の阻害要因だと思っている。人口の多さが大国の条件なら、インドは中国より大国だ。

 話が横道へ逸れるが、世界の人口を別途調べたので紹介する。

    インド   14億4千万人

    中    国   14億2千万人

    アメリカ   3億人    

    インドネシア 3億人    

    パキスタン  3億人    

    ブラジル   2億人    

    ロシア    1億5千万人

 だが氏は、話し続ける。

  ・世界一貧しい国の一つだった中国が、たった30年で強大な国家になった。

  ・1000年ぶりに、大国が突然日本の前に、姿を現したのです。唐以来の出来ごとです。

  ・中国のエリートは、もう日本を重要視していないと思います。

  ・国民はテレビと映画で、日本の軍人が悪だというものばかり見せられていますから、今でも、これからも、日本人を恐れています。

  ・エリートは寛大でも、民衆は日本を許さないという構図ができています。

 中国を礼賛しているようにも聞こえるので嫌な気もしたが、氏は語り続ける。

  ・最近の日本には、骨が無くなりましたね。国際社会で、独立国として生きていけないような状態になっています。

  ・中国は、世界の覇権国になるという気概が満ちています。大変な国になりましたね。

  ・もし中国が危険な国であるとしたら、どう対処すれば良いのか。世界中の国が研究しています。

  ・本当は日本こそが、国を挙げて中国の研究や分析をしなければいけません。

  ・危機意識も国防意識も無かったから、防衛省はあってなきがごとしの状態でしょう。

  ・外務省だって、在るような無いようなもので、隣国の情報収集に、国の存亡がかかっているという意識が全然ありません。

  ・軍や警察の情報力強化とか、外務省の情報とか、そんなレベルのものではありません。経済、軍備、政治などの一般情報でなく、もっと高度な情報です。

  ・中国と争うためでなく、衝突を回避するための情報、とでも言えばいいのでしょうか。政治家や軍隊の人脈や、個人的な様々の情報、外務省や軍が動いて取れるもので無く、取ってはならない情報といいますか・・

 氏は明確に述べなかったが、米国のCIAや、ロシアのKGBあるいは英国の諜報機関のような、非合法な活動をする機関を指していると推察した。

  ・国は常に、最悪の事態を想定しなければなりません。大事なことは、誰も助けてくれない場合にどうするかなのです。

 「安保条約」でアメリカが助けてくれるという思考も、氏から見れば、甘すぎる認識だった。

  ・ありとあらゆる手を使って、敵対関係を作らなくするための情報。政界や経済界だけでなく、中国社会のあらゆる階層に、友人を沢山作ること。一般市民の中にもです。

  ・どうも日本の情報対応は、相手国内部への浸透が、他国に比べると格段に弱い。国の生存がかかっているという、危機意識がないのですね。

  ・日本人の勤勉さと、たゆみない献身で、戦後の経済成長がなされました。

  ・しかし、軍事費を使わなくて済んだから出来たんだという、そんな見方も大切なのです。

  ・今世紀の日本がやるべきことは、二つですね。国際情勢の情報を本気で取る努力をすること。真剣に国の防衛を考えること。

 氏の言葉を聞きながら、私は参議院での質疑を思いだした。民主党の小川淳也議員が、総理に質問していた。

  「大切な隣国である韓国が、北朝鮮に攻め込まれたら自衛隊を派遣するのか。」

 総理は否定していたが、今も慰安婦問題で日本を苦しめ、世界遺産の登録では露骨な嫌がらせをする、そんな韓国がなんで大切な隣国だろうか。反日の議員がこのような質問のできる議会を、氏が存命なら何と考えたのだろう。

 氏の意見のすべてに賛成していないが、それでも反日の議員に比べれば、天と地の開きを感じる。小川議員は「国防意識」が欠如しているのでなく、敵国を利する「国亡意識」しかない。

 亡くなった氏を偲び、ブログに記録しておく方が、余程日本のためになる気がする。次回も、氏の意見を紹介したい。

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平泉渉氏の「シアターテレビ」ー2 ( 氏の意見は正論 )

2015-09-10 20:17:59 | 徒然の記

 平泉氏はハト派だと言うのがネットの情報だったが、「シアターテレビ」を観ていると違っていた。

 マスコミが使う「ハト」や「リベラル」という言葉は、本来の意味を失い、単なる「平和憲法信者」を指している。マスコミが、間違った使い方をしているのがよく分かる動画でもあった。

 マスコミがハト派と呼ぶ政治家は、河野洋平氏とか鳩山由紀夫氏など、どこか魂の抜けた人物が多い。では、平泉氏のどこがハト派なのだろう。

  ・終戦の時、アメリカはあまりにも日本を叩き潰しましたね。

  ・軍隊は持たせない。憲法は自由にさせない。三分の二の賛成がないと改訂出来ないなんて。暴論ですよ。

  ・民主主義の国で三分の二なんて、できっこない。これは日本には改正させないという、アメリカの強い意思です。

  ・軍と憲法は国の根幹ですよ。それをアメリカは、日本には未来永劫手出しをさせないと決めました。

  ・自衛隊を日陰者みたいにしてしまったから、これでは志のある軍人は育ちません。

  ・独立国には根っこに防衛と安全保障があるべきなのに、戦後の日本は防衛意識も防衛力も無くしてしまいましたね。

  ・占領下では仕方がなかったんですが、これをそのまま放置したのは日本人の責任ですよ。

  ・基地問題だってそうです。

  ・沖縄だけでなく、日本全国に米軍基地が有ります。こんなことは、日本の歴史始まって以来のことですね。

  ・しかし米軍がいなくなって、無力な日本だけになったら、中国が出てきますよ。

  ・基地が要らないとアメリカにいうのなら、憲法を改正し、自国を守れる軍隊を持ってからのことです。

  ・一旦ことがあれば、アメリカと一緒に行動する。そうでなかったら、アメリカはいうことなんか聞きませんよ。

  ・アメリカは第二次大戦後から、もっと言えばペリーの時代から、中国を重要視しています。今は共産化し、アメリカに対抗しているのですから、尚更のことです。

  ・アメリカも中国も、国益のためならなんでもやる国です。いい時はいいでしようが、いったん対立すると怖い国ですし、危険な国です。

  ・大国の意思一つで小国がどうにでもなる。これが国際社会ですね。だからヨーロッパでも、アジアでも、大国に挟まれた小さな国は、必死なんです。

  ・国の生存がかかっているという危機意識が、戦後の日本人には無くなってしまいましたね。

  ・アメリカと中国という巨大な覇権国の間に挟まって、日本はどうすればいいのか、こんな危機意識が政治家にも国民にも欠けています。

 57回シリーズの、21回目を見終わったところだ。一言も聞き逃すまいと、真剣に動画を観ている。ここに紹介した氏の意見は、そっくりそのまま私の意見だ。氏をマスコミがハト派と言うのなら、私もハト派になる。面白い話だ。

 こんな意見を持っていた氏でも、閣僚だった時代にはこうした考えを喋っていないはずだ。現役だったら、マスコミと野党だけでなく、自民党の中からも軍国主義者、右翼と攻撃され、潰されていたに違いない。

 氏の正論が、今になってからしか聞けないというこの事実、ここに敗戦後の日本の現実があるのではないか。「憲法」と「防衛のための軍」を自分たちで作ってから、戦後が終わるのだと私も信じている。その日がくるまで日本は、アメリカの属国であり、敗戦国のままだ。

 まだ21回目だから断定できないが、「日本がアメリカの属国」と言わない氏に、「敗戦国の認識」の違いが私との間にある気がする。

 ・「憲法改正」をし、「防衛のための軍」を作るまで、日本の戦後は終わらない。

 私は氏に、ハッキリと言って欲しいと思う。

 現在『ライシャワーの日本史』を4分の1ばかり読んだところだが、動画をみていたらそれどころでなくなった。

 せっかくここまで意見が同じになのだからと、つい欲を言ってしまった。亡くなられた氏に、少しくらい本を読んだからといって、分かったような口をきいてはならなかった。

 世の中には、というより日本には、知識と経験と才能に秀でた人物がいるという事実を、知る必要がある。このことを、謙虚に知らなくてならない。

  これが、動画を見る私の自戒だ。氏への哀悼と感謝でもある。

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平泉渉氏の「シアターテレビ」

2015-09-08 18:14:18 | 徒然の記

  偶然だが、面白い動画を見た。平泉渉 ( わたる ) 氏の「シアターテレビ」だ。氏の談話を、鹿島平和研究所が制作していた。

 鹿島平和研究所の名前を初めて知り、氏のことも初めて知った。知らない尽くしの私だが、皇国史観の歴史学者だった平泉澄 ( きよし ) 氏の名前だけ知っていた。

 戦前の日本で有名人だった平泉澄氏について、パソコンで調べていたら、子息の渉氏の動画に行き当たったという訳だ。

 動画のタイトルは「世界のダイナミズム」で、57回のシリーズになっている。一回の談話が30分にまとめられ、見始めると止められない動画だった。現在18回だが、書き残しておきたい気持が抑えられなくなった。

 渉氏について調べると、改めて無知な自分を認識した。

 昭和4年生まれの氏は、元外交官、元科学技術庁長官、元経済企画庁長官、いう経歴の持ち主で、自民党の議員だった。氏はまた、鹿島建設の副社長でもあったから、鹿島平和研究所の会長として、「シアターテレビ」を作ったのだと分かった。

 父君は勤皇の国学者だったが、氏は私の嫌いなハト派 ( 左派  ) であるらしい。しかし氏の談話は傾聴に値するものが多く、無知な私は夢中にさせられた。

 氏は世界の文明から話を始め、アジアから欧州、ロシア、アメリカへと言及し、世界の覇権国の推移を説明した。古くはスペイン、オランダ、イギリス、そして第二次世界大戦後は、超大国となったアメリカへと、終始穏やかな話ぶりで進めた。

 上品さと縁のない環境で育った私には、真似のできない話ぶりで、上品さにも引かされた。まさかと思っていたのに、氏は、次に世界の覇権国となるのは中国だろうと予測していた。今後の世界はよくも悪くも、「中国問題」を抜きには考えられなくなっていると断定し、日本人へ警鐘を鳴らしている。

 まだ信じられないが、氏の意見を紹介する。

  ・人口の差、国力の差、経済力の差と、どれをとっても中国は日本を凌駕する大国だ。

  ・次の大国になる可能性のある中国を、日本人は初心に返り勉強し直すべきだ。

  ・日中の立場はこのままいくと、やがて、アメリカとカナダの関係に似たものになる。

  ・国力からいっても、経済力からいっても、カナダはアメリカなしで生きられず、まるで属国みたいなものとなっている。だからアメリカは、口では言わないがカナダを頭から無視している。

 アメリカとカナダの関係が、そのようになっているとは考えたこともなかった。マスコミも、そんな報道を一度もしていない。マスコミが報道しないことを、大抵私は知らない。

  ・突然、世界の覇権国として眼前に現れた中国に対し、日本は狼狽し、平常心を失っているが、大事なのは、中国を攻撃的にさせてはならないことだ。

 聞くに堪えない話だが、氏は続けた。

  ・でも、卑屈にならず、断固として対応しなくてはなりません。

  ・この国は、相手が弱いとなると容赦せずに攻撃してきますからね。

 聞くに耐えない話だが、納得したので傾聴した。

  ・現実問題として、今は日本と中国の差は歴然としています。彼らから見ると、日本はもう小さな存在なのです。

  ・国際社会もそうした目で、中国を見ています。中国の動向に世界が注目し、世界が無視できない。

  ・冷戦時代でも、アメリカはソ連を恐れていませんでした。

  ・ところがどうでしょう。中国がアメリカを打ち負かす国として、現れてきたのです。

  ・オバマのアメリカにとっては、手強い相手です。こうした米中の間にいて、日本がどうするのか。今世紀の大きな課題です。

 私はこれまで、威勢の良い右側の人々の意見に賛同してきたが、現実の中国はどうやらそんなに大きく、やっかいもので、世界中が戸惑っているのだとやっと理解する気になった。

 昇り竜の勢いだったひと頃の日本同様、何をしでかすか分からない危険な国だという認識を、もっと冷静に持たなくてならない。暴れ者を怒らせてはいけないし、卑屈に引き下がってもダメと氏の注文は難しいが、確かに事実はそうなのだろう。

 面白かったのは、氏の意見が私の意見と重なったところだ。

  ・考えてもご覧なさい。清朝の末期から、中国が、欧米に味わわされた大きな屈辱を。

  ・あれから100年間我慢して、今がその自尊心の我慢の限界だったのです。

  ・あの広大な国の人間の心を一つにまとめたこと。中国の歴史で、そんなことをした者は誰もいませんよ。

  ・だから毛沢東は、偉大なのです。つまりナショナリズムを目覚めさせたこと。毛沢東だけが、成功したのです。

 列強に切り取られ、為されるがままに国を蹂躙された中国の屈辱を、私は理解する。欧米よりはるか以前から世界の文明国だった中国なら、それこそ臥薪嘗胆の100年だっただろう。

 しかしそれなら彼らの矛先は、真っ先にイギリス、オランダ、ドイツ、フランス、そしてアメリカへ向かうのが自然でないか。よりにもよって、最後の列強だった日本を狙い撃ちにし、やくざまがいの恫喝で攻撃するのか。

 順番が違うでないかと、そこだけが氏の意見と違っていた。

  ・それはそうでしょう。日本史の中で中国から得たものは、政治、経済、文字、建築物、仏像、絵画、詩歌、中国からのものばかりですよ。

  ・外務省なんかが、経済のことで大国意識をもって、中国に対応していますが、どうでしょうかねえ。

  ・だから中国からすると、一番の敵は日本、ソ連、そしてイギリス、アメリカとなるのでしょうね。

 氏の話は、長年の私の疑問に対する回答でもあった。

 ここ数年の中国の振る舞いを思うと、氏のような考えになれないが、確かに深い恩義のある隣国だ。親中派の政治家や、経済人、文化人たちを、私は「獅子身中の虫」と切り捨てているが、そうしてはならない面がある。

 忌々しいことながら、そのことについては私も理解している。氏の話が、猪突猛進する私の鼻面を抑え、落ち着いて周りを見なさいと言っいる。

  ・韓国は日本と中国と、どちらを取るのでしょうか。

  ・強い者につく、小さな国が生き延びるにはこれしかありません。もともと朝鮮は中国の範囲ですし、中国人は自分のものと思っていますよ。

 元自民党の政治家でも隠居の身となれば、ここまで率直に言えるのかと驚かされた。興味深いのは、次の意見だった。

  ・一党独裁の共産主義も、正しいとは思いませんが、数さえ集めれば民意だという民主主義も、考え直すべきではないのでしょうか。たった一票の差でも、議員が決まる。

  ・国民がみんな同じなんてことは、ありませんよ。随分馬鹿な人もいるし、無知な人もいるし。国会も、県会も、市会も、町会も、なんでもかんでも多数決なんて、変ですよ。

  ・アメリカが手本だというので、年数が経てば良識のある選挙が育ち、望ましい民主主義が生まれると思っていましたが、どうですか、昨今のアメリカの選挙。」

  ・票を集めるために、どれだけの金を使っていますか。テレビを時間で買い取るなんて、想像もつかない金を使っていますよ。あれではもう、金を持った人間しか政治家になれないということです。票集めに金のかかる選挙。日本だって、そうなっていますね。

  ・これまで見てきましたが、選挙民に人気があって当選した政治家に、大した人はいませんでしたね。

 中国への対応と同様に、多数決の民主主義制度に関して、氏の意見にうなづく部分があるが、全部に賛同できない。愚かな「害務省」とののしってきたが、氏のような人物がいたと知ると、これもまた全部否定ができなくなる。

  初心に戻り、私は学びの道を今日から歩くとしよう。

 先ほどパソコンで検索したら、今年の7月に氏が逝去されたとのこと。享年85才だった。心からご冥福をお祈りしたい。

  氏の逝去を知っても、私は学びの道を歩きたいので、次回も続きを紹介したい。

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産経新聞東京経済部編『資源小国ニッポンの挑戦』

2015-09-02 21:58:39 | 徒然の記

 朝方の雨が止み、青空が広がった。涼風が、例年より早く秋の気配を運んできた。今日はこれから、玄関の植木を手入れしようと思う。

 ちいさな緑色の実をつけた木が入り口を飾り、どんぐりの仲間だと思うが名前は知らない。大木になると手に負えないだろうが、今はほっそりとした姿で目を楽しませてくれる。

 昨年の冬、寒さで鉢がひび割れたので縄で縛り、洒落た飾りのつもりでいたが、木の成長で割れが広がり、水をやっても漏れてしまうようになった。昨日奮発して、植木鉢を買ってきた。天気が回復したので、植え替え作業にかかろうと思う。

 ちょうど、本も読み終えた。産経新聞東京経済部編『資源小国ニッポンの挑戦』( 平成19年刊 産経新聞社 ) だ。新聞に一年間連載した記事を、一冊にしたという。

 風力発電、太陽光発電、地熱発電、燃料電池、バイオエタノール等々、未来のエネルギーが紹介されている。

 どれも有望なエネルギーとして語られているが、採算面から不可能な話も混じっているらしく、私にはどれも夢の話でしかない。

 資源小国の日本は、原油の90%以上を中東に依存している。オイルロードと呼ばれるシーレーンに、日本の原油使用量の半日分に相当する30万キロリットルを積む巨大タンカーが航行し、1日1500万バレルを運んでいるとのことだ。シーレーンは、私が思っていた以上に日本経済の支えで、重要な「石油の道」だと分かった。

 民主党などの野党が、シーレーンの防衛に自衛隊を派遣するのはおかしいと言っているが、果たしてそうなのだろうか。LNGガスも石炭も、日本が世界一の輸入国だと初めて知ったが、自慢でなく、日本には資源がないということだ。面白くもなんともない話だが、教えてもらったことに感謝はしている。

 きっとこれは私の無知なのだろうが、原子力発電を続けることが核兵器の開発につながっていると、この本で初めて知った。日本には大量のプルトニュームがあり、平和利用だと宣言し、世界の監視を受け入れているから、特別に認められているという説明だった。

 発電所の社員も監視カメラでチェックされ、部外者は簡単に入れない仕組みになっている。だから電力会社は秘密のベールに包まれ、国と一体になって運営されている。

 東日本の事故が起こった時、現場の状況を掴もうとしても、東電が民主党の首相や官房長官に情報を出さない理由が分かった。反日の彼らに、国家機密を漏らせる訳がない。中断したままの、プルサーマル計画の重要性も理解した。

 本は東日本大震災前の出版だから、東電の勝俣社長が胸を張っている。

 ・2007 ( 平成19 ) 年から、日本でも再処理が始まるが、プルトニュームを余分に持たないということは、日本の国際公約だ。

 ・プルサーマルで消費することが、日本が核拡散を防ぐ最高の道だ。

 ・エネルギーの利用効率を高める意味も大きい。

 原発の利用が核兵器の開発につながっていることを、東電の社長が話しているのだから、電力会社には常識なのだろう。知らないのは、私のような国民ということになる。そしてこれもまた、不思議なマスコミだ。「知っていても報道しない自由。」「国民に情報を伝えない自由」か。

 東京理科大学の森教授が説明している。

  ・例えば、30年40年後にも、原子力なしで電力が賄えるかと言うと、やはりそこまではなかなかいかない。

  ・原子力発電は、将来もっと大きな必要性が出てくるのではないでしょうか。

 自民党の衆議院議員近藤三津枝氏が、同意していた。

  ・原油が高騰している厳しい時代だからこそ、太陽光や風力など、自然エネルギーの低コスト化に向けた技術開発を進めていかなければなりません。

  ・そうした中で、一般の生活者に、原子力について十分な理解が得られていない点には、供給サイドも政府も今以上に情報提供をしていく工夫が必要です。

  ・生活者に、より理解を深めてもらう努力が必要でないかと思います。

 東電の事故は悲劇的な大惨事だったが、二人の人物の話では、資源小国の日本なら常識だと言う。安全神話に浸ってきた電力会社や政府、官僚に原因があったのだから、これからが日本の正念場らしかった。

 事故当時自民党の参議院議員だった舛添氏も、次のように述べている。

  ・地熱や風力や太陽光などの自然エネルギーは、風が吹かなかったり、日が陰ったりすると、電力を安定的に供給できません。

  ・そういう中で原子力というのは、克服しなければならない問題はいろいろとありますが、クリーンなエネルギーとして、電力供給量の3割から4割を占めている。

  ・この水準を今後とも保っていきながら、新しいエネルギーの開発を進めていくべきです。

 情報のない国民が原発反対と騒いでも、国の未来を考える議員はこうでなくてはならないのかと思った。

 しかし舛添氏はこの後自民党を離脱し、原発について語らなくなり、今は都知事をしている。日本より韓国を重要視しているのか、反日韓国の大統領に近づいている。この本の内容だけでなく舛添氏も、たった8年間でこんなに変貌した。

 だから私は、舛添氏を信頼していない。氏も日本を考える政治家というより、政局の海を泳ぐ政治屋だったかと思っている。

 面白い本ではなかったが、考える材料を提供されたので、有意義だったと感謝する。日本の歴史の一部を語る立派な資料だ。再読する時があるのか、確信は無いが、書棚に並べて置くことにする。

 ・その時の日本がどうなっているか。

 ・本の中身が再評価されているのか。

 ・夢のプロジェクトが叶えられているのか。

 考えだすと、退屈な本がまるでタイムカプセルのように思えてきた。

 いつの間にか夜になった。とうとう、植木の入れ替えができなかった。だが明日も明後日も、いくらでも時間はある。今日できなくても、私を待っている人間はどこにもいない。急ぐ別の仕事もない。

 私を待っていると確信できるのは、万人の友達である「死」だけだ。時折頭に浮かんでくるが、実感としてはまだ遠い。こんなことまで考えさせてくれたのだから、この本は有意義だった。

 面白くはないが、有意義だった。

コメント (1)
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