音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ 「 フィンガリング 」 は、 「 指使い 」 にあらず ■■

2010-11-23 19:20:47 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■■ 「 フィンガリング 」 は、 「 指使い 」 にあらず ■■
  ~横浜「みなとみらい」のインヴェンション講座で、お話すること~                                             2010.11.23  中村洋子

 

 

★ 11月 25日に新開講します、横浜「 みなとみらい 」での、

「 インヴェンション・アナリーゼ講座 」 第 1回は、

満席と、なりました。

遠方から、お出でになる方も多く、なかには、

昨年から始めました 「 名古屋・インヴェンション講座 」 を、

『 聴き逃しました 』  と 、名古屋から、わざわざ、

おみえになります方も、いらっしゃいます。


★横浜での講座は、表参道や名古屋での講座を、

ただ、反復するだけではありません。

私が日々、バッハから学び、そして、発見します新鮮な驚き、

“ バッハの音楽が、どんなに豊かか ” 、ということ、

特に、インヴェンションが、一見、短くシンプルに見えますが、

「 平均律クラヴィーア曲集 」 に匹敵する、

奥深さをもった曲であることを、お伝えしたいと思います。


★二声のインヴェンション 1曲につき、

バッハは、それを、二ページで記しています。

各ページは、横長で、3段組みです。


★ 「 インヴェンション第 1番 」 を、みますと、

1ページ 1段目は、 4小節目 3拍目までが記譜され、

2段目は、4小節目の 4拍目から、始まっています。

バッハは、この曲集の最初から、

なぜ、このように、 「 変則的 」  に記譜したのか?


★1ページ 3段目も、11小節目 2拍目までで、終わっています。

2ページの冒頭は、 11小節目の 3拍目から、始まるということです。

2ページ目の 1段目は、14小節目の 3拍目まで、

2ページ目 2段目は、 14小節目の 4拍目から始まります。


★2ページ目の 2段目は、18小節目の 2拍目まで。

2ページ目の 3段目は、18小節目の 3拍目から、始まります。

 

 

★「 自筆譜のファクシミリ 」 を、お持ちでない方は、

是非、上記のレイアウトを、ご自分の楽譜に、メモをしてください。

この独特な区分にこそ、バッハの深い意図、

秘密が、隠されているのです。

≪ 「 インヴェンション1番 」 は、実に、複雑精緻に、

モティーフや伏線が、張り巡らされている曲である ≫、

ということを、詳しく、ご説明するとともに、

ただ、頭で理解するのではなく、どのように、

演奏に、それを活かしていくか・・・についても、お話いたします。


★それが、理解できますと、

つまらない校訂版をもつ必要は、なくなり、ご自身で、

素晴らしい演奏をすることが、可能となるでしょう。


★しかし、尊敬すべき、立派な校訂版は、

バッハが意図したのと、同じ深みに達した、

あっと驚くような、素晴らしい内容を、もっています。

ただし、演奏者が、その校訂版を読みこなす技量を、

持ちあわせませんと、“  猫に小判  ”  と、なります。

つまり、“  指使い通りでは、弾き難く、役に立たない  ”、

などという、偏見や無理解に、囚われることになり、

その楽譜を、放棄してしまう結果となります。


「 エドウィン・フィッシャー校訂版 」 は、残念ながら、

「 二声のインヴェンション 」は、絶版となっています。

「 シンフォニア 」 は、 「 三声のインヴェンション 」 、

というタイトルで、出版されており、

現在でも、何とか入手可能です。

 


★「 三声のインヴェンション 」  ( シンフォニア1番 ) の、

1小節目 ソプラノ声部での冒頭

「 ソ ラ シ ド レ ミ ファ ソ 」 の、

「 ド 」 のフィンガリングは、 「 1 」 指、

「 ファ 」 が 、「 1 」 指、

最後の「 ソ 」 が 「 3 」 指と、なっています。


★「 指使い 」 という語を、使わずに、

「 フィンガリング 」 と、しましたのは、

日本では、「 フィンガリング 」 を、

「 弾き易くするための、便利な指使い 」  というように、

誤解をしている方が、呆れるほど多いからです。


「 アルトゥール・シュナーベル 」 や、

「 クラウディオ・アラウ 」 の、

「 ベートーヴェン・ピアノソナタ全集 」 を、

≪ 指使いが弾き難いから、価値が低い ≫ と、

主張するブログのサイトや、出版物まであることには、

開いた口が、塞がりません。


★先ほどの  「 1 」   「 1 」  「 3 」  という、

「 フィンガリング 」 が、

フィッシャーのどれだけ深い考察に、基づいて、

導き出されたものであるか・・・、

その熟慮の過程を辿りながら、演奏にどのように活かすか、

ご説明いたします。


★ 「 古い校訂版だから、価値が無い 」  と、考えるのは、

断じて、誤りです。

フィッシャーの校訂版は、普遍的価値があります。

細かく、細かく指示を書き込んだ校訂版は、

一見、親切にみえますが、実際は、演奏不可能です。

それは、お弾きになっている皆さまが、

実感されていることと、思います。

 


★横浜  「 みなとみらい 」 での、

第 2回インヴェンション講座は、 12月 20日 ( 月 )、

第 3回は、  2011年 1月 28日 ( 金 )。


★名古屋カワイでの、第 4回インヴェンション講座は、

 2月 23日 ( 水 )です。


★ 横浜 「 みなとみらい 」 での、

「 インヴェンション 1番の追加講座 」 は、

日程が決まりましたら、お知らせいたします。

 


                                                   

                      (  キノコ、ツワブキ、南天、三日月  )
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