ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

私の信頼するNHK ( 朝日新聞を超える売国と背信)

2013-07-26 13:32:03 | 徒然の記

 NHKがBSニュースで、中国の報道番組をそのまま全国に、と言うより全世界に発信した。

 中国側のニュースは、次の通りである。

 「尖閣諸島の領海を、日本の右翼団体の船が侵犯してきたので、わが国の公船が、これらの船を領海外に追い払った。」

 これは中国の身勝手な主張で、中国国内向けの報道だ。テレビ画面には、日本の漁船を追いかける中国公船の姿が映し出された。ちっぽけな日本漁船と大きな公船が、白い航跡を引きながら、航行していた。

 事実をそのまま伝えるのがマスコミの役目とは言いながら、日本の領土である尖閣の領海を、自国のものとして報道する中国のニュースを、NHKはそのまま流したのか。

 「中国政府は国内向けに、こうしたねつ造を報道しています。」

 せめてこの一行でも、注釈をつけることはできなかったのか。

 尖閣問題に関して、日本と中国は交戦状態にあり、国民が重大な関心と怒りをも持って見ている。それなのに国民の信頼するNHKが、敵対国を利するニュースを注釈もなしに報道した。

 これではNHKが、尖閣は中国の領土ですと認めたことになり、国益を損なう。

 しかも中国が使っている映像は、NHKが撮影したもので、NHKが自ら中国側に渡していたものだという。注釈どころの話ではない。中国公船が、日本漁船を追跡する画像があるから、何も知らない中国国民にアピールする。

 この映像は、確かに中国が撮影できるものではない。領空侵犯として攻撃される恐れの無いNHKの手による映像で、NHKだからこそ撮れた航空写真だった。

 こうなると、中国の情報戦争に、NHKが積極的に協力したという話になる。昨日、鳩山元総理の尖閣に関する談話の感想を聞かれ、菅官房長官が、開いた口がまだ塞がりませんと答えていたが、今回受けた衝撃はこれに匹敵する。

 私はブログで、朝日新聞をたくさん攻撃してきたが、NHKは「日本の良識の府」と信じて来た。だが今回の行為は、売国・背信・ねつ造・利敵行為と、そのいずれの面からしても、朝日新聞を凌駕する。

 中国側の言う「日本の右翼」とは、沖縄の漁船に乗った「チャンネル桜」の人びとである。

 右と左で区分すれば、「チャンネル桜」は右側に位置しているが、私たちが、産経新聞を右翼と呼ばないのと同じ意味で、これらの人びともまた、「横暴・過激」な右翼とは一線がある。

 NHKは公共放送の使命からしても、中国の言う「右翼」という言葉に対し、訂正や抗議をなぜしないのだろう。

 更にこのニュースでは、チャンネル桜の水島社長と、田母神氏と、松浦氏の顔写真が出されたと言う。顔写真が世間に出回れば、本人たちに身の危険が迫ることもあるが、NHKは考慮していない。自衛隊の将軍だった田母神氏なら、死は覚悟するところだろうが、他の二氏は一般の国民だ。国民を守るのが、公共放送の使命ではないのか。

 私は今、大きな衝撃と失意に陥っている。

 朝日新聞は来月から購読中止にできるが、NHKはそういかない。法律で受信料の支払が義務づけら、私の意思で止めることができない。「私の信頼するNHK」だったという、これまでの経緯からしても、いったいどうすれば良いのか。

 暫く頭を冷やして考えてみよう。

 熱射病の蔓延する、この熱い夏の真っ盛りに、朝日新聞ならまだしも、NHKにこんな目に遭わされようとは、予想だにしなかった。

 いや、これはNHKの中の一部の不心得者が起こした失敗で、多くの社員たちは、日本を大切にしていると、まだそう考えずにおれない。そうでなければ、私たちの受信料から、社員たちに平均一千万円もの年収が支払われていることの、意味がない。

 万が一、もしものこと、これがNHKの体質だというのなら、自民党の諸先生たちは国会で厳しく追求すべきではないのだろうか。

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参院選の結果と朝日新聞の功績

2013-07-22 12:50:34 | 徒然の記

 自民党というより、安倍政権の勝利と呼ぶ方が適切な気がする。

 圧勝と言って良い勝ち方だが、この勝利への一番の貢献者は、何と云っても朝日新聞である。自民党から感謝状を出しても良いくらいだと確信する。

 昨年の12月26日に安倍内閣が発足して以来、朝日新聞の安倍氏への批判・中傷が一日と欠けることなく紙面を飾り続けた。客観報道を標榜するマスコミの枠を超え、読者である私たちに不快感を与えるものだった。と言うより、嫌悪と反感を掻き立てる醜い紙面だった。

 安倍氏を応援していない国民にまで、興味と関心を呼び覚まし、同情票を掘り起こしたのでないかと思ったりする。国民の多くが、反日と売国の議員集団である民主党に強い疑念を抱いている折だから、朝日が安倍氏を貶め、民主党を持ち上げるほどに、自民党への信頼を強めることに繋がった。

 自民党の勝利を伝える今日の朝刊でも、朝日は民主党を支援し安倍氏を批判している。天声人語と社説が訓示を垂れているが、私たち読者が、そんなに低レベルと思っているのだろうか。

 「捲土重来を期す意気が民主党に残っていようか。新味は無くても経験は生きる。現首相を見ても、それが二度目の強みだと思うが。」・・と、これが天声人語だ。自分の国を嫌悪し、歴史も文化も否定するような政党に、どうして私たちが二度目を許すと思うのか。朝日新聞の常識を疑いたくなる。

 「首相が民意をかえりみず、数を頼りに突き進もうとするのなら、破綻は目に見えている。衆参のねじれがなくなっても、民意と政権がねじれては元も子もあるまい。」

 「しばらくは続きそうな一強体制に、野党はただ埋没するだけなのか。野党だけの問題ではない。日本の民主主義が機能するかどうかが、そこにかかっている。」

 これが社説だ。民主主義が立派に機能している証拠に、自民党が勝利したと言うのに何を言っているのだろう。

 安倍氏が数を得たと言うことが民意であり、朝日の負けなのに、この往生際の悪さには正視できないものがある。こうして朝日新聞が国民の気持ちを逆なでし、自民党回帰への世論を盛り上げたのだから、私自身は感謝したいくらいだ。

 「変な記事を書いて、民意とねじれては元も子もあるまい。」

 この思い上がった朝日に対し、社説の言葉をそっくり贈呈してやりたい。

 日本の国を大切にし、歴史と文化とを守ろうと、そんな社員が沢山いるはずなのに、主幹か主筆か論説委員か知らないが、左翼記者に主導権を握られている朝日新聞だ。産経新聞のように、右寄りの記事の掲載を勧めているのでなく、「右にも左にも寄らない中道の意見」を伝えて欲しいと願っているだけだ。

 これ以上は、止めにしておこう。朝日との付き合いも残り9日となったことだし。

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白井氏の愚論「永続敗戦」を掲載した朝日

2013-07-21 00:09:51 | 徒然の記

 朝日新聞が、白井聡氏の「永続敗戦論」を、大きく取り上げていた。

 「日本は、敗戦をなかったことにしていることが、今もなお日本の政治や、社会のありようを規定している。」

 この状態を、氏は「永続敗戦」という新造語で表している。こうした造語で、新進気鋭の政治学者であろうとしているらしいが、私には、竹中平蔵氏の「グローバリズム経済論」と同様、日本人の魂が抜けたへ理屈にしか聞こえない。 

 「昨今の領土問題では、わが国の主権に対する侵害という観念が、日本社会に、異常な興奮を呼び起こしています。中国や朝鮮に対する挑発的なポーズは、」「対米従属的な状態にあることによって生じている 、〈主権の欲求不満〉状態を、埋め合わせるための代償行為です。」

 領土問題に関する挑発は、中国と韓国がやり始め、日本の政府は隣国を刺激しないようにと、遠慮ばかり重ねて来たのではなかったのか。

 日本企業の建物を破壊したり、陳列品を略奪したり、異常な興奮をしていたのは、中国の人間たちでした。さすがに朝日新聞に掲載される意見にふさわしく、事実が逆になっており、日本が悪いと言ういつもの論調になっている。

 日本人の、領土問題に対する対応は、対米従属の欲求不満の代償行為だと、どこから、こんな理屈が出てくるのか不思議でならない。氏は私が聞いたことも無い大学の助教授なので、聞いたことも無いような理屈を展開して恥じないのだろうか。

 「戦後とは自らを容認し、支えてくれるアメリカに対しては臣従し、侵略した近隣諸国との友好関係はカネで買うことによって、平和と繁栄を、享受してきた時代です。」

 記事の注釈を見ると、氏は昭和52年生まれで、私の息子たちより若い。意見を軽視する訳ではないが、戦前と戦後を生きた両親や、他の同時代り大人たちを見て育った私には、戦後は、そんな簡単な言葉で定義してしまえるような、時間と空間ではなかった。

 国民全体が、それこそ汗と涙の日々を重ね、寝る時間を惜しんで働き、やっと手にした「繁栄」であり、「平和」だ。アメリカに臣従したから、自然現象みたいに繁栄したのではなく、近隣諸国に支払った賠償金は、血のにじむような国民の税だった。

 我慢のならない「若者の定義」と、どうして言わずにおれよう。両親だけでなく、当時の大人たちへの敬意と感謝があるから、見過ごせない意見だ。まして次の言葉にはブルータスお前もかと、左翼学者の軽薄な日本否定の一本調子になり、辟易してしまう。

 「A級戦犯を祭った靖国神社に参拝したり、侵略戦争の定義がどうこうと、理屈をこねたりすることによって、日本人は自らの信念を慰め、敗戦を観念的に否定してきました。」

 「必敗の戦争に突っ込んだことについての、戦争指導者たちの国民に対する責任は、ウヤムヤにされたままです。」「対内的な戦争責任が、あいまい化されたからこそ、対外的な処理も、おかしなことになったのです。」・・・。

 氏の論文はこの調子で、拉致問題、長崎・広島の原爆等々延々と続く。

 「日本人が英語が下手なのは、言うべき事柄がないからだ。つまり、自分の意見がないからだ。」

 こんなバカなことも言っている。英語の喋れない日本人は、全員自分の考えが無いということになる。英語の話せない私は、自分の意見がないというのか。自分の意見があるから、こうして氏の愚論に意見を言っている。バカバカしくて読む気にも、ならない愚論だ。

 「戦後の日本人は、ずっと被害者意識で生きて来た。加害者としての責任感を、持っていない。」

 朝日新聞だから、氏の愚論が記事になっているとも知らず、次の言葉で締めくくっている。

 「恥の中に生き続けることを、拒否すべきです。それが、自分の言葉を持つということでも、あります。」

 加害者としての責任を感じればこそ、中国、韓国に対し、無償援助やODAといった名目で、どれだけの金額を支払ったというのか。あるいは、尖閣、南京、靖国の問題について、中国の執拗な攻撃も甘受して来たでないか。

 韓国の慰安婦問題は捏造の言いがかりと分かっていても、政府は謝罪し、反論もしていない。氏はどこを見て、日本人が、ずっと被害者意識だけで生きてきたと、決めつけるのだろう。

 私と違い、本気で日本を考えている人びとは、朝日の記事などに、いちいち目くじらを立てないのだろうが、私には別の思いがある。

 今月一杯で、朝日新聞店との契約がやっと終わる。7月限りで、この忌々しい反日の新聞とオサラバできる。だから、腹立たしい記念のために、朝日の記事をブログに残す。
   あと10日の辛抱だ。長かった、実に長かった。

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知識の空白を埋めてくれた本

2013-07-11 22:03:02 | 徒然の記

 萩原遼氏著『北朝鮮に消えた友と私の物語』( 文芸春秋刊 ) を、読み終えた。知識の空白を埋めてくれる本に出会うと、充実した気持ちになれるが、この本もそうだった。

 敗戦後の日本は、貧しくても活気に満ち、空腹さえ友達のようなものだった。マルクスの思想が、夜空に光る星のように、若者の心を虜にしたのは、いつ頃までのことだったろうか。

 昭和47年から2年間、萩原氏は赤旗の記者として平壌支局に勤務した。昭和12年高知県生まれの氏は私より7才年上だから、丁度マルクス主義が、ちょうど夜空の星みたいに輝いていた頃、多感な青年期を過ごした人物だ。

 私が中学、高校生だった頃は、北朝鮮からわが国へ千人以上の人びとが、盛んに密航して来ていた時期だったと、この本で初めて知った。

 密航してきた彼らは、日本共産党と協力し、北朝鮮の工作員として、あるいは革命の闘士として、大阪、神戸、宝塚など関西の各都市で、活発に活動していたと説明され、再び驚いた。

 当時の私の生きていた世界は、学校と家の往復路がメインで、後は自宅を中心とした、市内の数カ所しかなかった。それなのに北朝鮮から来た彼らは、私と同じ年で海を渡っただけでなく、私の知らない、関西の都市に点在し、政治活動をしていた。

 当時の北朝鮮活動家たちの組織は、在日朝鮮人連盟 ( 朝連 ) だった。後に在日朝鮮統一民主戦線 ( 民戦 ) と、名前を変えるが、日本共産党の指導下にある団体だった。これが現在の、在日本朝鮮人総合連合会 ( 総連 ) に変貌するのは、金日生の支援を受けた韓徳銖が、昭和30年に民戦を、日本共産党から分離独立の組織とした時からだった。

 昭和34年に、北朝鮮への第一次帰国船が新潟港から出航し、以後およそ10万人が、希望の国、北朝鮮へと雪崩を打つように帰国した。ニュース映画で見たのだと思うが、港で手を振る人びとの映像が、私の記憶に残っている。

 よく分からないなりに、朝鮮動乱 ( 当時の大人たちはそう言っていた ) や、スターリンの死去など、私も言葉だけは聞いて育った。

 無意識のうちに生きて来た時代が、どんなものであったのか、萩原氏の本が明らかにしてくれた。貧しくても私は両親に守られ、中学、高校、大学と行かせてもらったが、氏は働きながら勉強し、母親や兄弟たちのことを常に気遣い、世間の嵐の中で私の何倍も苦労している。

 夜間高校で知り合った、貧乏な在日朝鮮人たちのことや、親友になった彼らのことなどが抑制された言葉で書かれ、左翼嫌いなのに、私は身につまされる思いで読んだ。

 どうして彼が赤旗を辞めたのか、なぜ北朝鮮を嫌悪するのか、それは北朝鮮に消えた友のことに起因している。社会主義国家建設の夢を抱き、祖国統一の使命感に燃え、彼の友は北朝鮮に戻って行った。それなのに金日成は彼らを欺き、弾圧し、投獄し、虫けらのように抹殺した。

   もし 聖人ばかりの世界があるとしたら 

   そこはたぶん 「地獄」という名で

   呼ばれるのだろう            

 この詩を載せることによって、氏は北朝鮮の実情を教え、個人崇拝の独裁国家の、恐ろしさを知らせている。

 誰の言葉か知らないが、自分の無力を知る彼は、次の文章で著書を終えている。

 「清く正しく美しく、ウソでぬりかためた、偽りの星に住む聖人さんたち、生涯その地獄で暮らしなさい。」

 偽りの星に住む聖人さんたちとは、北朝鮮の政治体制を支える政府の役人や、軍人だけでなく、在日本朝鮮人総合連合会 ( 総連 ) の人びと、その周囲に集まる日本人たちないかと推察する。

 星のように輝いていたマルクスの思想も、時が流れると、貧しく弱い者を救う思想から弾圧の思想へと変じた。何故そうなるか、思想を運用する人間たちのエゴが、本質を歪めてしまうからである。

 正しいと思われるものも、時の経過と共に、異質なものに変化してしまう。だから私は、現憲法を守ろうとする人びとに対して言いたい。

 「マルクスの思想と同じく、現憲法の役割と使命は戦後史の中で終わったのだ。」

 国益のエゴを剥き出しにし、国々が争う国際社会において、今後の日本はどうすればやっていけるのか。それを考える上で、現憲法はもはや障碍でしかなくなっている、という現実がある。

 理想に燃えた、かって若者だった者たちは認めたくないのだろうが、これが事実だ。

 「清く正しく美しく、ウソでぬりかためた、偽りの星に住む聖人さんたち、生涯を、その地獄で暮らしなさい。」

 私も彼らに言いたいが、日本を「偽りの星」や「地獄」にして良いわけがない。だから私は、自分の息子たちに伝えたい。

 「時の流れとともに、ものごとは変化する。かって正しかったものも、いつかは異質のものに変わる。マルクス思想も、平和憲法も。」


   

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『平壌25時』 ( 亡命、北朝鮮外交官の著書 )

2013-07-04 22:33:42 | 徒然の記

  高英煥著『平壌25時』( 徳間書店刊 ) を、読み終えた。

 著者は、平成3年に韓国へ亡命した北朝鮮外交官である。「金王朝の内幕」とついた副題の通り、北朝鮮の内情が詳しく書かれている。

 一年ほど前図書館で、ユン・チアン氏の著書、『マオ誰も知らなかった毛沢東』を、上下二冊借りたことがあった。毛沢東の私生活が、これでもかと暴かれていた。知らないことが沢山書かれ、大半は事実だと思ったが、ユン氏の暴露趣味に嫌悪を覚え、上巻の一部を読んだだけで返却した記憶がある。

 これもそうした本かも知れないと、思いながら手にしたが、葛藤しつつ、言葉を綴る作者の誠実さに惹かれ、最後まで読み通した。

 「金日成と金正日は、世界から最大の、尊敬と欽慕を受けており、従ってこのお二人から領導を受ける人民ほど、幸福な人民はいない。」

 予想した通り、北朝鮮ではこうした作りごとが、大真面目で国民に伝えられ、誰も疑問を挟むことができない仕組みだ。外の世界に触れる外交官である彼は、虚構の空しさを知っていても、国民に伝えるすべが無い。

 北朝鮮は、独善のへ理屈を国際社会へ発信し、日本にも他国にも、奇怪な難癖をつけ、自らは傷つくことのない国だとばかり思っていたが、そうでないことを教えられた。

 昭和63年の、ソウルオリンピックの開催に反対する金日成は、親しくしているアフリカ諸国から欠席の回答を得ようと、国の威信をかけ、自国の外交官を叱咤恫喝し、交渉にあたらせたと言う。

 外交官たちは、ザンビア、ジンバブエ、マダガスカル、セーシェル、タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、中央アフリカ共和国、ブルガリア等の国家元首に対し、金日成の要望を伝えるが、マダガスカルと、セーシェルの二国だけしか同調しなかった。

 欠席に同意したマダガスカルは、代償として大量のセメントと米を要求してきた。
マダガスカルは過去に金日成に対し、国立競技場と大統領宮殿を、プレゼントしてもらいたいとねだり、外交官たちが厳しい国家財政の中でやりくり算段し、叶えてやった経緯がある。

 だが国会議事堂を建設してもらった、中央アフリカ共和国も、軍事援助をしてもらったジンバブエも、北朝鮮の要望に応えなかった。

 北朝鮮の高官や外交官たちは、これらの国々を、恩知らずで悪い奴らだと怒りを爆発させ、同時に、厳しい処罰が待つ自分のことを考え、暗く重い失望にくれる。アフリカには北朝鮮を上回る国があり、剥き出しのエゴを隠さず、北朝鮮を食い物にしていると教えられた。

 日本だけが翻弄されているのでなく、北朝鮮も弄ばれていると分かっただけでも、この本を読んだ価値がある。

 ソ連の援助で建設された火力発電所なのに、ソ連の高官に説明する北朝鮮のガイドが、「首領様の指導で、わが国が自力で作った」と言い、激しい非難をソ連から受けたと言う話を読んでも、この国の有り様が改めて分かった。

 無数の援助や指導を受けたにも拘らず、北朝鮮はソ連に何も感謝していないというのだから、日本がこの国から貶されるだけと言う事実も、さもありなんと納得した。

 ゴルバチョフと金日成は仲が悪く、金日成の独裁体制は、彼が非難してやまないものだったらしい。終戦後に日本から帰国した朝鮮人は、すべて日本のスパイとして扱われ、監視され隔離され、不幸な人生を送っていることなども、初めて知る事実だった。

 著者の悲劇は、ソ連の崩壊から始まる。

 「世界の多くの人びとが、憧れの的としていた偉大なロシアが、社会主義・共産主義の理念を放棄している。社会主義は、机上の楽園だったのだろうか。」

 「無階級社会だといいながら、北朝鮮には厳然とした階級が、存在している。

 内部告発の監視社会で、ふと心の内を洩らしたため、彼はたちまち政府上層部に睨まれることとなる。結果がどうなるのかを知る彼は、故国に妻と子を残したまま、懸命の工夫で亡命をする。

 妻子や親たちを案じ、彼は今も、夜ごとに号泣すると言う。これもまた、悲惨な人生だ。こうした非道な国を賛美する、わが国の左翼主義者たちの神経が、私には今もって理解できない。

 ソ連崩壊の現実を目の当たりにし、自国の体制に疑問を抱いたこの北朝鮮外交官の、爪の垢でも煎じて飲むべきでないのか。

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