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■ ショパン「エチュードOp 25-1」の、手稿譜とエキエル版との相違点 ■
09.6.12 中村洋子
★6月7日の「アナリーゼ講座」で、お話しました、
ショパンの「エチュードOp 25-1」の、
「手稿譜」と、「ナショナルエディション・エキエル版」との、
大きな相違点を、具体的に挙げてみます。
★手稿譜を①、エキエル版を②とします。
● 4小節目 :
①ペダルを離す記号が、2拍目6連符の5番目の
音の位置にあり、次ぎに踏むペダル記号の位置が、
2拍目と3拍目の中間に、記載されている。
②ペダルを離す記号が、2拍目と3拍目の間にあり、
次ぎに踏むペダル記号の位置が、3拍目の頭部に記載。
● 4小節目と5小節目との間 :
①小節線の真下に、ペダル記号が記載されている。
②それに相当するペダル記号が、5小節目の頭部に記載。
● 5小節目と6小節目の間 :
①5小節目の1番最後の音符の真下に、ペダルを離す記号。
5小節目と6小節目の小節線の真下に、ペダル記号。
②ペダルを離す記号が、①より右にずれ、5小節目のすべての音を
引き終わった後に、離すように、記載されている。
ペダル記号は、6小節目の1拍目頭部に記載。
●7小節目 :
① crescendo と diminuendo は、記載されていない。
② crescendo と diminuendo が、記載されている。
● 8小節目 :(相違点ではありませんが)
手稿譜では、1拍目のフォルテ記号が、極めて大きく、
力強く書かれています。
さらに、手稿譜では、楽譜の譜割りを、1段目を3小節、
2段目を4小節、3段目を4小節と、しています。
(エキエル版は1段を2小節で、機械的に割り振る)
このため、この8小節目が、楽譜の3段目の最初の小節となり、
楽譜全体を見ますと、1段目曲頭のピアノ記号
(この記号も大きく、明確に書かれています)と、
この3段目冒頭のフォルテ記号とが、ともに左端にあり、
視覚的に強く、訴え掛けてきます。
● 8小節目と9小節目の間 :
① piano記号が、小節線上にある。
② piano記号が、9小節目の1拍目頭部にある。
● 8小節目と9小節目の間 の上声フレーズ :
①スラーが、9小節目の1拍目頭部の Es の音まで、繋がり、
その Es から、新しいフレーズが始まる。
②スラーは、8小節目の最後の音で、一度閉じ、
9小節目の頭部 Es から、また新しく始まる。
● 9小節目 :
① crescendo が、2拍目の6連符の5番目の音から、始まり、
10小節目の1拍目6連符の2番目の音の位置で終わる。
② crescendo は、2拍目6連符の1番目の音から始まり、
10小節目の1拍目の音の位置で終わる。
● 10小節目と11小節目 :
①ディミニュエンドは、記載されていない。
4拍目6連符の4番目の音から、11小節3拍目の6連符の
3番目の音にかけて、crescendo が記載されている。
②ディミニュエンドが、2拍目から小節の最後まで、
記載されている。
11小節目1拍目頭部から、3拍目6連符の1番目と
2番目との音の間に、crescendo が、記載されている。
★以上、最初の10小節について、「エキエル版」と
「手稿譜」との、主な相違点を、抜き出してみました。
★「手稿譜」ファクシミリは、ショパンがこの
「エチュードOp 25-1」を、ピアノを弾きながら、
作曲していたときの気持ち、ペダルの踏み方、
フレーズの取り方、さらに、
ショパンが、どんな演奏をしていたかということまでが、
手に取るように、分かる楽譜です。
★私が皆さまに提案したいのは、お持ちの楽譜に、
実際に鉛筆で、上記の、ショパンが指定した記号などを、
付け加え、一度、弾いてみることです。
★ショパンの音楽、特にこの「エチュードOp 25-1」は、
決して、ペダルでぼかされた、ムード音楽ではなく、
「前奏曲」様式が、厳しく造形された曲であることが、
よく理解できると、思われます。
★私の著作「クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!」
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/1006948955
148~152ページ「ショパン エキエル版は本当に原典版か?」の
150ページに、譜例付きでご説明しております。
(ヒメシャラの花)
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