音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■「 第 1回インヴェンション 」 追加講座は、1月10日午後2時から■

2010-11-26 00:31:13 | ■私のアナリーゼ講座■

 「 シンフォニア 1番 」 は、本当に 「 3声 」 か?
「 第 1回インヴェンション 」 追加講座は、1月10日午後2時
               2010.11.26 中村洋子

 

 

★昨日は、横浜カワイ「みなとみらい」での、

「 第 1回インヴェンション講座 」 でした。

先ほどの APEC会場 にほど近く、手塚治虫の、

鉄腕アトムが、飛び回りそうな超高層ビルが立ち並び、

 “ 未来都市 ”に、迷い込んだような印象でした。

そのビルの一室で、280年以上前に作曲されました、

人類にとって不滅の宝のような、バッハの作品について、

お話をするのは、なかなか、感慨深いものがございました。


★バッハが、息子・フリーデマンのために作曲した、

「 フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集 」 が、

1720年、

「 平均律クラヴィーア曲集 」 第 1巻が、1722年、

「 インヴェンション&シンフォニア 」 が、1723年と、

それぞれ、序文に記載されています。


★「 フリーデマン小曲集 」 の中には、

インヴェンションとシンフォニアのほとんどの初稿 、

さらに、平均律クラヴィーア曲集 1巻の、

1番から 12番まで ( 7番を除く ) の前奏曲、

計 11曲の初稿が、含まれています。


★作曲年は、上記の年より、さらに遡れるとしましても、

バッハが、ほとんど同時期に、これらの曲集を完成させたこと、

さらに、「 インヴェンション 」 の完成した年が、

「 平均律 1巻 」 より、1年遅い、

という事実は、重いと思います。

 


★本日の講座では、「 インヴェンション 1番ハ長調 」 の、

愛らしいほどシンプルな主題と対主題が、底知れない力をもち、

インヴェンションのみならず、シンフォニアと平均律の全曲を、

支配している、というお話を詳しくいたしました。


★それを理解しませんと、実際に、

どう弾いていいのかが、分からないと思います。

やみくもに、いろいろな人の校訂版を紐解き、

あれこれ、さまざまなピアニストの演奏を聴き、

その結果、つぎはぎだらけの演奏を、

することに、なってしまいます。


★「 みなとみらい 」 の超高層ビルのように、

その大元の、土台がしっかりしていませんと、

砂上の楼閣、例えますと、フリルだらけの、

実体のない “ ドレス ” となってしまうのです。


★その一例としまして、 「 シンフォニア 1番ハ長調 」 を、

「 3声 」 として、演奏するのは 「 安易 」 であると、思います。

この曲は 「 4声 」 、あるいは、

それ以上の多声部として、演奏すべきです

4声の場合、その声部がソプラノなのか、アルトなのか、

テノールか、あるいはバスなのか、

それを、見極めなければいけません。


★声部を確定することが、できますと、

「 シンフォニア 」 を、モノトーンの、音階だらけの、

潤いのない曲であると、とらえてしまう

 「 誤り 」 から、解放されるのです。


★このシンフォニアが、どんなにか 「 彩り豊か=colourfull 」

であり、バッハのオルガン曲や、オーケストラ曲すら連想させる、

豊かで、楽しい曲であるか、そういうことを、

実際に、ピアノで実証しながら、お話いたしました。

 


★5声以上というのは、テノールが、第 1、第 2テノールに、

分割されること、あるいは、

アルトが、第 1、第 2に分割されることです。

その見極め方についても、詳しく解説いたしました。


★バッハの音楽を弾くとき、テーマだけを際立たせたり、

テーマを浮き上がらせて演奏する、ということは、

バッハの意図に沿わないことは、言うまでもありません。

テーマをどのように弾くかを、決めた後、

全曲にわたって、その弾き方を画一的に、

繰り返していくのも、間違っています。


★エドウィン・フィッシャーの校訂版では、

シンフォニア1番の 1小節目の主題と、

2小節目のアンサー ( 応答 )と、

3小節目の主題は、それぞれ、異なった弾き方をするように、

フィンガリングで、見事に 「 指示 」 しています。


★それは、思いつきや、恣意的な考えから、

出てきたものではなく、

インヴェンション 1番を、徹底的に読み込んだことから、

導き出された結果、なのです。


★  「 インヴェンション&シンフォニア 1番 」 の講座は、

既に、カワイ・表参道と、カワイ・名古屋で開催しましたが、

その後、私のなかで、この曲にたいする見方が、

さらに発酵し、深まっていたのを、感じました。


★チェロのパブロ・カザルスが、一生涯毎日、

バッハの 「 無伴奏チェロ組曲 」 を、

飽くことなく、演奏し続けた、ということは、

日々、新たな発見が、あったからでしょう。

そういうことが、私もやっと、分かってきました。


★本日の講座は、満席となり参加できない方も、

たくさん、いらっしゃいましたので、

「 追加の第 1回講座 」 を、開催することになりました。


★日時:来年 2011年 1月 10日 ( 月 )、

午後 2時 ~ 4時 30分です。

この日は、祝日です。

平日に、ご都合がつかない方も、どうぞ、お出かけください。


第 2回・インヴェンション講座は、12月 20日 ( 月 )

 第 3回は、1月 28日  ( 金 )

 第 4回は、 3月 7日  ( 月 )、

いずれも、午前 10時 ~ 12時 30分です。  

ご予約は、カワイミュージックスクール横浜

     電話 045-261-7323 です。

 

 


           ( カラスウリ、黄千両、野生山吹の実、紅葉の蔦 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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