音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ Ries & Erler が、私の作品 「 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、出版 ■

2013-10-11 23:28:58 | ■私の作品について■

■ Ries & Erler リース&エアラー社が 「 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、出版 ■
                    2013.10.11  中村洋子

 





★季節外れの台風が迷い込み、どこか不順な秋ですね。

それでも、ときおり顔を見せる青空は、

抜けるように爽快です。

 
★私の作品 「 Suite für Violoncello solo Nr.3 

無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 が、出版されました。

「 Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー 」 社の、

ホームページを、ご覧下さい。

http://shop.rieserler.de/product_info.php?info=2840&XTCsid=24e91095ba1fabd23887c811e5f68d73
http://shop.rieserler.de/index.php

表紙には、私が手書きしました「漢字」の題名を、

適当に、散りばめてあります。


★ヨーロッパの方々には、漢字がクールでかっこよく、

デザイン的にも、斬新に見えるのでしょう。

楽譜は、まもなく届くようですので、

とても、楽しみです。


この作品は、 「 秋 」 がテーマです。

この組曲は、6曲でできていますが、

きょうは、第2番目の 「 鶺鴒 」  ( せきれい ) 

Die Bachstelze バッハシュテルツェ

The white wagtail について、ご説明します。

 

  


★これは、私の好きな詩人、三好達治の 「 鶺鴒 」 という詩に、

触発されました。

≪ 紅葉して 日に日に山が明るくなる

   谿川は それだけ緑りを押し流す

  白いひと組 黄色いひと組 鶺鴒が私に告げる

  「 この川の石がみんなまるいのは 

  私の尻尾で敲いた ( たたいた ) からよ 」 ≫


★微笑ましい詩です。

深閑とした山奥、河原のなにげない石に止まり、

水しぶきを浴びながら、

一心に尾を振るう鶺鴒。

いつまでも、いつまでも叩いています。

人知の及ばない自然の営み。

無限に続きます。

秋の一こまです。


★この鶺鴒を、それほど深山ではないのですが、

実際に、見たことがあります。

どうしてこんなに、飽きもせず、

せわしなく、尾っぽを上下させるのか、

無為ともとれるその行為に、

何故か、感動します。

 

 


★Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生は、

この 「 鶺鴒 」 の曲が、大好きです。

Boettcher 先生が、この曲に、

Animato  =80 [ =66 ]  という、

速度記号を、 Einrichtung で書き込まれています。

Animato  の語源は、 Animal です。

また、 [ flott und leicht ] も、記入されています。


flott は、敏速、てきぱき、きびきび。

leicht は、軽く、軽やかに、という意味です。

先生の録音は、  [ flott und leicht ] をどう弾くか、という

最もよい例でしょう。


34小節目には [ col legno ] という指示があります。

弓の裏側、つまり、木部のほうで、軽く叩いて演奏されています。

この曲がドイツで演奏された際には、新聞評がとても好意的で、

聴衆の皆さまが、楽しまれたようです。


★音楽は、自然を模す 「 標題音楽 」 でないことは、勿論ですが、

歴史的大作曲家でも、ときどき、

このような遊びを、するものです。

 

 


★ 見かけは楽しい曲ですが、実は、仕掛けがあるのです。

「 鶺鴒 」 の第 1小節目の 16分音符  「 c、 c1、 fis、 g 」 が、 

第1楽章 「 Prelude 」 の冒頭と、どういう関係にあるか、

是非、 CD と楽譜を見ながら、謎解きしてください。


★この2小節目 「 D、 A 」 で始まる 16分音符のモティーフが、

このたび、 CD録音ができました私の

「 無伴奏チェロ組曲  4、 5、 6番 」 の、どの曲と対応しているか・・・

などを、ミステリーのように、

秋の夜長、楽しみながら CDを聴いていただきたいと、思います。


★そうしますと、私の 全 6曲の 「 無伴奏チェロ組曲 」 が全部、

宇宙をめぐる惑星のように、互いに、交感しながら、

響き合っているのが、お分かりになると、思います。


★私の作品は、微々たるミクロコスモスですが、

Bach の巨大なコスモスに、近づこうとした勉強の成果であることは、

間違いありません。

 

 


この CDの聴きどころの一つは、 Boettcher 先生が、

たった一本の弓で、Legato Stacoto  Tenuto Crescend 

Decrescend などを、どのように、表現しているかという点です。 

こうした Spieltechn は、実は、

ピアニストが最も欠けているものであると、

思います。


ピアノは、指を 10本使うことができるため、一つの音に対する、

研磨の方法がやや、おろそか、単調になりがちな面があります。

ひどいときには、ガラスを割ったような音、

あるいは、威嚇するような激しい音を出し、

聴く人を不快にさせ、神経を傷つけかねません。


私がお薦めしたいのは、弦楽器の演奏家はもちろん、

ピアニスト、特に、ピアノの先生方が、

楽譜を見ながら、Boettcher 先生の演奏を聴いてくださることです。

個々の音を、弦楽器でどう発音しているか、

それを、体験して欲しいのです。

 

 


そうしますと、例えば、Burgmüller ブルグミュラー

「 25の練習曲 」 の、
「 pastoral パストラル 」 のような、

初心者用の曲でも、左
手の  「 g、 h、 d1 」  和音の、

スタッカートとなっている repeated notes を、どう弾くか、

そのとき、右手をどのように、レガートで歌わせるか、

具体的に、学ぶことができるのです。


★『 無伴奏チェロ組曲 3、2番 』 の CDは、
「 カワイ・表参道 」   http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。 

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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