■ 「 シンフォニア 1番 」 は、本当に 「 3声 」 か? ■
~「 第 1回インヴェンション 」 追加講座は、1月10日午後2時~
2010.11.26 中村洋子
★昨日は、横浜カワイ「みなとみらい」での、
「 第 1回インヴェンション講座 」 でした。
先ほどの APEC会場 にほど近く、手塚治虫の、
鉄腕アトムが、飛び回りそうな超高層ビルが立ち並び、
“ 未来都市 ”に、迷い込んだような印象でした。
そのビルの一室で、280年以上前に作曲されました、
人類にとって不滅の宝のような、バッハの作品について、
お話をするのは、なかなか、感慨深いものがございました。
★バッハが、息子・フリーデマンのために作曲した、
「 フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集 」 が、
1720年、
「 平均律クラヴィーア曲集 」 第 1巻が、1722年、
「 インヴェンション&シンフォニア 」 が、1723年と、
それぞれ、序文に記載されています。
★「 フリーデマン小曲集 」 の中には、
インヴェンションとシンフォニアのほとんどの初稿 、
さらに、平均律クラヴィーア曲集 1巻の、
1番から 12番まで ( 7番を除く ) の前奏曲、
計 11曲の初稿が、含まれています。
★作曲年は、上記の年より、さらに遡れるとしましても、
バッハが、ほとんど同時期に、これらの曲集を完成させたこと、
さらに、「 インヴェンション 」 の完成した年が、
「 平均律 1巻 」 より、1年遅い、
という事実は、重いと思います。
★本日の講座では、「 インヴェンション 1番ハ長調 」 の、
愛らしいほどシンプルな主題と対主題が、底知れない力をもち、
インヴェンションのみならず、シンフォニアと平均律の全曲を、
支配している、というお話を詳しくいたしました。
★それを理解しませんと、実際に、
どう弾いていいのかが、分からないと思います。
やみくもに、いろいろな人の校訂版を紐解き、
あれこれ、さまざまなピアニストの演奏を聴き、
その結果、つぎはぎだらけの演奏を、
することに、なってしまいます。
★「 みなとみらい 」 の超高層ビルのように、
その大元の、土台がしっかりしていませんと、
砂上の楼閣、例えますと、フリルだらけの、
実体のない “ ドレス ” となってしまうのです。
★その一例としまして、 「 シンフォニア 1番ハ長調 」 を、
「 3声 」 として、演奏するのは 「 安易 」 であると、思います。
この曲は 「 4声 」 、あるいは、
それ以上の多声部として、演奏すべきです。
4声の場合、その声部がソプラノなのか、アルトなのか、
テノールか、あるいはバスなのか、
それを、見極めなければいけません。
★声部を確定することが、できますと、
「 シンフォニア 」 を、モノトーンの、音階だらけの、
潤いのない曲であると、とらえてしまう
「 誤り 」 から、解放されるのです。
★このシンフォニアが、どんなにか 「 彩り豊か=colourfull 」
であり、バッハのオルガン曲や、オーケストラ曲すら連想させる、
豊かで、楽しい曲であるか、そういうことを、
実際に、ピアノで実証しながら、お話いたしました。
★5声以上というのは、テノールが、第 1、第 2テノールに、
分割されること、あるいは、
アルトが、第 1、第 2に分割されることです。
その見極め方についても、詳しく解説いたしました。
★バッハの音楽を弾くとき、テーマだけを際立たせたり、
テーマを浮き上がらせて演奏する、ということは、
バッハの意図に沿わないことは、言うまでもありません。
テーマをどのように弾くかを、決めた後、
全曲にわたって、その弾き方を画一的に、
繰り返していくのも、間違っています。
★エドウィン・フィッシャーの校訂版では、
シンフォニア1番の 1小節目の主題と、
2小節目のアンサー ( 応答 )と、
3小節目の主題は、それぞれ、異なった弾き方をするように、
フィンガリングで、見事に 「 指示 」 しています。
★それは、思いつきや、恣意的な考えから、
出てきたものではなく、
インヴェンション 1番を、徹底的に読み込んだことから、
導き出された結果、なのです。
★ 「 インヴェンション&シンフォニア 1番 」 の講座は、
既に、カワイ・表参道と、カワイ・名古屋で開催しましたが、
その後、私のなかで、この曲にたいする見方が、
さらに発酵し、深まっていたのを、感じました。
★チェロのパブロ・カザルスが、一生涯毎日、
バッハの 「 無伴奏チェロ組曲 」 を、
飽くことなく、演奏し続けた、ということは、
日々、新たな発見が、あったからでしょう。
そういうことが、私もやっと、分かってきました。
★本日の講座は、満席となり参加できない方も、
たくさん、いらっしゃいましたので、
「 追加の第 1回講座 」 を、開催することになりました。
★日時:来年 2011年 1月 10日 ( 月 )、
午後 2時 ~ 4時 30分です。
この日は、祝日です。
平日に、ご都合がつかない方も、どうぞ、お出かけください。
★第 2回・インヴェンション講座は、12月 20日 ( 月 )
第 3回は、1月 28日 ( 金 )
第 4回は、 3月 7日 ( 月 )、
いずれも、午前 10時 ~ 12時 30分です。
■ご予約は、カワイミュージックスクール横浜
電話 045-261-7323 です。
( カラスウリ、黄千両、野生山吹の実、紅葉の蔦 )
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