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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 ( 謙虚な軍事評論家 )

2022-01-31 19:42:37 | 徒然の記

 江畑謙介氏著『日本が軍事大国になる日』( 平成6年刊 (株)徳間書店 ) を、読んでいます。

 氏は昭和24年千葉県に生まれ、上智大学を卒業して、拓殖大学・海外事情研究所の客員教授をし、軍事評論家として知られています。肩書きの多い人物なので、その一部を紹介します。

 ・イギリスの防衛専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員

 ・通商産業省産業構造審議会「安全保障貿易管理部」臨時委員

 ・スェーデン・ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)客員研究員

 ・防衛庁・防衛調達適正化会議・議員

 ・内閣官房・情報セキュリティ専門調査会・委員

 ・経済産業省・産業構造審議会・安全保障貿易管理小委員会・委員

 ・外務省「対外情報機能強化に関する懇談会」委員

 NHKの番組で解説をする氏を、以前何度か見たことがあり、顔だけは知っていました。存命だと思っていましたが、平成21年に難病のため、60才の若さで亡くなっています。

 物騒な書名なので、長らく本棚に置いていましたが、巻末の「おわりに」を読み、執筆に際しての氏の考えを知りますと、ごく普通の本でした。今から17年前の出版ですが、むしろ現在の私たちに、様々なことを教えてくれる、有用な本であることが分かりました。

 台湾と中国という「二つの中国」をめぐり、欧米諸国と赤い中国がどのような外交・軍事作戦を展開しているのか、ベトナム、フィリピン、マレーシアなど、東南アジア諸国の軍備と装備はどうなっているのか。

 インド、パキスタン、イランなど、インド洋の軍事環境はどうなっているのかなどが、詳細に説明されています。269ページの内、240ページは他国の軍事情勢の叙述で、日本については、最後の29ページで書かれています。全体の11%ですから、『日本が軍事大国になる日』という書名は、少し大袈裟で、刺激的すぎる気がします。

 出版社は、往々にして著者の思いを無視し、人目を引く、過激な書名をつけると言いますから、もしかすると、この本もそうなのかもしれません。

 今は遺言となった氏の言葉を、「おわりに」の叙述から紹介します。

 「本書を執筆しながら、常に頭にあったのは、」「アジアに紛争が起こらないようにする、何か方法はあるのだろうか、」「という、自分自身への問いかけであった。」

 「その問いかけは、あくまでも自分自身のものであったが、」「筆者の〈成果〉を報告させいただくなら、〈これという名案は、得られなかった。〉」

 専門家と言われる人物は、こういう本音を言いませんので、その謙虚さに惹かされました。軍事オタクといわれている、ある総裁候補の政治家とは、大きな違いを感じます。

 「たとえば兵器を悪とするには、世界はあまりに複雑である。」「安全保障上の価値観だけでなく、政治的、経済的な価値と役割があり、」「それらを無視して考えることはできない。」

 「〈敵〉の存在というが、何をもって〈敵〉とするのか。」「いったい、世界に共通する〈民主主義〉や〈人権〉が、存在するのか。」「自国の生存のためだけでなく、自国に有利となるように外交を進めるのが、」「果たして、悪であろうか ? 」

 「自衛に必要な〈限度〉を超えるとは、何の基準を持っていうことができるのか。」「国際貢献というが、その行為が、全ての国から、」「〈貢献している〉と、みなされるものなのか ? 」

 「完全というものがない以上、ある程度で見切りをつけなければならないが、」「〈程度〉とは、いったいどこに設定すれば良いのか。」「全ては、絶対的判断基準が存在しないために、起こっている。」

 私の「ねこ庭」で悪態をつく、若者たちの言葉なら注意を払いませんが、軍事評論家としての氏の言葉だと思えば、重みが違います。

 「アジアに紛争が起こらないようにする、何か方法はあるのだろうか。」と、氏がこうした基本に立ち返えり、思考しているのだとすれば、耳を傾ける意見だと思います。

 「国家間の不信感が、軍拡を生むのは、歴史が証明している。」「軍備の増強は、不信感が大きいほど、不安定性を高める。」

 17年前といえば、日本は村山富市氏が総理だった時です。当時の中国は、鄧小平以来の「経済優先政策」により、「政治の集団指導体制化」が引き継がれていました。しかし中共内部は一枚岩でなく、市場経済や国際協調に反対する、左派・保守派を懐に抱え込んでいました。

 1994年の時期は、「経済優先」 のため、左派・保守派が押し込められていた時でもあり、「内憂外患」の最中でした。1989年の天安門での虐殺事件で、西側諸国が厳しい制裁をし、中国もまた不信感を募らせ、「愛国主義教育」に起死回生をかけていました。

 こういう時期の著作だと思いますと、氏はやはり、軍事の専門家だったと言わずにおれなくなります。国内に多くの矛盾を抱えながら、経済大国として台頭しつつある中国は、当時はまだ、現在のように、世界の軍事バランスを破壊する存在ではありませんでした。

 今日の米中対立を見越している、氏の意見ですから、真面目に読むべしという気がします。

 「相手が何を考え、どんな軍備をし、どの程度の軍事力を備えているのかが、」「明らかにされれば、少なくとも不安定な軍備拡張を防ぐことができる。」

 「ただどの国も、それを明らかにすれば、同時に脆弱箇所も明らかにすることになる。」「それゆえ、自国の装備をどこまで明らかにするのかは、」「非常、難しい問題である。」

 「長い時間と、多くの努力が必要とされるかもしれないが、」「各国の地域の状況を、なるべく正確に、客観的に把握せねばならない。」「先にイデオロギーを出してしまうと、いかなる結果になるかは、」「冷戦時代に、如実に示されている。」

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 「熱ものに懲りて、生酢を吹く」の言葉にある通り、敗戦後の日本は、極論から極論に振れました。軍と名がつけば軍国主義と、大騒ぎし、国の安全保障も軽視する国となってしまいました。

 自衛隊ばかりでなく、軍事評論家としての氏も、戦後の日本で、肩身の狭い思いをしてきたのだと思います。「平和憲法を守れ」と主張している共産党が、政権をとれば赤軍を作ると言っているのに、その支援者と愚かな若者たちは関心を払いません。

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 謙虚な軍事評論家である氏の言葉に、今は謙虚に耳を傾ける時でしょう。

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『 アースダイバー 』 - 5 ( 女性天皇の誕生 )

2022-01-29 13:19:52 | 徒然の記

 最後の11章、「森番の天皇」です。

 「自然といわず生命といわず、あらゆるところに、自分の原理を浸透させていこうとする押しつけがましさが、キリスト教と資本主義と科学主義という、西欧の産んだ、グローバリズムの三つの武器には共通している。」

 「このうちの資本主義と科学主義を受け入れてきた日本は、それによってずいぶん得をした反面、心の内部の深いところまで、その原理の侵入を許してしまった結果、今や、大いに苦しめられている。」

 近代化という言葉で自然を破壊し、「森ビル」が金の力で、庶民を土地から追い立て、東京を無惨に作り替えていると語ります。この意見には、うなづかされるものがあります。

 「僕たちの心情の中に、グローバリズムへの反感が根強くわだかまっているのは、そのためである。僕たちの心の奥には、経済的合理主義に合うように作り替えられるのを拒否しようとする頑固な部分が、まだ生き残っている。」

 そして氏は、この主張の延長線上に天皇を持ってきます。

 「もしも天皇制が、グローバリズムに対抗する聖なる空間の場所として、自分をはっきりと意識するとき、この国は救われるかもしれない。」

 「そのとき天皇は、この列島に生きる人間の抱いているグローバリズムに対する否定の気持ちを表現する、真実の〈国民の象徴〉となるのではなかろうか。」

 なんとなく共感するのは、ここまでです。千葉日報に記事を配信する共同通信社が、「知の巨人」として賞賛する氏の意見の、独特の展開が始まります。

 「女性天皇の誕生をもって、明治天皇に始まる近代天皇制は、終わりを迎える。そのとき北方ツングース的な、男系原理に代わって、南方的・縄文的な双方原理が、皇室の中によみがえり、都心の森に住んでいることが、文明開花や富国強兵や、」「八紘一宇や経済大国などを、自ら否定して乗り越えていく、新しい〈森の天皇〉の生き方を、象徴するものである。」

 言論の自由な日本ですから、氏の意見に反対しませんが、中身には賛成しません。氏の意見は日本の過去の否定であり、歴史と文化の否定に繋がる極論です。双方原理という言葉は、天皇は父系でも母系でも良いという意味ですから、私には受け入れ難い意見になります。

 ご先祖さまが継承してきた、父系天皇の流れを守ろうと多くの国民が考えているとき、氏は双方原理という意見を出します。

 「そのとき初めて天皇制は、この列島の大地に根を下ろすことが、できるのではないだろうか。」

 しかし一方では、そうなった時に日本の皇室が崩壊すると考える人もいて、私もその一人です。

 「天皇を頭にいただく朝鮮半島からの移住者を、この列島の先住民である縄文人たちは、何はともあれ受け入れたのである。その時から、異質な文明同士が混じり合って、お互いの長所を引き出しながらこの文明を作ってきた。」

 日本には、今から約1万6000年前から約3000年前まで、北海道から沖縄本島にかけて、縄文人が住んでいました。狩猟・漁労の採取生活をしていたところへ、稲作文化を持つ弥生人が渡ってきたと習いました。それを朝鮮半島からの移住者と断定して良いのか、古代史には諸説がありますので、私は氏の説を是としません。

 「朝鮮半島からの移住者」と書けば、朝鮮人であるように聞こえますが、半島経由で渡ってきたのは、ユダヤ民族だという学者もいます。こんなところにも、氏の学問的な曖昧さがあります。

 「天皇制の中には硬い北方的な殻が生き続け、この列島の多様な伝統と真の融合を阻んできた。その歴史が変わるのだ。」

 「硬い殻」というのは、「父系制の天皇」を指していますが、このことがどうして日本の多様な伝統や、融合を阻んできたのでしょう。「大地の歌」の翻訳にしても、ここまで飛躍しますと、疑問が生じます。

 この本が出版されたのは、平成17年の5月です。ちょうどこの頃、小泉総理が有識者会議を作り、「女性宮家」の創設を図り、皇室の崩壊に力を入れていました。

 先日のブログで、12月22日に出された『有識者会議報告書』をブログで取り上げ、青山繁晴氏の言葉を紹介しました。

 「小泉内閣時代に、女系天皇にしてしまおうとし、日本の天皇家を終わりにするとしたことが、全部覆されたに等しい内容です。」

 平成18年の9月6日に悠仁様が誕生されたため、「女性宮家」の検討が中断され、現在に至っていますが、その最中にこの本が出版されていたというのは、単なる偶然でしょうか。

 中沢氏は今でも著名人で、信奉者も多数いますが、私には縁遠い人です。反日左翼とは違うとしても、吉田元総理の言葉を借りて言いますと、「曲学阿世の徒」ではないかという気がします。

 本日で終わりますが、関心を持たれる方は、自分で氏の本を手に取り、お確かめください。

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『 アースダイバー 』 - 4 ( 千葉日報の記事 )

2022-01-28 20:51:48 | 徒然の記

 昨年の12月18日、千葉日報新聞に、中沢氏の特集が掲載されました。「ハーベストタイム」と言うシリーズもので、紙面のほとんどを使う大きな記事です。

 それによりますと、令和元年に出版された『レンマ学』が、氏の探求の道が達した一つの頂点だと言うことです。『カイエ・ソバージュ』『対称性の論理』『アースダイバー』など、多様な観点から試みてきた思想の連なりが、生み出したものと言います。

 「人間の心を、追い求め」「吉本隆明さんとともに高みへ」と、記事の見出しにある通り、氏は吉本氏と近い場所にいる思想家です。最近になって氏は、吉本氏がやろうとしていたことと、自分との接点が見えてきたと語っています。

 「精神と心を、物質と絡めながら、一つの統一体を作りたい、そういう唯物論を作らなければならない、と言うのが吉本氏の考えだった。」

 氏はそのように語り、自分も別ルートから、同じところにたどり着いたと言います。吉本氏の著作を読み、中沢氏の著作を読みましたが、正直なところ、私には何のことなのかさっぱり分かりません。

 二人とも「知の巨人」と呼ばれていますから、凡人の私とは違った世界に生きているのだと思います。

 「新自由主義で日本社会はぼろぼろになって、ものすごく危険なところにまできてしまったけれど、資本主義を少しは変えないとまずい、と言う思考も出てきている。」

 「国連の持続可能な目標 ( SDGs  ) を掲げ、産業構造を変えようとしたり、GAFAと呼ばれる巨大IT企業への、規制を強めようとしたり、」

 こうした動きに、氏は期待が持てると語ります。「SDGs」は別にして、それ以外の意見に私は概ね賛同しますので、「反日左翼思索家」と決めつけるのは、果たして適切なのかと言う疑問もあります。

 もしかすると氏は、吉本氏と同じく優れた頭脳を持つ、「知的ゲーム」を楽しむ、インテリの一人なのでしょうか。「自分の言葉を理解できない人間には、理解してもらう必要がない」と、割り切っているのかもしれません。

 そう言う観点から見直しますと、『 アースダイバー 』  には沢山の事例があります。例えば28ページの主張が、その一つです。

 「地球環境に関心のある人たちは、異様に暑い夏や、ちっとも寒くならない冬に、地球温暖化がますます進行していることを感じ、危惧を抱いている。問題はすべて、人間が発達させすぎてしまった工業文明にあると言っている。」

 「しかし地球の問題を、数億年単位で考えている地球学者に話を聞いてみると、地球の温度は、実に長期間で変化をしているので、ことによると今がその温暖化のカーブに差し掛かっているだけかもしれない。」

 「だから原因を、人間の愚行にばかり求めるのはどうか、と言う返事が返ってくる。」

 地球の温暖化については、こう言う見方も必要でないかと氏は言います。さらに次のような意見になりますと、反日左翼思想家と単純に言えなくなります。

 「産業の発達の恩恵を、さんざん受けている人間たちが、自分を支えてくれるものを批判するときは、よっぽど注意してかからなければならない。」
 
 「それは、パスポートを持って、外国を安全に旅行しているくせに、やたらと、自分の国を批判するようなものであるる。森を見ないで、木のことばかり気にしていると、その人は知らないうちに沼地にはまり込んでしまうだろう。」
 
 時空を超えた思索をする、素晴らしい人に思えてきます。
 
 「地球はゆったりと動き、変化している。物事を、本質的なレベルで決定したきたのは、そう言う長期的なサイクルを持った変化の方なのである。」
 
 息子たちにも、「ねこ庭」を訪問される方々にも、もう一度言わなくてなりません。
 
 「私の書評は、あくまでも一つの参考ですから、そのまま受け取らず、自分で本を読んでください。」
 
 私もこれからは、「反日左翼」と言うレッテルを、むやみに貼ることを控えようと思います。紋切り型のレッテル貼りをするのは、共産党と、その親派のマスコミと学者たちがすることですから、愚行は彼らに任せておきます。
 
 次回で、最終回にしようと考えています。関心のある方だけ、「ねこ庭」へ足をお運びください。
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『 アースダイバー 』 - 3 ( 天皇の森 )

2022-01-28 11:12:00 | 徒然の記

 不穏なものを漂わせる「皇居の森」を語るには、先に「明治神宮の森」の説明が必要であるようです。

 第2章 ( 74ページ ) の「天皇の森」は、このことが語られます。氏が反日の人物でなければ、詳細な説明が素直な気持で聞けたのにと残念です。

 「帝都・東京の設計図を描いていた人々の中には、象徴的にものを考えることの好きな人たちもいて、この人たちの悩みの種は、東京を守護すべき守護霊の居場所が、はっきり定められていない、と言うことであった。」

 区史や郷土史をつぶさに調べていますから、叙述には説得力があります。多少氏の性格が見えるとしても、文章全体に客観性があります。

 「京都には北東の方角に比叡山があり、そこに最澄が仏教の寺を構え、国家鎮護のための象徴的な場所とした。」

 「江戸にも、北の方角には日光山があった。江戸の設計図を描いた、天海僧正の提言で日光に聖地が開かれ、家康の御霊を祀ることで、そこが守護霊の宿る場所となった。」

 「こう言う場所が、近代天皇の都である東京にはなかったのである。」

 東京を日本の中心である「帝都」にしようと、設計者たちは知恵を絞り、都内に守護霊を祀る場所を探しました。氏はここで、『明治神宮経営地論』と言う資料の一文を読者に紹介します。

 「東京は帝国の首府にして、世界に対して帝国を代表せるゆえに、帝国を鎮護せらるべき地点は、帝国を代表する帝都を鎮護せらるべき地点たるなり。」

 明治時代のご先祖らしい、大層な言葉ですが、堅苦しいばかりで、あまり内容がありません。氏は原文の紹介をやめ、「大地の歌」を自分の言葉で翻訳します。そうなりますと当然、氏の偏見も混じると考えなくてなりません。

 「広々として小高く、白虎 ( 西 ) 、青龍 ( 東 ) 、朱雀 (  南 ) 、玄武 ( 北  ) を表す、吉相をそなえた土地を持ち、水清く、深々とした針葉樹林に包まれた森と言えば、最有力候補として代々木が浮上してくる。」

 「その森に、帝都と帝国を守護する、強力な霊を祀る神社が、建てられなければならない。そうしなければ、世界戦争の時代を生き抜いていくことはできない。」

 幕末以来、西欧諸国によるアジアの侵略を見て、国の守りを念頭に置いていたご先祖ですから、こうした想いがあったことは確かだろうと思います。

 『明治神宮経営地論』をどのように読み取るかは、その人次第です。氏のような反日学者は、侵略国家日本の基礎がこのようにして作られたと、曲げた解釈をします。

 「明治神宮は、日本という国家のための〈鎮守の森〉として、最初から構想されていた。」「入念な調査と、森林生態学の知識を駆使し、慎重に設計が進められた。」

 「莫大な予算と、多くの国民の作業奉仕を投入して、大正時代を代表する一大プロジェクトとなり、大正9年に一応の完成を見た。」

 明治神宮が、どのような経緯で作られたのかが分かりました。設計図を描いたリーダーにも、役務の奉仕をした人々にも、感謝せずにおれない大事業だったと、初めて知りました。けれども氏は、反日の文筆家ですからそんな思いには浸りません。

 「明治天皇の御霊は、代々木につくり出された巨大な鎮守の森に祀られることによって、帝国の守護霊となった。」

 「文明開花などによっても、深層で動いている日本人の思考は( 縄文時代と ) 少しも変わらなかった訳である。」

 この意見には、少し説明が必要です。「神道」には、次の三つの信仰があります。

  1. 自然信仰 山や木や岩など自然の中に神を見、人間もその一部だと考える。

  2. 御霊(みたま)信仰 優れた人や、社会貢献した人などの魂を信仰の対象とする。

  3. 祖霊(それい)信仰 祖先を神として敬い、これが国の祖先である天皇と、無意識のうちにつながる。

 神道に八百万の神が存在するのは、この三つの信仰が混じり合っているからだと言われています。神道は、縄文時代からのものとされていますから、「明治神宮」建設の思想の中にもあると述べているようです。

 氏は縄文人の思想が、西洋近代化を進めた思想に比べ、劣った、時代遅れのものであると評しています。

 そして氏は、章の最後を次の言葉でまとめています。

 「天皇制は、日本の全体をおおいつくそうとする原理だ。しかし全体を一つの原理でまとめると、必ずそこから排除されるものを生む。」

 天皇制には問題があると、言いたいのでしょうが、断定はしていません。していなくても、文章全体が、「皇室否定の歌」を歌っています。毛沢東の言葉を使う氏に、私は次の「変換した歌」を贈ります。

 「マルクス主義は、国の全体をおおいつくそうとする原理だ。しかし全体を一つの原理でまとめると、必ずそこから排除されるものを生む。」

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『 アースダイバー 』 - 2 ( 森番の天皇 )

2022-01-27 13:17:30 | 徒然の記

 今回は、中沢氏の説明をそのまま紹介します。

 「歴代の天皇たちは、こう言う開かれた土地に暮らしていたのであるが、時々深い森の中に身を潜めるという奇怪な行動を行なった。」

 「その頃熊野や吉野は京都から見ると、死の支配する、野生の領域と考えられていて、多くの天皇は、その〈野生の森〉に出かけて、何日も籠ってしまうのだった。」

 その理由は、平地の皇居の暮らしで衰弱した「天皇霊」のパワーを、死霊の領域である深い森に籠ることによって、復活させようとしたからだと言います。初めて聞く珍説ですが、こう言う説を唱える学者もいたのでしょうか。

 「そう言うわけで、天皇が森の奥に籠ると言う行為には、どこかしら、不穏なものが付き纏っている。」

 「実際、壬申の乱でも、南北朝動乱でも、クーデターを企てた皇子や天皇は、森の奥への退却行を実行している。」

 深い森が、身を隠すのに好都合だったと言うだけの話で、「死霊」や「天王霊」のパワーとは無関係ではなかったかと、そんな気がします。しかし氏が、このような「大地の声」を聞いたと主張するのなら、反対する根拠もありません。

 天皇が深い森に籠られるのは、「天皇霊」のパワーを復活されるためであるが、それは特別の場合の話で、日々の生活は別だと説明します。

 「あくまでも、日常の政務や生活の空間としての皇居は、広々と開け放たれ、庶民たちの暮らしと地続きにある、都市の一角に据えられていた。」「皇居はむしろ文明の象徴として、緑の少ない空間になければならなかったのである。」

 氏は明治以降の天皇が、なぜ深い森の中の皇居に住われているのかについて、「大地の声」を利用し、解明しようとしているようです。ここで氏は、意外な説を展開します。

 「文明開化とともに形を変えた近代天皇制は、野生の森を、土地の中心地に据えて、そこを皇居と定めたのだろうか。」

 「それとも近代天皇制そのものが、一種のクーデターから生まれた〈鉄砲から生まれた政権〉なので、森の奥に皇居をすえることで、後醍醐天皇さながらに、魔術的な戦士としての、臨戦意識を持続しようとしたのだろうか。」

 ここまで来ますと、「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」です。「壬申の変」を「壬申の乱」、「南北朝の争い」を「南北朝動乱」、「明治維新」を「クーデター」と言い変え、〈鉄砲から生まれた政権〉と貶めるのは、反日左翼学者のすることです。「革命は、銃口から生まれる」と言った、毛沢東の言葉をそのまま使っています。

 公平を期すために述べておきますと、『 アースダイバー 』の中身は、「天皇の森」に重点が置かれているのではありません。

 新宿、渋谷、上野、浅草、銀座と、都内の各地を満遍なく語っています。第1章から第11章までありますが、目次を転記すると一目瞭然です。

  第1章・・ ウォーミングアップ    ( 東京俯瞰  )

  第2章・・ 湿った土地と乾いた土地  ( 新宿 ~ 四谷  )

  第3章・・ 死と森          ( 渋谷 ~ 明治神宮  )

  第4章・・ タナトスの塔       ( 東京タワー  )

  第5章・・ 湯と水          ( 麻布 ~ 赤坂  )

  第6章・・ 間奏曲          ( 坂と崖下  )

  第7章・・ 大学・ファション・土地  ( 三田・早稲田・青山 )

  第8章・・ 職人の浮島        ( 銀座~ 新橋  )

  第9章・・ モダニズムから超モダニズムへ ( 浅草・上野・秋葉原 )

  第10章・・ 東京低地の神話学     ( 下町 )

  第11章・・ 森番の天皇        ( 皇居 )

 目次を転記しますと、今まで気づかなかったことが見えてきます。第3章の「死と森」、最終章である第11章の「森番の天皇」( 皇居 ) と言う配列の意味です。

 上皇陛下の「お言葉」以来、眞子さまのご結婚問題など、現在の皇室はゴシップの渦中にあります。昭和天皇御在位の時は、皇室への尊敬と感謝の気持が国民に共有されていました。あの頃天皇は、国民の心の中心にありましたが、今は大海の嵐に揉まれているように見えます。

 もしかすると氏の著書は、こうした世間の風潮を助長したのではないかと、そんな気持になってきました。国民の心にある皇室の尊厳を、粗雑な言葉で壊そうとしているのではないのか ?

 毛沢東の「革命は、銃口から生まれる」と言う言葉で、「壬申の乱」や「南北朝」の対立を「クーデター」と呼んでみたりし、目次の最後が「森番の天皇」と来れば、氏の悪意が何となく見えます。

 新宿、渋谷、上野、浅草、銀座と、都内の各地を満遍なく語っていても、こう言う場所の話は付け足しで、氏がターゲットにしているのは、「皇居と皇室の、権威破壊」・・ではないのでしょうか。

 そうしますと、「大地の声」も、読者を惑わす手品師の小道具でしかなくなります。毛沢東の影響を受けた反日の文筆家が、平成17年に出版した「悪書」でしかないと、そう言う気がしてきました。

 これでまた、good事務局のスタッフの方々から「警告」を受けるのかもしれませんが、どうか、私の言論の自由も認めて頂きたいものです。私のブログはマイナーで、たった83人の読者の方しかいませんから、世間への影響などありません。

 著名な中沢氏の出版物に比べれば、日本の何人に伝わるのか、計算すれば分かる、と言うより、計算するまでもなく分かります。

 息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々にだけ、次回のお誘いをいたします。興味のない方は、スルーしてください。

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『 アースダイバー 』

2022-01-26 21:28:26 | 徒然の記

 中沢新一氏著『 アースダイバー 』( 平成17年刊 講談社 ) を、読み終えました。名前だけは知っていますが、著書を手にするのは初めてです。ブックカバーには、簡単な氏の紹介と、何冊もの著書名が書かれています。

 「1950 ( 昭和25 )年生まれ  思想家、人類学者」

 『 カイエ・ソバージュ  全五巻』『 対称性人類学 』『 精霊の王 』『 緑の資本論』など多数と、サントリー学芸賞、読売文学賞、斎藤緑雨賞、伊藤整文学賞などの受賞歴が書かれています。

 「縄文時代の古地図を片手に都内を歩き、土地が持つ記憶から、その街がどうして現在の姿になったのかを、解き明かす書。」

 ある人の説明では、このように書かれています。「アースダイバー」をそのまま訳しますと、「土地へ潜る者」となるのでしょうか。潜水夫のように、土地の持つ歴史の中に潜り込み、隠れた過去を探す意味で使われているようです。

 246ページの本ですが、巻末の参考文献を見ますと、多くの書籍だけでなく、区役所や市や町の資料館を訪れ区史や郷土史を読むなど、大変な作業をした上での労作だということが分かります。

 「縄文時代の古地図」と簡単に書かれていますが、現在の区や市や町が、縄文時代にはどんな場所だったのかと、氏自身の調査をもとに、自分で作った特殊な地図です。これをみますと、自分が現在いる場所が大昔には海であったのか、陸であったのかが一眼で分かります。

 考えてもいなかった視点から語られるので、知らないうちに引き込まれる魅力があります。参考のため、14ページの叙述を紹介します。

 「どんなに都市開発が進んでも、ちゃんとした神社やお寺のある場所には、滅多なことでは手を加えることができない。」

 「そのために、都市空間の中に散在している神社や寺院は、開発や進歩などという、時間の侵食を受けにくい〈無の場所〉にとどまっている。」

 「そしてそういう〈無の場所〉のあるところは、決まって縄文地図における海に突き出た岬、ないしは半島の突端部なのである。」

 思いつきでなく、丹念な調査の上で説明されていますから、読者には新鮮な意見になります。

 「縄文時代の人たちは、岬のような地形に、強い霊性を感じていた。」「そのためそこには、墓地を作ったり石棒などを立てて、神様を祀る聖地を設けた。」

 時代が進み、縄文人の記憶が薄れても、同じ場所に神社や寺が作られているため、海が隆起し地形が様変わりしていても、縄文地図に照らして見れば、聖地と〈無の場所〉の所在が確認できるという説明です。

 氏は東京を歩いていて、あたりの様子が変だなと感じたら、縄文地図を開いてみるのだそうです。

 「するとこれは断言してもいいが、十中八九その辺りは、沖積期の台地が海に突き出していた岬で、たくさん古墳が作られ、古墳の場所にはのちにお寺などが建てられたり、広大な墓地が出来たりしている。」

 「その辺りは、必ず特有の雰囲気を醸し出している。死の香りが、漂ってくるのだ。」

 「そこから、東京という都市が轟かせている大地の歌が聞こえてくる。僕はその歌を、文章に変換するだけでいい。」

 この説明でわかる通り、内容は陰湿で不健康な話が多く、楽しい本ではありません。一言で表せば、現代版の『 遠野物語 』とでも言えば良いような気もしています。

 大昔の海底が隆起し陸地になっても、元々台地であった土地に比較すると、そこは湿地帯が多く、住んでいるのは貧民と、世間からはみ出し、賎民と呼ばれた人が多いと説明します。乾いた高台に住むのは、権力者や裕福な人間たちで、今も彼らは、高みから貧乏人たちを睥睨しているとも言いいます。

 話は間違っていないのかもしれませんが、ここまで来ますと、何が言いたくて本を書いているのだろうと、そんな気持ちになってきます。

 71ページの「天皇の森」という章は、読み進むほど、暗い気分にさせられました。

 「都内の有数の森は、その多くが天皇家に関わりを持っている。」「明治神宮の森の広大さは、言うまでもないが、天皇ご自身も、深い森に覆われた皇居の奥に、お住まいになっている。」

 「天皇ご自身が、森の中にずっと身を潜められたというような事例は、近代天皇制の以前には南朝の例外以外にはない。」

 それ以前の歴代天皇のお住まい ( 皇居 ) が、森の中に作られたことはなく、広々と開かれた土地に建てられ、どの方角からも、立派な建物を見ることができたと言います。

 飛鳥、奈良時代については知りませんが、平城京も、平安京も、中国皇帝の住む都を模したものですから、氏の言う通り、皇居は平地に堂々と建っていました。

 明治時代以降の皇居には、不穏なものがつきまとっている、と言うのが氏の説です。

「そこから、東京という都市が轟かせている、大地の歌が聞こえてくる。僕はその歌を、文章に変換するだけでいい。」

 そんな大地の歌が、氏の耳には聞こえたのでしょうか。それとも氏の心が、聞こえたと思い込んでいるのでしょうか。次回は、もう少し氏の耳に届いた「大地の歌」をご紹介します。

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【僕らの国会・第261回】 - 2 ( きらめく言葉 )

2022-01-25 20:16:48 | 徒然の記

 前回に続き、青山氏の有識者会議の『報告書』に関する説明です。文章でなく、箇条書きにします。

 ・『報告書』の中身は、逃避でもなく先送りでもなく、とても踏み込んだ内容である。

 ・「昭和22年の10月に皇籍を離脱した、いわゆる旧11宮家の皇族男子の子孫である、男系男子の方々に・・・・」

 ・この言葉が今まで、有識者会議の『報告書』に明記されたことはない。

 ・オールドメディアが省略した、3つ目の方策案の内容は、次の通りである。

   1.  内親王、女王が婚姻後も、皇族の身分を保持することとする。

   2.  皇族に認められていない養子縁組を可能とし、皇族に属する男系の男子を、皇族とすること。

   3.  皇統に属する男系の男子を、法律により、直接皇族とすること。

 ・ 前記 1. が、女性宮家につながる心配はない。『報告書』の10ページに次のように明記されている。

   # その子は、皇位継承資格を持たないと考えられる。

   # また配偶者とその子は、皇族という特別の資格を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるものとすることが、考えられる。   

  ・こうしたことについては、国民の理解が必要なので、これには当然時間がかかる。

  ・時間をかけて考えていただこうと提案している『報告書』は、逃避や先送りでなく、正しいと思う。

  ・室町・鎌倉時代から、皇統の父系を護るため、日本人の知恵として築かれてきた宮家を、復帰させるということがここで生きてくる。

  ・『報告書』にこの言葉が明記されたのは、岸田総理だけでなく、安倍・菅元総理の力であり、小泉内閣の過ちがやっと修正されることになった。

  ・共産主義が衰退していく世界の流れの中で、日本だけは共産党が、国会内で影響力を持ち続けている。

  ・今後も国会で、共産党に与する野党が反対運動をし、攻撃してくるだろう。

 ここで氏が、思いがけないことを言いました。煌めくような言葉でしたから、そのままお伝えします。

 「皇室を無くそうとする共産党や、同調する野党と国会で議論して、」「果たして自民党氏は、一致点が見出せるのか、」「その方策があるのか。」

 「あるのです。」「それは国民の意思、民意です。」

 なるほど、その通りです。国民を弾圧する全体主義政党である共産党が政権を取らない限り、日本は言論の自由な国です。国民の多数の意見が国を動かす、民主主義の日本であり続けますから、「皇室」についても、最終的には民意が決めます。正しい情報を得れば、国民は正しい判断をします。

 煌めくような言葉ではありませんが、興味深い話をもう一つ紹介します。

 「古代のことは知らないけれどもと、言いながら、テレビに出て、」「ギャラをもらって、喋っている人物がいます。」「家族の中や、居酒屋での話ならいいのですが、」「知らないなら、テレビに出て、余計なことを話すな ! 」

 評論家か学者か、文化人かコメンテーターか、そんな人物なのだろうと思いますが、生活のためとは言え、テレビにはこんな人物が多すぎます。感情を露わにする氏でありませんから、口調は穏やかでした。

 けれども今回の動画で、一番輝く言葉を話していたのは、司会役の三浦秘書ではなかったかと、そんな気がしています。

 「次の天皇になられる悠仁様は、現在15才です。」「悠仁様が天皇にならなれるのは、おそらく20年後くらいです。」

 「その時は、もしかするとご結婚されているのかもしれません。」「お子様に男子がお生まれになることを願いながら、」「それを補填し、安心し、サポートするためにも、」「皇族の方の数の増加を考え、方策を立てることは、」「今しかできません。」

 私は時間を見つけて、有識者会議の『報告書』を読もうと思います。オールドメディアが省略した報道の間違いを、自分の目で読み、自分で判断します。

 今回のブログで、自分なりに「輝く言葉」と思われる部分を、青色表示にいたしました。息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々は、どのように判断されるのでしょうか。

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【僕らの国会・第261回】 ( 「皇位継承に光」 )

2022-01-25 14:31:28 | 徒然の記

 久しぶりに、青山繁晴氏の【僕らの国会・第261】を見ました。昨年の12月27日付けの動画で、皇位継承策を検討する有識者会議の『報告書』に関する説明です。

 関係する記事を、スクラップにしていますが、眞子さまのご結婚問題が出てからは、しばらく途絶えていました。経過が分かるように、一部を紹介します。

 ・R3.7.10   「子供の継承資格 結論見送り」「結婚後の女性皇族、養子も」 

 ・R3.7.27   「皇族数確保へ2案議論」「政府の有識者会議」 

 ・R3.7.28  「消えた〈女性宮家〉」「保守派に配慮、養子併記」 

 ・R3.8.  8  「配偶者 非皇族の方向」「内親王と婚姻後、子供も」 

 ・R3.9.  3  「有識者会議の再開模索」「世論注視  反発警戒」「政府、眞子さまの結婚巡り」 

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ・R3.12.7  「有識者会議報告書骨子」「皇族確保で2案」「女性皇籍維持、養子縁組」

 ・R3.12.23  「皇位継承策先送り」「有識者会議  女性・女系・女性天皇に触れず」 

 青山氏が動画で取り上げているのは、青字で表示した最後の報道(記事)です。

 「これは12月22日に出された、『有識者会議報告書』の現物です。」「これに基づいて、ご説明します。」「結論から先に言いますと、『報告書』の結論は、〈護る会〉が提言してきた内容と同じです。」

 新聞の記事を読んでいるだけで、そのようなことは分かりませんが、驚かされたのは次の説明でした。

 「小泉内閣時代に、女系天皇にしてしまおうとし、日本の天皇家を終わりにするとしたことが、全部覆されたに等しい内容です。」

 そんなすごい『報告書』だったのかと、スクラップ記事を再度見ますが、「皇位継承策」が、先送りにされたという意味にしか読めません。政府と有識者会議は、相変わらず大事な問題を先送りし、責任逃れをしていると、そんな読み方もできる内容です。

 これ以後は文章をやめ、箇条書きにします。

 ・テレビの報道を見て驚いたのは、会議の結論が 2つだったと伝えていること。

 ・結論は3つであり、但し書きがついている3番目のものを、故意に省略している。

 ・テレビでされているのは、父系による皇位継承を続けたくないという報道ばかりである。

 ・正式な政府の書類であるにもかかわらず、テレビ報道が、3番目の結論を無かったことにしている。

  こういう報道は、テレビも新聞も同じパターンですから、スクラップしている千葉日報の記事を紹介します。言うまでもありませんが、これは共同通信社が全国配信した記事です。「皇位継承策先送り」「有識者会議  女性・女系天皇触れず」と言う見出しで、6段組の大きな扱いです。

 肝心のところだけ読みますと、青山氏の言う通り、2つの結論だけが書かれています。

 「『報告書』は、〈皇族の数確保が喫緊の課題〉とし、皇族数確保策として、」「2案を提起した。」

  「 ① 女性皇族が婚姻後も、皇族の身分を確保することとする。」

  「 ② 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする。」

 この部分だけを読みますと、確かに氏の言う通り2つの案しか報道していません。テレビと新聞が、同一の姿勢であることが、これで分かります。

 「『報告書』は、ネットで誰にでも確認できますから、ぜひ読んでみてください。」「平易な文章で、分かりやすく書かれています。」

 氏の説明によりますと、テレビと新聞が省略した3つ目の提案は、「護る会」が提言し続けた「旧宮家の皇籍復帰」の部分だそうです。

 「GHQが勝手にしたので、旧宮家の方々を、」「養子縁組に関係なく、皇籍に復帰していただくと言う案です。」「法改正したらできますので、『報告書』では、このことについても書かれています。」

 「GHQが勝手にしたので、旧宮家の方々を、」と言う氏の説明に、私は同意します。11宮家の皇室離脱を可能にしたのは、敗戦直後の「皇室典範」の改正でした。GHQの実力者ホイットニー准将に支持され、総理大臣になった片山哲氏が、法の改正をする皇室会議の議長を務めました。

 社会主義者と言われていたホイットニー准将に支援された片山氏は、社会党の党首でした。昭和22年10月13日の皇室会議で議長を務め、その時の氏の説明記録がありますので、紹介します。

 「今次戦争が終結しました直後より、皇族のうちから、」「終戦後の国内国外の情勢に鑑み、皇籍を離脱し、」「一国民として、国家の再建に努めたいという御意思を表明せら れる向があり、」「宮内省におきましても、事情やむを得ないところとして、」「その御意思の実現をはかることとなり、旧皇室典範その他関係法令について、」「必要な改訂を加え 準備を致しましたが、種々の事情により、実現を見るに至らなかったのであります。」

 「そうしてこの問題は、新憲法公布後に制定せられました新皇室典範により、」「新憲法施行後に、実現せられることとなり、」「これに必要な準備が整いましたので、本日、皇室会議の議に付することとなった次第であります。」

 今は亡き寛仁親王が平成18年に、「皇籍離脱は、GHQによる皇族弱体化のための措置であった。」、という見解を示されています。片山氏の証言と異なり、皇籍離脱に強く反発した皇族も少なくなかった、とも言われています。

 高潔な人格者でしたが片山氏は、別名「グズ哲」と呼ばれるほど優柔不断な人物でしたから、絶大な権力を持つGHQに逆らえませんでした。こうした経緯を知っていれば、「GHQが勝手にした」と言う青山氏の言葉の正しさが、分かります。

 氏の言葉を借りれば、大手のテレビも新聞も「オールドメディア」ですが、相変わらず反日ぶりは健在です。次回は、もう少し、青山氏の説明を紹介しますのでお付き合いください。

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日本のエネルギー問題 - 13 (東京財団政策研究所の情報 )

2022-01-20 18:22:01 | 徒然の記

  平沼氏が所属する「東京財団政策研究所」は、非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言や、普及活動を国内外で実施しています。

 ネットでは、次のように説明されています。

 「急速にグローバル化する世界において、人類の直面する地球的諸課題を解決し、」「知的貢献のリーダーシップを取ることを目指し、」「ボートレース業界の総意により、日本初の世界レベルの独立的シンクタンクを目指し」「平成11年に、国土交通省により認可・設立された。」

 「平成30年に、〈 東京財団政策研究所 〉に名称変更した。」

 前にも述べましたが、日本財団は「日本船舶振興会」が名称変更した組織です。海洋開発市場で必要とされる技術力の向上や、専門知識を持った海洋開発技術者の育成に取り組んでおり、「東京財団政策研究所」の設立はこの方針に沿ったものです。

 これで、「日本のエネルギー問題」には、国交省とボートレース協会も参加していることが分かりました。

 紹介する同研究所・主任研究員・平沼光氏の意見は、令和3年に、中央公論 3月号にて掲載されたものです。

 「今後日本においても、再エネを主力にしたエネルギー転換の方向に向かうことになるが、」「現状、日本の再エネの普及率は低い。」

 「再エネ普及で先行する欧州では、既に平成30年で、」「発電電力量構成における再エネ比率、30%以上を達成している国も多く、」「EUでは、2030年に57%にまで普及すると推計されている。」「一方日本の普及率は、平成30年の17%にとどまっているばかりか、」「2030年の目標も、22~24%とかなり低い。」

 「これまで地中に埋蔵された天然資源に乏しい日本は、資源の調達を海外からの輸入に依存せざるを得ず、常に資源の供給不安定化におびえてきた。」「一方、エネルギー転換がめざすものは、」「化石燃料依存から再エネ利用に転換し、再生資源を循環させる経済モデルである。」

 「すなわち、"資源調達を輸入に依存せざるを得ない"という、これまで日本にとって、」「圧倒的に不利であったゲームのルールが、根底から覆されようとしているのだ。」

 ここまで読んだ時、私は氏が「メタンハイドレート」のことを示唆しているとばかり思っていました。ところがそれは大きな間違いで、「資源のリサイクル」、「資源の再利用」の話でした。

 「日本は、地下に埋蔵された化石燃料や鉱物資源に乏しくとも、」「地下から掘り出された天然資源の、純度を高めて作られた製品が、」「膨大な量の廃棄物として、地上に蓄積されている。」

 「これは、都市の中に存在する"都市鉱山"とも呼ばれており、資源として位置づけるなら、日本は紛れもない資源国となるだろう。」

  「日本には、再エネを主力化できる十分な資源ポテンシャルと、技術がある。」「先進諸国の中でも、レアメタルのリサイクル、省資源化の高い技術を持つ日本は、」「国内の都市鉱山を、最大限活用することで、」「資源を生み出す資源大国へと、進化するチャンスなのだ。」

 青山繁晴氏に協力しないのが、経済産業省だけでないことが、これではっきりしました。日本財団、 東京財団政策研究所、石油業界、経団連、国土交通省、環境省、文部科学省、外務省など、ほとんどの省庁が、〈再生可能エネルギー〉と〈環境〉分野への投資に向かう「スーパーメジャー」と「国際金融資本」の動きに合わせています。

 今回のシリーズで分かりましたが、「日本のエネルギー問題」の内実は、おそらく青山氏には語れないことばかりです。氏を代弁するつもりで頑張りましたが、マイナーな私のブログでは、多くの人々に知ってもらう役目が果たせませんでした。

 孤軍奮闘する青山繁晴氏の姿を再確認した私は、これからどうすればいいのでしょう。「メタンハイドレート」が、もっと多数の読者を持つユーチューバーの手で、広く発信されたらと願いながら、このシリーズを終わります。

 長い間おつき合い頂き、有難うございました。

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日本のエネルギー問題 - 12 ( 日本財団の情報 )

2022-01-20 13:03:59 | 徒然の記

 「スーパーメジャー」と呼ばれているのは、下記の6社でした。

       1. エクソン・モービル  米国   

    2. ロイヤル・ダッチ・シェル  イギリス、オランダ  

    3. BP ( 旧フリティシュ・ペトローリアム )  英国  

    4. シェブロン  米国      

    5. トタル    フランス      

    6. コノコフィリップス  米国       

 「脱炭素社会」の流れの中で、6社が今後どのように動いていくのかにつき、 「ジェトロ・ビジネス短信」が伝えていることを、第8回のブログでご紹介しました。そこでは、日本財団の動きについても説明していました。

 「日本財団は、日本メーカーと石油メジャーによる〈再生可能エネルギー〉と〈環境〉分野での、」「新たな連携技術開発プロジェクトの、アイディアを募っている。」

 「日本財団は、平成30年5月、世界の主要石油・天然ガス生産大手らが組む、」「コンソーシアム〈 DeepStar 〉と、海洋技術の共同開発のため覚書を締結し、」「日本企業が、これらスーパーメジャーなどと連携して、技術開発を行うプログラムを設置した。」

 本日は、令和元年5月に公表された「日本財団」の資料を紹介します。日本の主要企業がスーパーメジャーと連携し、どのような技術開発に取り組んでいるかが分かります。(  注 1.は、研究テーマ  2.は、参加企業名です。)

 〈  川崎重工業(株) 〉

   1.    自律型潜水ロボットの、海洋石油分野への実用

   2.   Total(フランス)   Shell(イギリス、オランダ)

 〈 (株)島津製作所  〉 

       1.    海底での光通信無線技術の開発

    2.     Shell(イギリス, オランダ)   Chevron(アメリカ)   Total(フランス)

 〈  日本製鉄(株)  〉

   1.   海底ケーブル用の、新型スチールの開発

   2.    Total(フランス)    Chevron(アメリカ)

 〈  日揮(株)    〉 

   1.   天然ガス中のCO2等、高濃度酸性ガスの処理プロセス開発

   2.    Petrobras(ブラジル)   Shell(イギリス, オランダ)   JX石油開発(日本)  Chevron(アメリカ)

 〈  日産化学(株)  〉

   1.   海洋油田の生産効率を向上させるための、添加剤の開発

   2.    Woodside(オーストラリア)      Chevron(アメリカ)

 〈 (株)日本ペイントマリン 〉

   1.   海洋油田での長期防食が可能な、新型塗料の開発

   2.   Anadarko(アメリカ)    Woodside(オーストラリア)  Chevron(アメリカ) Shell(イギリス、オランダ)

 〈  日本電気(株)  〉

   1.   水中での、非接触型給電システムの開発

   2.   Total(フランス)    Chevron(アメリカ)     Shell(イギリス、オランダ)

 〈  三菱重工業(株) 〉

   1.    新型海底ポンプによる、海底原油採取の最適化

   2.   Equinor(ノルウェー)    Chevron(アメリカ)    Shell(イギリス、オランダ)

   1.    海洋石油・ガス生産施設における、故障予想モデルの開発

   2.    Anadarko(アメリカ)    Total(フランス)    Chevron(アメリカ)

 〈  横河電機(株)  〉 

   1.   海洋石油開発にかかるパイプラインの詰まりや、腐食を防止するための添加剤注入新技術の開発

   2.   Shell(イギリス、オランダ)    Chevron(アメリカ)

 前回私は次のような、2つの予測を立てました。

   1. 彼らは、自分の影響力を、「日本の石油業界」で確立しようと計画する。

   2. 彼らは、自分の影響力を、「日本の産業界」で確立しようと計画する。

 石油業界には株主として参加し、産業界には研究開発の連携企業として参加しています。国際金融資本家とスーパーメジャーが、日本へ影響力を行使しつつある状況が見えてきました。

 これでは青山繁晴氏が、政界でいくら奮闘しても、「メタンハイドレート」が国民に伝わらないはずです。安倍元総理と頑張っていたと話していましたが、それでも彼らにはかなわなかったと言うことなのでしょうか。

 「日本のエネルギー問題」の森は、深く、大きく、広がっていますが、青山氏を応援するため、もう少し森の中を散歩し、何かの糸口を探したいと思います。

  次回は、東京財団政策研究所の主任研究員である平沼光氏の、意見を紹介します。

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